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呪い
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宮原 湊は、日本に暮らす中学生である。しかし、その生活に関しては、普通とは程遠いものであった。
宮原 湊には、一つの体質があった。異常に他者から好かれる体質である。男女関係なく作用するその体質は、多くの場合、彼に対して良いものではなかった。
小学校に入る頃に母親は、自分の事をほとんど外に出そうとせず、ほぼ軟禁状態で暮らし、そして、たまたま、外に出た日に頭のおかしい女によって母親を殺され、次々とまるでドミノ倒しの様に犠牲者が増えていった。
誘拐や監禁などされる生活は、それほど珍しい事ではない。誘拐された後、別の犯罪者に誘拐されるなんて笑えない事もあった。
宮原 湊が中学生になる頃には、両手では数え切れない人間の人生がめちゃくちゃになったのは間違いない。
流石に湊自身も自分のその体質に理解が深まり、顔を隠していれば、それほど人の意識を変えてしまう程の被害はない事が分かっていた。
自分の体質から人と深く関わる事を避けていた湊は、クラスでも孤立しており、学校に行く頻度も減少する一方であった。
彼の父親はというとまるで自分が疫病神であるかのように家にはおらず、基本的に湊は、一人で暮らしていた。
お世辞にも幸福とは言えない生活ではあった。しかし、まさか、吸血鬼に拉致され監禁された挙句、食料にされるなどとは、夢にも思っていなかった。
監禁されてはいるが、食事などに関しては、毎日与えられている。吸血鬼は、湊の事を捕食対象としては見ているのだが、それでも可愛がっている。
振舞われる食事は、高級な料理であり、渡される服も女性ものという点を除けば、サラサラとした上質な生地で作られたドレスである。体も拭いてもらえるため、監禁されていても体は綺麗なものだ。娯楽も自由もない身であるが囚人よりは随分良い待遇である。
しかし、そのどれも吸血鬼が行なっているのだが・・・・・・
「ほら、湊、手を上げてくれないかしら? 体を拭けないわ。」
相変わらずの湊の部屋で吸血鬼である女は、濡らしたタオルで体を拭く。これもこの吸血鬼の日課である。
湊は基本的に抵抗しない。それは、相手がどれだけ恐ろしい存在であるかを認識しているからであった。
上半身、下半身と体を拭き終わると次は別のタオルを濡らし髪を拭く。湊の女性のような長い艶のある黒髪を拭きながら時折匂いを付けるように体に巻きつけ口づけした。
「本当に素直になってくれて嬉しいわ。最初の頃は逃げ出そうと必死だったのにね。従者の一人を誘惑するなんて考えてもいなかったわ。」
この屋敷には、この吸血鬼以外にも人間が住んでいる。どこからか、攫ってきたのかは分からないが、とにかく、数人の人間がいる。
そして、最初の頃は食事を持ってくるのは、人間の女性が行なっていたのだ。
顔を覆うものがなかった湊の顔を見たその女性は、湊を外の世界に逃がそうとした。
けれど、そう上手くはいかなかった。手足を捥がれ泣き叫び、血を吸い尽くされ、まるでミイラのようになった女性の顔を思い出す。
自分が逃げようとすれば人が死ぬ。ここで飼い殺されるのが世の中のためなのではと湊は考えるようになった。
どうあっても逃げることは出来ない。湊の心は完全に折られていたのだ。
宮原 湊には、一つの体質があった。異常に他者から好かれる体質である。男女関係なく作用するその体質は、多くの場合、彼に対して良いものではなかった。
小学校に入る頃に母親は、自分の事をほとんど外に出そうとせず、ほぼ軟禁状態で暮らし、そして、たまたま、外に出た日に頭のおかしい女によって母親を殺され、次々とまるでドミノ倒しの様に犠牲者が増えていった。
誘拐や監禁などされる生活は、それほど珍しい事ではない。誘拐された後、別の犯罪者に誘拐されるなんて笑えない事もあった。
宮原 湊が中学生になる頃には、両手では数え切れない人間の人生がめちゃくちゃになったのは間違いない。
流石に湊自身も自分のその体質に理解が深まり、顔を隠していれば、それほど人の意識を変えてしまう程の被害はない事が分かっていた。
自分の体質から人と深く関わる事を避けていた湊は、クラスでも孤立しており、学校に行く頻度も減少する一方であった。
彼の父親はというとまるで自分が疫病神であるかのように家にはおらず、基本的に湊は、一人で暮らしていた。
お世辞にも幸福とは言えない生活ではあった。しかし、まさか、吸血鬼に拉致され監禁された挙句、食料にされるなどとは、夢にも思っていなかった。
監禁されてはいるが、食事などに関しては、毎日与えられている。吸血鬼は、湊の事を捕食対象としては見ているのだが、それでも可愛がっている。
振舞われる食事は、高級な料理であり、渡される服も女性ものという点を除けば、サラサラとした上質な生地で作られたドレスである。体も拭いてもらえるため、監禁されていても体は綺麗なものだ。娯楽も自由もない身であるが囚人よりは随分良い待遇である。
しかし、そのどれも吸血鬼が行なっているのだが・・・・・・
「ほら、湊、手を上げてくれないかしら? 体を拭けないわ。」
相変わらずの湊の部屋で吸血鬼である女は、濡らしたタオルで体を拭く。これもこの吸血鬼の日課である。
湊は基本的に抵抗しない。それは、相手がどれだけ恐ろしい存在であるかを認識しているからであった。
上半身、下半身と体を拭き終わると次は別のタオルを濡らし髪を拭く。湊の女性のような長い艶のある黒髪を拭きながら時折匂いを付けるように体に巻きつけ口づけした。
「本当に素直になってくれて嬉しいわ。最初の頃は逃げ出そうと必死だったのにね。従者の一人を誘惑するなんて考えてもいなかったわ。」
この屋敷には、この吸血鬼以外にも人間が住んでいる。どこからか、攫ってきたのかは分からないが、とにかく、数人の人間がいる。
そして、最初の頃は食事を持ってくるのは、人間の女性が行なっていたのだ。
顔を覆うものがなかった湊の顔を見たその女性は、湊を外の世界に逃がそうとした。
けれど、そう上手くはいかなかった。手足を捥がれ泣き叫び、血を吸い尽くされ、まるでミイラのようになった女性の顔を思い出す。
自分が逃げようとすれば人が死ぬ。ここで飼い殺されるのが世の中のためなのではと湊は考えるようになった。
どうあっても逃げることは出来ない。湊の心は完全に折られていたのだ。
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