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3章
Part 172『砂の拘束』
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全ての感情を持つ存在は魔法を使うことができる。それは、魔法を起こす事に思い出という燃料を消費するからである。
そして、妖怪達は、人間と違い魔法を多く使う傾向がある。それは、発動する能力が高いというのもあるが、より大きな意味では、妖怪達は、人間よりも圧倒的に寿命が長いからである。
燃料とするだけの記憶が多ければ、使ったとしてもデメリットが小さくなっていくのは明白である。
そのため、妖怪同士の戦いが魔法戦になる事は珍しくない。しかし、全ての妖怪が魔法を行使するかと言われれば、それは、ノーである。
魔法を使うには、燃料となる記憶を必要とする。しかし、その変換効率、つまり、消費する記憶に対しての現象の大きさは、個人によって異なる。
故に魔法戦の優位とは、その変換効率の良さ、そして、得意とする魔法の系統に大きく左右される。
魔女であるリューやツララは、魔法全てに対して他の妖怪よりも破格の変換効率の高さを有している。そうでなければ、あれだけ、様々な種類の魔法を使っていれば、すぐにはガス欠になってしまう。
そして、キズキの得意とする魔法は、砂を操る魔法であり、その変換効率に関しては、中の上といったレベルである。
変換効率は使えば使うほどに同系統の魔法であれば、効率は上がっていく。つまりは、成長するのだが、強くなるまでの間に記憶を全て失っていては元も子もないため、全く、魔法に適性がない存在は、魔法を使う事はほとんどない。
キズキも自分自身が魔法を使って戦うのに向いていない事はすぐに分かっていたため、定期的に軽く練習するだけに留めていた。
しかし、今は、実力差を埋めるためどんな手段でも戦うべきだとキズキは判断した。
「魔法は苦手だ。俺は使わない。けどな。このレベルなら負ける訳はない。」
襲いかかる砂の棘を避け、あるいは破壊し狼の妖怪はキズキの攻撃を一切受けていなかった。
武器を失っていたキズキは、魔法によって作り出した砂の大剣を握っている。その砂は、固まり岩の様に硬くなっていた。
そして、大剣を魔法によって誘導し、叩き下ろした。超重量の大剣は、しかし、妖怪を潰す事は出来ない。
「甘いんだよ。」
その瞬間、大剣は、妖怪の拳によって破壊された。そして、そのまま、妖怪は、イズキの懐に向かって凄まじ速さで攻撃を仕掛けてくる。
一撃をもらえば、大ダメージは間違いない。拳はキズキに向かってふるわれた。
しかし、すぐに妖怪は自分が嵌められたことに気づいた。
魔法で作った武器、しかも、それが砂であれば、壊したところですぐに再生する。いや、違う。それだけではない。別の形状にもする事が出来る。
妖怪の拳がキズキの体に接触するよりも早く、棍棒の形状を再構成した砂の武器が妖怪の体を捉えた。
確その衝撃に妖怪は数メートル先へ飛んでいく。確実なクリーンヒット、しかし、手を休めてはいけない。この程度で倒れる輩ならそもそも、もっとうまくやっている。
すぐに距離を詰め倒れる妖怪に先ほどの砂を巨大な金槌に変化させて叩きつける。それを何度も休む事なく繰り返す。地面が砕け凹み、どんどんと地表よりも深くなる。それでもキズキは止める事なく攻撃を続ける。
並みの妖怪であれば、数回は死んでいる。
「いてぇ、いてぇ、なぁ・・・・・・」
叩きつけている地面の下から苛立った声が聞こえてくる。
(まだ、生きているのか・・・・・・)
その事実にキズキは動揺する。想像していた以上にしぶとい敵だ。
そして、キズキは確信した。自分ではこの妖怪にトドメを刺すことは不可能だということに。
キズキは、金槌の動きを振るうのを止めた。
「あ? 満足したのか? なら、こっちから、いくぞ。」
金槌の下から声が聞こえる。明らかに相手は生きている。そして、すぐに砂の金槌は砕かれ、妖怪は、姿を現した。
「なんだ。諦めたのか?」
「・・・・・・」
キズキは、答えない。もう、その必要がない。確かにタフな相手ではあるが、もうどうすることも出来ない。砂使いを相手にここまで地面と触れ合ってしまった時点でキズキの勝利は揺るがない。
「ん?」
反応がないキズキを訝しむ妖怪は、次に自分の体に目を向けた。足が地面に埋まっている。
それどころかゆっくりと地中に引き込まれている様ですらある。
妖怪はすぐに抵抗する。しかし、思うように体が動かない。
「なんだ。これ・・・・・・」
妖怪は、自分の体に大量の砂が付着していることに気がついた。それは、まるで身体中を覆うように広がっており、腕をふるっても取れる気配がない。
そして、地面から登ってくる砂によって次第に腕の可動域が狭まっていく。まるで、体を石像にでも変えられている様な現象である。
「なるほどな。こりゃあ、抵抗出来ないな。体が動かせなきゃ力が出せねぇよ。」
それは、単純な事である。体は、力を出すために体を動かしている。例えば電話ボックス程度の隙間で全力のタックルが出来るだろうか。不可能である。力というのはより強い力を出すために、助走を付けたり、体に反動を加えたりとする事によって大きな力を出すことが出来る。
全身の動き、体を曲げることすら許されない状況下でどれだけの力が発揮出来るだろうか。
砂は、妖怪の体をほとんど飲み込み、地中に埋めた。魔法によって硬化させられた砂は、妖怪に指の一本すら動かすことを許さない。
次第に妖怪の全身を飲み込み完全に身動きを取れなくさせるだろう。
だと言うのに妖怪は笑っていた。自分の不利を喜ぶ様に「ああ、やっぱり、一筋縄じゃいかねぇな。」と呟いた。
魔法でも使うつもりかとキズキは身構える。しかし、この妖怪は、先程から魔法を使う形跡はほとんどなかった。
「安心しろよ。言ったろ魔法は苦手なんだ。だから、この勝負、お前の勝ちでいいぜ。勝負は負けだ。」
妖怪はそう言って笑った。そして、呟く様にこう続けた。
「勝負はな。・・・・・・『禍神』」
そして、妖怪達は、人間と違い魔法を多く使う傾向がある。それは、発動する能力が高いというのもあるが、より大きな意味では、妖怪達は、人間よりも圧倒的に寿命が長いからである。
燃料とするだけの記憶が多ければ、使ったとしてもデメリットが小さくなっていくのは明白である。
そのため、妖怪同士の戦いが魔法戦になる事は珍しくない。しかし、全ての妖怪が魔法を行使するかと言われれば、それは、ノーである。
魔法を使うには、燃料となる記憶を必要とする。しかし、その変換効率、つまり、消費する記憶に対しての現象の大きさは、個人によって異なる。
故に魔法戦の優位とは、その変換効率の良さ、そして、得意とする魔法の系統に大きく左右される。
魔女であるリューやツララは、魔法全てに対して他の妖怪よりも破格の変換効率の高さを有している。そうでなければ、あれだけ、様々な種類の魔法を使っていれば、すぐにはガス欠になってしまう。
そして、キズキの得意とする魔法は、砂を操る魔法であり、その変換効率に関しては、中の上といったレベルである。
変換効率は使えば使うほどに同系統の魔法であれば、効率は上がっていく。つまりは、成長するのだが、強くなるまでの間に記憶を全て失っていては元も子もないため、全く、魔法に適性がない存在は、魔法を使う事はほとんどない。
キズキも自分自身が魔法を使って戦うのに向いていない事はすぐに分かっていたため、定期的に軽く練習するだけに留めていた。
しかし、今は、実力差を埋めるためどんな手段でも戦うべきだとキズキは判断した。
「魔法は苦手だ。俺は使わない。けどな。このレベルなら負ける訳はない。」
襲いかかる砂の棘を避け、あるいは破壊し狼の妖怪はキズキの攻撃を一切受けていなかった。
武器を失っていたキズキは、魔法によって作り出した砂の大剣を握っている。その砂は、固まり岩の様に硬くなっていた。
そして、大剣を魔法によって誘導し、叩き下ろした。超重量の大剣は、しかし、妖怪を潰す事は出来ない。
「甘いんだよ。」
その瞬間、大剣は、妖怪の拳によって破壊された。そして、そのまま、妖怪は、イズキの懐に向かって凄まじ速さで攻撃を仕掛けてくる。
一撃をもらえば、大ダメージは間違いない。拳はキズキに向かってふるわれた。
しかし、すぐに妖怪は自分が嵌められたことに気づいた。
魔法で作った武器、しかも、それが砂であれば、壊したところですぐに再生する。いや、違う。それだけではない。別の形状にもする事が出来る。
妖怪の拳がキズキの体に接触するよりも早く、棍棒の形状を再構成した砂の武器が妖怪の体を捉えた。
確その衝撃に妖怪は数メートル先へ飛んでいく。確実なクリーンヒット、しかし、手を休めてはいけない。この程度で倒れる輩ならそもそも、もっとうまくやっている。
すぐに距離を詰め倒れる妖怪に先ほどの砂を巨大な金槌に変化させて叩きつける。それを何度も休む事なく繰り返す。地面が砕け凹み、どんどんと地表よりも深くなる。それでもキズキは止める事なく攻撃を続ける。
並みの妖怪であれば、数回は死んでいる。
「いてぇ、いてぇ、なぁ・・・・・・」
叩きつけている地面の下から苛立った声が聞こえてくる。
(まだ、生きているのか・・・・・・)
その事実にキズキは動揺する。想像していた以上にしぶとい敵だ。
そして、キズキは確信した。自分ではこの妖怪にトドメを刺すことは不可能だということに。
キズキは、金槌の動きを振るうのを止めた。
「あ? 満足したのか? なら、こっちから、いくぞ。」
金槌の下から声が聞こえる。明らかに相手は生きている。そして、すぐに砂の金槌は砕かれ、妖怪は、姿を現した。
「なんだ。諦めたのか?」
「・・・・・・」
キズキは、答えない。もう、その必要がない。確かにタフな相手ではあるが、もうどうすることも出来ない。砂使いを相手にここまで地面と触れ合ってしまった時点でキズキの勝利は揺るがない。
「ん?」
反応がないキズキを訝しむ妖怪は、次に自分の体に目を向けた。足が地面に埋まっている。
それどころかゆっくりと地中に引き込まれている様ですらある。
妖怪はすぐに抵抗する。しかし、思うように体が動かない。
「なんだ。これ・・・・・・」
妖怪は、自分の体に大量の砂が付着していることに気がついた。それは、まるで身体中を覆うように広がっており、腕をふるっても取れる気配がない。
そして、地面から登ってくる砂によって次第に腕の可動域が狭まっていく。まるで、体を石像にでも変えられている様な現象である。
「なるほどな。こりゃあ、抵抗出来ないな。体が動かせなきゃ力が出せねぇよ。」
それは、単純な事である。体は、力を出すために体を動かしている。例えば電話ボックス程度の隙間で全力のタックルが出来るだろうか。不可能である。力というのはより強い力を出すために、助走を付けたり、体に反動を加えたりとする事によって大きな力を出すことが出来る。
全身の動き、体を曲げることすら許されない状況下でどれだけの力が発揮出来るだろうか。
砂は、妖怪の体をほとんど飲み込み、地中に埋めた。魔法によって硬化させられた砂は、妖怪に指の一本すら動かすことを許さない。
次第に妖怪の全身を飲み込み完全に身動きを取れなくさせるだろう。
だと言うのに妖怪は笑っていた。自分の不利を喜ぶ様に「ああ、やっぱり、一筋縄じゃいかねぇな。」と呟いた。
魔法でも使うつもりかとキズキは身構える。しかし、この妖怪は、先程から魔法を使う形跡はほとんどなかった。
「安心しろよ。言ったろ魔法は苦手なんだ。だから、この勝負、お前の勝ちでいいぜ。勝負は負けだ。」
妖怪はそう言って笑った。そして、呟く様にこう続けた。
「勝負はな。・・・・・・『禍神』」
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