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9章 祝福
怪しき人影
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「じゃあ、フィア。またね」
「お見合いは暫く……………っていうか、もういらないからね」
「それは駄目よ。きちんとお嫁さんにいってもらわないと……………只でさえ行き遅れてるんだから」
リンリットはそう言うと、冗談めかしたような笑みを浮かべる。
「……………まあ、気が向いたらいつでも言ってね。すぐにお見合い組んであげるから」
「だから……………暫くいいってば」
フィアははぁ…………とため息をつきながらそう言った。リンリットは更に笑みを深めて笑う。
「うふふ。それにしても……………ここの屋敷にいると退屈しなさそうね。フィア、どう? 楽しい?」
「子供っぽいこと聞かないでよ……………まあ、楽しいけど」
フィアは苦笑しながらそう言う。
「それは良かったわ……………領主様、フィアのこと、宜しくお願いしますね」
「はい、分かりました。……………それと、領主様じゃなくて、レクスとお呼びください。領主様って呼ばれるの、あんまり好きじゃないんです」
レクスは困ったようにそう言った。レクスとしては、名前で呼んでくれた方がありがたいのだ。かたっ苦しいはあまり好かない。
「……………いいのですか?」
「はい。それと、敬語も不要です」
にっこりと笑うレクス。リンリットは年甲斐もなくドキッ……………としてしまった。
(こ、これは決してやましいものじゃなくて……………そう、言うなれば可愛いものを愛でるみたいな感じよ! うん、そうよ)
一人でうんうんと納得するリンリット。そんなリンリットにレクスは首を傾げる。リンリットはこほん、と咳払いする。
「──────じゃあ、私はこれで。また暇ができたらここにくるわ」
リンリットはそう言うと、屋敷のドアを開けて、出ていった。その顔には、僅かに微笑みが残っていた。
◇◆◇◆◇
「──────召喚だぁ?」
「ああ、異世界から召喚するんだ。人でも魔物でもいい。召喚した瞬間に、お前はこの首輪を召喚対象にはめるんだ」
ある場所で、女と男の二人がヒソヒソとそんなやり取りを交わす。口調が悪い方が女だ。
「……………正直、うまくいくとは思えねえなぁ。第一、召喚できるかどうかだって分かりゃあしないってのに」
女は呆れたようにそう言った。十中八九うまくいくわけがない。召喚魔法は集団で行使する高等魔法だ。多大な魔力を要する。只でさえ二人とも、魔力が少ないのに、絶対にできるはずがない。魔法式を書き終える前に力尽きるのではなかろうか。
「───────それについては、問題ない。さっきこれを拾った」
「それは………………」
「──────召喚用の紙…………とでも言ったところか。俺も初めて見る代物なんだが……………こいつを使えば、召喚できるはずだ」
男は紙をヒラヒラさせながらそう言った。
「………………大丈夫なんだよな?」
「ああ。俺の『直感』を信じろ」
『直感』というのは、男が持ってるエクストラスキル。危険かそうじゃないか、何かが埋まってるとか、根拠はないがそういうのを感じとるスキルだ。普段は役に立たなくもないが、こういう時は結構使える。男的にはお気に入りのスキルである。
「…………………分かった。迷ってる暇もないだろうし」
女も、覚悟を決める。
「──────いたぞ、あそこだっ!!」
保安ギルドの職員に見つかる。だが、もう遅い。
「「『召喚』──────!!」」
賽は、投げられた。
「お見合いは暫く……………っていうか、もういらないからね」
「それは駄目よ。きちんとお嫁さんにいってもらわないと……………只でさえ行き遅れてるんだから」
リンリットはそう言うと、冗談めかしたような笑みを浮かべる。
「……………まあ、気が向いたらいつでも言ってね。すぐにお見合い組んであげるから」
「だから……………暫くいいってば」
フィアははぁ…………とため息をつきながらそう言った。リンリットは更に笑みを深めて笑う。
「うふふ。それにしても……………ここの屋敷にいると退屈しなさそうね。フィア、どう? 楽しい?」
「子供っぽいこと聞かないでよ……………まあ、楽しいけど」
フィアは苦笑しながらそう言う。
「それは良かったわ……………領主様、フィアのこと、宜しくお願いしますね」
「はい、分かりました。……………それと、領主様じゃなくて、レクスとお呼びください。領主様って呼ばれるの、あんまり好きじゃないんです」
レクスは困ったようにそう言った。レクスとしては、名前で呼んでくれた方がありがたいのだ。かたっ苦しいはあまり好かない。
「……………いいのですか?」
「はい。それと、敬語も不要です」
にっこりと笑うレクス。リンリットは年甲斐もなくドキッ……………としてしまった。
(こ、これは決してやましいものじゃなくて……………そう、言うなれば可愛いものを愛でるみたいな感じよ! うん、そうよ)
一人でうんうんと納得するリンリット。そんなリンリットにレクスは首を傾げる。リンリットはこほん、と咳払いする。
「──────じゃあ、私はこれで。また暇ができたらここにくるわ」
リンリットはそう言うと、屋敷のドアを開けて、出ていった。その顔には、僅かに微笑みが残っていた。
◇◆◇◆◇
「──────召喚だぁ?」
「ああ、異世界から召喚するんだ。人でも魔物でもいい。召喚した瞬間に、お前はこの首輪を召喚対象にはめるんだ」
ある場所で、女と男の二人がヒソヒソとそんなやり取りを交わす。口調が悪い方が女だ。
「……………正直、うまくいくとは思えねえなぁ。第一、召喚できるかどうかだって分かりゃあしないってのに」
女は呆れたようにそう言った。十中八九うまくいくわけがない。召喚魔法は集団で行使する高等魔法だ。多大な魔力を要する。只でさえ二人とも、魔力が少ないのに、絶対にできるはずがない。魔法式を書き終える前に力尽きるのではなかろうか。
「───────それについては、問題ない。さっきこれを拾った」
「それは………………」
「──────召喚用の紙…………とでも言ったところか。俺も初めて見る代物なんだが……………こいつを使えば、召喚できるはずだ」
男は紙をヒラヒラさせながらそう言った。
「………………大丈夫なんだよな?」
「ああ。俺の『直感』を信じろ」
『直感』というのは、男が持ってるエクストラスキル。危険かそうじゃないか、何かが埋まってるとか、根拠はないがそういうのを感じとるスキルだ。普段は役に立たなくもないが、こういう時は結構使える。男的にはお気に入りのスキルである。
「…………………分かった。迷ってる暇もないだろうし」
女も、覚悟を決める。
「──────いたぞ、あそこだっ!!」
保安ギルドの職員に見つかる。だが、もう遅い。
「「『召喚』──────!!」」
賽は、投げられた。
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