22 / 352
1章
Part 22 『絶望した彼女を見れない』
しおりを挟む
俺は、屋敷の中にある一室を貸してもらうことになっていた。その一室は、俺が想像するよりも随分と大きな部屋だった。正直、二、三人が一緒に生活しても問題ない程度には、広い部屋だ。
「はぁ、広いお部屋ですねぇ」
「客間っすね! 基本的に使ってない部屋なんで好きに使ってくれていいっすよ!」
コンに案内されてここまで来たのだが、中に入ってみると想像していた以上にこの屋敷が大きいことに気付かされた。平屋である事を差し引いても大きい。こんなにも必要なのだろうかと思うほどだ。
コンにその事について、きいてみると「昔は、この部屋いっぱいに刀匠が住んでたらしいんっすけど、今じゃ俺一人だけになっちゃったすね。」と言っていた。
「今の時代じゃ、刀は芸術品ぐらいの価値しかないっすからね。弟子入りする奴なんて少ないんすよ。俺達みたいに人間にも見える類の妖怪でももっと華のある仕事に就くっすよ。」
たしかに人間にここまでそっくりに変身出来るのなら、わざわざ、この仕事に就く理由はない。もっと、色々な仕事がある。
「それでも、コンは刀鍛冶になろうと思ったんだな。」
「まだまだ、半人前っすよ。師匠には全然届く気がしないっす。」
「そんなに凄い人なんですね。」
サクヤがそういうと、勢いよく「凄いもんじゃないっすよ。実際に見ればわかるっす。一回槌を振るうだけで、俺達とは別次元にいる人なんだなって」とコンが答える。その言葉には、ウチガネへの尊敬の念が感じられた。
ここまで、言われるなんて一体どんな人なのだろうか・・・
「まあ、普通の時は、ケモミミ、ケモミミ言ってるだけのおじさんっすけどね。」
仕事以外は、どうやらあんまり尊敬はされていないらしい。
「そう言えば、真冬さんは、なんでここに? 刀鍛冶って訳ではないんだよね?」
「真冬さんっすか? 簡単に言うと師匠の追っかけっす。」
「追っかけ?」
「アイドルとかがライブするときにずっと現れるファンいるじゃないっすか。あんな感じっす。」
たしかによく見かけるけれど、いまいち、釈然としない。
「結婚してるって事?」
「いや、してないっすよ。師匠がケモミミの女の子以外で結婚するわけないじゃないっすか」
笑いながらそんな事をコンは言う。だが、だとしたら余計に疑問なのだが、なぜ彼女がここにいるのだろう。
結婚も付き合っている訳でもないのに同居しているのは、違和感がある。
「俺も真冬さんもざっくり言うとただの居候っすよ。まあ、俺は弟子っすけど、真冬さんは、家事全般をやってくれてるっす。美味いっすよ。真冬さんの料理は~」
「そうなんですか!? 楽しみです!」
サクヤはすっかりご飯を食べることにハマってしまったらしい。植物系の妖精には今までなかった経験だろうから仕方ない事ではあるが・・・
しかも、サクヤは、本当に美味しそうにご飯を食べるので、食べさせているこっちも嬉しくなる。そのせいか、ついつい彼女にご飯をあげたくなってしまう。
だが、サクヤに伝えなければいけない事があるのだ。
「サクヤ」俺がそう呼びかけると嬉しそうに「はい! 何ですか? 峰さん、私、楽しみです!」と言う彼女に非常に罪悪感が湧き上がる。
しかし、彼女のためにも言わなければならない。
「もうすぐ、ここの終電だ。」
「え・・・・・・?」
彼女の瞳から光が消えた。サクヤのこんなに絶望した表情を浮かべるのを俺は初めて見たのだった
「はぁ、広いお部屋ですねぇ」
「客間っすね! 基本的に使ってない部屋なんで好きに使ってくれていいっすよ!」
コンに案内されてここまで来たのだが、中に入ってみると想像していた以上にこの屋敷が大きいことに気付かされた。平屋である事を差し引いても大きい。こんなにも必要なのだろうかと思うほどだ。
コンにその事について、きいてみると「昔は、この部屋いっぱいに刀匠が住んでたらしいんっすけど、今じゃ俺一人だけになっちゃったすね。」と言っていた。
「今の時代じゃ、刀は芸術品ぐらいの価値しかないっすからね。弟子入りする奴なんて少ないんすよ。俺達みたいに人間にも見える類の妖怪でももっと華のある仕事に就くっすよ。」
たしかに人間にここまでそっくりに変身出来るのなら、わざわざ、この仕事に就く理由はない。もっと、色々な仕事がある。
「それでも、コンは刀鍛冶になろうと思ったんだな。」
「まだまだ、半人前っすよ。師匠には全然届く気がしないっす。」
「そんなに凄い人なんですね。」
サクヤがそういうと、勢いよく「凄いもんじゃないっすよ。実際に見ればわかるっす。一回槌を振るうだけで、俺達とは別次元にいる人なんだなって」とコンが答える。その言葉には、ウチガネへの尊敬の念が感じられた。
ここまで、言われるなんて一体どんな人なのだろうか・・・
「まあ、普通の時は、ケモミミ、ケモミミ言ってるだけのおじさんっすけどね。」
仕事以外は、どうやらあんまり尊敬はされていないらしい。
「そう言えば、真冬さんは、なんでここに? 刀鍛冶って訳ではないんだよね?」
「真冬さんっすか? 簡単に言うと師匠の追っかけっす。」
「追っかけ?」
「アイドルとかがライブするときにずっと現れるファンいるじゃないっすか。あんな感じっす。」
たしかによく見かけるけれど、いまいち、釈然としない。
「結婚してるって事?」
「いや、してないっすよ。師匠がケモミミの女の子以外で結婚するわけないじゃないっすか」
笑いながらそんな事をコンは言う。だが、だとしたら余計に疑問なのだが、なぜ彼女がここにいるのだろう。
結婚も付き合っている訳でもないのに同居しているのは、違和感がある。
「俺も真冬さんもざっくり言うとただの居候っすよ。まあ、俺は弟子っすけど、真冬さんは、家事全般をやってくれてるっす。美味いっすよ。真冬さんの料理は~」
「そうなんですか!? 楽しみです!」
サクヤはすっかりご飯を食べることにハマってしまったらしい。植物系の妖精には今までなかった経験だろうから仕方ない事ではあるが・・・
しかも、サクヤは、本当に美味しそうにご飯を食べるので、食べさせているこっちも嬉しくなる。そのせいか、ついつい彼女にご飯をあげたくなってしまう。
だが、サクヤに伝えなければいけない事があるのだ。
「サクヤ」俺がそう呼びかけると嬉しそうに「はい! 何ですか? 峰さん、私、楽しみです!」と言う彼女に非常に罪悪感が湧き上がる。
しかし、彼女のためにも言わなければならない。
「もうすぐ、ここの終電だ。」
「え・・・・・・?」
彼女の瞳から光が消えた。サクヤのこんなに絶望した表情を浮かべるのを俺は初めて見たのだった
0
あなたにおすすめの小説
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる