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序章
Part 8 『小さな少女と少しの勝負』
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山に行くとあいも変わらず、花見客でいっぱいだった。桜も満開、空も快晴、実に花見日和だろう。
「変なものが見えなければだが・・・」
道中では、空中を泳ぐ魚や羽の生えたカエルなんかもいて、本当に異世界にきてしまったような感覚に陥っていた。
毎回、驚きで声をあげそうになるのをギリギリで堪えてここまで来たのだ。だが、予想外だったのが、妖怪達は、特に俺達人間に対して敵対しているわけではないらしく、非常に温厚なものばかりだった。命の危険が訪れ流ような事態にはなっていない。そのことが何より救いだった。
今も桜の木の周りには、人間と同じように酒を楽しむ妖怪達がいる。黒猫のような胴体が半分骨の猫に腕が4本ある一つ目の妖怪、顔が二つある犬、本当にファンタジーだ・・・
他の桜の近くにもピンク色の髪の女の子が宴会の中に紛れ込んでいたりと妖怪達もどうやらお祭りらしい。
「人間に見間違うのもいるんだよな・・・」あのピンク色の髪の女の子は、髪の色が染めたにしては綺麗すぎる髪をしているので間違いなく妖怪やその類のものだろうけど、髪の色以外は、人間と変わらない。
そんな風に少女を眺めていると少女と目があった。まるで珍しいものを見るようにこちらをじっと見つめている。
少女の時間が固まったようだった。ピクリとも動かない。その様子に俺も目をそらすことが出来ない。
あたりの喧騒が遠く感じる。動いたら何か大変なことが起こるのではと無意識に固まっていた。
そして、数秒後、俺の方向めがけて少女が突っ込んで来た。
「え!? 私!? 見える!? すごい!」
とんでもなくテンションが上がっているようで俺の周りをクルクル回る。その姿は、本当に子供のようだ。
害意はないが騒がしい。親戚の家に遊びに行った時に出会った親戚の子供もこんな感じだったな。
「なんで? なんで!? 見えるの? 」
「なんで見えるのかな・・・」
むしろこっちが聞きたいぐらいだ。少女は、「へんなのー」とケラケラと笑う。
「君はここで何してるの?」
「何してる? 話してる。」
「いや、そう言うことじゃないんだけど」
「ん?」と心底分かってなさそうな顔をして彼女はこちらを見ている。子供の相手は、苦手だ・・・。
「あそぼ! あそぼ?」
「ごめんな。今日は用事があって遊べないんだ。また、今度な」
少女の頭を撫でると「えー」と不満そうな声を上げる。本当に普通の女の子と同じようだった。
「私は、用事ないから大丈夫」
「何が大丈夫なんだ?」
だめだ。意思疎通ができてない。単純に頭が回ってないだけなのか、それとも普通に頭が弱いだけなのか・・・
「じゃあ、じゃあ、勝負! 勝負してくれたら諦める。」
「ん? 勝負? どんな」
「えっとね・・・どっちが高いところまで飛べるか勝負とか」
「残念ながら人間に飛行能力はない。」
やはりその辺りは、人間と妖怪との認識の差があるなと思う。それにこの子は、精神的にまだ幼いみたいだし仕方ないのかもしれない。
「んーじゃあ、競争! あの木までどっちが早くいけるか勝負」
「まあ、それぐらいなら・・・」
ただ、体格差を考えるとアンフェアな気もする。流石に少女よりも体格的にかなり大きいので正直、勝負にならないのではとも思ったが本人が言い出したのでそれに付き合ってあげることにした。
「じゃあ、よーい、どん!」
掛け声とほぼ同時、少女は、姿を消した。ものすごい速さで移動したのか、それとも瞬間移動したのか、俺の目では捉えることができなかった。少女は一瞬で100m先の木の前にいた。
遠くで「勝ったー!」とはしゃいでいる少女が見える。
「規格外すぎるだろ・・・妖怪・・・」
人間と妖怪との認識の差を理解していないのは、俺もどうやら同じだったらしい・・・
少女に近づくと「私の勝ち!」とニコニコと自慢げに俺に言ってくるのでちょっとした腹いせに髪の毛をぐじゃぐじゃにしてやる。
「ひゃー」と楽しそうに騒ぎながら少女は、俺から逃げる。
「また遊ぼうね! お兄さん!」
少女はそう言うと元いた場所に戻りこちらを向いて手を振ってくる。それに手を振って返すと少女の近くにいる男の人が「なんだ?」と言う表情をしていた。
「あ、そうだ。見えないんだった。」
ただ、今は宴会で気にする人もいないだろう。だから、大丈夫だろう。
思わぬところで時間を食ってしまった。急がないと彼女を待たせてしまう。
待つのが得意とは言っていたが、待つのが好きな訳ではないだろうし・・・
少し、歩く速度を少し上げて僕は山を登った。
「変なものが見えなければだが・・・」
道中では、空中を泳ぐ魚や羽の生えたカエルなんかもいて、本当に異世界にきてしまったような感覚に陥っていた。
毎回、驚きで声をあげそうになるのをギリギリで堪えてここまで来たのだ。だが、予想外だったのが、妖怪達は、特に俺達人間に対して敵対しているわけではないらしく、非常に温厚なものばかりだった。命の危険が訪れ流ような事態にはなっていない。そのことが何より救いだった。
今も桜の木の周りには、人間と同じように酒を楽しむ妖怪達がいる。黒猫のような胴体が半分骨の猫に腕が4本ある一つ目の妖怪、顔が二つある犬、本当にファンタジーだ・・・
他の桜の近くにもピンク色の髪の女の子が宴会の中に紛れ込んでいたりと妖怪達もどうやらお祭りらしい。
「人間に見間違うのもいるんだよな・・・」あのピンク色の髪の女の子は、髪の色が染めたにしては綺麗すぎる髪をしているので間違いなく妖怪やその類のものだろうけど、髪の色以外は、人間と変わらない。
そんな風に少女を眺めていると少女と目があった。まるで珍しいものを見るようにこちらをじっと見つめている。
少女の時間が固まったようだった。ピクリとも動かない。その様子に俺も目をそらすことが出来ない。
あたりの喧騒が遠く感じる。動いたら何か大変なことが起こるのではと無意識に固まっていた。
そして、数秒後、俺の方向めがけて少女が突っ込んで来た。
「え!? 私!? 見える!? すごい!」
とんでもなくテンションが上がっているようで俺の周りをクルクル回る。その姿は、本当に子供のようだ。
害意はないが騒がしい。親戚の家に遊びに行った時に出会った親戚の子供もこんな感じだったな。
「なんで? なんで!? 見えるの? 」
「なんで見えるのかな・・・」
むしろこっちが聞きたいぐらいだ。少女は、「へんなのー」とケラケラと笑う。
「君はここで何してるの?」
「何してる? 話してる。」
「いや、そう言うことじゃないんだけど」
「ん?」と心底分かってなさそうな顔をして彼女はこちらを見ている。子供の相手は、苦手だ・・・。
「あそぼ! あそぼ?」
「ごめんな。今日は用事があって遊べないんだ。また、今度な」
少女の頭を撫でると「えー」と不満そうな声を上げる。本当に普通の女の子と同じようだった。
「私は、用事ないから大丈夫」
「何が大丈夫なんだ?」
だめだ。意思疎通ができてない。単純に頭が回ってないだけなのか、それとも普通に頭が弱いだけなのか・・・
「じゃあ、じゃあ、勝負! 勝負してくれたら諦める。」
「ん? 勝負? どんな」
「えっとね・・・どっちが高いところまで飛べるか勝負とか」
「残念ながら人間に飛行能力はない。」
やはりその辺りは、人間と妖怪との認識の差があるなと思う。それにこの子は、精神的にまだ幼いみたいだし仕方ないのかもしれない。
「んーじゃあ、競争! あの木までどっちが早くいけるか勝負」
「まあ、それぐらいなら・・・」
ただ、体格差を考えるとアンフェアな気もする。流石に少女よりも体格的にかなり大きいので正直、勝負にならないのではとも思ったが本人が言い出したのでそれに付き合ってあげることにした。
「じゃあ、よーい、どん!」
掛け声とほぼ同時、少女は、姿を消した。ものすごい速さで移動したのか、それとも瞬間移動したのか、俺の目では捉えることができなかった。少女は一瞬で100m先の木の前にいた。
遠くで「勝ったー!」とはしゃいでいる少女が見える。
「規格外すぎるだろ・・・妖怪・・・」
人間と妖怪との認識の差を理解していないのは、俺もどうやら同じだったらしい・・・
少女に近づくと「私の勝ち!」とニコニコと自慢げに俺に言ってくるのでちょっとした腹いせに髪の毛をぐじゃぐじゃにしてやる。
「ひゃー」と楽しそうに騒ぎながら少女は、俺から逃げる。
「また遊ぼうね! お兄さん!」
少女はそう言うと元いた場所に戻りこちらを向いて手を振ってくる。それに手を振って返すと少女の近くにいる男の人が「なんだ?」と言う表情をしていた。
「あ、そうだ。見えないんだった。」
ただ、今は宴会で気にする人もいないだろう。だから、大丈夫だろう。
思わぬところで時間を食ってしまった。急がないと彼女を待たせてしまう。
待つのが得意とは言っていたが、待つのが好きな訳ではないだろうし・・・
少し、歩く速度を少し上げて僕は山を登った。
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