咲かない桜

御伽 白

文字の大きさ
59 / 352
2章

Part 59 『同行と別離』

しおりを挟む
 「私は、凪に関する記憶を消したいんだ。だから、私は魔女探しは辞めない。ごめん。峰」

 噂は、結局はただの噂で、彼女自身は、普通の女の子で、誤解は誤解を生み、噂には尾ひれが付いていく。人々が面白がれるように誇張し変形して、最後には、元の形すらわからなくなっていく。

 柏木さんは、友人だったその子の記憶を消したいと言う。友達になんてなるんじゃなかった。なんて、親友から言われる気分はどうだろうか。自分には想像もつかない。だからこそ、否定なんて出来ない。

 彼女には、危険に身を投げるだけの覚悟と目的がある。なら、誰がどう言ったって止める事なんて出来ないと思うし、生半可な気持ちでそれを止めるのも彼女に対して失礼な気がした。

 だから、胸に残るモヤモヤとした気持ちは、吐き出すべきではない。

 そして、彼女が止まらないと言うのなら俺は、彼女の側にいるべきだと思った。

 「なら、協力しますよ。俺は、妖怪の姿が見えるのでどこが危ないかある程度は分かります。一緒に探しましょう。」

 「良いの?」

 「はい。止めようかと思いましたけど、そっちの方がお互い良いでしょ?  俺も魔女を探さないといけないですし・・・」

 「ありがとう。やっぱり、峰はいい奴だ。」

 「ただ、ちゃんと危ないって言ったら迂回してくださいよ?」

 「うん。約束する。絶対に守る」

 柏木さんは、小指を立ててこちらに差し出してくる。指切りをしようとアピールされているようだったが正直恥ずかしい。

 この歳で指切りとか恥ずかしいんだけどなぁと思いながら俺も柏木さんと同じように小指を立てて指切りをする。

 「ゆびきりげんまん嘘ついたら腹千回さーす」

 「罪が重い!?」

 いや、針を千本飲ますのもやばいけども、なんか生々しいよ・・・

 「腹切った!」

 「破る気満々じゃないですか!」

 そう言うとクスクスと柏木さんは、笑ってその後に俺の目をまっすぐに見て「冗談、本当に約束は守る。」としっかりと言った。

 柏木さんは、約束を守れなくて嘘をついてしまったことを後悔しているのだろう。だったら、約束は守ってくれるだろう。

 「けど、今日はもう帰りましょうか。駅の方も騒がしくなってるでしょうし・・・」

 「うん。じゃあ、帰る。」

 「大丈夫ですか? 帰り道わかりますか?」

 「大丈夫、家には毎日帰ってるから」

 送って言ったほうがいいかなと思いながらも大丈夫という柏木さんの言葉を信用して俺は、柏木さんと別れる事にする。

 「じゃあ、また明日」

 「はい。また明日」

 こういうやり取りをするのもなんだか子供の頃のようだ。帰り道を歩きながら指切りをした事や別れる時に挨拶をしたことを思い出す。

 照れくさいとは思いながらも悪い気分ではない。

 「峰さん」

 俺がそんなことを考えているとさっきまで黙っていたサクヤが声をかけてくる。

 「ん? どうしたんだ?」

 「あの・・・いえ・・・私、明日から一人で行動しますね。」

 サクヤの発言に驚いてつい立ち止まってしまう。

 「え? いきなりどうしたんだよ。」

 「いえ、やっぱり分担して周りを探したほうがいいと思うんです。それに見えてない柏木さんと3人で行動するのは多分・・・お互い難しいと思いますし・・・」

 確かに分かれて行動するのも手段で、見えない柏木さんがいる以上、ほとんど、柏木さんと俺の会話になってしまう。実際、今日サクヤは、柏木さんと会ってからほとんど会話らしい会話をしていなかった。

 サクヤがそれを望んでいるというのなら・・・

 「わかった。けど、危なくなったらすぐに逃げるんだぞ?」

 「はい。大丈夫ですよ。むしろ、峰さんこそ、気をつけてくださいね。じゃあ、私はここで」

 そう言ってサクヤはフヨフヨと空を飛んで山の方に帰っていった。

 俺はその姿を見送ったのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

処理中です...