咲かない桜

御伽 白

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3章

Part 203『廃村』

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 隠されていた通路というのは、本当にシンプルなものだった。大きな岩で入口を見えなくしただけのただのトンネルだ。

 けれど、その重量を想像するに妖怪でも並みの妖怪なら持ち上げる事がそもそも難しいのではと思わせる岩であった。

 レンジは、両手でそれを持ち上げると、支えたまま俺に先に進む様に促した。

 俺はそのまま、トンネルの中に入るが奥は真っ暗で何も見えない。唯一、入口からの光で足元だけが見えるそんな場所である。

 俺が中に入ったのを確認するとそのまま、岩から手を離し、素早くトンネルの中へと侵入する。

 入口が閉ざされ、完全に真っ暗になってしまった。レンジがどこにいるのかすら分からない。

 しばらくするとすぐそばで淡い光が灯る。レンジの手には、木の棒が握られていた。その先端には、石が紐で括り付けられており、橙色の優しい光が灯っている。

 レンジのそばには同じ様な棒がいくつも立てかけられている。

 「ここを使ってた頃には、今のレベルの魔道具なんてものはなかったからな。こんなものしか作れなかったんだ。今なら魔石でランプぐらいは付けれるんだがな。」

 「時代って事か・・・・・・」

 「勢力の技術は他に流す事はほとんど無かったからな。発展も遅かったんだよ。俺らの勢力は、進んで自分から攻めて行く勢力じゃなかったしな。」

 技術向上に関して効率的なのは、分野を分けて協力させる事というのは、当然で、一人で全ての分野を研究すればその速度は明らかに低下する。

 だから、多くの人材を各分野に分けて研究させそれを共有する。それによって同じ研究を他の人はしなくていいので、より効率的に作業が進む。

 国がいくつもの勢力に分かれていたのであれば、技術も共有出来ていなくて当然だ。その分、発展も遅くなる事は間違いない。

 同盟を組んだ後の技術発展は、おそらく眼を見張るものだったのではないだろうか。

 案外、今の国の様になったのは、そう昔の事ではないのかもしれない。

 先に進むレンジの後をついて行きながら周りをよく見るとトンネルは、いくつも蟻の巣の様にいくつも通路が分かれており、逸れたら遭難しそうなほどだ。

 時折、曲がったり、降りたり、登ったりと立体的な迷路の様で、もうすでに来た道を辿って帰れる気がしない。

 地面の中にあるため、景色もそれほど変わらない事もあって心理的にも移動が辛くなってくる。

 そんな薄暗いトンネルを数十分歩くと奥の方から光が漏れていた。どうやら、ひとまずトンネルは終わりの様である。

 そのまま近づくと少し開けた場所に出た。上を見上げると森の中でも一際、背の高い樹木が生えていて、その部分には、ツリーハウスが作られていた。

 木には縄ばしごが掛けられていて見張り台として使用していた様である。

 周囲を見渡して見るとそこは、廃村であった。いくつもある木製の建物は、その大部分が崩れ住める様なものではなくなっており、畑だったと思われる場所も雑草が生い茂り、周りを囲む木の柵よりも背が高くなっている。

 「ここが、サツキ達と暮らした拠点だ。まあ、戦闘ではここも使ったからな。ほとんどボロボロでもう使えん。」

 たしかにもう一度ここで暮らすとなれば、修理するよりも家を丸ごと立て直した方が早そうだ。

 「それで、サツキって子が封印されてるのは、どこなんだ?」

 「いや、それはまだ少し離れた場所だ。普通に行ければ、もう数十分で行けるはずだ。・・・・・・だけど、どうやらそう上手くはさせてくれないみたいだな。」

 レンジは、神妙な表情を浮かべて遠くをみる。俺もその視線の先を追うが木々に囲まれているせいで一切、見えない。

 「この匂い。そうか、流石に狐月にはバレたってことか・・・・・・それにしても、当主本人が来てるとはな・・・・・・」

 「当主? もしかして、誰かいるのか?」

 「ああ、狐月の当主、ムゲツ。それから、もう一つの匂い・・・・・・ムゲツがいるならあいつもここに居るのか・・・・・・」

 ブツブツと呟く言葉を聞きながら自分の中で予想する。狐月が来ているという事は、まさにサツキさんを封印した当事者がこの場所にいるという事だ。

 目的について気づかれていた。という事で間違いないだろう。つまり、簡単だった目的は随分と難易度が高くなってしまったという事だ。 
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