66 / 131
066 四体のデスマスク②
しおりを挟む
「あの、思い出したんですけど、八頭女史の邸にお邪魔した際に『富樫のデスマスクを持っていたことがある』って言ってました。でもすぐ手放すことになったとかって······」
「えっ? 本当に?」
帰りの車中。私だけまた家まで送ってくれることになり、もうすっかり甘えていたところ、急にそのことを思い出した。防衛本能なのか、八頭女史の
とのことは記憶が飛び飛びになっていたのだ。
「その時はまだ意識はちゃんとしていたと思うんですが、慣れないお酒でボヤッとはしてましたけど」
「ポヤポヤしてる日比野ちゃんはレアだね!」
「池上、そういう話じゃないぞ。他には何か言ってた?」
運転手の田代主任まで振り返って池上に突っ込んでいる中で、私は必死にあの日の会話を思い出していく。
「ええと······、あと『白岩監督や鳴子監督の赤入り撮影台本のコピー品を比江島さんにもらった』とかって。そんなのそもそも複製なんて勝手に作っていいものなんですかね? コピー機で取ったのじゃなくて、ちゃんと製本されてるやつですよ? なんか表紙の折れ癖とかもそのまま再現されているんです」
「それは明らかにおかしいな。比江島氏はどこで手に入れたんだろう?」
「私もそれを聞いたんですけど、『次に会ったら話す』って言ってそのままになっちゃったらしいです」
そのまま彼女は泣いてしまって話どころではなくなったので、詳しく聞けなかったことが悔やまれる。どこかの出版社がそんな事を計画してるなんて、噂でも聞いたことがない。もしこれが販売されるのなら大いに問題だと思うのだが。
「正確なことは明日調べるが、富樫のデスマスクは、冨樫家も沢本家も売りに出してはいないはずだ。後は当館のとアメリカのビリーズ美術館にあるものだけだが、当館のはもちろんあるし。可能性としてはビリーズが売却したかだな」
難しい顔で西村課長が言う。これほど有名な美術品なら何らかの情報が当館に届いて然るべきなのに、それがなかったことを苦々しく思っているようだ。
「でもビリーズが売却していたら、日本でニュースになりませんか?」
「どの時期に売却したかにもよるな。ネットが普及したのは1990年代。それ以前だと情報が遮断されていたのかもしれない」
車内に沈黙が落ちると、尾崎係長が追い打ちをかけるようなことを口にする。
「そもそも『夜を殺めた姉妹』の祭壇が本物なら、それが八頭女史のところにあるのもおかしな話なんだ。だってそれもアメリカに行っていたはずなのだから」
しばらく誰も言葉を発しなかった。私にあの部屋の祭壇が本物かどうかを見分ける力はない。だが、沢本清彦の本から推測することは出来るかもしれない。
「何かしらの理由でビリーズ美術館が手放すことになった時に、八頭女史がまとめて購入したのかもしれないな。富樫のデスマスクも」
「えっ? 本当に?」
帰りの車中。私だけまた家まで送ってくれることになり、もうすっかり甘えていたところ、急にそのことを思い出した。防衛本能なのか、八頭女史の
とのことは記憶が飛び飛びになっていたのだ。
「その時はまだ意識はちゃんとしていたと思うんですが、慣れないお酒でボヤッとはしてましたけど」
「ポヤポヤしてる日比野ちゃんはレアだね!」
「池上、そういう話じゃないぞ。他には何か言ってた?」
運転手の田代主任まで振り返って池上に突っ込んでいる中で、私は必死にあの日の会話を思い出していく。
「ええと······、あと『白岩監督や鳴子監督の赤入り撮影台本のコピー品を比江島さんにもらった』とかって。そんなのそもそも複製なんて勝手に作っていいものなんですかね? コピー機で取ったのじゃなくて、ちゃんと製本されてるやつですよ? なんか表紙の折れ癖とかもそのまま再現されているんです」
「それは明らかにおかしいな。比江島氏はどこで手に入れたんだろう?」
「私もそれを聞いたんですけど、『次に会ったら話す』って言ってそのままになっちゃったらしいです」
そのまま彼女は泣いてしまって話どころではなくなったので、詳しく聞けなかったことが悔やまれる。どこかの出版社がそんな事を計画してるなんて、噂でも聞いたことがない。もしこれが販売されるのなら大いに問題だと思うのだが。
「正確なことは明日調べるが、富樫のデスマスクは、冨樫家も沢本家も売りに出してはいないはずだ。後は当館のとアメリカのビリーズ美術館にあるものだけだが、当館のはもちろんあるし。可能性としてはビリーズが売却したかだな」
難しい顔で西村課長が言う。これほど有名な美術品なら何らかの情報が当館に届いて然るべきなのに、それがなかったことを苦々しく思っているようだ。
「でもビリーズが売却していたら、日本でニュースになりませんか?」
「どの時期に売却したかにもよるな。ネットが普及したのは1990年代。それ以前だと情報が遮断されていたのかもしれない」
車内に沈黙が落ちると、尾崎係長が追い打ちをかけるようなことを口にする。
「そもそも『夜を殺めた姉妹』の祭壇が本物なら、それが八頭女史のところにあるのもおかしな話なんだ。だってそれもアメリカに行っていたはずなのだから」
しばらく誰も言葉を発しなかった。私にあの部屋の祭壇が本物かどうかを見分ける力はない。だが、沢本清彦の本から推測することは出来るかもしれない。
「何かしらの理由でビリーズ美術館が手放すことになった時に、八頭女史がまとめて購入したのかもしれないな。富樫のデスマスクも」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる