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序章
Prat 14 『クロは微笑ましく思う』
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魔女の家を出るともう夕暮れ時で随分と暗くなってきていた。結構、話し込んでしまったようだった。
「峰さん、今日は本当にありがとうございます。」
「いや、気にしないでくれ。今後もリューの仕事の手伝いをしなきゃいけないわけだし、その時は一緒に頑張ろうな。」
「はい! 私も全力で頑張ります。」
意気込んだ表情を浮かべ、「それじゃあ、帰りましょうか。」とサクヤは歩きはじめる。
「そうだな。」と答えてサクヤの後に続いた。
駅には、人間の他にも妖怪達がちらほらと見える。そのほとんどが楽しそうに人間のことを観察している。
昼間は、数える程だったのにやはり夜の方が数が増えるのだろうか。
「妖怪達の数が増えてきたな。」
「そうですね。夜は、視界が悪くなりますから、私達も干渉しやすいですしね。」
「なるほど」
視線を集めると触りにくくなるのなら夜の方が活動的になるのか。それなら妖怪が暗いところに出やすいという迷信もあながち間違いじゃないのかもしれない。
「おや、お二人さん、お帰りですかい?」
サクヤと話していると目の前に今朝出会った黒猫が声をかけてきた。相変わらず腹から尻尾まで骨だった。
「ああ、今さっき魔女のところに行ってきたんでな。」
「そのようですなぁ。お二人の様子を見るにうまくいったんですかい?」
「なんでも知ってるんじゃないのか?」
「魔女さんの家は、犬がいるんでね。怖くて近寄れたもんじゃない。なので、うちらはあの辺りのことは情報がないんですわ。」
「忌々しい」と憎まれ口を叩く。普段愛想がいいのに、その表情はとても意外に思えた。どうやら、リドと黒猫達は、相性が悪いらしい。
「黒猫・・・っていうか、あんた名前はあるのか?」
そういえば、自己紹介を聞いていなかった。俺が名前を尋ねると「ああ、そう言えば、日向はんに名前を名乗ってへんかったわ。」と思い出したように呟く。
「まあ、名乗る言うてもそのままやねんけど。クロと名乗っとります。」
「クロか、知ってると思うが、俺は峰 日向だ。」
「よろしゅう。」
「はい! 私はサクヤです!」
二人で話しているとサクヤが手を上げて会話に入ってきた。
「知ってる。急にどうした・・・?」
「知っとりますよ。サクヤはん」
「いや、なんか、会話に入れてもらいたいなと思って・・・」
少し照れたようにサクヤは呟く。どうやら、寂しかったらしい。まあ、三人いて二人で喋ってると寂しさを感じるのは分からないでもない感覚だ。
ただ・・・
「お前、アピール下手くそだなぁ」
露骨すぎて不自然だ。思わず率直な感想が漏れる。
「し、仕方ないじゃないですか、基本的に複数の方とおしゃべりすることないんですから!」
拗ねたようにサクヤは、頬を小さく膨らませながら怒る。
「まあまあ、日向はん、大人気ないこと言わんと、可愛らしいやない」
「まあな。」
「もう、良いですよ! 私、先に帰ってますからね!」
そう言うとサクヤは、走り去ってしまった。さすがにからかいすぎたかもしれない。
「ほんまに楽しそうでなによりやわぁ、日向はんのおかげやね。」
「昨日会った関係だけど?」
「年月なんてのは、うちらみたいに長い時間を生きるもんには、瑣末なもんやからねぇ。それに、1日の出会いが気持ち変える事もあるんですよ。」
「そういうもんかな。」
「さて、そろそろ、向こうでこっちの様子見てるサクヤはん追っかけたってや。あんまり、虐めたあかんよ?」
「別に虐めてるわけじゃない・・・」
「にゃはは、さて、うちは、これで、ほな、また」
骨の尻尾をスッと立てながらクロは、街に消えていった。俺は、それを見送るとサクヤの元に急ぐことにした。
「峰さん、今日は本当にありがとうございます。」
「いや、気にしないでくれ。今後もリューの仕事の手伝いをしなきゃいけないわけだし、その時は一緒に頑張ろうな。」
「はい! 私も全力で頑張ります。」
意気込んだ表情を浮かべ、「それじゃあ、帰りましょうか。」とサクヤは歩きはじめる。
「そうだな。」と答えてサクヤの後に続いた。
駅には、人間の他にも妖怪達がちらほらと見える。そのほとんどが楽しそうに人間のことを観察している。
昼間は、数える程だったのにやはり夜の方が数が増えるのだろうか。
「妖怪達の数が増えてきたな。」
「そうですね。夜は、視界が悪くなりますから、私達も干渉しやすいですしね。」
「なるほど」
視線を集めると触りにくくなるのなら夜の方が活動的になるのか。それなら妖怪が暗いところに出やすいという迷信もあながち間違いじゃないのかもしれない。
「おや、お二人さん、お帰りですかい?」
サクヤと話していると目の前に今朝出会った黒猫が声をかけてきた。相変わらず腹から尻尾まで骨だった。
「ああ、今さっき魔女のところに行ってきたんでな。」
「そのようですなぁ。お二人の様子を見るにうまくいったんですかい?」
「なんでも知ってるんじゃないのか?」
「魔女さんの家は、犬がいるんでね。怖くて近寄れたもんじゃない。なので、うちらはあの辺りのことは情報がないんですわ。」
「忌々しい」と憎まれ口を叩く。普段愛想がいいのに、その表情はとても意外に思えた。どうやら、リドと黒猫達は、相性が悪いらしい。
「黒猫・・・っていうか、あんた名前はあるのか?」
そういえば、自己紹介を聞いていなかった。俺が名前を尋ねると「ああ、そう言えば、日向はんに名前を名乗ってへんかったわ。」と思い出したように呟く。
「まあ、名乗る言うてもそのままやねんけど。クロと名乗っとります。」
「クロか、知ってると思うが、俺は峰 日向だ。」
「よろしゅう。」
「はい! 私はサクヤです!」
二人で話しているとサクヤが手を上げて会話に入ってきた。
「知ってる。急にどうした・・・?」
「知っとりますよ。サクヤはん」
「いや、なんか、会話に入れてもらいたいなと思って・・・」
少し照れたようにサクヤは呟く。どうやら、寂しかったらしい。まあ、三人いて二人で喋ってると寂しさを感じるのは分からないでもない感覚だ。
ただ・・・
「お前、アピール下手くそだなぁ」
露骨すぎて不自然だ。思わず率直な感想が漏れる。
「し、仕方ないじゃないですか、基本的に複数の方とおしゃべりすることないんですから!」
拗ねたようにサクヤは、頬を小さく膨らませながら怒る。
「まあまあ、日向はん、大人気ないこと言わんと、可愛らしいやない」
「まあな。」
「もう、良いですよ! 私、先に帰ってますからね!」
そう言うとサクヤは、走り去ってしまった。さすがにからかいすぎたかもしれない。
「ほんまに楽しそうでなによりやわぁ、日向はんのおかげやね。」
「昨日会った関係だけど?」
「年月なんてのは、うちらみたいに長い時間を生きるもんには、瑣末なもんやからねぇ。それに、1日の出会いが気持ち変える事もあるんですよ。」
「そういうもんかな。」
「さて、そろそろ、向こうでこっちの様子見てるサクヤはん追っかけたってや。あんまり、虐めたあかんよ?」
「別に虐めてるわけじゃない・・・」
「にゃはは、さて、うちは、これで、ほな、また」
骨の尻尾をスッと立てながらクロは、街に消えていった。俺は、それを見送るとサクヤの元に急ぐことにした。
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