68 / 102
第5章 魔女は裏切りの花束を好む
5-24.秘密は薔薇の下で
くすぐったいと肩を竦めるエリヤの唇を最後に塞ぐ。すぐに離れた唇は、触れるギリギリの距離で言葉を紡いだ。
「すべて排除するまで、あと少しだね」
「そうしたら、俺は自由になれる」
「……オレは置いてかれるのかな?」
不安そうに呟いた、いつもは自信家の男に伸び上がってキスをする。触れるだけの唇が離れて、笑みを浮かべた。
「お前は俺の半身だ。置いていけるはずがない」
きっぱりした断言に、ウィリアムは嬉しそうに表情を緩めた。
晴れた庭に美しい白い薔薇が広がる。白を好む少年王のため丹精込めて育てた中庭に、6人の男女は集っていた。庭の薔薇を楽しむ麗しい姉弟を微笑ましく見つめる東屋の面々は、それぞれに報告を始める。
「オレの方は戦後処理はほぼ終わりだ。今回は新たな自治領が増えたが管理は女王に任せるし、オズボーンは支配下に置いたが王族が健在。予定通りだな」
機嫌のいいウィリアムに対し、頭を抱えているのはエイデンだった。城の守りを担当した騎士団が、裏から攻め込まれたことで大幅に戦力を削られていたのだ。死者は少ないが、その分重傷者が多くて復帰に時間がかかりそうだった。
新たな騎士を育成するチャンスと、平民から新規の騎士を募集したところ……応募が多すぎて手が回らない。騎士は準貴族として扱われるため、若者にとって出世に一番近いが危険な職場として認識されている。ある意味食いっぱぐれはない職場だ。
今回、王城に攻め込まれたことで愛国精神豊かな国民は奮起した。城門の中に多くの民間人がいたのは、彼らも平鍋や鎌、鍬といった武器を手に戦うつもりで駆けつけたからだ。その愛国心は、無事だった国王によって労われた。
かつてないほど国民の士気が高まっている。今までは数を抑えて募集していたが、この際だから平民を多めに雇ったらどうかと案を出して承認したウィリアムは肩を竦めて他人事だった。
「僕は大変だったよ。まだ終わってないけどね。騎士団の立て直しに手が足りない。近衛から数人借りられない?」
「しかたない。俺の私兵を貸そう」
泣きついたエイデンに助けの手を差し伸べたのは、チャンリー公爵であるショーンだった。独自に私兵による部隊を作った彼の、今回の戦での損害は少ない。猫の手も借りたいエイデンへ貸す人数は都合できるようだった。
「すぐ貸して! 今日から!!」
「明日行かせる」
すぐに飛びついたエイデンに苦笑いし、ショーンは手配を約束する。おそらくラユダあたりも派遣されるだろう。
「私はほとんど片付いたわ。あとは調整だけね。オズボーンの将軍と国王の不仲を弄った証拠は消したし、ラシエラの女王は口を噤むよう言い聞かせたわ。オズボーンの貴族階級の半分は爵位と領地の剥奪が決まりそうよ」
他国の王室や貴族を脅した結果をさらりと報告するドロシアは、紅茶を口に運んだ。
「すべて排除するまで、あと少しだね」
「そうしたら、俺は自由になれる」
「……オレは置いてかれるのかな?」
不安そうに呟いた、いつもは自信家の男に伸び上がってキスをする。触れるだけの唇が離れて、笑みを浮かべた。
「お前は俺の半身だ。置いていけるはずがない」
きっぱりした断言に、ウィリアムは嬉しそうに表情を緩めた。
晴れた庭に美しい白い薔薇が広がる。白を好む少年王のため丹精込めて育てた中庭に、6人の男女は集っていた。庭の薔薇を楽しむ麗しい姉弟を微笑ましく見つめる東屋の面々は、それぞれに報告を始める。
「オレの方は戦後処理はほぼ終わりだ。今回は新たな自治領が増えたが管理は女王に任せるし、オズボーンは支配下に置いたが王族が健在。予定通りだな」
機嫌のいいウィリアムに対し、頭を抱えているのはエイデンだった。城の守りを担当した騎士団が、裏から攻め込まれたことで大幅に戦力を削られていたのだ。死者は少ないが、その分重傷者が多くて復帰に時間がかかりそうだった。
新たな騎士を育成するチャンスと、平民から新規の騎士を募集したところ……応募が多すぎて手が回らない。騎士は準貴族として扱われるため、若者にとって出世に一番近いが危険な職場として認識されている。ある意味食いっぱぐれはない職場だ。
今回、王城に攻め込まれたことで愛国精神豊かな国民は奮起した。城門の中に多くの民間人がいたのは、彼らも平鍋や鎌、鍬といった武器を手に戦うつもりで駆けつけたからだ。その愛国心は、無事だった国王によって労われた。
かつてないほど国民の士気が高まっている。今までは数を抑えて募集していたが、この際だから平民を多めに雇ったらどうかと案を出して承認したウィリアムは肩を竦めて他人事だった。
「僕は大変だったよ。まだ終わってないけどね。騎士団の立て直しに手が足りない。近衛から数人借りられない?」
「しかたない。俺の私兵を貸そう」
泣きついたエイデンに助けの手を差し伸べたのは、チャンリー公爵であるショーンだった。独自に私兵による部隊を作った彼の、今回の戦での損害は少ない。猫の手も借りたいエイデンへ貸す人数は都合できるようだった。
「すぐ貸して! 今日から!!」
「明日行かせる」
すぐに飛びついたエイデンに苦笑いし、ショーンは手配を約束する。おそらくラユダあたりも派遣されるだろう。
「私はほとんど片付いたわ。あとは調整だけね。オズボーンの将軍と国王の不仲を弄った証拠は消したし、ラシエラの女王は口を噤むよう言い聞かせたわ。オズボーンの貴族階級の半分は爵位と領地の剥奪が決まりそうよ」
他国の王室や貴族を脅した結果をさらりと報告するドロシアは、紅茶を口に運んだ。
あなたにおすすめの小説
バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる
衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。
男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。
すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。
選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。
二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。
神子の余分
朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。
おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。
途中、長く中断致しましたが、完結できました。最後の部分を修正しております。よければ読み直してみて下さい。
契約結婚だけど大好きです!
泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。
そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。
片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。
しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。
イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。
......
「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」
彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。
「すみません。僕はこれから用事があるので」
本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。
この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。
※小説家になろうにも掲載しております
※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります