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第6章 聖獣、一方的な契約
21.呼ばれぬ客の想定外(4)
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「オレはキヨヒト。皆はキヨって呼んでる」
『…セイというのは?』
後ろから抱き着いているリアムに目線を向けながら、黒豹が大きく尻尾を地に叩きつける。ぱしんと音がしても、リアムはけろりとしていた。
「リアム専用のオレの呼び名で、他の奴は使わない」
『誓約による制約か?』
「違う、な……ほら、リアムは皇帝陛下じゃん。だからリアムが使う愛称を、他の人は勝手に真似しないだけ」
表現に困って地位のせいにしてみた。友達同士のちょっとしたあだ名なんだが、この世界でそういう習慣はないと学んでいるので、説明に困ってしまう。前世界の外国人が使う愛称のような呼び方は存在するが、子供のあだ名は存在しなかった。
確かに「○○ちゃん」が「○△たん」になったりするのは、方程式も無いし脈絡がない。なかなか浸透しない文化だろう。オレにとってはどちらでもいいが……すごく嫌な予感がする。
黒豹がぱたぱた尻尾を揺らした。
「それで名前は?」
『名前は契約主がつけるものだ』
後ろからリアムが回り込んで、座ったオレの膝にちょこんと乗る。小柄なので重くないが、顔のあたりで触れる黒髪が擽ったかった。ついでに、すごくいい香りがする。
「オレが付けるの?」
『そうだ』
リアムの黒髪の匂いをかぎながら現実逃避していたオレだが、最後通牒のように突きつけられた現実に眉を顰めた。
正直、オレのネーミングセンスは酷い。そりゃもう、かつて中学校の友人が呆れて頭を抱えたくらい酷かった。ペットの犬に「いぬ」と名付けようとしたレベルだ。
「黒豹……か」
かつてのゲームネームだったDDは、イケメンの友人が付けてくれたのだが何かの略だったな。確か……ダークなんたら……ダメだ、覚えてないわ。そういう略した頭文字の方が言い逃れが出来ていいかも知れない。
「えっと…うーんと」
唸りながら、黒豹をそのまま英語にするとブラックパンサー。あれ、パンサーでいいんだよな? レパードも豹じゃね? でもピンクパンサーって豹だったよな。混乱しながら頭文字を抜いたらBP……どっかの国の石油会社みたいになったぞ。これはマズイ。
レパードって豹に自動翻訳されるんだろうか。だとしたら「豹に豹って名づけるなんてバカだ」と思われかねない。ライオンなら「レオ」で片付いたのに、残念だ。
「ところで聖獣って性別あるの?」
『ない』
『…セイというのは?』
後ろから抱き着いているリアムに目線を向けながら、黒豹が大きく尻尾を地に叩きつける。ぱしんと音がしても、リアムはけろりとしていた。
「リアム専用のオレの呼び名で、他の奴は使わない」
『誓約による制約か?』
「違う、な……ほら、リアムは皇帝陛下じゃん。だからリアムが使う愛称を、他の人は勝手に真似しないだけ」
表現に困って地位のせいにしてみた。友達同士のちょっとしたあだ名なんだが、この世界でそういう習慣はないと学んでいるので、説明に困ってしまう。前世界の外国人が使う愛称のような呼び方は存在するが、子供のあだ名は存在しなかった。
確かに「○○ちゃん」が「○△たん」になったりするのは、方程式も無いし脈絡がない。なかなか浸透しない文化だろう。オレにとってはどちらでもいいが……すごく嫌な予感がする。
黒豹がぱたぱた尻尾を揺らした。
「それで名前は?」
『名前は契約主がつけるものだ』
後ろからリアムが回り込んで、座ったオレの膝にちょこんと乗る。小柄なので重くないが、顔のあたりで触れる黒髪が擽ったかった。ついでに、すごくいい香りがする。
「オレが付けるの?」
『そうだ』
リアムの黒髪の匂いをかぎながら現実逃避していたオレだが、最後通牒のように突きつけられた現実に眉を顰めた。
正直、オレのネーミングセンスは酷い。そりゃもう、かつて中学校の友人が呆れて頭を抱えたくらい酷かった。ペットの犬に「いぬ」と名付けようとしたレベルだ。
「黒豹……か」
かつてのゲームネームだったDDは、イケメンの友人が付けてくれたのだが何かの略だったな。確か……ダークなんたら……ダメだ、覚えてないわ。そういう略した頭文字の方が言い逃れが出来ていいかも知れない。
「えっと…うーんと」
唸りながら、黒豹をそのまま英語にするとブラックパンサー。あれ、パンサーでいいんだよな? レパードも豹じゃね? でもピンクパンサーって豹だったよな。混乱しながら頭文字を抜いたらBP……どっかの国の石油会社みたいになったぞ。これはマズイ。
レパードって豹に自動翻訳されるんだろうか。だとしたら「豹に豹って名づけるなんてバカだ」と思われかねない。ライオンなら「レオ」で片付いたのに、残念だ。
「ところで聖獣って性別あるの?」
『ない』
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