エルフの巫女のガーディアン ~エルフの巫女を護衛するだけの簡単なお仕事って言ったよな?~

玄野ぐらふ

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第1章 クソ勇者からはじまる簡単なお仕事

第30話 迷いの森

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 シャルロットたちの大活躍で、エルフの里への旅は順調に進んだ。
 ただ、ツバサとしてはもやもやが残る行程だった。なぜなら、エルフの巫女を守る立場の自分たちが、守られる立場になっているからだ。それに、シャルロットたちが魔獣た倒すたびにドヤ顔をするノエルに、ツバサは多少なりとも腹が立っていた。

(なんでこの子は俺を目の敵にするんだろうな?)

 そしてツバサたちはエルフの里を囲んでいる森林地帯に足を踏み入れた。
 この森がエルフにより何らかの認識阻害系結界が張られていることは龍神族からの情報で解っていた。実際、龍神族も幾度となく挑戦したらしいが、一度もこの森を突破できなかった。
 それ故、龍神族はこの森を〈迷いの森〉と呼ぶ。

 そこでツバサたちは話し合い、一列縦隊になって歩くことに決めた。各自が前を歩く仲間に最大限の注意を払いながら進行する。そうすれば、誰も迷子にならないだろうという考えからだ。
 その場合、一番重要なのは先頭を歩く者の方向感覚だ。冒険者役の中で一番方向感覚に優れているのはオリヴィエなので、現在は彼が先頭を歩いている。

「この森はね、迷いの森と言われているけど実際は迷わずの森なの」

 シャルロットは自分の後ろを歩くツバサに話しかけた。もちろんツバサを振り向いたりしていない。

「森の中に入っても迷わないなら、なんの問題もないよな」

「ある意味そうね。でも、エルフの里へは絶対に行けないの」

「それは何でだ?」

「入り口付近へ戻っちゃうからよ。龍神族はエルフと友好的に付き合いたいから何度も親善部隊をエルフの里へ送り出したんだけど、全部失敗に終わったの」

「ドラゴンに乗ってエルフの里へひとっ飛びというのはだめなのかな?」

「それだと、敵対行動だと勘違いされるかもしれないでしょ。それに、空にも結界が張られているかもしれないからね」

「それはそうだな……おっと」

 ツバサはすでにオリヴィエの進行方向がズレ始めていることに気がついた。
 マップを広げたままでは森の中を歩けないので、ツバサは広場に出たときだけマップで進行方向のチェックをしていた。
 だが、オリヴィエがどのようなコースをとるのか興味があったので、ツバサは方向のズレについて指摘しなかった。

「申し訳ない! 元の草原に戻ってしまったようだ!」

 オリヴィエが大声で謝罪した。
 ツバサたちはかつての龍神族親善部隊のごとく森の入口まで誘導されてしまった。

「何やってんのよオリヴィエさん!」

 ノエルが怒っているが、それは理不尽というもの。誰でもこうなるのが迷いの森なのだ。

「オリヴィエは悪くないわ。親善部隊だって成功したことないのよ」

「ご、ごめんなさい、オリヴィエさん。ここが迷いの森だったのを忘れてました」

「まあ、いいさ。気にするな。だが、どうしたらいいか解らん」

 オリヴィエはシャルロットに視線を向けた。

「わたしにいい考えがあると思うの?」

 シャルロットは呆れたふうに答えた。そして直ぐにツバサを睨みつけた。

「ツバサは何か考えがあるんでしょ? 黙ってないで、対策を教えてちょうだい」

「オリヴィエの迷い方をずっと観察していて解ったことがある」

 この結界はとても単純で省エネにできている。
 ツバサはつぶさにオリヴィエの行動を観察して、彼が木や岩などの障害物にぶつかると必ず左側に避けていることに気がついた。つまり、彼は真っ直ぐ進むために障害物を右に避けたつもりでも、実際には左に避けていたのだ。そして、進行方向がエルフの里と逆方向になると結界の効果が消えた。

「だから、入り口に戻ったのか。まったく気がつかなかったよ」

 オリヴィエはがっくりと肩を落とした。

「この結界を破る方法は二つある」

「あなたにそんな事ができるのですか?」

 ノエルが間髪入れずに突っかかるが、ツバサは無視した。

「一つは進行方向の障害物をすべて取り除く」

「魔法を使って障害物を消滅させながら進めばいいのね? ツバサならできるの?」

 シャルロットは疑いを隠せない。もっとも、龍神族が何回も失敗しているのだ。疑うなという方が無理な話だろう。

「できるけど、森林破壊はしたくないな」

 ツバサは地球の価値観をミストガルに持ち込んでしまったが、この場合は人間の生産活動で生じる破壊ではないから意味が違う。

「これだけ大規模な森林に通り道を作ったって、すぐに元通りになるから大丈夫でしょ」

「なるほど、そうかも知れないな。でも、敵対行為だと思われたらどうする?」

「それは一理あるわね」

 龍神族はエルフの行動規範を知っているかもしれないが、ツバサは知らない。だが、シャルロットの反応をみると、ツバサの懸念は見当違いではないらしい。

「そこで、俺がフェルに乗って先頭を歩くことにする」

「「「はぁ?」」」

 ツバサの提案にシャルロットたちは我が耳を疑った。
 どう見ても十代前半の少女に、体格のいいツバサを背負って歩くなど無理だからだ。

「お前は鬼畜か?」

「それ以前に変態でしょ」

「わたしが背負ってあげようか?」

 シャルロットたちはフェルの正体を知らないので、ツバサの提案は受け入れがたいものだと判断した。シャルロットに至っては、問題の本質が判っていないようだ。だが、ひょっとしたら解った上での冗談かもしれない。

「フェル、元の形態に戻って俺を運んでくれないか?」

「もちろんいいわよお兄ちゃん。ちょっと待ってね」

 フェルは一人で森のなかに飛び込んだ。形態が変化するところを見られたくないようだ。

「おい、一人で森のなかに入っちゃ危ないだろう」

 オリヴィエが慌て出すが、ツバサはまったく応じなかった。

 しばらくすると、森の中から神々しい霊気を帯びた美しい神獣が姿を現した。

「「「えっ!」」」

 シャルロット、オリヴィエ、ノエルは呆気にとられて戦闘態勢をとるのも忘れている。

「フェルは神獣のフェンリルだったの? 聞いてないわよ!」

「ああ、言ってないしな」

 ツバサはフェルの背中に飛び乗った。

「俺たちの後を付いてきてくれ」

 フェルに運ばれて行けば、ツバサはマップを開いたまま進行方向を指示することができる。そうすれば障害物があっても方向を誤認することはないはずだ。

「あんたって、どんだけ秘密のポケットを持ってるのよ?」

 シャルトッロは呆れて肩を窄めてみせた。
 だが、ツバサにはシャルロットに知られていない秘密がまだたくさん残っている。

 果たしてこの作戦は成功した。
 彼らの目の前には〈エルフの里〉の東門が聳え立っていた。

【後書き】
 連日の真夏日で体力が失われ気味です。
 そんな時はモンスター×○とか、翼を授けるとか、ポーションっぽいものを飲めばいいのかもしれませんが、好きじゃないんですよね~。
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