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9章 祝福

一旦の

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 レクス達は現在、お見合いの会場を後にして自分の屋敷に戻っている。ロウコに『弟子にしてくれ!』とかお願いされたが、きっぱり断っておいた。自分より技量は上だろうし、教えることなど何もないと思ったからだ。


『では、また私とたまにでいいから剣を交えて欲しい』


 ロウコは尚も食い下がってきた。多分断ったらまた食い下がってきそうな予感がしたから、じゃあ、それなら……………とレクスもそこで妥協した。


「いや~……………ほんとに助かったよ。ありがとう、レクス」


「まあ、あれくらいなら、ね……………」


 レクスは苦笑しながらそう言った。


「け、剣豪があれくらい…………」


 フィアの母が驚愕の表情と共にそう呟く。というか……………今、聞き捨てならない言葉が聞こえたような…………?


「レクスの手にかかれば、剣豪もそうなっちゃうんだよ」


 フィアは苦笑しながらそう言った。やはり、聞き間違いなどではなく、あのロウコなる者は『剣豪』だったらしい。どうりで、普通の人より強かったわけだ。


 
「フィアさんのお母さんは、この後どうするんですか?」


 純粋に気になったので、聞いてみる。


「うーん…………と。領主様のお屋敷に行ってみたいなぁ、なんて思ってます」


 ためらうようにそう言うフィアの母。


「レクスでいいですよ。領主様って呼ばれるのは性に合いませんし。それと敬語も不要です。ところで、どうしてです?」


「……………分かった。この前屋敷に行った時、あまり中まで見なかったし。少し見た感じ、凄かったからちょっと見てみたいなと思って」


「ああ、そうでしたか。勿論、いいですよ。あと、ついでに夕食も食べていきませんか?」


「いや、でも、邪魔したら悪いというか、なんというか………………」


 うまい言葉が見つからないのか、あたふたしている。なんというか……………こういうところは、フィアとは対照的である。


「………………レクス、今性格全然似てないとか思ったでしょ」


(……………ほんと、エスパーか何かなのかな? 何も言ってないはずなのに……………もしかして、心の声を読み取るスキルを持ってるとか……………?)


 レクスは苦笑しながらそんなことを思った。


「誤解のないように言っとくけど、心の声とか聞き取れないからね?」


(それだよ、それ……………もう誤解が既に生まれちゃっててもおかしくないって…………本当に持ってないんだよね?)


 レクスは訝しげな表情でフィアをチラッと見た。まあ、本人が言うのだから持ってないのだろうが。これはあれだ。特定の相手にしか発動しない特殊なスキルだ。大好きなレクスの事だから分かるのだ、きっと。


「……………あははっ」


「どうしたの? 急に」


「いや、ちょっとね。何でもないよ」


 ちょっとつぼに入っただけだ。気にしないでもらえると嬉しい。というか、気にしないで欲しい。


「じゃあ、フィアさん、それとお母さんも。屋敷に急ぎますよ。善は急げです」


「ねえ、それ絶対使い方違うよね!?」


「ちょっ、二人ともっ、速すぎっ……………!!」


 フィアの母が息を切らしながら、レクスとフィアについていく。三人は屋敷へと速足に向かっていくのだった。
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