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5章 『一神教』の野望と王都の危機
エレナのかつての記憶
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「魔物が…………消えた?」
「………………うん………」
「そうね」
カレン、エレナ、ミーシャがそう言った。魔物の大群が一気に姿を消した。ということは、レクスが大元を潰してくれたということだ。
「これで取りあえずは一件落着ってとこか?」
「ええ、そうね」
リューの言葉にローザを始めとした『四英雄』の面々が頷いて答えた。
「ふぅー…………疲れた」
「ああ、そうだな…………」
「ちょー疲れた~…………」
ニンファ達は疲れた表情でそう呟いた。アイリーンはいつも通りの口調を取り戻し、平常運転になった。
「それにしても、この惨状…………王都の復興も大変だなぁ、こりゃ」
あちこちで建物が崩れており、復興まで恐らく3、4ヶ月はかかるだろう。幸いだったのは、被害にあった地区が少なかったということだろう。
リューがそんなことを考えているとーーーー。
「ーーーーー!?」
突如教会が崩れ、大きな音が響いた。何事かと振り向くみんな。すると、そこに大きな光が発生しーーーー竜の形を成した。それは、全身黒色でおぞましいオーラを放っていた。
「なんだ、あれは…………?」
リューが黒竜を見て、驚いた表情で呟いた。
「………………魔力を感じない」
「……………そうね、全く感じないわ」
レクスの時は僅かではあるが、膨大な魔力の一端を感じるのだ。それが、あの黒竜からは感じられない。あの黒竜の魔力が少ないという線は、まずないだろう。そこから導き出されるのはーーーー。
「…………あの竜は、間違いなくレクスよりも強い、ということか」
ダミアンがそう言った。
「…………………………!!?」
エレナがその言葉を聞いた瞬間、今まで見たこともないような表情になった。魔物が消えたと思ったら直ぐに現れた。それは、レクスが大元を潰したからだ。黒竜が誰かと戦っているのが窺えた。その相手はーーーー恐らく、レクス。
エレナはそう思い至ると、直ぐ様走ってレクスの元へ向かおうとするがーーーー。
「エレナ、気持ちは分かるけどやめておいた方がいいわ」
ミーシャが歯を食い縛り、悔しそうにそう言った。その手は、僅かに震えていた。
「多分、私達が行っても足手まといになるだけよ。寧ろ、レクスに怪我を負わせるかもしれないわ。最悪の場合、死なせることだってある………」
「でもっ、でもっ…………!」
レクスが死んだら、私はどうすれば…………! 私のやっと見つけた居場所、大好きな人なのにっ………!
エレナは涙を流した。自分が無力なせいで、レクスを助けられない。その歯痒さに。どうしてもレクスを助けたい。でも、力になれない。
「………………残念だが、確かに俺達が行っても足手まといになるだけだな」
リューも歯を食い縛って、悔しそうに呟いた。王都のーーーーいや、セレニア皇国の存亡をたった1人の青年に背負わせてしまったことへの、悔しさだ。
「そんっ、な……………!」
エレナはリューの言葉が追い討ちとなったのか、地面に崩れ落ちた。涙が止まらない。私にもっと力があれば…………! 悔やんでも悔やみきれない。ーーーーと。
ドクン!!
突如、激しい衝撃に襲われた。勿論、攻撃されたわけではない。
これは、私の………昔の……記憶………?
エレナの脳裏には、かつての記憶が蘇っていた。
◇◆◇◆◇
『ねえねえ、ママ。いまからなにするの?』
幼きエレナが、母親にそう尋ねた。母親には、5本の尾があった。妖狐である証だ。
『ちょっと動かないでね。直ぐに終わるから』
母は優しく諭すようにそう言った。幼き頃のエレナには、尾が10本あった。
『…………あれ? ねむい………』
エレナはそのままコテン、と寝てしまった。そこには10本あった尾が、綺麗さっぱり消えていた。『封印魔法』である。それによってエレナの膨大だった力も収まった。
『私はもうじき死ぬかもしれないからね…………。10本尾があるキュウビ…………いや、ジュウビかな。そんなのがうろついてたら、みんな気味悪がっちゃうかもしれない。エレナには酷かもしれないけど…………許してね………』
エレナの母はそう呟きながら、エレナの記憶にも『封印魔法』をかけたのだった。
「………………うん………」
「そうね」
カレン、エレナ、ミーシャがそう言った。魔物の大群が一気に姿を消した。ということは、レクスが大元を潰してくれたということだ。
「これで取りあえずは一件落着ってとこか?」
「ええ、そうね」
リューの言葉にローザを始めとした『四英雄』の面々が頷いて答えた。
「ふぅー…………疲れた」
「ああ、そうだな…………」
「ちょー疲れた~…………」
ニンファ達は疲れた表情でそう呟いた。アイリーンはいつも通りの口調を取り戻し、平常運転になった。
「それにしても、この惨状…………王都の復興も大変だなぁ、こりゃ」
あちこちで建物が崩れており、復興まで恐らく3、4ヶ月はかかるだろう。幸いだったのは、被害にあった地区が少なかったということだろう。
リューがそんなことを考えているとーーーー。
「ーーーーー!?」
突如教会が崩れ、大きな音が響いた。何事かと振り向くみんな。すると、そこに大きな光が発生しーーーー竜の形を成した。それは、全身黒色でおぞましいオーラを放っていた。
「なんだ、あれは…………?」
リューが黒竜を見て、驚いた表情で呟いた。
「………………魔力を感じない」
「……………そうね、全く感じないわ」
レクスの時は僅かではあるが、膨大な魔力の一端を感じるのだ。それが、あの黒竜からは感じられない。あの黒竜の魔力が少ないという線は、まずないだろう。そこから導き出されるのはーーーー。
「…………あの竜は、間違いなくレクスよりも強い、ということか」
ダミアンがそう言った。
「…………………………!!?」
エレナがその言葉を聞いた瞬間、今まで見たこともないような表情になった。魔物が消えたと思ったら直ぐに現れた。それは、レクスが大元を潰したからだ。黒竜が誰かと戦っているのが窺えた。その相手はーーーー恐らく、レクス。
エレナはそう思い至ると、直ぐ様走ってレクスの元へ向かおうとするがーーーー。
「エレナ、気持ちは分かるけどやめておいた方がいいわ」
ミーシャが歯を食い縛り、悔しそうにそう言った。その手は、僅かに震えていた。
「多分、私達が行っても足手まといになるだけよ。寧ろ、レクスに怪我を負わせるかもしれないわ。最悪の場合、死なせることだってある………」
「でもっ、でもっ…………!」
レクスが死んだら、私はどうすれば…………! 私のやっと見つけた居場所、大好きな人なのにっ………!
エレナは涙を流した。自分が無力なせいで、レクスを助けられない。その歯痒さに。どうしてもレクスを助けたい。でも、力になれない。
「………………残念だが、確かに俺達が行っても足手まといになるだけだな」
リューも歯を食い縛って、悔しそうに呟いた。王都のーーーーいや、セレニア皇国の存亡をたった1人の青年に背負わせてしまったことへの、悔しさだ。
「そんっ、な……………!」
エレナはリューの言葉が追い討ちとなったのか、地面に崩れ落ちた。涙が止まらない。私にもっと力があれば…………! 悔やんでも悔やみきれない。ーーーーと。
ドクン!!
突如、激しい衝撃に襲われた。勿論、攻撃されたわけではない。
これは、私の………昔の……記憶………?
エレナの脳裏には、かつての記憶が蘇っていた。
◇◆◇◆◇
『ねえねえ、ママ。いまからなにするの?』
幼きエレナが、母親にそう尋ねた。母親には、5本の尾があった。妖狐である証だ。
『ちょっと動かないでね。直ぐに終わるから』
母は優しく諭すようにそう言った。幼き頃のエレナには、尾が10本あった。
『…………あれ? ねむい………』
エレナはそのままコテン、と寝てしまった。そこには10本あった尾が、綺麗さっぱり消えていた。『封印魔法』である。それによってエレナの膨大だった力も収まった。
『私はもうじき死ぬかもしれないからね…………。10本尾があるキュウビ…………いや、ジュウビかな。そんなのがうろついてたら、みんな気味悪がっちゃうかもしれない。エレナには酷かもしれないけど…………許してね………』
エレナの母はそう呟きながら、エレナの記憶にも『封印魔法』をかけたのだった。
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