29 / 59
第1章 クソ勇者からはじまる簡単なお仕事
第29話 順調な滑り出し
しおりを挟む
ツバサたち一行は〈エルフの里〉を目指して中央山脈に向かっていた。
ここは山の麓に広がる草原だ。その長閑な雰囲気でヨーロッパの牧草地帯を連想させる。
だが、忘れてはならない。ここが暗黒大陸だということを。
案の定、グアンナという牛型の魔獣が二頭仲良く寝そべっていた。
外見は巨大なバッファローのようだが、表皮は紫色で禍々しい模様が体全体を覆っている。
もちろん、魔獣の存在は先刻から判っていたが、実際に見るとその迫力に気圧される。
「でかいな~。インドゾウと同じくらいありそうだ」
ツバサは思わず地球の生き物と比較してしまった。
「ツバサ、インドゾウとはなんだ?」
シャルロットの頭の上にはてなマークが浮かんでいるように見えた。
「あれと同じくらいの動物さ。大きいが凶暴ではないよ」
「この大陸では大型の生き物は例外なく魔獣だからな。大型の動物を見てみたいものだ」
「実は絶滅してしまってね。もう見ることはできない」
「それは残念だ……」
これくらいの嘘は許されるだろう。ツバサには多少の罪悪感が芽生えたが、すぐに目の前の魔獣に集中した。
そのとき、先頭を歩いていたオリヴィエが振り向いて言った。
「シャルロットさま、ツバサたちにあれを見せておきたいのですが?」
「いいわよ、任せなさい!」
シャルロットは全力でグアンナに突進した。
「ツバサ、見てろよ」
オリヴィエもシャルロットの後を追いかけた。ただし、距離を取っている。
シャルロットはグアンナのに到達すると高くてジャンプした。
グアンナもシャルロットに気がついて起き上がるがもう遅い。シャルロットは剣を抜いてグアンナの背中に突き刺した。
「グワ~ッ!」
ものすごい雄叫びをあげてグアンナがシャルロットを探す。
そのシャルロットはこちらへ向かって引き返してくる最中だった。
「おい、こっちへ来るな!」
思わず叫んでしまうツバサ。
だが、シャルロットはツバサのところではなくオリヴィエの後ろに隠れた。
背中を刺されたグアンナは怒りに任せてオリヴィエとシャルロットに突進してくる。
オリヴィエは両手を前に出してなにか叫んだ。おそらく、魔法障壁を張ったのだろう。
そして、地響を立てながら突進してくるグアンナ。速度は最高速に達しているはずだが魔法障壁に気づかない。
「ドッカン!」
ものすごい衝撃音がして、オリヴィエは数メートル後ろに押しやられた。
だが、オリヴィエの魔法障壁は壊れないどころか、その殆どの運動エネルギーが跳ね返されてグアンナの頭骨は粉砕していた。
そしてあとを追っていたもう一頭のグアンナの首をシャルロットは難なく切り落とした。
彼女は魔法による身体能力向上は使っていると思われるが、ツバサと戦ったときの魔法剣、黒炎剣は使っていない。
「流石です! シャルロットさま! それにオリヴィエさまも!」
ツバサの後ろで感嘆する少女がいた。
それはシャルロットの世話役としてついてきた龍神族のノエルだった。
彼女は家事全般を受け持つだけでなく、弓の達人でもあるので、最後尾についてツバサたちを守るポジションに付いている。
「オリヴィエの魔法障壁は硬いだけでなく、強靭さも兼ね備えているんだな。グアンナとの激突で破壊されたかと思ったよ。それにシャルロットの太刀筋は完璧だ」
戻ってきたシャルロットとオリヴィエにツバサは感想を述べた。
「無礼ですよツバサさん。あなたにシャルロットさまとオリヴィエさまの本当の凄さが解るとでも言うのですか?」
ノエルはツバサに抗議する。
(この子は二人をとても尊敬しているんだな……)
「そうだったね。不遜な発言だったよ。すまない、ノエル」
「解ればいいのです」
ノエルが得意げに微笑むが、フェルとクラウにすれば納得できない。
ツバサがシャルロットとの決闘で勝利したことを知らないはずはないのだが……。
「お兄ちゃん……」
彼女たちはとても不満そうにツバサを見つめるが、ツバサとしては苦笑いするしかない。
その後の中央山脈越えでは、シャルロット、オリヴィエ、そしてノエルの無双をたっぷりと堪能することができた。
山越えの途中には飛竜の棲家があったが、ノエルが魔法を付与した弓矢で撃ち落としまくったので、彼らも学習して襲ってこなくなった。
人間界ではもう少し控えめにして欲しいなと、ツバサは思った。
中央山脈を越えてしまえば〈エルフの里〉があるはずの森林地帯まで近くである。
◇ ◇ ◇
龍神族の国を出てから一週間が経過した。
すでにツバサたちはエルフの里の領域に入っている。いや、正確に言うとエルフの里がある森林地帯だ。
この森林地帯は暗黒大陸の中でも有数の領域で、中央山脈の西側から西海岸近くまで広がっている。これだけ広大な地域でエルフの里を探しださなければならないのだ。何の手がかりもなく探したら、何ヶ月かかるか分からない。
エルフの里の近辺で、ツバサたちは夕食を摂っていたときである。
「なぁ、ツバサ。俺たちは仲間だよな?」
オリヴィエがいつになく優しい声でツバサに話しかけた。
「い、今更何を言うんだ?」
「俺は仲間に隠し事をしちゃ駄目だと思うんだ」
「そうかもしれないな。でも個人情報の開示はしないぞ。今どきのネット社会では悪用される恐れがあるからな」
「何を言ってるのか解らね~よ。それよりもだ、お前たち三人は夕方になると交代でいなくなるよな?」
「女性がいるんだぞ。言い難いことを聞くなよ」
「交代で花でも摘みに行ってるとでも言うのか?」
「そ、それ以外に何がある?」
「長過ぎるんだよ。それにな、帰って来ると必ず肌艶がよくなっているし、表情がほっこりしている。何故だ?」
「さ、さぁな?」
「お前もだよ、ツバサ!」
ツバサ、フェル、そしてクラウは夕方になると交代で風呂に入っていた。もちろん、その風呂はグラン邸の大浴場である。
ただ、ツバサはシャルロット、オリヴィエ、ノエルの三人に毎日浄化魔法を使っていたので、その三人だけが薄汚くなっているわけではない。表面上は小奇麗なままである。
「俺の肌艶まで観察してたのか?」
「そ、それは……」
「観察してたのはわたしよ!」
シャルロットが参戦してきた。
女性は女性の微妙な変化に敏感だ。
そらく、シャルロットはフェルとクラウの様子を伺うついでにツバサも見ていたのだろう。
「何をしてたの? 近くに川も湖もないから水浴びしてたわけじゃないでしょ?」
(ま、まずい……)
知られてもいい秘密もあるが、グラン邸はツバサにとっては最大級の秘密だ。これをシャルロットたちに教えてもいいものか? ツバサは悩んだが彼女たちは時間を与えてくれなかった。
「実は湯船を作って交替で入ってたんだ。黙っててごめん……」
「どうやって湯船を作ったの?」
「え~と、まずは火炎魔法で地面に穴を開ける。その時、穴の表面がどろどろに溶けるから、そこに氷塊を投入する。激しく蒸気が発生するけど、何度か氷塊を投入すると穴の表面が固まり、ちょうどいい温度の風呂場ができるわけだ」
「あのね~、それってわたし達に隠すこと? その程度の魔法で?」
「ツバサさま、それはちょっと無理があると思います」
クラウが諦めきった表情でツバサを見つめる。
「お兄ちゃん……。隠す必要あるの?」
フェルは秘密にすることすら疑問に思っている。
「なぁ、兄弟。お前は自然に嘘をつけるタイプの人間ではないだろ。嘘を突き出すと際限なく嘘をつかなければならないぞ。それでもいいのか?」
オリヴィエの正論が決め手となって、ツバサはグラン邸の秘密を話すことになった。
もちろん、このことは誰にも話さないという約束をさせたのだが、シャルロットとノエルは怒りまくっていたのは言うまでもない。
だが、直情型精神の持ち主は覚めるのも早いらしい。
「ああ~いいお湯だったわ」
シャルロットがホクホクした顔でラウンジのソファーに倒れ込んだ。
「早く教えてくれたらよかったのに。ツバサさん、あなたは本当にクズですね」
ノエルはほんのりと赤みがかかった顔でツバサに悪態をつく。
「酷い言いようだな。少しは感謝してくれてもいいんじゃないか?」
「そうですね。今回は譲ることにしましょう。ツバサさん、気も持ちのいいお風呂でした。ありがとうございます」
(き、気持ち悪な~)
そうとう気分がいいのだろう。ノエルがいつになく素直である。
「なぁ、兄弟。グラン邸には立派なバーまであるんだな」
「あっ、お前もう飲んでるな」
オリヴィエの顔は湯船に使った紅さではなかった。いつの間にかグラン邸の家探しをしたらしい。おそらくツバサの部屋にあるミニバーで酒を飲んできたのだろう。
「心配しないでくれ。後は自分の部屋で飲むから」
「心配なんかしてね~よ」
「ツバサ~、わたしは冷たい飲み物が欲しい」
シャルロットが甘えた声でツバサに注文した。
「俺に言うなよ……」
「シャルロットさま、わたしがお持ちします。クラウさん、キッチンの使い方を教えて下さいませ」
「はい、こちらですよ。ノエルさん」
ノエルとクラウは意外とうまくやっているようだ。
ツバサとノエルの仲は険悪であるが。
「わたしも行く~」
フェルもノエルとうまくやって行けそうだ。
もっとも、ノエルはツバサ以外にはとても親切で優しく、メイドのように振る舞っている。
ツバサは自分にもそうしてほしいと思うのだが、ノエルの態度が軟化する様子はなかった。
グラン邸の存在をシャルロットたちに知られてしまったが、むしろ知られてよかったのかもしれない。ツバサは秘密にする相手を間違えているのだ。
それはそうと、冒険者に守られた一般人を装ったチームとしては概ね順調な滑り出しをしたツバサたちであったが、これから始まる困難の連続でもチームワークを保っていけるのだろうか?
「なんかとっても不安なんだけどな~」
「ん? なんか言ったツバサ?」
「いや、何でも無い……」
ここは山の麓に広がる草原だ。その長閑な雰囲気でヨーロッパの牧草地帯を連想させる。
だが、忘れてはならない。ここが暗黒大陸だということを。
案の定、グアンナという牛型の魔獣が二頭仲良く寝そべっていた。
外見は巨大なバッファローのようだが、表皮は紫色で禍々しい模様が体全体を覆っている。
もちろん、魔獣の存在は先刻から判っていたが、実際に見るとその迫力に気圧される。
「でかいな~。インドゾウと同じくらいありそうだ」
ツバサは思わず地球の生き物と比較してしまった。
「ツバサ、インドゾウとはなんだ?」
シャルロットの頭の上にはてなマークが浮かんでいるように見えた。
「あれと同じくらいの動物さ。大きいが凶暴ではないよ」
「この大陸では大型の生き物は例外なく魔獣だからな。大型の動物を見てみたいものだ」
「実は絶滅してしまってね。もう見ることはできない」
「それは残念だ……」
これくらいの嘘は許されるだろう。ツバサには多少の罪悪感が芽生えたが、すぐに目の前の魔獣に集中した。
そのとき、先頭を歩いていたオリヴィエが振り向いて言った。
「シャルロットさま、ツバサたちにあれを見せておきたいのですが?」
「いいわよ、任せなさい!」
シャルロットは全力でグアンナに突進した。
「ツバサ、見てろよ」
オリヴィエもシャルロットの後を追いかけた。ただし、距離を取っている。
シャルロットはグアンナのに到達すると高くてジャンプした。
グアンナもシャルロットに気がついて起き上がるがもう遅い。シャルロットは剣を抜いてグアンナの背中に突き刺した。
「グワ~ッ!」
ものすごい雄叫びをあげてグアンナがシャルロットを探す。
そのシャルロットはこちらへ向かって引き返してくる最中だった。
「おい、こっちへ来るな!」
思わず叫んでしまうツバサ。
だが、シャルロットはツバサのところではなくオリヴィエの後ろに隠れた。
背中を刺されたグアンナは怒りに任せてオリヴィエとシャルロットに突進してくる。
オリヴィエは両手を前に出してなにか叫んだ。おそらく、魔法障壁を張ったのだろう。
そして、地響を立てながら突進してくるグアンナ。速度は最高速に達しているはずだが魔法障壁に気づかない。
「ドッカン!」
ものすごい衝撃音がして、オリヴィエは数メートル後ろに押しやられた。
だが、オリヴィエの魔法障壁は壊れないどころか、その殆どの運動エネルギーが跳ね返されてグアンナの頭骨は粉砕していた。
そしてあとを追っていたもう一頭のグアンナの首をシャルロットは難なく切り落とした。
彼女は魔法による身体能力向上は使っていると思われるが、ツバサと戦ったときの魔法剣、黒炎剣は使っていない。
「流石です! シャルロットさま! それにオリヴィエさまも!」
ツバサの後ろで感嘆する少女がいた。
それはシャルロットの世話役としてついてきた龍神族のノエルだった。
彼女は家事全般を受け持つだけでなく、弓の達人でもあるので、最後尾についてツバサたちを守るポジションに付いている。
「オリヴィエの魔法障壁は硬いだけでなく、強靭さも兼ね備えているんだな。グアンナとの激突で破壊されたかと思ったよ。それにシャルロットの太刀筋は完璧だ」
戻ってきたシャルロットとオリヴィエにツバサは感想を述べた。
「無礼ですよツバサさん。あなたにシャルロットさまとオリヴィエさまの本当の凄さが解るとでも言うのですか?」
ノエルはツバサに抗議する。
(この子は二人をとても尊敬しているんだな……)
「そうだったね。不遜な発言だったよ。すまない、ノエル」
「解ればいいのです」
ノエルが得意げに微笑むが、フェルとクラウにすれば納得できない。
ツバサがシャルロットとの決闘で勝利したことを知らないはずはないのだが……。
「お兄ちゃん……」
彼女たちはとても不満そうにツバサを見つめるが、ツバサとしては苦笑いするしかない。
その後の中央山脈越えでは、シャルロット、オリヴィエ、そしてノエルの無双をたっぷりと堪能することができた。
山越えの途中には飛竜の棲家があったが、ノエルが魔法を付与した弓矢で撃ち落としまくったので、彼らも学習して襲ってこなくなった。
人間界ではもう少し控えめにして欲しいなと、ツバサは思った。
中央山脈を越えてしまえば〈エルフの里〉があるはずの森林地帯まで近くである。
◇ ◇ ◇
龍神族の国を出てから一週間が経過した。
すでにツバサたちはエルフの里の領域に入っている。いや、正確に言うとエルフの里がある森林地帯だ。
この森林地帯は暗黒大陸の中でも有数の領域で、中央山脈の西側から西海岸近くまで広がっている。これだけ広大な地域でエルフの里を探しださなければならないのだ。何の手がかりもなく探したら、何ヶ月かかるか分からない。
エルフの里の近辺で、ツバサたちは夕食を摂っていたときである。
「なぁ、ツバサ。俺たちは仲間だよな?」
オリヴィエがいつになく優しい声でツバサに話しかけた。
「い、今更何を言うんだ?」
「俺は仲間に隠し事をしちゃ駄目だと思うんだ」
「そうかもしれないな。でも個人情報の開示はしないぞ。今どきのネット社会では悪用される恐れがあるからな」
「何を言ってるのか解らね~よ。それよりもだ、お前たち三人は夕方になると交代でいなくなるよな?」
「女性がいるんだぞ。言い難いことを聞くなよ」
「交代で花でも摘みに行ってるとでも言うのか?」
「そ、それ以外に何がある?」
「長過ぎるんだよ。それにな、帰って来ると必ず肌艶がよくなっているし、表情がほっこりしている。何故だ?」
「さ、さぁな?」
「お前もだよ、ツバサ!」
ツバサ、フェル、そしてクラウは夕方になると交代で風呂に入っていた。もちろん、その風呂はグラン邸の大浴場である。
ただ、ツバサはシャルロット、オリヴィエ、ノエルの三人に毎日浄化魔法を使っていたので、その三人だけが薄汚くなっているわけではない。表面上は小奇麗なままである。
「俺の肌艶まで観察してたのか?」
「そ、それは……」
「観察してたのはわたしよ!」
シャルロットが参戦してきた。
女性は女性の微妙な変化に敏感だ。
そらく、シャルロットはフェルとクラウの様子を伺うついでにツバサも見ていたのだろう。
「何をしてたの? 近くに川も湖もないから水浴びしてたわけじゃないでしょ?」
(ま、まずい……)
知られてもいい秘密もあるが、グラン邸はツバサにとっては最大級の秘密だ。これをシャルロットたちに教えてもいいものか? ツバサは悩んだが彼女たちは時間を与えてくれなかった。
「実は湯船を作って交替で入ってたんだ。黙っててごめん……」
「どうやって湯船を作ったの?」
「え~と、まずは火炎魔法で地面に穴を開ける。その時、穴の表面がどろどろに溶けるから、そこに氷塊を投入する。激しく蒸気が発生するけど、何度か氷塊を投入すると穴の表面が固まり、ちょうどいい温度の風呂場ができるわけだ」
「あのね~、それってわたし達に隠すこと? その程度の魔法で?」
「ツバサさま、それはちょっと無理があると思います」
クラウが諦めきった表情でツバサを見つめる。
「お兄ちゃん……。隠す必要あるの?」
フェルは秘密にすることすら疑問に思っている。
「なぁ、兄弟。お前は自然に嘘をつけるタイプの人間ではないだろ。嘘を突き出すと際限なく嘘をつかなければならないぞ。それでもいいのか?」
オリヴィエの正論が決め手となって、ツバサはグラン邸の秘密を話すことになった。
もちろん、このことは誰にも話さないという約束をさせたのだが、シャルロットとノエルは怒りまくっていたのは言うまでもない。
だが、直情型精神の持ち主は覚めるのも早いらしい。
「ああ~いいお湯だったわ」
シャルロットがホクホクした顔でラウンジのソファーに倒れ込んだ。
「早く教えてくれたらよかったのに。ツバサさん、あなたは本当にクズですね」
ノエルはほんのりと赤みがかかった顔でツバサに悪態をつく。
「酷い言いようだな。少しは感謝してくれてもいいんじゃないか?」
「そうですね。今回は譲ることにしましょう。ツバサさん、気も持ちのいいお風呂でした。ありがとうございます」
(き、気持ち悪な~)
そうとう気分がいいのだろう。ノエルがいつになく素直である。
「なぁ、兄弟。グラン邸には立派なバーまであるんだな」
「あっ、お前もう飲んでるな」
オリヴィエの顔は湯船に使った紅さではなかった。いつの間にかグラン邸の家探しをしたらしい。おそらくツバサの部屋にあるミニバーで酒を飲んできたのだろう。
「心配しないでくれ。後は自分の部屋で飲むから」
「心配なんかしてね~よ」
「ツバサ~、わたしは冷たい飲み物が欲しい」
シャルロットが甘えた声でツバサに注文した。
「俺に言うなよ……」
「シャルロットさま、わたしがお持ちします。クラウさん、キッチンの使い方を教えて下さいませ」
「はい、こちらですよ。ノエルさん」
ノエルとクラウは意外とうまくやっているようだ。
ツバサとノエルの仲は険悪であるが。
「わたしも行く~」
フェルもノエルとうまくやって行けそうだ。
もっとも、ノエルはツバサ以外にはとても親切で優しく、メイドのように振る舞っている。
ツバサは自分にもそうしてほしいと思うのだが、ノエルの態度が軟化する様子はなかった。
グラン邸の存在をシャルロットたちに知られてしまったが、むしろ知られてよかったのかもしれない。ツバサは秘密にする相手を間違えているのだ。
それはそうと、冒険者に守られた一般人を装ったチームとしては概ね順調な滑り出しをしたツバサたちであったが、これから始まる困難の連続でもチームワークを保っていけるのだろうか?
「なんかとっても不安なんだけどな~」
「ん? なんか言ったツバサ?」
「いや、何でも無い……」
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
社畜の異世界再出発
U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!?
ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。
前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。
けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる