能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

暇野無学

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032 ファングキャット

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 また怪我をしてしまったと思い、慌ててポーションを取り出したが・・・どれを飲もうかな。
 薬師ギルドのエルフは、矢傷を見て中級の中を傷に振り掛けて残りを飲んだら綺麗に治るって言っていたので、中級の中を・・・〈クリーン〉で綺麗にしてと。
 手で傷を探るとその周辺に軽く振り掛けて残りを飲む。

 ふむ、青臭いが熊ちゃんのゲロマズポーションとは大違いだ。
 味の比較をしている間に痛みが消えたので、手で撫でてみると傷があったとは思えない滑らかさ。
 流石はお高いポーションですこと。
 買ってて正解だけど、ポーションを飲むのが早くないか。
 この調子だと一年に3,4回ポーションを飲む羽目になりそうだ。

 《マスター大丈夫ですか?》
 《マスターを攻撃した奴は落ちました》
 《プスリと刺してやりました!》

 そうだった、落ちたって事は死んだかな。
 と言うより、あれは何だったんだ?

 《ビーちゃん、落ちた所へ案内してよ》

 《41号が案内するよ》
 《8号も行きます!》
 《マスター、ここでーす♪》
 《ずるいぞ!》

 小さな蚊柱、蜂柱が出来ている所へ行くと、黒い毛玉。
 良く刺せたなと思いながら拾い上げると、ふわふわだが耳や鼻が変色している。
 全長1m程の毛玉で、耳や鼻は柔らかかったので刺された様だ。

 持ち上げた毛玉が呻き声を上げる。

 (テイム)〔ファングキャット・4・・・3・・・2・・〕

 うおーっと(テイム・テイム)〔ファングキャット・4-1〕

 テイム出来ちゃった。
 スーちゃんは昆虫には見えないし、かと言って動物とも言い難い。
 クーちゃんとビーちゃんで二匹テイム出来ていたので、動物も出来るだろうと思っていたが、一匹テイム出来た。

 見た目完全な猫だが、鋭い牙が口からはみ出している。
 体長約50cm体高約40cm、ふわふわ尻尾60cmオーバー、黒と焦げ茶の斑模様。

 《毛玉ちゃん、聞こえるかな》

 《はい、マスター》

 《あそこで何をしていたの?》

 《狩りです。獲物がくるのを待っていたら、大きな物が飛んできて潰されそうになったのです》

 そりゃー悪い事をしたな。
 取り敢えず名前を付けて、能力確認だ。

 《君はミーちゃんね。ミーの1が君の名前だよ》〔ファングキャット、4-1、夜目、俊敏、40〕

 《判りましたマスター》

 ん、夜目と俊敏って出たな。

 (スキル)〔シンヤ、人族・18才。テイマー・能力1、アマデウスの加護・ティナの加護、生活魔法・魔力10/10、索敵中級中、気配察知中級中、隠形中級中・木登り・毒無効・キラービーの支配〕
〔キラービー、50-50、複眼、毒無効〕
〔スライム、30-1、軟体、ジャンプ、8〕
〔ファングキャット、4-1、夜目、俊敏、40〕

 ファングキャットの能力が夜目と俊敏か、夜目も捨てがたいがここは迷わず俊敏だな。

 俊敏を選択すると〔木登り・毒無効・キラービーの支配・俊敏〕となった。
 試しに夜目も選択したが、音沙汰なしなので選択は一つだけらしい。
 俊敏をどうやって試そうかと考えたが、反復横跳びしか思いつかないので止めた。

 ジャンプの訓練を中止し、ミーちゃんの俊敏を見てみたいと思い、潜んでいた木に登って貰った。
 素速い身のこなしであっと言う間に元いた枝に駆け上がり、そのまま梢の先迄行ってしまった。
 その際も真っ直ぐ登っているかと思えば、リスの様に幹の回りを螺旋状に登ったり、一瞬で反対回りになったりと俊敏は伊達じゃない動き。

 こりゃー良い能力が手に入ったとほくそ笑む。
 能力の後ろの40が消えれば、クーちゃんと同様テイムを解放しても能力は残るはず。
 試しにミーちゃんと鬼ごっこをしてみたら、捕まえるのは無理だが相応の動きが出来て追う事はできた。

 ジャンプ力と素速い動きが手に入ったのなら、後は強い力が有ればそれなりに闘える様になると思う。
 で、強い力でも熊さんの力はちょっと違うと思う。
 人形でそれなりの力を有する野獣と言えば、オークだ。
 あいつの力の半分でも使う事が出来れば、後は剣の練習を積めば一人でも旅立てる。

 * * * * * * * *

 《マスターと同じ種族のたまり場ですか》

 《そうだけど、子供も多いから攻撃しちゃ駄目だよ。と言うか、常に俺の側に居なよ》

 《判りました、マスター》

 さてどうなるのかなと思いながら村の入り口に到着。

 「シンヤだったな。なんでスライムとファングキャットを連れているんだ?」

 「えっ、テイムしたからですよ」

 「テイマーって、一匹しかテイム出来ないんじゃなかったのか」

 「さぁ~、他のテイマーに会った事がないのでよく判らないけど、俺ってテイマー神の加護が有るのでそのせいかもね」

 「獣は村に入れられないんだが、テイムしているのなら良いか。そいつが村人や家畜を襲ったら、全てお前の責任だから忘れるなよ」

 「判りました」《ミーちゃん、暫く俺の肩に乗ってなよ》

 《マスターの肩に・・・宜しいのですか》

 《スーちゃんは子供達の人気者・・・玩具なので、一緒に居るともみくちゃにされるよ》

 そう言うと、もみくちゃの言葉に反応して急いで俺の肩に乗ってきた。
 ファングキャットって牙よりも爪の方が凶器と、引っかかれて知ったよ。
 足が結構太くて爪もでかい、爪を引っ込めているときは全然判らないので、ファングキャットって名が付いたのだろう。

 〈あっ、スーちゃんだー♪〉
 〈スーちゃん遊ぼう〉
 〈俺が蹴るんだ!〉
 〈シンヤが~、猫ちゃん乗せてる〉
 〈猫ちゃん抱かせて~♪〉

 《スーちゃん行っておいで、遠くに行ったり怪我をさせない様にな》

 《はい、マスター》

 「シンヤー、フランが探していたよー」

 「有り難うね。行ってみるよ」

 《マスター、この小さなマスター達は何ですか?》

 《人族の子供達だよ。弱いので、噛んだり爪を立てたりしちゃ駄目だよ》

 《何か、見つめてくるんですけど》

 《慣れたら遊んであげてね》

 フランの家へ行くと、村長達と地図を囲んで睨みながら相談している。

 「シンヤさん、何処まで行っていたんですか?」

 「森の境辺りに居たよ。用はなに?」

 「村の耕作地を広げようって事になっちゃって、土魔法が上達したのなら壁を作ってくれと言われたんですが、どうすれば良いのか聞きたくて」

 「ん、シールドのでかいのを作れば良いじゃん」

 「そう思って作って見たんですが、倒れるんですよ」

 「シールドの様に地面に固定しててもか」

 「シールドやドームと同じ様に作ったんですけど・・・」

 壁か、野獣の侵入防止用なら、壁よりも柱の方が良いんじゃないの。
 現に村の周囲は丸太の柵だし、ストーンランスの巨大なのを立てていけば良いだけだし。

 村長達と共にフランが立てた壁を見に行くと、幅2m高さ8m程の板が倒れている。
 埋まっていた部分1m程の土が抉れているので、地面は柔らかそうだ。
 多分フランに建築の経験がないので、垂直に壁を立てる方法も知らないのだろう。
 壁を真っ直ぐに立てたつもりでも、地形の傾斜等の錯覚で傾いているなんて事は良くある話。

 村長に言って15m以上のロープを4本用意して貰う。
 その間にフランを現在の柵の所へ連れて行き、柱をじっくり見て貰う。

 「この柱と同じ太さで長さは・・・倍を頭に刻んでおけよ」

 「此れって30cm程の太さがあるんだけど、長さが2倍ですか」

 「イメージとしてだよ。ストーンランス作りと基本的に同じだけど、柱を横に置いて魔法を使うつもり。延々と同じ物を作ったのは、頭に刻み込んだから思っただけでストーンアローやランスが作れるんだ。倒れた壁だってシールドを思い、それをでかくしただけだろう」

 「まぁ、そうですけど」

 「実際の長さは、一本立ててから村長に決めて貰えばいいさ。試しに先の尖っていないストーンランスを作ってみてよ。短槍の槍先の無い物だな」

 目の前に俺の短槍を立てて見せ、柄と同じ物を要求する。
 槍を見て何かブツブツと言っていたが〈・・・ハッ〉と掛け声と共に土の棒が現れた。

 それを拾い上げて立てると倍の長さを要求する。
 倍の長さの物が出来ると、今度は同じ長さで太さを倍にと難易度を上げる。
 柱を一気に作らせるよりも、此方の方が手っ取り早そうだ。
 流石に長さも太さも倍になると重くて持っていられないので、魔力を抜かせて倒れたシールドの所へ戻る。

 「シンヤさん、ファングキャットをテイムしたんですか」

 「ああ、可愛いだろう」

 「まぁ、尻尾がふさふさなのは良いですが、黒と濃い茶色の斑なんですね。でも此れで三種ですよ」

 「まあね。クーちゃんとビーちゃんで虫が二種類、スーちゃんは何になるんだろうね」

 「さぁ~、獣には見えませんし虫にも見えません」

 「虫が二種類テイム出来たのなら、獣だって二種類テイム出来ると思わないか」

 「いくら何でも、常識から外れてますよ」

 「今でも十分常識外だろう。そのうち試してみるさ」

 常識から外れているね。
 アマデウスとティナの二柱の加護、それも投げやりとは言え正式な加護を二つ持っている、俺の方が常識から外れていると思うけどな。
 何事も試してみなきゃ判らないし、試してみる価値は十分にある。

 倒れたシールドの所へ戻ると、既に村長がロープを用意して待っていた。
 シールドの魔力を抜かせ、その場所に深さ2.5m程の穴を掘る事から始めた。
 次ぎにその穴に先程の物と同じ柱を垂直に作らせ、半分以上埋まった物を倍の長さと太さに作り替えさせた。
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