31 / 59
第1章 クソ勇者からはじまる簡単なお仕事
第31話 アークフェリス族
しおりを挟む
フェルはツバサを乗せたままゆっくりと歩いていたが、エルフの里の門が見えると立ち止まった。何かを警戒しているように首を左右に振っている。
『どうしたんだフェル?』
『視線を感じるの』
『エルフの衛兵がいるんじゃないか?』
『わたしはエルフを知っているから、気配の違いが判るの』
幼体とはいえさすがに神獣だ。ツバサでは気配を感じることさえできない。
「ツバサ、急に止まってどうしたの?」
シャルロットも異変を感じたのか周囲を警戒している。
スキルという形でしか自分の能力を示せないツバサにとって、常時発動型のスキルとも言うべき野生の勘は備わっていない。ツバサにとっての唯一の欠点かもしれないが、こればかりは実践を繰り返して習得していくしかないだろう。
「フェルがエルフ以外の気配を感じている。警戒を続けてくれ」
「解ったわ」
全員が肯定の意志を示し、周囲を警戒した。だが……。
『気配が消えたわ』
「くそっ、消えやがった!」
ツバサはマップで敵の位置を確認できたが、すぐに消えてしまった。
その時、ノエルが弓矢を木の上に放った。「ピキッー!」という叫び声とともに一羽の猛禽類がツバサたちの前に落ちてきた。
「凄い! よく判ったな。さすがノエルだ!」
ツバサは満面の笑みでノエルを讃えた。
「そ、そうかな……」
(あれっ、いつもと違う反応だ?)
ノエルが言うには、その鳥は大きな目が前方についている猛禽類で、暗黒大陸の森ではありふれた種類らしい。地球でいうとフクロウに近い鳥のようだ。
せっかくノエルが落としてくれたフクロウモドキであるが、すでに魔法の痕跡は消されていた。もっとも、遠隔操作の最中だったとしても、相手の正体が解るとは限らない。もし、大賢者グランがここにいたら敵を探し出すことができたのだろうか?
「もっとマップに注意を払っていればよかった」
ツバサたちはエルフの里の門に気を取られていたので、集中力を切らせていたのだ。いつから監視されていたのかも今となっては分からずじまいだ。
『今のは魔法はエルフのものとは違うと思うの』
「それじゃあ誰だろう? 俺たちを監視する意味なんてあるのか?」
ツバサが暗黒大陸に飛ばされて以来、接触したのは大賢者グランと龍神族だけだ。
(もしかしたら、アルフェラッツ王国からの監視か? でも、それなら逃げる必要はないはずだ)
ツバサの母国の人間ならば、ツバサが暗黒大陸に飛ばされたことを知っている可能性は高い。それを知っている人間がツバサを監視しようとしているのかも知れないとツバサは考えた。
(でも、考え過ぎだよな)
残念なことにツバサには現在の母国がどのような状態なのか、知る由もなかった。
(落ち着いたらノルトラインに帰ってみたほうが良さそうだな)
「ツバサ、門の方を見て」
シャルロットがツバサに囁いた。
ツバサが振り向くと、門の前にはいつの間にかエルフの民が三人立っていた。彼らは小綺麗な皮の服を着ていて、身なりだけ見ると狩人のように見える。
(お~、本物のエルフだ! もしここで冒険が終わったとしても俺の人生に悔いはない)
未だに観光気分が抜けていないツバサであるが、ここからが難しい局面になることが解っているのだろうか?
「よくここまで辿り着けましたね。最後にここまで辿り着いたのは大賢者マイヨールさまでした。確か三百年以上前のことです」
最初に話したのは先頭に立つ長身のエルフだ。彼が代表者のようだが、さほど警戒している様子はない。
「グラン爺ちゃんに教えてもらったんだよ。ここに来れば歓迎してくれるって」
ツバサにしては堂々とした嘘であるが、後ろでクラウが指示していることを誰も知らない。クラウはいざという時に頼りになるアシスタントだ。
「マイヨールさまの縁者と神獣さまなら客人として歓迎しないわけには参りますまい」
「それはありがたいです。なんの断りもなく来てしまった無礼を許してください。俺の名前はツバサ・フリューゲル。このパーティーのリーダです」
「謝罪には及びません。わたしの名はルシアス。アークフェリス族の族長代理をしております」
「最初から族長代理が出てきたということは、俺たちの接近がだいぶ前から分かってたということかな?」
「はい、当然です。我々にも敵と味方の区別くらいはつきますから、皆さんがここまで来るのを見守っていました」
おそらく、敵ならば攻撃していたという意味だろう。
今まで再三接近を試みた龍神族が攻撃されなかったのは敵とみなしていなかったからか? それともアークフェリス族は龍神族を恐れていたのか?
「自力でここまで来いということですか。厳しいですね」
「我々は外部との接触を拒んでいる訳ではないのです」
族長代理のルシアスはシャルロットたちを一瞥した。
「ただ、我々と交流するにはそれなりの資格が必要だということです」
シャルロットはすかさずルシアスの前に歩み出る。
「わたしは龍神国の第三王女、シャルロットよ。龍神族にもその資格があると受け取ってもよろしいか?」
「もちろんでございます、シャルロットさま」
ルシアスはシャルロットに恭しくお辞儀をした。
「それを聞いて安心したわ。アークフェリス族は龍神族を敵視しているのかと心配だったの」
「龍神族を敵と認定したことなど一度たりともございません。むしろ、こちらから使者を送るべきだったと後悔しています」
シャルロットとルシアスとの話はしばらく続いたが、長話になりそうなのでルシアスは正式に会談する機会を設けてくれた。
ツバサたちとしては、取り敢えず里に入って一息つきたいところだ。
「ちょと休憩したらエルフの里を見学しよう」
ツバサたちはエルフの里の門を潜りながら、それぞれの思いを馳せるのであった。
『どうしたんだフェル?』
『視線を感じるの』
『エルフの衛兵がいるんじゃないか?』
『わたしはエルフを知っているから、気配の違いが判るの』
幼体とはいえさすがに神獣だ。ツバサでは気配を感じることさえできない。
「ツバサ、急に止まってどうしたの?」
シャルロットも異変を感じたのか周囲を警戒している。
スキルという形でしか自分の能力を示せないツバサにとって、常時発動型のスキルとも言うべき野生の勘は備わっていない。ツバサにとっての唯一の欠点かもしれないが、こればかりは実践を繰り返して習得していくしかないだろう。
「フェルがエルフ以外の気配を感じている。警戒を続けてくれ」
「解ったわ」
全員が肯定の意志を示し、周囲を警戒した。だが……。
『気配が消えたわ』
「くそっ、消えやがった!」
ツバサはマップで敵の位置を確認できたが、すぐに消えてしまった。
その時、ノエルが弓矢を木の上に放った。「ピキッー!」という叫び声とともに一羽の猛禽類がツバサたちの前に落ちてきた。
「凄い! よく判ったな。さすがノエルだ!」
ツバサは満面の笑みでノエルを讃えた。
「そ、そうかな……」
(あれっ、いつもと違う反応だ?)
ノエルが言うには、その鳥は大きな目が前方についている猛禽類で、暗黒大陸の森ではありふれた種類らしい。地球でいうとフクロウに近い鳥のようだ。
せっかくノエルが落としてくれたフクロウモドキであるが、すでに魔法の痕跡は消されていた。もっとも、遠隔操作の最中だったとしても、相手の正体が解るとは限らない。もし、大賢者グランがここにいたら敵を探し出すことができたのだろうか?
「もっとマップに注意を払っていればよかった」
ツバサたちはエルフの里の門に気を取られていたので、集中力を切らせていたのだ。いつから監視されていたのかも今となっては分からずじまいだ。
『今のは魔法はエルフのものとは違うと思うの』
「それじゃあ誰だろう? 俺たちを監視する意味なんてあるのか?」
ツバサが暗黒大陸に飛ばされて以来、接触したのは大賢者グランと龍神族だけだ。
(もしかしたら、アルフェラッツ王国からの監視か? でも、それなら逃げる必要はないはずだ)
ツバサの母国の人間ならば、ツバサが暗黒大陸に飛ばされたことを知っている可能性は高い。それを知っている人間がツバサを監視しようとしているのかも知れないとツバサは考えた。
(でも、考え過ぎだよな)
残念なことにツバサには現在の母国がどのような状態なのか、知る由もなかった。
(落ち着いたらノルトラインに帰ってみたほうが良さそうだな)
「ツバサ、門の方を見て」
シャルロットがツバサに囁いた。
ツバサが振り向くと、門の前にはいつの間にかエルフの民が三人立っていた。彼らは小綺麗な皮の服を着ていて、身なりだけ見ると狩人のように見える。
(お~、本物のエルフだ! もしここで冒険が終わったとしても俺の人生に悔いはない)
未だに観光気分が抜けていないツバサであるが、ここからが難しい局面になることが解っているのだろうか?
「よくここまで辿り着けましたね。最後にここまで辿り着いたのは大賢者マイヨールさまでした。確か三百年以上前のことです」
最初に話したのは先頭に立つ長身のエルフだ。彼が代表者のようだが、さほど警戒している様子はない。
「グラン爺ちゃんに教えてもらったんだよ。ここに来れば歓迎してくれるって」
ツバサにしては堂々とした嘘であるが、後ろでクラウが指示していることを誰も知らない。クラウはいざという時に頼りになるアシスタントだ。
「マイヨールさまの縁者と神獣さまなら客人として歓迎しないわけには参りますまい」
「それはありがたいです。なんの断りもなく来てしまった無礼を許してください。俺の名前はツバサ・フリューゲル。このパーティーのリーダです」
「謝罪には及びません。わたしの名はルシアス。アークフェリス族の族長代理をしております」
「最初から族長代理が出てきたということは、俺たちの接近がだいぶ前から分かってたということかな?」
「はい、当然です。我々にも敵と味方の区別くらいはつきますから、皆さんがここまで来るのを見守っていました」
おそらく、敵ならば攻撃していたという意味だろう。
今まで再三接近を試みた龍神族が攻撃されなかったのは敵とみなしていなかったからか? それともアークフェリス族は龍神族を恐れていたのか?
「自力でここまで来いということですか。厳しいですね」
「我々は外部との接触を拒んでいる訳ではないのです」
族長代理のルシアスはシャルロットたちを一瞥した。
「ただ、我々と交流するにはそれなりの資格が必要だということです」
シャルロットはすかさずルシアスの前に歩み出る。
「わたしは龍神国の第三王女、シャルロットよ。龍神族にもその資格があると受け取ってもよろしいか?」
「もちろんでございます、シャルロットさま」
ルシアスはシャルロットに恭しくお辞儀をした。
「それを聞いて安心したわ。アークフェリス族は龍神族を敵視しているのかと心配だったの」
「龍神族を敵と認定したことなど一度たりともございません。むしろ、こちらから使者を送るべきだったと後悔しています」
シャルロットとルシアスとの話はしばらく続いたが、長話になりそうなのでルシアスは正式に会談する機会を設けてくれた。
ツバサたちとしては、取り敢えず里に入って一息つきたいところだ。
「ちょと休憩したらエルフの里を見学しよう」
ツバサたちはエルフの里の門を潜りながら、それぞれの思いを馳せるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる