【完結】虐待された幼子は魔皇帝の契約者となり溺愛される

綾雅(りょうが)今月は2冊出版!

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81.お庭で薬のお勉強をした

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 プルソンは図鑑という本を持ってきた。いっぱい絵が描いてあるから絵本みたい。でも絵本より細かい絵だった。この図鑑は、お薬にする草が並んでる。

「この図鑑にある薬草を探しに行きましょう」

「どこに生えてるの?」

「この城のお庭にありますよ。広いですから、陛下やアガレス様もご一緒です」

「パパもアガレスも一緒!」

「仕事は午前中で終わらせましたので、ご一緒します」

 アガレスがそう言うと、パパも頷くから嬉しくなった。階段を降りて、プルソンの後ろに続く。僕とパパが手を繋いで、後ろからアガレスが来た。いつも街の方へいく道じゃなくて、左に曲がる。門から出ないみたい。

 お庭があるのが左側なのかな。きょろきょろしながら歩く僕は、小さな石に躓いた。前に転びそうになったけど、パパが抱き止めた。ほっとする。手を繋いでてよかった。抱っこしようとしたパパに、プルソンが注意する。

「陛下、そうしていつも抱き上げていると、カリス様の足腰が弱ってしまいます。歩けなくなったら可哀想なので、おやめください」

「う……わかった」

 残念そうにパパは僕を下ろした。アガレスが苦笑いする。

「抱いて移動できるのは幼いうちだけですが、確かに抱き上げてばかりいますね」

「気をつける」

 抱っこじゃなくて歩くことになり、僕はまたパパと手を繋いだ。足元の草がどんどん長くなってくる。お城の近くは短かったのに、今は膝くらいまであるよ。プルソンは気にせずスタスタと進み、パパが僕を心配そうに見る。

「大丈夫、僕歩けるよ」

「そうか。カリスは強いな」

「うん! 僕は強いパパの息子だもん」

 繋いだ手を元気よく揺らしながら歩く。プルソンが止まり、周囲を見回して図鑑を開いた。この辺に薬が生えてるのかな。僕も見回したけど、薄い紫の花と白い花以外、全部同じみたい。

「カリス様、この草を探してください。花は咲いていません。高さはカリス様のお膝くらいです」

 僕の膝まである、草? 図鑑をじっくり見る。すっと細くて長い草で、ギザギザはなかった。そこらへんにいっぱい生えてる感じがする。

「これ、いっぱい生えてるやつと同じ?」

「千切ると臭いんですよ、ほら」

 足元から草を抜いたプルソンが、目の前で千切った。途端に、なんとも不思議な匂いがした。僕はこの匂い、嫌いじゃない。

「千切らないと匂いしない?」

「いいえ。近くで嗅げば分かります」

 それなら見つけられるかも。パパが教えてくれたのはネギという植物と同じ匂いだって。ご飯に入ってたことがあるから、僕も知ってる匂いなんだね。

 しゃがんで探し始める。くんくんと匂っていたら、鼻の先に何かが止まった。小さくてよく分からないけど、何かいるよ?

「パパ、何かいる……」

 怖くないけど、何だろう。目を見開いたパパが指で捕まえたのは、小さくて赤い虫だった。白い点々が付いていて、別の図鑑を取り出したアガレスが説明する。

「ここに乗っている虫ですね。てんとう虫と言います。手のひらに載せて、そこから指を高くすると……頂上まで登っていきますから」

 言われた通り、手のひらに載せた虫は指を登っていく。一番高いところで羽を広げて、飛んでいった。このお勉強、楽しいね。

 僕はまた薬草を探し始め、たくさん見つけて持って帰った。これはお腹が調子悪い時に使うお薬になるの。明日は薬を作るところを見せてもらう約束をした。
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