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2章
Part42 『街で噂のとある魔女』
しおりを挟むあれから、数日が過ぎ俺は大学二年生になった。学年が一つ上がっても変わったことなどは特にない。授業内容がより専門的な分野になる程度なのもので、生活自体は、一年から二年の変化は気持ち的にゆったりと出来るぐらいの差しかない。
先輩などもクラブやサークルに所属していなければ、ほとんど関わる機会もないし同学年とですら関わらないようにすれば、関わらないように出来るほどだ。
クラスという概念のない大学は、無理に周囲の人間とか変わらなくて済む分、基本的に一緒にいようと思わなければ、どこまでも一人でいられる場所だ。
それは、交友関係を自由に構築できるという反面、高校のような同じクラスだから喋るような友達だか友達じゃないんだかわからないような関係の人間がいなくなるという事でもあった。
ちなみに、俺はと言うと見ず知らずの人に自分から声を賭けに行く事は稀なタイプであったから、疎遠ではないけれど、深い友人がいないタイプという宙ぶらりんなポジションであった。
「大学に来れば、男女関係なく友達が出来て、恋とか色々出来るとか思い込んでたっけ・・・」
はっきり言って大学に入ったからって何も変わらない。あれは、行動しないと得られないポジションなのだ。つくづくそう思う。
まあ、花見の段階で一人取り残されるような人間に友達が多いわけはないのだ。
「まあ、別に友達100人とか言わないからせめてなぁ・・・」
一人でボーッと机に座りながら外で雑談しているグループを見ながらそんなことを呟く。
一度、一人になってしまうと作られたグループに入りにくい事もあって、空き時間も人気のない隠れ家的休憩スペースで作業してしまうのも一人を増長させているのだろう。
「私は、峰と友達だと思ってるけど・・・」
「ああ、そう言ってくれる人がいるだけで幸せだよなぁ・・・って・・・え?」
突然、話しかけられて声の方向を見ると柏木さんがすぐ近くに立っていた。
柏木さんは、青の細めのジーパンに肩の出た真っ白な服(確か妹がオフショルダーだかなんだか言っていた)を着ていた。涼しげな印象で、とても似合っていると思う。流石、学内で一、二を争う美女・・・
変な噂が立たなければ、モテモテだっただろうななんて事をぼんやりと考える。
彼女の手には、数種類のパンと紙パックのジュースの入った袋が握られている。
「柏木さんはご飯ですか?」
「そう。ついさっき講義が終わってお腹すいたから、峰は?」
「まあ、ただの休憩ですかね。特に何かしてたわけでもないですよ。」
「そっか、パン食べる?」
そう言って、柏木さんは、あんぱんを一つ差し出してくる。少し小腹は確かに減っていたので、素直に貰うことにした。
黙々と二人でご飯を食べる状況はなんとなくシュールで気まずかった。
「そう言えば、峰は魔女の噂、知ってる?」
思い出したように柏木さんは俺にそんな事を尋ねてくる。しかし、魔女の噂に心当たりなんてない。魔女には心当たりがあるが・・・
それも自分で言ってて妙な話だが・・・
「いや、知らないですね。どんな噂なんですか?」
「記憶を消されるんだってさ。」
「記憶?」
柏木さんが言うには、この街で今、記憶を消す魔女が出没しているらしい。しかし、消される記憶というのはいつも決まっていて、本人の中の悲しい思い出の記憶がなくなるらしい。
友人との喧嘩して疎遠になった時の記憶やイジメられていた記憶
そんなマイナスの記憶が消されるらしく、しかも、結構出没しているそうなのである。
「でも、悪い話じゃないですね。嫌な記憶が消されるって・・・」
「だから、結構、色んな人たちの間で話題になってるんだって・・・まあ、私も直接聞いたわけじゃないんだけど・・・」
ちょっとした都市伝説みたいなものだと柏木さんは続けた。
もしかして、リューが何か関わっているのだろうか?
「峰は、ある? 消してもらいたい記憶」
柏木さんに聞かれて考えてみるが、無いわけではない。だけど、決定的に何か消したい記憶があるかと聞かれれば、答えはノーだ。
「んー、ないですね。特に決定的なやつはないかもしれません。」
「そっか。・・・・・・私は、あるよ。」
柏木さんは、そう言って食事を再開する。何の記憶を消したいのか、彼女は話さなかったし、俺もその事を聞くことはできなかった。
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