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2.5章
Part97 『コンの特技』
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俺とサクヤは、山で合流してユキの家に向かっていた。平日の朝なので人はかなり少なく感じる。
この町には、遊園地はないので電車で行くことになる。なので、駅に現地集合しようという話になったのだ。
とはいえ、流石にユキは心配なので家に迎えに行くことにしていた。
ユキは学校があるので土日になるかと思っていたが、ユキがタイミングよく学校の創立記念日で休みになるらしいのでそれならばと、都合を合わせて今日になった。
平日なら空席も出来るだろうし、サクヤの乗るスペースも確保出来るだろうという算段である。
「楽しみです! アトラクションなんて・・・近場にあるのは知ってたんですけど、中々機会がなくて」
「俺も最近は言ってないな。春香が小さい時に行ってからは、ほとんど・・・」
「妹さんですね。そう言えば、お会いしたことないですね。」
「あー、俺と二人しかいない時は、あんまり合わない方がいいかもしれない。あいつ猫かぶりだから」
サクヤの姿は見えないから春香の本性がさらけ出されてしまう。
妹の名誉のためにもサクヤには、外に出るようの春香を見てもらおう。うん、機会があればね。まあ、すぐにバレるとは思うんだけど・・・
ユキの家に向かうとユキが家の外で待っていた。フードの付いた黒のパーカーに白のTシャツ、スカートを履いている。フードを被っているのでユキの銀髪はあまり目立たなくなっている。ただ、フードを被っているので少し目立ってはいるが・・・
「おはよう。ユキ」
「あ、お兄さん、おはようございます。あ、そちらの方が・・・」
「は、はじめまして、私はサクヤです。」
お互い軽く頭を下げて軽く微笑み合う。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「いや、なんかないの?」
「あ、あの、峰さん、こういう時ってどういう接し方すればいいんですか?」
「お前、何年生きてるって言ってたっけ?」
こいつは、何十年生きてるのだ。なんで人見知り同士の反応になってるのか。
まあ、見える人間は珍しいので、緊張しているのかもしれない。しばらく見守っておこう。
「あ、あの、サクヤさんは、お兄さんのお友達なんですよね。」
ユキがなんとか会話をしようと会話を始めた。
「は、はい。そうです。」
「そうなんですね。」
再び、沈黙が訪れる。そうだったね。ユキもコミュニケーション得意なタイプじゃないもんな!
大丈夫かな。正直、妖怪が見えるユキとは仲良くなってもらいたいところではある。
「まあ、他の奴らも待ってるし駅行こうか。」
そう言って俺達は駅に向かった。俺は、二人に話を振るが一方が喋ると一方がその話を黙って聞いているというなんとも気まずい状況になっていた。
いや、とても俺にも経験はあるのだが・・・。友達の友達って距離感分からないから気まずいよな。
そう言われてみれば、俺の知り合いが集まるので、他はほぼ初対面だ。コンとサクヤは面識があるぐらいだ。
これは、最初から先行き不安だぞ・・・
駅に着くとすでにコンがいて、こちらに向かって大きく手を振っていた。いつもなら、元気すぎる振る舞いを恥ずかしく思うところだが、その能天気さが今はありがたい。
「おはようございますっす! 峰さんとサクヤさん。」
軽く挨拶をすませ、サクヤの方も知り合いとあえてホッとしているのか「おはようございます。お久しぶりです。コンさん」といつも通りの対応をしていた。
「あ、そっちの女の子が言ってた幽霊の見える子っすね。初めまして、コンって言うっすよ。」
コンは、俺やサクヤに挨拶すると自然な流れで中腰になってユキと視線を合わせて話しかける。
ユキは「はじめまして、ユキです。」と深く頭を下げる。コンはそれに「峰さんの言う通りの可愛い子っすね~将来はモデルっすかね。」と軽く頭を撫でる。
ユキの方も少し照れた表情を浮かべるも嫌がっている様子ではない。おお、流石のコミュニケーション能力・・・これは是非とも見習いたいところだ。
「結構、待ってたか?」
「いや、10分ぐらいっすよ。大丈夫っす。」
「じゃあ、後は、凛だけだな。」
きっと今頃迷子になっているのだろうと俺がそう呟いた瞬間に「大丈夫、もういる。」と声が聞こえた。
後ろを振り返ると凛が「おはよう。日向」と声をかけてきていた。
「え、ほんとに凛? 迷子になってないなんて・・・」
「日向、それは流石に失礼。私もたまには時間どうりに着く」
そうか。こんな奇跡もあるのか・・・いや、流石にあれだけ毎日駅に来ていたら迷子にはならないのか・・・
いや、駅を待ち合わせにしていて本当に良かった。
「あ、そうだ。みんなに紹介するよ。この子がユキで、こっちの男子がコン、それから、見えないとは思うけどサクヤね。」
「よろしく」と凛は握手をしにいく。凛も独特のコミュニケーションの取り方をするなぁと思いながら全員、握手に応える。
「サクヤさんも初めまして、仲良くしてくれると嬉しい」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。って言ってる。」と俺は凛に教える。凛は「いい人そうで良かった。」と呟いた。
仲良く出来そうで安心した。多少、コミュニケーションは、俺かユキが仲介しなきゃいけないけど・・・それぐらいは、苦でもない。
そう思っているとコンが凛に近づいていって「あの触ってもいいっすか?」と尋ねていた。
「おい、お前何言ってんだ!? 正気か!?」
俺はコンの首根っこを掴んで連れて行く。コンはぐえっと潰れたカエルのような声をあげるが関係ない。まさかいきなりセクハラまがいの発言をするとは思ってなかった。
「な、何するんっすか! 峰さん・・・」
「何するんだは俺のセリフだよ。何をいきなりセクハラ発言をしてるんだ。」
「はい? 何言ってるんすか?」
この程度はセクハラにはならないとでも言いたげな表情をうかべるコンに少し呆れる。
「あのな。いくら凛が可愛いからっていきなり触っていいかなんて、ものには順序があるんだよ。」
「そりゃあ、可愛いっすけど、そう言う意味じゃないっすよ。呪いをかけようと思ってただけで」
「呪い?」
「峰さんには見せたことなかったっすね。俺の魔法。」
そう言ってコンは俺の手を握る。その瞬間、俺の視界には、無数の美女たちがこちらに向かって手を振っていた。
この世の全てから最高の美女を集めたようにその姿は違っているが同様に美しかった。
そして、その美女たちは、何故かやたらと胸を強調する衣装を身に纏っており非常に扇情的に見えた。
一体、自分はどこに連れてこられたのだろうか・・・というか、自分は何を見せられているのだろうか。
しかし、ここは男にとっての桃源郷なのではないだろうか・・・そう思わせるだけの夢とロマンが詰まっている。
「はい。終了っす。」
そう言うと美少女の楽園は姿を消してしまった。目の前には、笑顔のコンがいた。しかし、その笑顔は、少し意味深な笑みだった。
峰さんもやっぱり男っすね。と言わんばかりのその表情。しかし、悔しいが、あそこは紛れもなく楽園だった。
「こんな感じで五感に影響を与えたりできるっすよ。なんで、凛さんにサクヤさんを一時的に見えるようにすれば、楽しく遊べるんじゃないかって思ったんすよ。」
「コン・・・天才だな!」
それならば、問題は解決だ。うん、ただ、ちょっと、あの楽園に未練がないわけじゃない・・・。そう考えると恐ろしい能力だと思った。
俺は、凛に事情を説明してコンに魔法をかけてもらった。永続的なものではなく、1日程度しか保たないらしいので後々も問題ないだろう。
「見える。黒い髪の女の子が・・・」
「本当ですか!?」
「声も聞こえる。初めまして、良かった。ちゃんと挨拶出来て」
「初めまして、私もこうして直接お話しできて良かったです。」
こうして、無事に俺達は挨拶をすることが出来たのだった。
この町には、遊園地はないので電車で行くことになる。なので、駅に現地集合しようという話になったのだ。
とはいえ、流石にユキは心配なので家に迎えに行くことにしていた。
ユキは学校があるので土日になるかと思っていたが、ユキがタイミングよく学校の創立記念日で休みになるらしいのでそれならばと、都合を合わせて今日になった。
平日なら空席も出来るだろうし、サクヤの乗るスペースも確保出来るだろうという算段である。
「楽しみです! アトラクションなんて・・・近場にあるのは知ってたんですけど、中々機会がなくて」
「俺も最近は言ってないな。春香が小さい時に行ってからは、ほとんど・・・」
「妹さんですね。そう言えば、お会いしたことないですね。」
「あー、俺と二人しかいない時は、あんまり合わない方がいいかもしれない。あいつ猫かぶりだから」
サクヤの姿は見えないから春香の本性がさらけ出されてしまう。
妹の名誉のためにもサクヤには、外に出るようの春香を見てもらおう。うん、機会があればね。まあ、すぐにバレるとは思うんだけど・・・
ユキの家に向かうとユキが家の外で待っていた。フードの付いた黒のパーカーに白のTシャツ、スカートを履いている。フードを被っているのでユキの銀髪はあまり目立たなくなっている。ただ、フードを被っているので少し目立ってはいるが・・・
「おはよう。ユキ」
「あ、お兄さん、おはようございます。あ、そちらの方が・・・」
「は、はじめまして、私はサクヤです。」
お互い軽く頭を下げて軽く微笑み合う。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「いや、なんかないの?」
「あ、あの、峰さん、こういう時ってどういう接し方すればいいんですか?」
「お前、何年生きてるって言ってたっけ?」
こいつは、何十年生きてるのだ。なんで人見知り同士の反応になってるのか。
まあ、見える人間は珍しいので、緊張しているのかもしれない。しばらく見守っておこう。
「あ、あの、サクヤさんは、お兄さんのお友達なんですよね。」
ユキがなんとか会話をしようと会話を始めた。
「は、はい。そうです。」
「そうなんですね。」
再び、沈黙が訪れる。そうだったね。ユキもコミュニケーション得意なタイプじゃないもんな!
大丈夫かな。正直、妖怪が見えるユキとは仲良くなってもらいたいところではある。
「まあ、他の奴らも待ってるし駅行こうか。」
そう言って俺達は駅に向かった。俺は、二人に話を振るが一方が喋ると一方がその話を黙って聞いているというなんとも気まずい状況になっていた。
いや、とても俺にも経験はあるのだが・・・。友達の友達って距離感分からないから気まずいよな。
そう言われてみれば、俺の知り合いが集まるので、他はほぼ初対面だ。コンとサクヤは面識があるぐらいだ。
これは、最初から先行き不安だぞ・・・
駅に着くとすでにコンがいて、こちらに向かって大きく手を振っていた。いつもなら、元気すぎる振る舞いを恥ずかしく思うところだが、その能天気さが今はありがたい。
「おはようございますっす! 峰さんとサクヤさん。」
軽く挨拶をすませ、サクヤの方も知り合いとあえてホッとしているのか「おはようございます。お久しぶりです。コンさん」といつも通りの対応をしていた。
「あ、そっちの女の子が言ってた幽霊の見える子っすね。初めまして、コンって言うっすよ。」
コンは、俺やサクヤに挨拶すると自然な流れで中腰になってユキと視線を合わせて話しかける。
ユキは「はじめまして、ユキです。」と深く頭を下げる。コンはそれに「峰さんの言う通りの可愛い子っすね~将来はモデルっすかね。」と軽く頭を撫でる。
ユキの方も少し照れた表情を浮かべるも嫌がっている様子ではない。おお、流石のコミュニケーション能力・・・これは是非とも見習いたいところだ。
「結構、待ってたか?」
「いや、10分ぐらいっすよ。大丈夫っす。」
「じゃあ、後は、凛だけだな。」
きっと今頃迷子になっているのだろうと俺がそう呟いた瞬間に「大丈夫、もういる。」と声が聞こえた。
後ろを振り返ると凛が「おはよう。日向」と声をかけてきていた。
「え、ほんとに凛? 迷子になってないなんて・・・」
「日向、それは流石に失礼。私もたまには時間どうりに着く」
そうか。こんな奇跡もあるのか・・・いや、流石にあれだけ毎日駅に来ていたら迷子にはならないのか・・・
いや、駅を待ち合わせにしていて本当に良かった。
「あ、そうだ。みんなに紹介するよ。この子がユキで、こっちの男子がコン、それから、見えないとは思うけどサクヤね。」
「よろしく」と凛は握手をしにいく。凛も独特のコミュニケーションの取り方をするなぁと思いながら全員、握手に応える。
「サクヤさんも初めまして、仲良くしてくれると嬉しい」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。って言ってる。」と俺は凛に教える。凛は「いい人そうで良かった。」と呟いた。
仲良く出来そうで安心した。多少、コミュニケーションは、俺かユキが仲介しなきゃいけないけど・・・それぐらいは、苦でもない。
そう思っているとコンが凛に近づいていって「あの触ってもいいっすか?」と尋ねていた。
「おい、お前何言ってんだ!? 正気か!?」
俺はコンの首根っこを掴んで連れて行く。コンはぐえっと潰れたカエルのような声をあげるが関係ない。まさかいきなりセクハラまがいの発言をするとは思ってなかった。
「な、何するんっすか! 峰さん・・・」
「何するんだは俺のセリフだよ。何をいきなりセクハラ発言をしてるんだ。」
「はい? 何言ってるんすか?」
この程度はセクハラにはならないとでも言いたげな表情をうかべるコンに少し呆れる。
「あのな。いくら凛が可愛いからっていきなり触っていいかなんて、ものには順序があるんだよ。」
「そりゃあ、可愛いっすけど、そう言う意味じゃないっすよ。呪いをかけようと思ってただけで」
「呪い?」
「峰さんには見せたことなかったっすね。俺の魔法。」
そう言ってコンは俺の手を握る。その瞬間、俺の視界には、無数の美女たちがこちらに向かって手を振っていた。
この世の全てから最高の美女を集めたようにその姿は違っているが同様に美しかった。
そして、その美女たちは、何故かやたらと胸を強調する衣装を身に纏っており非常に扇情的に見えた。
一体、自分はどこに連れてこられたのだろうか・・・というか、自分は何を見せられているのだろうか。
しかし、ここは男にとっての桃源郷なのではないだろうか・・・そう思わせるだけの夢とロマンが詰まっている。
「はい。終了っす。」
そう言うと美少女の楽園は姿を消してしまった。目の前には、笑顔のコンがいた。しかし、その笑顔は、少し意味深な笑みだった。
峰さんもやっぱり男っすね。と言わんばかりのその表情。しかし、悔しいが、あそこは紛れもなく楽園だった。
「こんな感じで五感に影響を与えたりできるっすよ。なんで、凛さんにサクヤさんを一時的に見えるようにすれば、楽しく遊べるんじゃないかって思ったんすよ。」
「コン・・・天才だな!」
それならば、問題は解決だ。うん、ただ、ちょっと、あの楽園に未練がないわけじゃない・・・。そう考えると恐ろしい能力だと思った。
俺は、凛に事情を説明してコンに魔法をかけてもらった。永続的なものではなく、1日程度しか保たないらしいので後々も問題ないだろう。
「見える。黒い髪の女の子が・・・」
「本当ですか!?」
「声も聞こえる。初めまして、良かった。ちゃんと挨拶出来て」
「初めまして、私もこうして直接お話しできて良かったです。」
こうして、無事に俺達は挨拶をすることが出来たのだった。
応援ありがとうございます!
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