176 / 352
3章
Part 175『勝てない戦い』
しおりを挟む
ここまで感情が苛立つのは、久しぶりの経験だと粉雪は思う。
努力すれば、必ず勝てる。強者とはスタート位置が違うだけの事で、その距離は詰めればいい。
そんなものは、願望だと粉雪は否定する。それは、弱者が自分の敗北を認めないための詭弁だ。
確かに才能であれば、努力で補える。それは、いかに天才であっても伸び悩むものであり、そして、成長も難しくなっていくからである。
長い年月と自己研鑽を重ねれば、いつかは、天才に追いつくかもしれない。
現に一人の鬼はすでに自分よりも高みにいる事を粉雪は知っている。
愚かしいほどに真っ直ぐに努力し続けた鬼を粉雪は知っている。
才能がそれほど群を抜いていた訳ではなかった。むしろ、その逆、粉雪の目から見たマコトは、才能としては劣っていた。
けれど、自分に才能がない事を絶対に認めない頑固さと真っ直ぐで曲がらない芯の強さがあり、努力を怠らない事でマコトは鬼島でも一番の実力者になった。
マコトの実力は、粉雪も認めている。今の粉雪では勝つのは難しい相手だと思う。
けれど、マコトの強さは一番では無いと確信を持って言える。
本当の最強は、並び立つ可能性すら考慮に入れさせない相手だ。
粉雪は、天才であった。物覚えは人一倍よく、上達も速かった。戦闘に関して言えば圧倒的で昔から注目されていた。
けれど、そんなものは、ただ、上達が早いというだけだった。
粉雪の近くには常に姉がいた。鬼の中でも群を抜いて優れた身体能力を持つ姉
その存在は、常識の埒外にいた。最初は、粉雪はいつかは姉を超える存在になろうと努力していた。
けれど、すぐに気付いてしまった。身体能力に優れた姉が今よりも鍛え上げれば、自分は、いつ姉に届くのだろう。と
才能は長い時間をかければ追いつける。けれど、体の作りがそもそも違う相手はどうやって追いつくのだ。
いくら努力しても規格が違う相手に勝つイメージは持てなかった。
粉雪は、次第に努力をやめた。勝てない勝負をするほど愚かな事はない。その劣等感を粉雪は無理矢理に尊敬へと切り替えてた。
技術の追求に費やされた情熱は、昔から好きだった娯楽へと向いた。
表面上は、努力をしていた。しかし、それも、姉が家を出たのを境に辞めてしまった。
自分は、実力の差に早々に見切りをつけた。だからだろうか、目の前の明らかに身体能力に劣ると分かっていながら向かってくる二人に苛立つのは・・・・・・
勝てないなら諦めて何が悪い。私は、なりたくてこんな私になったんじゃないのに!
粉雪は、明らかに変わっていた。相手が防御に専念しているのと対照的に粉雪は完全な攻撃にしか集中しない戦いだった。
武器も持たず、ただ、相手を壊す事のみを重視した思考は、防御というものを確実に突破して二人に一撃を与える事ができる。
身体能力であれば劣っている相手、対する粉雪は傷ついてもすぐに回復する恵まれた肉体を持つ。
防御なんて必要ない。相手に攻撃されたところで、大したダメージにはならない。なら、確実にダメージを与えることに集中する。
片方さえ潰してしまえば、この程度の敵は、有象無象でしかない。
粉雪は、全ての攻撃を兄である男に集中した。妹の攻撃は全て受けきる。そうすれば、負ける事はない。
暴力的なまでに単純化した思考は、それでも、的を得ていた。
けれど、粉雪は、失念していた。この世界には、魔法の道具が存在している事を。
粉雪は、自分の体に痺れを感じた。体の動きがどんどん鈍くなっていく。
「油断 大敵 毒 有効」
ネネの声が粉雪には遠くに聞こえた。立っているのが難しいほどに痺れはどんどんと強くなっていく。
ネネの手には、黒く怪しい光を放つナイフには、赤い血が滴っていた。
「妖刀 人形遊び」
妖刀 人形遊びと名付けられたそのナイフは、相手の体を麻痺させる武器である。それは、一撃加えるごとに強くなり、どんな妖怪であっても動く事が出来なくなる。
動かなくなった敵を倒すそれがその妖刀の使い方である。
まるで、人形で遊んでついつい壊してしまう様に・・・・・・
「経験 不足 魔具 警戒 基本」
そう。真剣勝負であれば、勝ちようがない相手だろうと道具を使えば、勝てる事がある。
巨大な獣を殺すために銃を使うように
正攻法で強者に勝てる弱者などいない。
努力すれば、必ず勝てる。強者とはスタート位置が違うだけの事で、その距離は詰めればいい。
そんなものは、願望だと粉雪は否定する。それは、弱者が自分の敗北を認めないための詭弁だ。
確かに才能であれば、努力で補える。それは、いかに天才であっても伸び悩むものであり、そして、成長も難しくなっていくからである。
長い年月と自己研鑽を重ねれば、いつかは、天才に追いつくかもしれない。
現に一人の鬼はすでに自分よりも高みにいる事を粉雪は知っている。
愚かしいほどに真っ直ぐに努力し続けた鬼を粉雪は知っている。
才能がそれほど群を抜いていた訳ではなかった。むしろ、その逆、粉雪の目から見たマコトは、才能としては劣っていた。
けれど、自分に才能がない事を絶対に認めない頑固さと真っ直ぐで曲がらない芯の強さがあり、努力を怠らない事でマコトは鬼島でも一番の実力者になった。
マコトの実力は、粉雪も認めている。今の粉雪では勝つのは難しい相手だと思う。
けれど、マコトの強さは一番では無いと確信を持って言える。
本当の最強は、並び立つ可能性すら考慮に入れさせない相手だ。
粉雪は、天才であった。物覚えは人一倍よく、上達も速かった。戦闘に関して言えば圧倒的で昔から注目されていた。
けれど、そんなものは、ただ、上達が早いというだけだった。
粉雪の近くには常に姉がいた。鬼の中でも群を抜いて優れた身体能力を持つ姉
その存在は、常識の埒外にいた。最初は、粉雪はいつかは姉を超える存在になろうと努力していた。
けれど、すぐに気付いてしまった。身体能力に優れた姉が今よりも鍛え上げれば、自分は、いつ姉に届くのだろう。と
才能は長い時間をかければ追いつける。けれど、体の作りがそもそも違う相手はどうやって追いつくのだ。
いくら努力しても規格が違う相手に勝つイメージは持てなかった。
粉雪は、次第に努力をやめた。勝てない勝負をするほど愚かな事はない。その劣等感を粉雪は無理矢理に尊敬へと切り替えてた。
技術の追求に費やされた情熱は、昔から好きだった娯楽へと向いた。
表面上は、努力をしていた。しかし、それも、姉が家を出たのを境に辞めてしまった。
自分は、実力の差に早々に見切りをつけた。だからだろうか、目の前の明らかに身体能力に劣ると分かっていながら向かってくる二人に苛立つのは・・・・・・
勝てないなら諦めて何が悪い。私は、なりたくてこんな私になったんじゃないのに!
粉雪は、明らかに変わっていた。相手が防御に専念しているのと対照的に粉雪は完全な攻撃にしか集中しない戦いだった。
武器も持たず、ただ、相手を壊す事のみを重視した思考は、防御というものを確実に突破して二人に一撃を与える事ができる。
身体能力であれば劣っている相手、対する粉雪は傷ついてもすぐに回復する恵まれた肉体を持つ。
防御なんて必要ない。相手に攻撃されたところで、大したダメージにはならない。なら、確実にダメージを与えることに集中する。
片方さえ潰してしまえば、この程度の敵は、有象無象でしかない。
粉雪は、全ての攻撃を兄である男に集中した。妹の攻撃は全て受けきる。そうすれば、負ける事はない。
暴力的なまでに単純化した思考は、それでも、的を得ていた。
けれど、粉雪は、失念していた。この世界には、魔法の道具が存在している事を。
粉雪は、自分の体に痺れを感じた。体の動きがどんどん鈍くなっていく。
「油断 大敵 毒 有効」
ネネの声が粉雪には遠くに聞こえた。立っているのが難しいほどに痺れはどんどんと強くなっていく。
ネネの手には、黒く怪しい光を放つナイフには、赤い血が滴っていた。
「妖刀 人形遊び」
妖刀 人形遊びと名付けられたそのナイフは、相手の体を麻痺させる武器である。それは、一撃加えるごとに強くなり、どんな妖怪であっても動く事が出来なくなる。
動かなくなった敵を倒すそれがその妖刀の使い方である。
まるで、人形で遊んでついつい壊してしまう様に・・・・・・
「経験 不足 魔具 警戒 基本」
そう。真剣勝負であれば、勝ちようがない相手だろうと道具を使えば、勝てる事がある。
巨大な獣を殺すために銃を使うように
正攻法で強者に勝てる弱者などいない。
0
あなたにおすすめの小説
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる