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一章 降って湧いた災難
朱と緋と茨木 弐
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俺の隣で寝ている、運命の番を見る。
さっきまで散々、怒り【青】に帰ると訴えていた。
気を失るまで抱いて落としたが、このあと機嫌を取らなければならん。
百合は何が好きだろうか?
こういった事すら初めてだ。
いつもは適当に欲求のまま抱いて、終わらせる。
奴らも…番のいないΩなどは俺を利用する。
絶対に噛まないからだ。
割り切った付き合いをして適当に囲っている奴らも解放するつもりだ。
犯罪者や奴隷に関してはそのまま置いておくしかないが。
百合はかなり潔癖な性質を持つ。
俺も本来は好まぬが、こいつはより煩いだろう。
それに緋の言うとおり今は良くないものが多い。
この皇の神域もだ。
お姫様がなんの心配もなく俺と仲良く暮らすには、そろそろ掃除の必要がある。
父に訴えているが、許しを得られぬなら勝手にやるしかないが…
頬杖をついた反対の手で、可愛らしい寝息をたてている、お姫様の銀の髪を一房取る。
最上級の銀糸の様なこの髪も、真っ白な一切の陽に当たったことのないような肌も、素晴らしく美しい。
「正しく、絶世の」「ため息が出るほどに美しい」などと呼ばれる類の美貌だが、それよりも俺を魅了するものがある。
近寄り難いまでの気高く、貴いその魂。
俺を恐れない態度も好ましい。
発情期を開けてすぐに畏まった態度や物言いをしたが、やめさせた。
こいつは生意気なくらいが可愛い。
他の奴らがそんな事をすれば俺は怒り、始末することもあるかもしれぬ。
(お姫様。お前は特別だ)
掴んだ髪に口づけを落とす。
まだまだお姫様は眠りの中だ。
俺の従者を紹介したかったが次の機会にしよう。
奴らが来た。
「お呼びですか、若」「「「「あまりに長いので困りました」」」」
俺の従者たちが来た。
茨木に四童子たちだ。
俺の腹心たちに新たに仕えるべき主人を紹介してやる。
「こいつを俺の嫁にする」
(俺のお姫様なら当然だろう?)
俺の言葉に戸惑っている従者たちこいつの身の上を伝える。
「【青】の家の出の百合だ。確か…宗家の跡取りだったか?」
こいつにはもう角もある。
だから既にその身分は【皇】のものだ。
もう【青】ではない。
「「「「「は?!」」」」」
珍しく従者たちが揃って驚き、口をぽかんと空けている。
星熊のやつなどは目を白黒させて「ファーーッ?!」などと奇声をあげている。
(お前たち、随分仲が良いな)
四童子は四つ子でよくこんな事があるが、茨木は違うのに珍しい。
「イヤイヤイヤ、若!今は時期が悪いです!」
「この子、藍青と瑠璃様の子ですよね?
【青】の子ですよ?!唯一の!ひとりしかいない跡取りですよ!!
なんてことしてくれたんですかッ!!!」
「あー、角まで与えて…諦めろ星熊」
「番にしちゃってるからもう無理だ」
口々に喋る、四童子。
茨木はぷるぷると震えている。
「あなたは!なんて事を!!友人の弟を手籠めにしたんですか?!」
美しい柳眉を吊り上げ俺に詰め寄る。
(失敬な)
「あれも良いと言った」
緋もこれの価値を見出したなら祝福すると言った。
百合も喜んで受け入れた。それに茨木、お前が怒ることは珍しいな。
俺は運命をその手で掴んで手に入れた。
ずっとずっと大事にする。
毎日愛もたっぷり注いでいる。
俺の言葉に納得出来ないのか、茨木は再度俺に尋ねる。
「は?!そんなはずはありません!
彼女はこの子を溺愛していたはずです!
若様っ聞いておられますか?」
尚も俺に言い募る従者が煩い。
「貴様ら【少し黙れ】」
「あぐぅっ!」「「「「ぐっ…!」」」」
煩いので【呪】を使い、言葉を奪う。
少し静かになった奴らに食事の手配と父母への報告を頼む。
口々に文句を言ってはいたが、皆祝福はしてくれた。
『お妃様にまたご挨拶に参りますが、若…本当にあの食事をお与えになるのですか?
了承は…いえ、出過ぎた真似でした。
お妃様はまだまだ幼いですからお菓子などもお持ち致します』
茨木はそんな事を少し悲しそうな顔をして言い、出ていった。
これから暫くは蜜月を過ごす予定だ。
狩りもするが、あいつらに任せることも多いだろう。
お姫様がどれくらい食べるかはわからんが、こいつもなかなか強い。
十日ほど過ごした発情期でたっぷり俺も与えたが、かなり持っていく大食らいだ。
これからも色々とお前が強くなるために、もっと与える。
俺もあれもたっぷり喰らい、早く大きく、強くなれ。
そして、早く俺のところに堕ちて来い。
俺のお姫様、お前の羽化を俺は待つ。
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