54 / 72
54.王家の血を引かぬ公爵家
しおりを挟む
ママとメイベルの間で、にぃにのお膝に座る。いろいろ揉めて妥協した結果だから、状況については指摘しないで欲しい。軽食片手の執事スチュアートが入室し、一瞬固まった。だが何もなかったように動き出す。
この辺はホールズワースに仕えて長いから、経験の勝利だよね。用意されたのは片手で摘める物が主流だった。ピンズで刺した野菜だったり、クラッカーにチーズやサラミが載っていたり。オリーブの実とチーズが刺さったピンズを受け取る。
ハーブの香りを移したオリーブオイルが掛かってて、大好きなの。口を開ければ、メイベルが差し出すので食べる。続いてクラッカーに乗ったサーモンとハーブのマリネもぱくり。美味しい。
口が幸せ過ぎて、両手で頬を押さえた。落ちちゃいそう。ママとメイベルが変な声を出して呻いてるけど、ピンが口に刺さったとか? 心配していると、にぃにに髪を撫でられた。
「グロリアは掃除の中身が知りたいんだろう?」
「うん」
ママとメイベルはまだ転がってるから、にぃにが説明を始めた。
「簡単に言えば、五年前の騒動の残り火を消している」
本当に簡単にざっくり表現した後、思いがけない話を耳にすることとなった。
五年前、私の婚約破棄騒動には裏がある。第二王子メレディスと聖女リリアンが起こした騒動となっているが、実際は糸を引く別の人物がいた。よくある話で、黒幕や裏ボスってやつよね。その人物を追っている過程で、ウィルズ夫人の横領が判明した。
「ウィルズ元侯爵夫妻が主犯なの?」
「いいえ。この国を根底から腐らせた者は別にいるわ。あの男のせいで、グロリアは殺された」
悔しそうに口を挟んだママ、いつの間に復活したのだろう。見れば、メイベルも神妙な顔で頷く。さっきまで崩れ落ちてたのに、元気になって何より。
あの男のせいと表現するなら、主犯は男性だ。続きを待つ私に、今度はメイベルが口を開いた。
「この国の公爵家は二つあったわ。ターラント家とアディントン家よ」
現在はどちらも侯爵家になっているが、当時は国王の血を引くターラント家が優勢だった。アディントン家は確か、過去に他国の姫君が嫁いできた時に後見を務めている。その功績と、今後も国外から受け入れる王族の受け皿として、公爵家の形で残された。
ママは拒否して、直接嫁いだけど。本当なら、この国でママの実家になるはずだった公爵家だね。この国の王族と血縁ではなく、他国の王族も経由するだけで血が混ざらない。王族の血をまったく受け継がない公爵家って、かなり珍しいと思う。
「アディントン家は、この国を乗っ取るつもりだったの」
たぶん、凄く重要な爆弾発言なのに、まったく響かなかった。ふーん、程度の感覚だ。いや、逆に乗っ取りで私を殺さないで欲しかったと眉を寄せる。
「話は長くなるから、夕食もここでいただきましょう」
ママの一言で、ふと思い出す。パパは遅くなるのかな。呟いたら、スチュアートが「旦那様が喜びます」と涙ぐんだ。最近、パパは外で仕事ばかりだから……起きてる間に帰ってきたら、お膝に乗ってあげよう。
この辺はホールズワースに仕えて長いから、経験の勝利だよね。用意されたのは片手で摘める物が主流だった。ピンズで刺した野菜だったり、クラッカーにチーズやサラミが載っていたり。オリーブの実とチーズが刺さったピンズを受け取る。
ハーブの香りを移したオリーブオイルが掛かってて、大好きなの。口を開ければ、メイベルが差し出すので食べる。続いてクラッカーに乗ったサーモンとハーブのマリネもぱくり。美味しい。
口が幸せ過ぎて、両手で頬を押さえた。落ちちゃいそう。ママとメイベルが変な声を出して呻いてるけど、ピンが口に刺さったとか? 心配していると、にぃにに髪を撫でられた。
「グロリアは掃除の中身が知りたいんだろう?」
「うん」
ママとメイベルはまだ転がってるから、にぃにが説明を始めた。
「簡単に言えば、五年前の騒動の残り火を消している」
本当に簡単にざっくり表現した後、思いがけない話を耳にすることとなった。
五年前、私の婚約破棄騒動には裏がある。第二王子メレディスと聖女リリアンが起こした騒動となっているが、実際は糸を引く別の人物がいた。よくある話で、黒幕や裏ボスってやつよね。その人物を追っている過程で、ウィルズ夫人の横領が判明した。
「ウィルズ元侯爵夫妻が主犯なの?」
「いいえ。この国を根底から腐らせた者は別にいるわ。あの男のせいで、グロリアは殺された」
悔しそうに口を挟んだママ、いつの間に復活したのだろう。見れば、メイベルも神妙な顔で頷く。さっきまで崩れ落ちてたのに、元気になって何より。
あの男のせいと表現するなら、主犯は男性だ。続きを待つ私に、今度はメイベルが口を開いた。
「この国の公爵家は二つあったわ。ターラント家とアディントン家よ」
現在はどちらも侯爵家になっているが、当時は国王の血を引くターラント家が優勢だった。アディントン家は確か、過去に他国の姫君が嫁いできた時に後見を務めている。その功績と、今後も国外から受け入れる王族の受け皿として、公爵家の形で残された。
ママは拒否して、直接嫁いだけど。本当なら、この国でママの実家になるはずだった公爵家だね。この国の王族と血縁ではなく、他国の王族も経由するだけで血が混ざらない。王族の血をまったく受け継がない公爵家って、かなり珍しいと思う。
「アディントン家は、この国を乗っ取るつもりだったの」
たぶん、凄く重要な爆弾発言なのに、まったく響かなかった。ふーん、程度の感覚だ。いや、逆に乗っ取りで私を殺さないで欲しかったと眉を寄せる。
「話は長くなるから、夕食もここでいただきましょう」
ママの一言で、ふと思い出す。パパは遅くなるのかな。呟いたら、スチュアートが「旦那様が喜びます」と涙ぐんだ。最近、パパは外で仕事ばかりだから……起きてる間に帰ってきたら、お膝に乗ってあげよう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
577
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる