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9章 祝福
絡まり合う陰謀と策謀
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数日後─────所は変わり、ドワーフの国。
キイイイィィィィ───────ン!!
「くっ……………!!」
ドワーフの国の中心地、『フィラデル』の郊外で騎士団と黒フードの集団が激突していた。市民も大半が避難しており、周りに甚大な被害が出る恐れはない。出るとすれば、建物が損壊するといった被害くらいだろう。極力崩れないようにはするが……………難しいかもしれない。
「『女帝』様をどこへやったぁ!!」
ただ、先程から分からないことが─────一つだけ。
「『女帝』…………? なんの事だかなっ…………!!」
「とぼけないで! 『女帝』様は絶対にこの国のどこかにいる! 情報は掴んでるんだ!!」
短剣と長剣が交差する。キンキンキンキンキン!! と甲高い音とともに激しい応酬は続く。ドワーフの国の騎士団は他の国々と比べても強い。
「お前らが探してる『女帝』様なんてぇのはこの国にはいねえよ!」
しかし、黒フード────恐らく少女────は、全く聞く耳を持たない。中々手練れで、このままだと埒が明かない。
「『無間隙』!!」
騎士団のドワーフが黒フードの体勢を崩しにかかる。─────が。
「──────!?」
スキルをキャンセルし、自ら後退した。理由はない。敢えて挙げるとするならば────己の勘が警告を発していた。それに従ったのだ。果たしてそれは─────正しかった。
「くっ……………!!」
あのまま突っ込んでいたら、自分の身が危うかったのは間違いない。黒フードが歯軋りする様子からも、それは明らかだ。
「八つ裂きにしてやるっ…………! 八つ裂きにぃっっ!!」
黒フードの目が、僅かに赤みを帯びた。
◇◆◇◆◇
「『忠誠心』って本当に面白いわね……………ねぇ、あなたもそう思うでしょ?」
「………………………」
手には手錠をかけられ、足には簡単に逃げられないように足枷がついた状態で拘束されているのは─────ミリン。ミリンは、女の質問に答えなかった。いや、正確には─────答えることができなかった。ミリンの顔は青ざめ、身体はもはや震えていた。自分の目の前で足を組み、優雅に座っている女に恐怖すら感じていたからだ。
「…………つまらないわね。ただ質問しているだけなのだから、そう怯える必要もないのよ?」
「……………ぇ………ぁ………」
無理だ。喉から掠れた声しか出ない。ミリンは目の前の現実すら考えられない。もう全てを拒絶したい。ミリンは抜け殻のようだった。
「それにしても……………人の心って本当に奥深いわぁ…………! 惚れ惚れしちゃう!!」
自分の手に持っている水晶に映っている様子を見て、頬を恍惚とさせる。こいつは、人間をなんとも思ってない。それどころか、人間をモルモットとすら思っている。ミリンには、そのおぞましい考えが理解できなかった。
「さて…………そろそろ食事にしようかしらね」
女はミリンにゆっくりと歩み寄り─────そして、ミリンの腕に噛みついた。
「………………っ!!」
何かが吸われている感覚。痛い。それが血なのかどうか、ミリンには分からない。恐怖だけが、ミリンの心を支配していた。
「ん…………中々の美味だわぁ」
女は舌なめずり一つ、そう呟いたのだった。
キイイイィィィィ───────ン!!
「くっ……………!!」
ドワーフの国の中心地、『フィラデル』の郊外で騎士団と黒フードの集団が激突していた。市民も大半が避難しており、周りに甚大な被害が出る恐れはない。出るとすれば、建物が損壊するといった被害くらいだろう。極力崩れないようにはするが……………難しいかもしれない。
「『女帝』様をどこへやったぁ!!」
ただ、先程から分からないことが─────一つだけ。
「『女帝』…………? なんの事だかなっ…………!!」
「とぼけないで! 『女帝』様は絶対にこの国のどこかにいる! 情報は掴んでるんだ!!」
短剣と長剣が交差する。キンキンキンキンキン!! と甲高い音とともに激しい応酬は続く。ドワーフの国の騎士団は他の国々と比べても強い。
「お前らが探してる『女帝』様なんてぇのはこの国にはいねえよ!」
しかし、黒フード────恐らく少女────は、全く聞く耳を持たない。中々手練れで、このままだと埒が明かない。
「『無間隙』!!」
騎士団のドワーフが黒フードの体勢を崩しにかかる。─────が。
「──────!?」
スキルをキャンセルし、自ら後退した。理由はない。敢えて挙げるとするならば────己の勘が警告を発していた。それに従ったのだ。果たしてそれは─────正しかった。
「くっ……………!!」
あのまま突っ込んでいたら、自分の身が危うかったのは間違いない。黒フードが歯軋りする様子からも、それは明らかだ。
「八つ裂きにしてやるっ…………! 八つ裂きにぃっっ!!」
黒フードの目が、僅かに赤みを帯びた。
◇◆◇◆◇
「『忠誠心』って本当に面白いわね……………ねぇ、あなたもそう思うでしょ?」
「………………………」
手には手錠をかけられ、足には簡単に逃げられないように足枷がついた状態で拘束されているのは─────ミリン。ミリンは、女の質問に答えなかった。いや、正確には─────答えることができなかった。ミリンの顔は青ざめ、身体はもはや震えていた。自分の目の前で足を組み、優雅に座っている女に恐怖すら感じていたからだ。
「…………つまらないわね。ただ質問しているだけなのだから、そう怯える必要もないのよ?」
「……………ぇ………ぁ………」
無理だ。喉から掠れた声しか出ない。ミリンは目の前の現実すら考えられない。もう全てを拒絶したい。ミリンは抜け殻のようだった。
「それにしても……………人の心って本当に奥深いわぁ…………! 惚れ惚れしちゃう!!」
自分の手に持っている水晶に映っている様子を見て、頬を恍惚とさせる。こいつは、人間をなんとも思ってない。それどころか、人間をモルモットとすら思っている。ミリンには、そのおぞましい考えが理解できなかった。
「さて…………そろそろ食事にしようかしらね」
女はミリンにゆっくりと歩み寄り─────そして、ミリンの腕に噛みついた。
「………………っ!!」
何かが吸われている感覚。痛い。それが血なのかどうか、ミリンには分からない。恐怖だけが、ミリンの心を支配していた。
「ん…………中々の美味だわぁ」
女は舌なめずり一つ、そう呟いたのだった。
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