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2章
Part 62『魔女と誘惑と呪いと』
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リューの店から離れて家に帰る途中、何気なく喉が渇いて自販機を探していると路地裏で小さな子供の姿が目に入った。
顔は、黒いローブのようなもので隠されていて見ることが出来ない。中学生ほどの身長の子供でこんな夜にいるなんて明らかに不自然だった。
頼りない光を放つ街灯の下でポツリと佇むその姿は、少し怪談じみた不気味さを放っていたが、もし、迷子か何かなら大変だと俺は声をかけようと近づくと子供の方も俺の存在に気が付いたようでこちらを向き直った。
その口元がニヤリと笑ったような気がした。
「お兄さん、こんな時間にどうかしたの?」
少女の声がローブの中から聞こえて来る。
「君、迷子?」
「へ? 迷子? ああ、なるほど、なるほど、こんな時間にどうかしたの? は私もだったね。あはは、さては、お兄さんいい人だね。」
ケラケラと笑いながら飄々と話すその姿は歳に似合わない姿はどこか違和感を感じさせる。しかし、それよりも、どこかでこの声を聞いたことがある気が・・・
「お兄さんいい人だからサービスしてあげるよ。お兄さんは消したい記憶はあるのかな?」
その言葉に俺は体がこわばるのを感じた。その質問は、他に意図などない。間違いないこの女の子が魔女だ。
「お前が噂の魔女なのか?」
「あれ? 知ってるんだ。じゃあ、話が手っ取り早くていいね。消して欲しい記憶があるなら私が綺麗さっぱり消してあげるよ。後遺症なしの超安全な仕事だよ?」
おちゃらけた雰囲気で語りかけて来る彼女のせいで印象が明らかにおかしいけれどこの声は、間違いなく彼女の声だ。
「それよりも、お前、ユキだよな?」
そう言うと向こうが息を飲んだ気配がする。やはりと確信したその瞬間、少し溜息を吐いて「ああ、あの子の知り合いか・・・」と呟いた。
「・・・あの子?」
まるで赤の他人のように振る舞う彼女に違和感を感じる。声も体格もユキと全く同じなのに言動も雰囲気も全く違う。
「残念だけど、私はユキじゃないよ。だけど、残念だね。お兄さん、あの子の知り合いとはあんまり関わらないようにしてるんだ。じゃあね。」
そう言って彼女は、路地裏の奥へとかけていく。俺も咄嗟に追いかけようとしたが曲がり角を曲がると彼女の姿はなくなっていた。
「見失ったか・・・」
だけど、とにかく、目的は達成したのでリューに報告をと俺が引き返そうとしたその瞬間「ちゅー」と言う声が聞こえて、何かよくわからない力に急に引き寄せられ、そして、軽く何かとぶつかった。
ぶつかると言っても肌と肌が触れ合うような軽い接触で・・・
何が起こったか分からず状況を確認しようとするとすぐに意味のわからない現象が起こっていた事に気がついた。
目の前には、先程のローブの女の子、ローブの中から銀色の髪と紅瞳が、間違いなくその姿は、ユキそのものだった。しかし、重要な事はそこじゃない。唇に柔らかな感触が当たっているのがわかる。
それは間違いなくキスと呼ばれるものだった。
そして、ユキは、俺から少し距離をとっておかしそうに笑った。
「いやぁ、ちゅーしちゃったね。お兄さん。犯罪だぞぉ?」
「おま、・・・え、な! ・・・ん?」
混乱する頭をフルに回転させる。おそらく、俺の背後に回ったのは、魔法を使っているからで間違いないけれど、キスをする意味がわからない。
「おー混乱してるねー。いや、お兄さんがあんまりにも熱烈に追いかけて来るから、口封じをしようと思ってね。今、お兄さんに呪いをかけた。私に関する事を人に伝える事が出来ない呪いだよ。言葉も文字もダメだからね。」
「呪い・・・」
サクヤがかけられたようなものだろうか、だとすれば、俺は完全にリューの依頼をこなせないことになってしまう。
「そそ、呪い、ユキにはあんまり、魔女に関わって欲しくないからね。そんじゃあ、お兄さん、またねー」
そう言うとまるで幻覚だったかのようにユキの姿が霞んでいき、最後には見えなくなってしまった。
呆然と路地裏で佇む俺は混乱していた。キスのこともそうだが、彼女の発言が気になっていた。ユキと全く同じ姿であるはずなのに赤の他人のような振る舞いをする。本当に別人? いくつか考えられる可能性があるが、とにかく明日会いに言ってみるのが一番な気がした。
「ていうか、あんなのがあった後で会いにいくのか・・・俺」
正直、気が重すぎてため息が漏れた。
顔は、黒いローブのようなもので隠されていて見ることが出来ない。中学生ほどの身長の子供でこんな夜にいるなんて明らかに不自然だった。
頼りない光を放つ街灯の下でポツリと佇むその姿は、少し怪談じみた不気味さを放っていたが、もし、迷子か何かなら大変だと俺は声をかけようと近づくと子供の方も俺の存在に気が付いたようでこちらを向き直った。
その口元がニヤリと笑ったような気がした。
「お兄さん、こんな時間にどうかしたの?」
少女の声がローブの中から聞こえて来る。
「君、迷子?」
「へ? 迷子? ああ、なるほど、なるほど、こんな時間にどうかしたの? は私もだったね。あはは、さては、お兄さんいい人だね。」
ケラケラと笑いながら飄々と話すその姿は歳に似合わない姿はどこか違和感を感じさせる。しかし、それよりも、どこかでこの声を聞いたことがある気が・・・
「お兄さんいい人だからサービスしてあげるよ。お兄さんは消したい記憶はあるのかな?」
その言葉に俺は体がこわばるのを感じた。その質問は、他に意図などない。間違いないこの女の子が魔女だ。
「お前が噂の魔女なのか?」
「あれ? 知ってるんだ。じゃあ、話が手っ取り早くていいね。消して欲しい記憶があるなら私が綺麗さっぱり消してあげるよ。後遺症なしの超安全な仕事だよ?」
おちゃらけた雰囲気で語りかけて来る彼女のせいで印象が明らかにおかしいけれどこの声は、間違いなく彼女の声だ。
「それよりも、お前、ユキだよな?」
そう言うと向こうが息を飲んだ気配がする。やはりと確信したその瞬間、少し溜息を吐いて「ああ、あの子の知り合いか・・・」と呟いた。
「・・・あの子?」
まるで赤の他人のように振る舞う彼女に違和感を感じる。声も体格もユキと全く同じなのに言動も雰囲気も全く違う。
「残念だけど、私はユキじゃないよ。だけど、残念だね。お兄さん、あの子の知り合いとはあんまり関わらないようにしてるんだ。じゃあね。」
そう言って彼女は、路地裏の奥へとかけていく。俺も咄嗟に追いかけようとしたが曲がり角を曲がると彼女の姿はなくなっていた。
「見失ったか・・・」
だけど、とにかく、目的は達成したのでリューに報告をと俺が引き返そうとしたその瞬間「ちゅー」と言う声が聞こえて、何かよくわからない力に急に引き寄せられ、そして、軽く何かとぶつかった。
ぶつかると言っても肌と肌が触れ合うような軽い接触で・・・
何が起こったか分からず状況を確認しようとするとすぐに意味のわからない現象が起こっていた事に気がついた。
目の前には、先程のローブの女の子、ローブの中から銀色の髪と紅瞳が、間違いなくその姿は、ユキそのものだった。しかし、重要な事はそこじゃない。唇に柔らかな感触が当たっているのがわかる。
それは間違いなくキスと呼ばれるものだった。
そして、ユキは、俺から少し距離をとっておかしそうに笑った。
「いやぁ、ちゅーしちゃったね。お兄さん。犯罪だぞぉ?」
「おま、・・・え、な! ・・・ん?」
混乱する頭をフルに回転させる。おそらく、俺の背後に回ったのは、魔法を使っているからで間違いないけれど、キスをする意味がわからない。
「おー混乱してるねー。いや、お兄さんがあんまりにも熱烈に追いかけて来るから、口封じをしようと思ってね。今、お兄さんに呪いをかけた。私に関する事を人に伝える事が出来ない呪いだよ。言葉も文字もダメだからね。」
「呪い・・・」
サクヤがかけられたようなものだろうか、だとすれば、俺は完全にリューの依頼をこなせないことになってしまう。
「そそ、呪い、ユキにはあんまり、魔女に関わって欲しくないからね。そんじゃあ、お兄さん、またねー」
そう言うとまるで幻覚だったかのようにユキの姿が霞んでいき、最後には見えなくなってしまった。
呆然と路地裏で佇む俺は混乱していた。キスのこともそうだが、彼女の発言が気になっていた。ユキと全く同じ姿であるはずなのに赤の他人のような振る舞いをする。本当に別人? いくつか考えられる可能性があるが、とにかく明日会いに言ってみるのが一番な気がした。
「ていうか、あんなのがあった後で会いにいくのか・・・俺」
正直、気が重すぎてため息が漏れた。
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