咲かない桜

御伽 白

文字の大きさ
333 / 352
4章

Part 330『どうですか?』

しおりを挟む
 暖かい場所で柔らかな枕に頭を乗せて眠っている。

 柔らかな枕は、とてもいい匂いがしてずっとこのまま眠っていたいと思うほどだった。

 頭を優しく誰かが撫でる。ゆっくり
と優しく少し遊ぶ様に撫でる。

 それがくすぐったくもあり、どこか懐かしくもあって幸せを感じていた。

 まだ眠っていて良いですよ。と言われている感覚。

 その誘惑に身を委ねて俺は眠った。

 目を覚ましたのは、あの一件から3日が経った頃だった。

 目を開くと目の前にサクヤの顔があった。

 どうやら、柔らかい枕だと思っていたのはサクヤの膝だったらしい。

 「ふふ、おはようございます。日向さん。お寝坊さんですね。」

 「・・・・・・んー」

 「あれ? 日向さん? まだ、お休みですか?」

 「・・・・・・なんか、体がな。怠い。」

 ゆっくりと体を起こして固まった体をほぐす。

 「まあ、色々ありましたしね。随分
無茶をしたみたいですね。日向さん、あのままだと、頭がおかしくなってたかもしれませんよ。」

 さらっと恐ろしいことを言うサクヤになんの言葉も返せなかった。

 「サクヤが治してくれたのか?」

 「はい。今の私は大体のことはなんでも出来ますからね。日向さんを瞬間移動させて、それからこの辺りの温度を春と同じぐらいになる様に結界を張って、あとは、日向さんのお世話をしてましたね。」

 「そりゃあ、迷惑をかけたな。」

 「いえ、こんなにずっと一緒に居れるなんて幸せです。」

 サクヤは微笑みながらそう答えた。自分の意識がなかったのでなんとも言えない気持ちになる。

 「それで・・・・・・あの、どうですか?」

 サクヤは少し照れた様子で俺にそう尋ねた。

 質問の意図が分からず少し考えていたが、サクヤの見た目が変わっていることについてだと理解した。

 「ああ、綺麗だ。今まで見た女性の中で一番綺麗だよ。」

 贔屓目なしにそう思えた。

 黒かった髪は桜色に変わり輝いている。

 サクヤの表情にも自信があり、綺麗というよりも神々しさを感じるほどだ。

 目の前にいるのが自分の恋人だと言うのを自慢して回りたいほどに綺麗だ。

 それに背中に立つサクヤの桜もこの世のものとは思えない美しさだった。

 「ずっと昔から咲いたらどれだけ綺麗なんだろうと思ってたんだ。」

 大きな桜の木。

 ずっと咲かずにいるせいで、忘れられた木。

 それが今目の前で力強く咲き誇っている。

 数えきれないほどに咲いた桜の花は、その一枚一枚が輝いていて見える。

 今後の人生でこれ以上に美しいものを俺は見ることはないだろう。

 世界的な芸術家の描く絵画も見劣りするほどに美しい。

 呪術でもかけられた様に桜に視線が釘付けになる。

 「期待に応えられましたか?」

 サクヤは誇らしげに尋ねる。

 「ああ、期待以上だよ。サクヤ。本当に綺麗だ。」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

処理中です...