咲かない桜

御伽 白

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1章

Part 22 『絶望した彼女を見れない』

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 俺は、屋敷の中にある一室を貸してもらうことになっていた。その一室は、俺が想像するよりも随分と大きな部屋だった。正直、二、三人が一緒に生活しても問題ない程度には、広い部屋だ。

 「はぁ、広いお部屋ですねぇ」

 「客間っすね! 基本的に使ってない部屋なんで好きに使ってくれていいっすよ!」

 コンに案内されてここまで来たのだが、中に入ってみると想像していた以上にこの屋敷が大きいことに気付かされた。平屋である事を差し引いても大きい。こんなにも必要なのだろうかと思うほどだ。

 コンにその事について、きいてみると「昔は、この部屋いっぱいに刀匠が住んでたらしいんっすけど、今じゃ俺一人だけになっちゃったすね。」と言っていた。

 「今の時代じゃ、刀は芸術品ぐらいの価値しかないっすからね。弟子入りする奴なんて少ないんすよ。俺達みたいに人間にも見える類の妖怪でももっと華のある仕事に就くっすよ。」

 たしかに人間にここまでそっくりに変身出来るのなら、わざわざ、この仕事に就く理由はない。もっと、色々な仕事がある。

 「それでも、コンは刀鍛冶になろうと思ったんだな。」

 「まだまだ、半人前っすよ。師匠には全然届く気がしないっす。」

 「そんなに凄い人なんですね。」

 サクヤがそういうと、勢いよく「凄いもんじゃないっすよ。実際に見ればわかるっす。一回槌を振るうだけで、俺達とは別次元にいる人なんだなって」とコンが答える。その言葉には、ウチガネへの尊敬の念が感じられた。

 ここまで、言われるなんて一体どんな人なのだろうか・・・

 「まあ、普通の時は、ケモミミ、ケモミミ言ってるだけのおじさんっすけどね。」

 仕事以外は、どうやらあんまり尊敬はされていないらしい。

 「そう言えば、真冬さんは、なんでここに? 刀鍛冶って訳ではないんだよね?」

 「真冬さんっすか? 簡単に言うと師匠の追っかけっす。」

 「追っかけ?」

 「アイドルとかがライブするときにずっと現れるファンいるじゃないっすか。あんな感じっす。」

 たしかによく見かけるけれど、いまいち、釈然としない。

 「結婚してるって事?」

 「いや、してないっすよ。師匠がケモミミの女の子以外で結婚するわけないじゃないっすか」

 笑いながらそんな事をコンは言う。だが、だとしたら余計に疑問なのだが、なぜ彼女がここにいるのだろう。

 結婚も付き合っている訳でもないのに同居しているのは、違和感がある。

 「俺も真冬さんもざっくり言うとただの居候っすよ。まあ、俺は弟子っすけど、真冬さんは、家事全般をやってくれてるっす。美味いっすよ。真冬さんの料理は~」

 「そうなんですか!? 楽しみです!」

 サクヤはすっかりご飯を食べることにハマってしまったらしい。植物系の妖精には今までなかった経験だろうから仕方ない事ではあるが・・・

 しかも、サクヤは、本当に美味しそうにご飯を食べるので、食べさせているこっちも嬉しくなる。そのせいか、ついつい彼女にご飯をあげたくなってしまう。

 だが、サクヤに伝えなければいけない事があるのだ。

 「サクヤ」俺がそう呼びかけると嬉しそうに「はい! 何ですか? 峰さん、私、楽しみです!」と言う彼女に非常に罪悪感が湧き上がる。

 しかし、彼女のためにも言わなければならない。

 「もうすぐ、ここの終電だ。」

 「え・・・・・・?」

 彼女の瞳から光が消えた。サクヤのこんなに絶望した表情を浮かべるのを俺は初めて見たのだった
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