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1章
Part 40 『別れなくして出会いなし』
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朝、とんでもない空腹で俺は目を覚ました。昨日は、食事もとらずに眠ってしまったのだった。
一晩眠ると気持ちの整理がある程度ついて、俺は落ち着いていた。確かに寂しさはあるが、しっかりと受け入れることができたと思う。
もしかしたら、他の二人は、まだ、立ち直れていないかもしれないが、その時は、ちょっとでも力になれるようにしようと、台所に向かうといつものように真冬さんが料理を作っていた。
「おはようございます。峰さん」
俺の気配にすぐに気づいて挨拶をしてくれる。その目は少し涙で腫れていた。
「おはようございます。真冬さん・・・・・・大丈夫ですか?」
「はい。昨日、十分に泣けましたから・・・。 それに、悲しいだけの別れじゃありませんでしたから。」
ウチガネさんは、最期の最後で真冬さんに想いを伝えて去っていった。確かに悲しいだけの別れではなかった。
「だったら、残された私に出来る事は、悲しみ続ける事ではなく歩き続ける事だと思います。だって、あれだけ前に進んで行くことを望んだ人でしたから、いつまでも引きずっていたら怒られてしまいます。」
「それは・・・そうですね。」
さらに良いものを作ろうと進み続けたあの人ならば確かにその通りだろう。動かずじっとしているぐらいなら、どこか分からなくても進むような人だ。
「準備手伝ってもらえますか? 峰さん」
「はい。わかりました。」
俺は、ここ数日と同じように準備を手伝う。もう慣れたものだ。皿の枚数を間違えそうにはなったけれど・・・
しばらくしてもコンはやって来なかった。むしろ、コンが来る前にサクヤが来て、コンの分の食事を冷めてしまうからといってサクヤは朝食をもらっていた。
サクヤもどうやらあの場にいたようだったが、工房の中には入らずに外で様子を伺っていたらしい。
「今回に関しては、私は、本当に何も出来ませんでしたから・・・」
申し訳なさそうにサクヤは俯く。そんな事はない、多少照れ臭かったが、慰めてもらったことも忘れていない。
だけど、確かに今回の件に関してはサクヤには相性の悪い仕事だったと思う。終電の関係で半日ほどで帰れなければいけない彼女には、泊まり込みで連日するような仕事を振るのは本来、荷が重いのだ。だからこそ、リューは、俺達を二人で一緒に行動するように言っていた節がある。
「大丈夫だよ。二人でやるって話だっただろ。サクヤにできない部分は俺がするよ。だから、俺にできないことをサクヤがやってくれれば良いんだよ。」
「・・・・・・そうですね。・・・頑張ります!」
少し、納得は言っていないようだったが、なんとか挽回しようと意気込んでサクヤは頷いた。
コンが来たのは、昼になった頃だった。バタバタと慌てた様子で俺たちの方に走って来る。
「ね、寝過ごしたっす! すみませんっす!」
何度も凄い勢いで頭を下げるコンの右手には、完成されたと思しき日本刀が握られていた。きちんと柄も付けられ鍔もあり、黒い鞘に収まっている。
昨日、夜遅くまで仕上げていたようである。それでも、恐ろしい仕事の早さだとは思うのだが・・・
これは寝過ごしたのも仕方ない。あの刃だけの状態から研いで鍔や柄なんかも用意したのだろうか。
「師匠が採寸に全く狂いなく作ってくれたおかげで事前に準備しておいた分が使えたんすよ。」
俺の疑問を察したのか、そんなことを説明してくれる。事前にある程度形の予想に当たりをつけて鞘を作っていたのか・・・あの人は、最期の準備に抜け目がないなと思いながらコンから刀を貸してもらう。
日本刀は、想像していた以上に重量があって、これを軽々と振るうのは中々難しいと思った。
「抜いても?」
「大丈夫っす。ただ、絶対、刃には触っちゃダメっすよ。切れ味が良すぎて軽く当たっただけでも大怪我になるっすから・・・」
そう言われると抜くのが怖くなる。ゆっくりとおそるおそる刀を抜くと美しい刀身が姿をあらわす。波紋の入った刃は、超一流の芸術品といっても良いほどに冷たい美しさを放っていた。
斬るという事に特化させたこの刀は、何でも斬ることができるであろうと確信させる。それほどにこの刀は完成されていた。
「本当に完成させたんだな・・・ウチガネさん。」
これで彼の最期の作品は、確かに完成されたのだった。
流石に随分と長居してしまったので今日中に帰ろうとサクヤと一緒に帰る事にした。
「別に明日でも良いんですよ」と真冬さんは言ってくれたが、流石にそういう訳にもいかない。
学校ももうじき始まるのでそろそろ帰って準備をしておかなければならない。
それにずっと家にいないと両親が心配するだろう。一応、泊りになるとは伝えていたのだが、そうは言ってもだ。
「また来てくださいっす。」
「分かった。また来るよ。頑張ってな。コン」
俺とコンは軽く握手をした。コンはこのままここに残って技術を磨くそうだ。真冬さんもとりあえず、当分はここを離れるつもりはないのだという。離れるのが惜しい程にこの場所に長くいてしまいましたからね・・・それに好きな人の家ですからという彼女の艶のある表情に少しドキドキしながらも俺達は二人にお礼を言って帰路につく。
そして、俺の随分と長いお使いは終わったのだった。
一晩眠ると気持ちの整理がある程度ついて、俺は落ち着いていた。確かに寂しさはあるが、しっかりと受け入れることができたと思う。
もしかしたら、他の二人は、まだ、立ち直れていないかもしれないが、その時は、ちょっとでも力になれるようにしようと、台所に向かうといつものように真冬さんが料理を作っていた。
「おはようございます。峰さん」
俺の気配にすぐに気づいて挨拶をしてくれる。その目は少し涙で腫れていた。
「おはようございます。真冬さん・・・・・・大丈夫ですか?」
「はい。昨日、十分に泣けましたから・・・。 それに、悲しいだけの別れじゃありませんでしたから。」
ウチガネさんは、最期の最後で真冬さんに想いを伝えて去っていった。確かに悲しいだけの別れではなかった。
「だったら、残された私に出来る事は、悲しみ続ける事ではなく歩き続ける事だと思います。だって、あれだけ前に進んで行くことを望んだ人でしたから、いつまでも引きずっていたら怒られてしまいます。」
「それは・・・そうですね。」
さらに良いものを作ろうと進み続けたあの人ならば確かにその通りだろう。動かずじっとしているぐらいなら、どこか分からなくても進むような人だ。
「準備手伝ってもらえますか? 峰さん」
「はい。わかりました。」
俺は、ここ数日と同じように準備を手伝う。もう慣れたものだ。皿の枚数を間違えそうにはなったけれど・・・
しばらくしてもコンはやって来なかった。むしろ、コンが来る前にサクヤが来て、コンの分の食事を冷めてしまうからといってサクヤは朝食をもらっていた。
サクヤもどうやらあの場にいたようだったが、工房の中には入らずに外で様子を伺っていたらしい。
「今回に関しては、私は、本当に何も出来ませんでしたから・・・」
申し訳なさそうにサクヤは俯く。そんな事はない、多少照れ臭かったが、慰めてもらったことも忘れていない。
だけど、確かに今回の件に関してはサクヤには相性の悪い仕事だったと思う。終電の関係で半日ほどで帰れなければいけない彼女には、泊まり込みで連日するような仕事を振るのは本来、荷が重いのだ。だからこそ、リューは、俺達を二人で一緒に行動するように言っていた節がある。
「大丈夫だよ。二人でやるって話だっただろ。サクヤにできない部分は俺がするよ。だから、俺にできないことをサクヤがやってくれれば良いんだよ。」
「・・・・・・そうですね。・・・頑張ります!」
少し、納得は言っていないようだったが、なんとか挽回しようと意気込んでサクヤは頷いた。
コンが来たのは、昼になった頃だった。バタバタと慌てた様子で俺たちの方に走って来る。
「ね、寝過ごしたっす! すみませんっす!」
何度も凄い勢いで頭を下げるコンの右手には、完成されたと思しき日本刀が握られていた。きちんと柄も付けられ鍔もあり、黒い鞘に収まっている。
昨日、夜遅くまで仕上げていたようである。それでも、恐ろしい仕事の早さだとは思うのだが・・・
これは寝過ごしたのも仕方ない。あの刃だけの状態から研いで鍔や柄なんかも用意したのだろうか。
「師匠が採寸に全く狂いなく作ってくれたおかげで事前に準備しておいた分が使えたんすよ。」
俺の疑問を察したのか、そんなことを説明してくれる。事前にある程度形の予想に当たりをつけて鞘を作っていたのか・・・あの人は、最期の準備に抜け目がないなと思いながらコンから刀を貸してもらう。
日本刀は、想像していた以上に重量があって、これを軽々と振るうのは中々難しいと思った。
「抜いても?」
「大丈夫っす。ただ、絶対、刃には触っちゃダメっすよ。切れ味が良すぎて軽く当たっただけでも大怪我になるっすから・・・」
そう言われると抜くのが怖くなる。ゆっくりとおそるおそる刀を抜くと美しい刀身が姿をあらわす。波紋の入った刃は、超一流の芸術品といっても良いほどに冷たい美しさを放っていた。
斬るという事に特化させたこの刀は、何でも斬ることができるであろうと確信させる。それほどにこの刀は完成されていた。
「本当に完成させたんだな・・・ウチガネさん。」
これで彼の最期の作品は、確かに完成されたのだった。
流石に随分と長居してしまったので今日中に帰ろうとサクヤと一緒に帰る事にした。
「別に明日でも良いんですよ」と真冬さんは言ってくれたが、流石にそういう訳にもいかない。
学校ももうじき始まるのでそろそろ帰って準備をしておかなければならない。
それにずっと家にいないと両親が心配するだろう。一応、泊りになるとは伝えていたのだが、そうは言ってもだ。
「また来てくださいっす。」
「分かった。また来るよ。頑張ってな。コン」
俺とコンは軽く握手をした。コンはこのままここに残って技術を磨くそうだ。真冬さんもとりあえず、当分はここを離れるつもりはないのだという。離れるのが惜しい程にこの場所に長くいてしまいましたからね・・・それに好きな人の家ですからという彼女の艶のある表情に少しドキドキしながらも俺達は二人にお礼を言って帰路につく。
そして、俺の随分と長いお使いは終わったのだった。
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