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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~
暴動
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「おい、どういうことなんだ!」
「水が暫く供給されないって聞いたぞ!!」
「どういうことだ!」
犬耳族の人々が押し掛けているのは─────王族の住まう『テイドダス宮殿』。彼らは水が供給されないことに抗議していた。
「─────皆の者。どうか落ち着いて聞いて欲しい」
荘厳な声を響かせて、三階のバルコニーから姿を見せる現国王─────ワヴァグ。
「落ち着いていられるか!!」
「こっちは生活だってかかってんだ!!」
国民達の怒りが更に増した。そう。断水されたら、生きていくことすら困難になりうるかもしれない。ある意味では国家存亡の危機とも言えるのだ。
「─────此度の断水の件についてだが、先日、水を浄化してくれる魔物、ウーナスがいなくなった。ソナタ達に汚い水を行き渡らせることはできぬゆえ、こうさせてもらった。調査はしているが、詳しい原因はまだ分かっていない。早期解決に努めるゆえ、ソナタ達には暫くの間辛抱してもらうことになる」
すまない、と頭を下げるワヴァグ。こうするしかなかった。
このあとも暫く国民の暴動は収まらなかった。
◇◆◇◆◇
「いかがなされますか? ワヴァグ国王」
「うむ…………正直言って調査も手詰まりの状態でな…………。ああは言ったが、早期解決は厳しいやもしれん」
ワヴァグは頭を悩ませていた。しかし、民衆の前で宣言したのだ。嫌でもやってやろうという気になる。
「ゴウル。早急にオアシスの状況を見てきてもらえるか? あと、貯水槽の具合も見てきてくれ」
「分かりました」
男性─────ゴウルはそう言うと、失礼します、とドアを開けて足早に調査へと向かっていった。『ヨロム』は基本的に水源はオアシス頼りだ。周りが砂漠だからということもある。『ヨロム』の周りにはたくさんのオアシスが存在し、いくら水をとっても枯れる気配がない。因みに、理由はよく分かっていない。
そのオアシスの周りには、ウーナスという象型の魔物がいた。砂漠という似合わない環境の中で白銀の毛がより目立っていた。それが、数日前にいなくなったのだ。突然、なんの兆候もなく。
濁った水を浄化する対策を講じずに、ウーナス頼りだったのも今回の騒動の原因の一端な訳で。そういう意味では、ワヴァグにも少なからず非はある。
「儂が国王でいられる時間も限られているからな。…………その間に、この国を少しでも変えたい」
(愚息に譲る前に、なんとかせねば…………。あのバカは、国王になることしか頭にない。全く、どうしたもんだか…………)
ワヴァグは息子の事を思い出し、そんなことを思った。
他の国々に比べて、発展が遅れているのは十も承知だ。自分が国王でいる間に各国を訪問したりして、色々学んでいきたい。
「…………なのに、最近やたらと面倒事が次から次へと舞い込んでくる」
それこそ、誰かの陰謀ではないか、と思ってしまうほどには。
先月には一部の地域で作物が駄目になり、そのまた先月には、一部の地域で特産品が駄目になった。気のせいか、段々規模が大きくなっていってる気がするのだ。
「これで騒動も収まってくれればいいのだが…………」
ワヴァグの勘が、騒動はまだ続く、そう言っているように思えてならない。
「…………ふぅ。これ以上考えてても仕方ない。取り敢えず、いつもの仕事から終わらせるか」
ワヴァグはそう呟くと、椅子に腰を深くかけて座り、目の前に山積みになっている書類を一つずつ片付けていくのだった。
「水が暫く供給されないって聞いたぞ!!」
「どういうことだ!」
犬耳族の人々が押し掛けているのは─────王族の住まう『テイドダス宮殿』。彼らは水が供給されないことに抗議していた。
「─────皆の者。どうか落ち着いて聞いて欲しい」
荘厳な声を響かせて、三階のバルコニーから姿を見せる現国王─────ワヴァグ。
「落ち着いていられるか!!」
「こっちは生活だってかかってんだ!!」
国民達の怒りが更に増した。そう。断水されたら、生きていくことすら困難になりうるかもしれない。ある意味では国家存亡の危機とも言えるのだ。
「─────此度の断水の件についてだが、先日、水を浄化してくれる魔物、ウーナスがいなくなった。ソナタ達に汚い水を行き渡らせることはできぬゆえ、こうさせてもらった。調査はしているが、詳しい原因はまだ分かっていない。早期解決に努めるゆえ、ソナタ達には暫くの間辛抱してもらうことになる」
すまない、と頭を下げるワヴァグ。こうするしかなかった。
このあとも暫く国民の暴動は収まらなかった。
◇◆◇◆◇
「いかがなされますか? ワヴァグ国王」
「うむ…………正直言って調査も手詰まりの状態でな…………。ああは言ったが、早期解決は厳しいやもしれん」
ワヴァグは頭を悩ませていた。しかし、民衆の前で宣言したのだ。嫌でもやってやろうという気になる。
「ゴウル。早急にオアシスの状況を見てきてもらえるか? あと、貯水槽の具合も見てきてくれ」
「分かりました」
男性─────ゴウルはそう言うと、失礼します、とドアを開けて足早に調査へと向かっていった。『ヨロム』は基本的に水源はオアシス頼りだ。周りが砂漠だからということもある。『ヨロム』の周りにはたくさんのオアシスが存在し、いくら水をとっても枯れる気配がない。因みに、理由はよく分かっていない。
そのオアシスの周りには、ウーナスという象型の魔物がいた。砂漠という似合わない環境の中で白銀の毛がより目立っていた。それが、数日前にいなくなったのだ。突然、なんの兆候もなく。
濁った水を浄化する対策を講じずに、ウーナス頼りだったのも今回の騒動の原因の一端な訳で。そういう意味では、ワヴァグにも少なからず非はある。
「儂が国王でいられる時間も限られているからな。…………その間に、この国を少しでも変えたい」
(愚息に譲る前に、なんとかせねば…………。あのバカは、国王になることしか頭にない。全く、どうしたもんだか…………)
ワヴァグは息子の事を思い出し、そんなことを思った。
他の国々に比べて、発展が遅れているのは十も承知だ。自分が国王でいる間に各国を訪問したりして、色々学んでいきたい。
「…………なのに、最近やたらと面倒事が次から次へと舞い込んでくる」
それこそ、誰かの陰謀ではないか、と思ってしまうほどには。
先月には一部の地域で作物が駄目になり、そのまた先月には、一部の地域で特産品が駄目になった。気のせいか、段々規模が大きくなっていってる気がするのだ。
「これで騒動も収まってくれればいいのだが…………」
ワヴァグの勘が、騒動はまだ続く、そう言っているように思えてならない。
「…………ふぅ。これ以上考えてても仕方ない。取り敢えず、いつもの仕事から終わらせるか」
ワヴァグはそう呟くと、椅子に腰を深くかけて座り、目の前に山積みになっている書類を一つずつ片付けていくのだった。
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