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第1章 クソ勇者からはじまる簡単なお仕事
第31話 アークフェリス族
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フェルはツバサを乗せたままゆっくりと歩いていたが、エルフの里の門が見えると立ち止まった。何かを警戒しているように首を左右に振っている。
『どうしたんだフェル?』
『視線を感じるの』
『エルフの衛兵がいるんじゃないか?』
『わたしはエルフを知っているから、気配の違いが判るの』
幼体とはいえさすがに神獣だ。ツバサでは気配を感じることさえできない。
「ツバサ、急に止まってどうしたの?」
シャルロットも異変を感じたのか周囲を警戒している。
スキルという形でしか自分の能力を示せないツバサにとって、常時発動型のスキルとも言うべき野生の勘は備わっていない。ツバサにとっての唯一の欠点かもしれないが、こればかりは実践を繰り返して習得していくしかないだろう。
「フェルがエルフ以外の気配を感じている。警戒を続けてくれ」
「解ったわ」
全員が肯定の意志を示し、周囲を警戒した。だが……。
『気配が消えたわ』
「くそっ、消えやがった!」
ツバサはマップで敵の位置を確認できたが、すぐに消えてしまった。
その時、ノエルが弓矢を木の上に放った。「ピキッー!」という叫び声とともに一羽の猛禽類がツバサたちの前に落ちてきた。
「凄い! よく判ったな。さすがノエルだ!」
ツバサは満面の笑みでノエルを讃えた。
「そ、そうかな……」
(あれっ、いつもと違う反応だ?)
ノエルが言うには、その鳥は大きな目が前方についている猛禽類で、暗黒大陸の森ではありふれた種類らしい。地球でいうとフクロウに近い鳥のようだ。
せっかくノエルが落としてくれたフクロウモドキであるが、すでに魔法の痕跡は消されていた。もっとも、遠隔操作の最中だったとしても、相手の正体が解るとは限らない。もし、大賢者グランがここにいたら敵を探し出すことができたのだろうか?
「もっとマップに注意を払っていればよかった」
ツバサたちはエルフの里の門に気を取られていたので、集中力を切らせていたのだ。いつから監視されていたのかも今となっては分からずじまいだ。
『今のは魔法はエルフのものとは違うと思うの』
「それじゃあ誰だろう? 俺たちを監視する意味なんてあるのか?」
ツバサが暗黒大陸に飛ばされて以来、接触したのは大賢者グランと龍神族だけだ。
(もしかしたら、アルフェラッツ王国からの監視か? でも、それなら逃げる必要はないはずだ)
ツバサの母国の人間ならば、ツバサが暗黒大陸に飛ばされたことを知っている可能性は高い。それを知っている人間がツバサを監視しようとしているのかも知れないとツバサは考えた。
(でも、考え過ぎだよな)
残念なことにツバサには現在の母国がどのような状態なのか、知る由もなかった。
(落ち着いたらノルトラインに帰ってみたほうが良さそうだな)
「ツバサ、門の方を見て」
シャルロットがツバサに囁いた。
ツバサが振り向くと、門の前にはいつの間にかエルフの民が三人立っていた。彼らは小綺麗な皮の服を着ていて、身なりだけ見ると狩人のように見える。
(お~、本物のエルフだ! もしここで冒険が終わったとしても俺の人生に悔いはない)
未だに観光気分が抜けていないツバサであるが、ここからが難しい局面になることが解っているのだろうか?
「よくここまで辿り着けましたね。最後にここまで辿り着いたのは大賢者マイヨールさまでした。確か三百年以上前のことです」
最初に話したのは先頭に立つ長身のエルフだ。彼が代表者のようだが、さほど警戒している様子はない。
「グラン爺ちゃんに教えてもらったんだよ。ここに来れば歓迎してくれるって」
ツバサにしては堂々とした嘘であるが、後ろでクラウが指示していることを誰も知らない。クラウはいざという時に頼りになるアシスタントだ。
「マイヨールさまの縁者と神獣さまなら客人として歓迎しないわけには参りますまい」
「それはありがたいです。なんの断りもなく来てしまった無礼を許してください。俺の名前はツバサ・フリューゲル。このパーティーのリーダです」
「謝罪には及びません。わたしの名はルシアス。アークフェリス族の族長代理をしております」
「最初から族長代理が出てきたということは、俺たちの接近がだいぶ前から分かってたということかな?」
「はい、当然です。我々にも敵と味方の区別くらいはつきますから、皆さんがここまで来るのを見守っていました」
おそらく、敵ならば攻撃していたという意味だろう。
今まで再三接近を試みた龍神族が攻撃されなかったのは敵とみなしていなかったからか? それともアークフェリス族は龍神族を恐れていたのか?
「自力でここまで来いということですか。厳しいですね」
「我々は外部との接触を拒んでいる訳ではないのです」
族長代理のルシアスはシャルロットたちを一瞥した。
「ただ、我々と交流するにはそれなりの資格が必要だということです」
シャルロットはすかさずルシアスの前に歩み出る。
「わたしは龍神国の第三王女、シャルロットよ。龍神族にもその資格があると受け取ってもよろしいか?」
「もちろんでございます、シャルロットさま」
ルシアスはシャルロットに恭しくお辞儀をした。
「それを聞いて安心したわ。アークフェリス族は龍神族を敵視しているのかと心配だったの」
「龍神族を敵と認定したことなど一度たりともございません。むしろ、こちらから使者を送るべきだったと後悔しています」
シャルロットとルシアスとの話はしばらく続いたが、長話になりそうなのでルシアスは正式に会談する機会を設けてくれた。
ツバサたちとしては、取り敢えず里に入って一息つきたいところだ。
「ちょと休憩したらエルフの里を見学しよう」
ツバサたちはエルフの里の門を潜りながら、それぞれの思いを馳せるのであった。
『どうしたんだフェル?』
『視線を感じるの』
『エルフの衛兵がいるんじゃないか?』
『わたしはエルフを知っているから、気配の違いが判るの』
幼体とはいえさすがに神獣だ。ツバサでは気配を感じることさえできない。
「ツバサ、急に止まってどうしたの?」
シャルロットも異変を感じたのか周囲を警戒している。
スキルという形でしか自分の能力を示せないツバサにとって、常時発動型のスキルとも言うべき野生の勘は備わっていない。ツバサにとっての唯一の欠点かもしれないが、こればかりは実践を繰り返して習得していくしかないだろう。
「フェルがエルフ以外の気配を感じている。警戒を続けてくれ」
「解ったわ」
全員が肯定の意志を示し、周囲を警戒した。だが……。
『気配が消えたわ』
「くそっ、消えやがった!」
ツバサはマップで敵の位置を確認できたが、すぐに消えてしまった。
その時、ノエルが弓矢を木の上に放った。「ピキッー!」という叫び声とともに一羽の猛禽類がツバサたちの前に落ちてきた。
「凄い! よく判ったな。さすがノエルだ!」
ツバサは満面の笑みでノエルを讃えた。
「そ、そうかな……」
(あれっ、いつもと違う反応だ?)
ノエルが言うには、その鳥は大きな目が前方についている猛禽類で、暗黒大陸の森ではありふれた種類らしい。地球でいうとフクロウに近い鳥のようだ。
せっかくノエルが落としてくれたフクロウモドキであるが、すでに魔法の痕跡は消されていた。もっとも、遠隔操作の最中だったとしても、相手の正体が解るとは限らない。もし、大賢者グランがここにいたら敵を探し出すことができたのだろうか?
「もっとマップに注意を払っていればよかった」
ツバサたちはエルフの里の門に気を取られていたので、集中力を切らせていたのだ。いつから監視されていたのかも今となっては分からずじまいだ。
『今のは魔法はエルフのものとは違うと思うの』
「それじゃあ誰だろう? 俺たちを監視する意味なんてあるのか?」
ツバサが暗黒大陸に飛ばされて以来、接触したのは大賢者グランと龍神族だけだ。
(もしかしたら、アルフェラッツ王国からの監視か? でも、それなら逃げる必要はないはずだ)
ツバサの母国の人間ならば、ツバサが暗黒大陸に飛ばされたことを知っている可能性は高い。それを知っている人間がツバサを監視しようとしているのかも知れないとツバサは考えた。
(でも、考え過ぎだよな)
残念なことにツバサには現在の母国がどのような状態なのか、知る由もなかった。
(落ち着いたらノルトラインに帰ってみたほうが良さそうだな)
「ツバサ、門の方を見て」
シャルロットがツバサに囁いた。
ツバサが振り向くと、門の前にはいつの間にかエルフの民が三人立っていた。彼らは小綺麗な皮の服を着ていて、身なりだけ見ると狩人のように見える。
(お~、本物のエルフだ! もしここで冒険が終わったとしても俺の人生に悔いはない)
未だに観光気分が抜けていないツバサであるが、ここからが難しい局面になることが解っているのだろうか?
「よくここまで辿り着けましたね。最後にここまで辿り着いたのは大賢者マイヨールさまでした。確か三百年以上前のことです」
最初に話したのは先頭に立つ長身のエルフだ。彼が代表者のようだが、さほど警戒している様子はない。
「グラン爺ちゃんに教えてもらったんだよ。ここに来れば歓迎してくれるって」
ツバサにしては堂々とした嘘であるが、後ろでクラウが指示していることを誰も知らない。クラウはいざという時に頼りになるアシスタントだ。
「マイヨールさまの縁者と神獣さまなら客人として歓迎しないわけには参りますまい」
「それはありがたいです。なんの断りもなく来てしまった無礼を許してください。俺の名前はツバサ・フリューゲル。このパーティーのリーダです」
「謝罪には及びません。わたしの名はルシアス。アークフェリス族の族長代理をしております」
「最初から族長代理が出てきたということは、俺たちの接近がだいぶ前から分かってたということかな?」
「はい、当然です。我々にも敵と味方の区別くらいはつきますから、皆さんがここまで来るのを見守っていました」
おそらく、敵ならば攻撃していたという意味だろう。
今まで再三接近を試みた龍神族が攻撃されなかったのは敵とみなしていなかったからか? それともアークフェリス族は龍神族を恐れていたのか?
「自力でここまで来いということですか。厳しいですね」
「我々は外部との接触を拒んでいる訳ではないのです」
族長代理のルシアスはシャルロットたちを一瞥した。
「ただ、我々と交流するにはそれなりの資格が必要だということです」
シャルロットはすかさずルシアスの前に歩み出る。
「わたしは龍神国の第三王女、シャルロットよ。龍神族にもその資格があると受け取ってもよろしいか?」
「もちろんでございます、シャルロットさま」
ルシアスはシャルロットに恭しくお辞儀をした。
「それを聞いて安心したわ。アークフェリス族は龍神族を敵視しているのかと心配だったの」
「龍神族を敵と認定したことなど一度たりともございません。むしろ、こちらから使者を送るべきだったと後悔しています」
シャルロットとルシアスとの話はしばらく続いたが、長話になりそうなのでルシアスは正式に会談する機会を設けてくれた。
ツバサたちとしては、取り敢えず里に入って一息つきたいところだ。
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