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第4章 愚かな策に散る花を
4-24.描く未来は何色か
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煌びやかな謁見の間に、豪華な顔ぶれが揃っていた。
シュミレ国王エリヤが玉座に、その傍らに騎士であり執政であるウィリアムが侍る。玉座の段下、左側に臣下が右側に客人が並ぶのが慣例だった。
チャンリー公爵家のショーン、アレキシス侯爵家は当主と並んでエイデンも臨席する。侯爵や伯爵がかなり欠けた臣下の列と向かい合う形で、ゼロシア王息で王太子の青年とその妻が臣下と共に並んだ。
「ゼロシア王家を残し、ゼロシア自治領とする。なお王弟アーロンは王籍剥奪の上、反逆罪で監禁。王太子たるエルヴィスへ、シュミレ国侯爵家の地位を与える。ゼロシア自治領の監督は、アスターリア伯爵家に一任する」
「かしこまりました」
反論なく受け入れられたゼロシアの回答に、ウィリアムはひとつ頷いた。それから視線を動かし、エルヴィスに付き添った現国王派のゼロシア貴族を見回す。
「ゼロシア王から進言のあった貴族は、そのままシュミレ国の爵位を与えよう」
「はっ」
一斉に頭を下げる。
「不満はないか?」
ようやくエリヤが口を開いた。彼が問いかけたのはゼロシア側ではなく、自国の貴族へ向けてだった。新しく入る他国の貴族を、そのまま貴族として扱う。これは国の統合に置いて異例なのだ。功績や貢物に応じて新たな爵位を与えることはあっても、統合された国の貴族は平民扱いとなる。
「陛下、私からひとつ」
ショーンが口を開いた。恭しく頭を下げる黒髪の従兄弟へ、エリヤが視線を向ける。ウィリアムは予想がつく進言に眉をかすかに持ち上げた。
「何だ?」
「アスターリア伯爵家へ、ゼロシア王家から姫君が嫁がれると伺いました。ならばアスターリア伯爵は陛下をお守りした功績をもって、侯爵家に引き上げてはいかがか」
国王を守った功績の叙勲を終えてから、数日置いて侯爵位を与えるつもりはあった。少なくとも他王家の姫を娶るならば、それなりの爵位や役職が必要だろう。反発を予想したため、数日様子をみる予定だったのだが……。
チャンリー公爵家から言い出したとあれば、他の貴族も口出しが出来なくなる。実力で周囲を黙らせるショーンの提案を蹴る理由は何もなかった。
「ふむ。チャンリー公爵はそのように考えるか」
「はっ」
「ならば、そのように手配しろ。ウィリアム」
「陛下の仰せのままに」
仰々しいやり取りを終え、エリヤが長いマントを翻して椅子から下りる。引き摺って歩き出す子供は、玉座の裏で無邪気に手を伸ばした。斜め後ろに控えていたウィリアムがその手を取り、慣れた所作で抱き上げる。
「上手くいったな」
「ショーンの発言には驚いたけど……ま、数日早いか遅いかの違いだし、いっか」
ひそひそ話しながら王族専用の通路をぬけていく。左側から日が差し込む廊下は、右側の壁に過去の王の肖像が並んでいた。エリヤにとっては先祖にあたる方々だ。
「もう少ししたら、エリヤの肖像も描かないと」
「面倒だ」
「そういうわけにもいかないんだって」
分かりきった会話を交わしながら、ウィリアムは縦抱っこした主の黒髪に唇を押し当てる。つぎつぎと触れ、額と頬を経て最後に唇を掠めた。
「絵、オレが欲しいの」
「我が侭な臣下だ」
嗜める口調ながら、エリヤは嬉しそうに頬を綻ばせた。手を伸ばしてウィリアムの長い髪を掴んだ少年王は、仰々しく命令を口にする。
「ならば絵師を手配せよ。最初の1枚はウィルに与える」
「光栄の極みにございます」
廊下には彼ら2人のみ。笑いながら交わした堅苦しい言葉が終わると、ゆっくり顔を寄せて――唇を重ねた。
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シュミレ国王エリヤが玉座に、その傍らに騎士であり執政であるウィリアムが侍る。玉座の段下、左側に臣下が右側に客人が並ぶのが慣例だった。
チャンリー公爵家のショーン、アレキシス侯爵家は当主と並んでエイデンも臨席する。侯爵や伯爵がかなり欠けた臣下の列と向かい合う形で、ゼロシア王息で王太子の青年とその妻が臣下と共に並んだ。
「ゼロシア王家を残し、ゼロシア自治領とする。なお王弟アーロンは王籍剥奪の上、反逆罪で監禁。王太子たるエルヴィスへ、シュミレ国侯爵家の地位を与える。ゼロシア自治領の監督は、アスターリア伯爵家に一任する」
「かしこまりました」
反論なく受け入れられたゼロシアの回答に、ウィリアムはひとつ頷いた。それから視線を動かし、エルヴィスに付き添った現国王派のゼロシア貴族を見回す。
「ゼロシア王から進言のあった貴族は、そのままシュミレ国の爵位を与えよう」
「はっ」
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「不満はないか?」
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「陛下、私からひとつ」
ショーンが口を開いた。恭しく頭を下げる黒髪の従兄弟へ、エリヤが視線を向ける。ウィリアムは予想がつく進言に眉をかすかに持ち上げた。
「何だ?」
「アスターリア伯爵家へ、ゼロシア王家から姫君が嫁がれると伺いました。ならばアスターリア伯爵は陛下をお守りした功績をもって、侯爵家に引き上げてはいかがか」
国王を守った功績の叙勲を終えてから、数日置いて侯爵位を与えるつもりはあった。少なくとも他王家の姫を娶るならば、それなりの爵位や役職が必要だろう。反発を予想したため、数日様子をみる予定だったのだが……。
チャンリー公爵家から言い出したとあれば、他の貴族も口出しが出来なくなる。実力で周囲を黙らせるショーンの提案を蹴る理由は何もなかった。
「ふむ。チャンリー公爵はそのように考えるか」
「はっ」
「ならば、そのように手配しろ。ウィリアム」
「陛下の仰せのままに」
仰々しいやり取りを終え、エリヤが長いマントを翻して椅子から下りる。引き摺って歩き出す子供は、玉座の裏で無邪気に手を伸ばした。斜め後ろに控えていたウィリアムがその手を取り、慣れた所作で抱き上げる。
「上手くいったな」
「ショーンの発言には驚いたけど……ま、数日早いか遅いかの違いだし、いっか」
ひそひそ話しながら王族専用の通路をぬけていく。左側から日が差し込む廊下は、右側の壁に過去の王の肖像が並んでいた。エリヤにとっては先祖にあたる方々だ。
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