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7章 旅行先で

剣の修理

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「それで──────ここをお借りしてもいいですか?」




「ど、どうぞ、どうぞ、遠慮なくお使い下さい!」






 男性─────名を、アドルトというらしい─────は、先程の大きい態度はどこへいったのか、さっきからこんな調子である。






「あのー……………そこまで恐縮しなくても………。あれぐらいの強化でしたら、練習すれば出来るようになりますし」




「練習すれば…………? いやいやいや、練習したって到底出来ねえよ、あんなの!」





 魔鉱石の強化が難しいといわれる所以は、魔鉱石に天然の魔力が含まれていることだ。その魔力に調和させるように自身の魔力を流し、強化する必要があるからだ。普通に自身の魔力を流し込むだけでは、全て跳ね返され、魔力を無駄に消費してしまうだけなのだ。それに加えて、魔力量も多く消費するので、強化できても+1が限度という訳だ。





「ツゥーリさん、レッドベリルの剣、貸して下さい」





「はい」




 ツゥーリは、魔法袋マジックバッグから、レッドベリルの剣を取り出した。勿論、レクスのとは違って、重さに制限はある。






「よし、じゃあ、始めようかな」





 レクスは袖を巻くってそう言った。





「武器の修復は、元の姿を強くイメージして…………」





 ネルフィに教えてもらった通りにこなすレクス。折れにくいように、魔力で回路も通して…………。





「おお………………! すげえ…………!」




「僕の武器が…………直ってる………!」






 2人共、武器が直っていく様子に感動していた。





「ふぅ…………と。出来たよ」




 レクスは、ひび割れのなくなった剣を掲げてそう言った。傷も完全に修復されたようだ。





「振ってみてもいい!?」




 もう早く振りたいと言わんばかりに興奮してそう言うツゥーリ。勿論、ツゥーリの剣なのでレクスに断る理由はない。





「よし、ツゥーリ。これを斬ってみろ」





 そう言ってアドルトは、ミスリルを少量机の引き出しから取り出した。試し切りというやつだろう。




「ミスリル? 木じゃないの?」



「木を斬ったんじゃ切れ味がわかんないだろうからな」




「そっか! 分かったよ!」




 ツゥーリは、納得顔で頷いた。






「じゃあ、いくぞ」




 アドルトは、ツゥーリに向かって山なりにミスリルを投げた。ツゥーリは、それを鋭い振りで切り裂く。流石はSSランク、剣筋は伊達じゃない。





「感覚が全くなかったんだけど…………斬れたよね?」




「あ、ああ…………。結構硬い筈のミスリルをあっさり斬りやがった…………」




 ミスリルの硬度は、レッドベリルには劣るものの、それでもちょっとやそこらじゃ斬れない強度を持っている。





「どう…………ですか?」




 使用者、つまりツゥーリの手に剣が馴染んでいたかどうか。脆くないか。それが心配だった。






「うん、いい切れ味だったよ! 前のよりも性能が上がってる!」




「良かった…………」





 ほっと息をつくレクス。ツゥーリが満足しているようで何よりである。人の剣を直すのは初めての事であったが、成功して良かった。





「…………。報酬はいくらにする?」




「いやいや、報酬なんていりませんよ。剣にひびをいれたのは僕な訳ですし」





「いや、しっかりと報酬を払わなければ、こっちの気がすまないよ」




 苦笑しながらそう言うツゥーリ。





「ねえねえ、レクス。面倒臭そうだし、適当な報酬額を提示して引いてもらえば?」





 レクスにそんな事を耳打ちするミーシャ。確かにそっちの方が手っ取り早いかもしれない。けど…………。





「相場が分からないんだよね…………」




 ドワーフ族の貨幣の相場など知らないレクスにとっては、決めようもなかった。




「んなもん、適当でいいのよ、適当で」




 まあ、確かにそれしかないか………………。






「………………じゃあ、金貨一枚でどうでしょう?」





 アドルトとツゥーリは、えっ、といった表情で固まっていた。吹っ掛けすぎたかな…………?







「や、安すぎるよ!」




 ツゥーリが驚いたような表情で叫んだ。



「そういえば、ボウズはこの国に来るのは初めてか?」




「ええ」





「それじゃ、相場を知らないのも当然だな。ツゥーリ、ちょっとそれを貸してみろ」




「お金盗らないでよ?」




「盗るわけないだろ、貧乏じゃあるまいし」




 アドルトは、そう言いながらツゥーリから金が入った袋を受けとる。そして、金貨を次々に取り出した。





「大体この位が相場だ」




 そうして渡された金貨の枚数は─────20枚。かなり多かった。




「こんなに要らないんだけどなぁ…………」




 レクスは予定外の収入に、ただただ苦笑していた。



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