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第4章 愚かな策に散る花を
4-18.不慮の事故は必然です
「ゼロシアは動かない」
「あら、もう手を打ったの?」
「動こうとしたのは王弟派だ」
「まあ」
ドロシアが意味ありげに笑う。オズボーン王室と縁戚関係にあるゼロシア国だが、現在は2つに割れていた。主流である現王と王太子の一派、オズボーンから妻を迎えた王弟派だ。
降雨量が急激に減ったここ10年で、オズボーンの国力は著しく低下した。彼らは他国の王族と婚姻を結ぶことで、豊かな国土を持つシュミレ国へ攻め込もうとしている。策として悪くはない。
ただ、仕掛けた相手が悪かっただけ。
後に賢王と讃えられる治世を敷くエリヤと、彼の望みを全力で叶える有能な執政ウィリアムがいなければ……あるいは成功したかもしれない。そして大陸で『聖女』として謳われるリリーアリスの存在も、他国がシュミレ国に攻め込まない要因のひとつだった。
オズボーンとの戦が終わって国が弱っているタイミングで、内側の貴族が国王暗殺に動いた。この動きはすべて隣国の策略によるものだ。知っていて罠に嵌ったウィリアムが手をこまねいている筈もなく。
「近々ゼロシア王弟殿下が事故に遭われるそうだ、儚いな」
「それはまた……お気の毒に」
これから『不慮の事故に遭う』ゼロシア王弟の運命を、彼と彼女は一言で切り捨てる。他国の王族だからではなく、互いが傅く相手を傷つける敵だからだ。利害の一致により、事故は確定事項となった。
ドロシアが魔女と呼ばれた原因は、菫色の瞳だ。しかし現在彼女を知るウィリアムやエイデンが『魔女』と呼ぶのは意味が違う。彼女自身が身につけた人脈と服従させた配下の能力故だった。少年王の姉として政略結婚の駒にされかねないリリーアリス姫を護るため、ドロシアは忌み嫌われる能力をフル活用する。
同様に『死神』と呼ばれるウィリアムも、少年王エリヤを護ろうと全力を尽くす。彼らの利害が一致する限り、互いは利用できる駒だった。
「お悔やみはいつ頃送りますの?」
「お任せしますよ」
他人行儀名口調で、交わされる会話は黒い思惑に塗れている。事故に遭う時期を決める彼らの言葉は、読み取られぬよう唇の動きを隠して行われた。
「ウィル、この薔薇を摘んでもいいか?」
「お待ちください、エリヤ様。お手が傷つきますゆえ、私が摘みましょう」
侍従としての言葉を返して立ち上がる。ウィリアムは隣のレディを振り返らなかった。
「あら、もう手を打ったの?」
「動こうとしたのは王弟派だ」
「まあ」
ドロシアが意味ありげに笑う。オズボーン王室と縁戚関係にあるゼロシア国だが、現在は2つに割れていた。主流である現王と王太子の一派、オズボーンから妻を迎えた王弟派だ。
降雨量が急激に減ったここ10年で、オズボーンの国力は著しく低下した。彼らは他国の王族と婚姻を結ぶことで、豊かな国土を持つシュミレ国へ攻め込もうとしている。策として悪くはない。
ただ、仕掛けた相手が悪かっただけ。
後に賢王と讃えられる治世を敷くエリヤと、彼の望みを全力で叶える有能な執政ウィリアムがいなければ……あるいは成功したかもしれない。そして大陸で『聖女』として謳われるリリーアリスの存在も、他国がシュミレ国に攻め込まない要因のひとつだった。
オズボーンとの戦が終わって国が弱っているタイミングで、内側の貴族が国王暗殺に動いた。この動きはすべて隣国の策略によるものだ。知っていて罠に嵌ったウィリアムが手をこまねいている筈もなく。
「近々ゼロシア王弟殿下が事故に遭われるそうだ、儚いな」
「それはまた……お気の毒に」
これから『不慮の事故に遭う』ゼロシア王弟の運命を、彼と彼女は一言で切り捨てる。他国の王族だからではなく、互いが傅く相手を傷つける敵だからだ。利害の一致により、事故は確定事項となった。
ドロシアが魔女と呼ばれた原因は、菫色の瞳だ。しかし現在彼女を知るウィリアムやエイデンが『魔女』と呼ぶのは意味が違う。彼女自身が身につけた人脈と服従させた配下の能力故だった。少年王の姉として政略結婚の駒にされかねないリリーアリス姫を護るため、ドロシアは忌み嫌われる能力をフル活用する。
同様に『死神』と呼ばれるウィリアムも、少年王エリヤを護ろうと全力を尽くす。彼らの利害が一致する限り、互いは利用できる駒だった。
「お悔やみはいつ頃送りますの?」
「お任せしますよ」
他人行儀名口調で、交わされる会話は黒い思惑に塗れている。事故に遭う時期を決める彼らの言葉は、読み取られぬよう唇の動きを隠して行われた。
「ウィル、この薔薇を摘んでもいいか?」
「お待ちください、エリヤ様。お手が傷つきますゆえ、私が摘みましょう」
侍従としての言葉を返して立ち上がる。ウィリアムは隣のレディを振り返らなかった。
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