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第一章 呉開陽高校艦船動態保存課
第四話 勝利を刻め!
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「敵機直上―!急降下!」
響く見張り員の声。
「取り舵いっぱい!かわして!」
わたしも素早く回避運動の指示を出す。
「対空機銃、撃ち方始め!」
タタタタタタタタタッ!
曳光弾の光の尾が敵機に向かって飛んでいく。
「主砲は引き続き空母を狙いなさい!」
そう指示を出した時・・・・・・
「『鳥海』、第四、第五砲塔被弾!ダメージコントロールに集中するため指揮権を陽炎に委譲とのことです!」
見張り員が叫ぶ。
「『矢矧』、左舷後部被雷!」
「巡洋艦二隻が・・・・・・!」
最後列にいた矢矧は攻撃が集中し、とうとう撃沈判定が下された。
「みんな!気を落とさないの!たとえ単艦になろうとも戦い続けるのがわたしたちの使命よ!」
艦橋内のみんなに声をかける。
《とにかくよくねらって撃ちなさい!》
インカムから聞こえる美月の声。
「敵駆逐艦一隻!こちらに向かってきます!」
見張り員の声が響く。とっさにインカムに向かって叫んだ。
「主砲三基のうち二基を対駆逐艦に振り向けなさい!残り一門は引き続き空母を攻撃!機銃は対空戦闘を続け!」
即座に帰ってくる返事。内容はもちろんイエスだ。
(みんなは・・・・・・・)
この艦のみんなは艦長のわたしを信頼し、わたしに命を預けてくれている。
(だからこそ、一人たりとも戦死させない・・・・絶対に!)
「・・・・・・・・みんな、ありがとう」
少しつぶやくと、敵艦を見据える。
「『サミュエル・B・ロバーツ』。『戦艦のように戦った駆逐艦』か・・・・・・」
かつてのレイテ沖海戦での逸話を思い出す。
(・・・・・・我が陽炎の相手にふさわしい敵だ!)
「取り舵いっぱい!魚雷発射用意!」
「取り舵いっぱい!」
春奈が舵輪を回した。
こっちに向かってくるサミュエルに並走するように舵を切る。
「距離三十メーター、敵艦航行速度二十四ノット!」
永信が双眼鏡を覗きながら叫ぶ。
「右魚雷戦!角度、九十度!」
「右魚雷戦―!角度九十度!」
永信が伝声管に向かって復唱する。
グィィィィィィ・・・・・・・・・・・
陽炎型に二基搭載されている六十一センチ四連装魚雷発射管がサミュエルに向かって旋回を始めた。
《照準完了!》
インカムから聞こえてくる水雷長、三机渚の声。わたしはさらに指示を出した。
「各自、任意のタイミングで魚雷発射!敵駆逐艦を損傷させよ!弾頭、演習用模擬!」
《了解!魚雷発射タイミングは任意、弾頭は演習用模擬!》
即座に帰ってくる渚の声。
《撃―――――――――ッ!》
プシュッ!プシュッ!
渚の声とともに魚雷が撃ち出された。圧搾空気の音が響く。
ドボン!
撃ち出された魚雷は水中に沈むと、一気に敵艦に向かって進み始めた。
「取り舵いっぱい!」
一気に舵を切って離脱。
「次発装填!」
グイィィィ・・・・・
魚雷発射管が元の位置まで回転する。
ガシャコン!
すぐ横に設置されている箱状の装置から魚雷が飛び出し、発射管に装填された。
「『サミュエル・B・ロバーツ』、わが魚雷三本命中!撃沈判定!」
見張り員が叫んだ。
『おっしゃぁ!』
艦橋内の全員がガッツポーズをする。
「敵艦に国際信号でメッセージを送りなさい」
わたしは永信に指示する。
「了解。なんて?」
「『貴官らの健闘に尊敬の意絶えず』とね」
「了解!」
永信が通信科に連絡を取る。その姿を横目に見ながら指示を出した。
「陽炎のダメージ個所を知らせなさい!」
みんなの声が返ってくる。
《機関問題なし!航行可能!》
《航海科、特に問題はない!》
《水雷科、敵艦からの砲撃により爆雷投射装置が損傷。潜水艦に襲われたらひとたまりもない》
《砲術科、第一砲塔に砲弾片が当たるも損害は軽微・・・・・・・》
その情報すべてを頭の中に叩き込む。そして、大きく息を吸い込んだ。そして、吸い込んだ息を全部出すようにして下令した。
「わが艦は戦闘を続行する!目標は敵空母よ!」
その瞬間、わたしの横に陽炎が現れた。
「実さん・・・・・・・・」
「陽炎、大丈夫だった?」
そっとそっちの方に目線を向ける。
「うん、なんとか・・・・・」
艦魂とその本体である艦とは強くリンクされた状態にあって、本体が損傷した場合は艦魂もケガする。本体が戦没したり解体されれば艦魂も消えてしまう。
今回の小破状態なら陽炎も服が破れていたり肌に傷がついているはずだ・・・・・今回は演習だからいたって健康体だけど。
「魚雷の再装填が終わり次第砲戦に移りなさい!空母を絶対に逃がすな!」
グオォォォォォォン!
主機がうなりを上げた。
「いいとこ見せれるように、わたし頑張ります!」
陽炎が目を輝かせて言う。
「もういいとこは見せたと思うけどね」
「それでも、できるだけ戦果を挙げたいじゃないですか!」
ぼそりとつぶやいた永信に陽炎が詰め寄る。
「あ、ああ・・・・・・・」
永信が一歩下がった。
「とにかく前進しましょ!」
陽炎がこぶしを突き上げる。
「待て待て。そんなに焦らない」
永信が制止する。わたしもうなずいた。
「むやみに突撃すれば犬死にする確率も高くなるの。こういう時は、戦局を見極めて・・・・・」
わたしは自分の頭を指さす。
「ちゃんとここで考えないとね」
その間にも「陽炎」には敵艦載機が攻撃をかけ、対空戦闘が行われている。
「両舷一杯に回しなさい!速力をもって敵空母の懐に入り込むわよ!」
「両舷一杯!」
わたしの指示を永信が復唱する。
グオォォォォォ・・・・・・・・・・グァァァァァァァァァァァ!
主機の唸り声を響かせて、「陽炎」は敵空母「イントレピッド」に向かって吶喊を始めた。
「主砲!撃ち方用意!対空機銃、撃ち方始め!」
空母からの艦載機に向かって機銃弾が放たれる。
「敵機、爆弾投下!」
「面舵いっぱい!」
敵からの爆弾と魚雷を乙字運動で回避。対空機銃の弾幕が敵機を包んでいく。
「対空砲はほとんど当たらない・・・・・・・」
わたしはぼそりとつぶやく。
「・・・・でも、相手に動揺を引き起こして命中率を下げることはできる!」
でも、中には対空砲火にも動じずに突っ込んでくるやつもいる。
「敵機魚雷投下コース!避けられません、被弾します!」
「くっ!総員衝撃に備え!」
ドドドドッ!
歯を食いしばったわたしの耳に、エンジン音と機銃の音が聞こえた。
「え?」
顔を上げたわたしの目に、大量のペイント弾でピンク色に染まった敵機が見えた。
「上空に航空機多数!日の丸を描いてます!友軍機です!」
見張り員の声が響く。
「ちょっとどいて」
急いで天井のハッチから頭を出すと、上空を飛びまわっている飛行機が見えた。現用飴色の機体、機体と翼に描かれた日の丸。
「零戦だ!零戦隊よ!」
暗緑色に塗られた九八陸偵、九七艦攻もいる。
先頭を行くのは翼端が角形に成形された三二型。その後ろには二一型が続く。その二機の尾翼には、Z旗のマーキング・・・・・
「神崎隊!?」
陸上の桑折基地および空母「翔鶴」を中心に活動する桑折航空隊。その中でも特に技量が優れた四機のみが描くことを許された尾翼のZ旗。
先遣隊、九八陸偵「U―1―3」搭乗員奥谷みやび
二番機、零戦二一型「V―121」搭乗員山ノ井春音
今はいないけど、わたしと永信の零戦二一型複座改も所属している。
「お兄ちゃん!ありがとう!」
永信が先頭の三二型に向かって叫んだ。そう、この桑折航空隊を束ねる飛行長、戦闘機隊長は永信の兄である神崎保信大尉。
「艦長!零戦隊の指揮官機より無電です」
艦橋に駆け込んでくる電信員。
「なんと?」
「『我此れより貴艦隊を援護す。神崎永信に伝えられたし、今度焼肉おごれ』とのことです!」
「あの兄貴!」
永信が零戦を見る。
「それでも・・・・」
これで上空からの敵は航空隊に任せられるわけだ。
「わが艦は敵空母に魚雷を叩き込むことを最重要目標とし、前進を続行せよ!麾下の艦隊においては、各艦自由に敵への攻撃を許可する!」
「了解!」
永信が返答し、電信科に連絡を入れる。
グォォォォォォォォォォォォォォォ
ドォォォォォォォォォォォォォン!ドォォォォォォォォォォォォォン!
主機はうなりを上げ、主砲は上空の敵機に向けて十二・七センチ弾を放った。
「敵艦視認!」
永信が双眼鏡を覗きながら叫ぶ。わたしも、一隻の空母を視界にとらえていた。
「『イントレピッド』ね・・・・・・・」
敵艦は陽炎の進路を左から右に横切るように航行している。波から見てさしずめ速度は三十ノットだろうか・・・・・・・
「両舷一杯に回しなさい!なんとしてでも追いつくのよ!」
グァァァァァァァァァァ!
「面舵いっぱい!左砲雷戦用意!」
「面舵いっぱぁい!」
敵との距離が二十メートルを切ったところで転舵。同航戦に入る。春奈が復唱しながら舵を切った。
「主砲!撃ち方始め!空母飛行甲板を狙いなさい!」
グォォォォォォォォォォォォォォォ
主砲がうなりを上げる。
ドォォォォォォォォォォォォォン!ドォォォォォォォォォォォォォン!
主砲が火を噴いた。その様子を見て、さらに号令をかける。
「魚雷発射用意!」
グィィィィィィ
「『イントレピッド』、航行速度三十ノット!左舷同航戦!」
永信が双眼鏡を覗いて叫ぶ。
「左魚雷戦!左四十五度!」
グィィィィィィ
魚雷発射管が回転する。
「渚、発射タイミングはそっちに任せるわ!」
《わかった!》
インカムで渚に連絡。
「喰らえ!米空母!」
陽炎が叫んだ。
《撃―――――――――――ッ》
プシュッ!プシュッ!
渚の叫びとともに魚雷が発射される。
ドボン!
水中に没した魚雷は海面近くまで浮上すると、敵艦に向かって前進を始めた。
「艦長!魚雷です!敵駆逐艦魚雷発射!」
空母「イントレピッド」艦内、第一艦橋内に伝令が駆け込んできた。
「艦載機は!?」
わたし―アマンダ・サトウは一瞬で返す。
「全機発艦状態!敵機に翻弄されているようです!」
外を見ると、陸上基地から来襲した零戦隊により、我々の攻撃隊は翻弄され、ほとんどが被弾していた。
「フッ・・・・・・・・・・」
わたしは小さく笑う。
「艦長?どうされましたか?」
副長のアレン・ウィルバートがきいてくる。
わたしは同航戦に入っている駆逐艦「陽炎」を見た。
「アドミラル・ハツシモ。今回はわたしの負けよ。あの頃のひよっこから、ずいぶん成長したわね」
次の瞬間、ずしんとした揺れが来た。
「面舵!」
「おもかーじ!」
わたし―初霜実は、敵艦に向かって魚雷を発射し終えると、即座に離脱した。だって、危険なとこにいつまでもいる必要ないもんね。
「実さん!敵は魚雷が当たったようです」
陽炎が言った。
「よっしゃ!」
艦橋内のみんながガッツポーズする。
《こちら時津風、現在小破状態。航行に問題はなし》
《こちら天津風》
各艦も戦闘を終えて陽炎のもとに集まってくる。その様子を見ると、わたしは各案に指令を出した。
「これより呉に帰投します!陽炎を先頭に単縦で航行してください」
各艦が陽炎の後ろに一列に並ぶ。その様子を確認すると、わたしは呉への帰投を永信に命じた。
響く見張り員の声。
「取り舵いっぱい!かわして!」
わたしも素早く回避運動の指示を出す。
「対空機銃、撃ち方始め!」
タタタタタタタタタッ!
曳光弾の光の尾が敵機に向かって飛んでいく。
「主砲は引き続き空母を狙いなさい!」
そう指示を出した時・・・・・・
「『鳥海』、第四、第五砲塔被弾!ダメージコントロールに集中するため指揮権を陽炎に委譲とのことです!」
見張り員が叫ぶ。
「『矢矧』、左舷後部被雷!」
「巡洋艦二隻が・・・・・・!」
最後列にいた矢矧は攻撃が集中し、とうとう撃沈判定が下された。
「みんな!気を落とさないの!たとえ単艦になろうとも戦い続けるのがわたしたちの使命よ!」
艦橋内のみんなに声をかける。
《とにかくよくねらって撃ちなさい!》
インカムから聞こえる美月の声。
「敵駆逐艦一隻!こちらに向かってきます!」
見張り員の声が響く。とっさにインカムに向かって叫んだ。
「主砲三基のうち二基を対駆逐艦に振り向けなさい!残り一門は引き続き空母を攻撃!機銃は対空戦闘を続け!」
即座に帰ってくる返事。内容はもちろんイエスだ。
(みんなは・・・・・・・)
この艦のみんなは艦長のわたしを信頼し、わたしに命を預けてくれている。
(だからこそ、一人たりとも戦死させない・・・・絶対に!)
「・・・・・・・・みんな、ありがとう」
少しつぶやくと、敵艦を見据える。
「『サミュエル・B・ロバーツ』。『戦艦のように戦った駆逐艦』か・・・・・・」
かつてのレイテ沖海戦での逸話を思い出す。
(・・・・・・我が陽炎の相手にふさわしい敵だ!)
「取り舵いっぱい!魚雷発射用意!」
「取り舵いっぱい!」
春奈が舵輪を回した。
こっちに向かってくるサミュエルに並走するように舵を切る。
「距離三十メーター、敵艦航行速度二十四ノット!」
永信が双眼鏡を覗きながら叫ぶ。
「右魚雷戦!角度、九十度!」
「右魚雷戦―!角度九十度!」
永信が伝声管に向かって復唱する。
グィィィィィィ・・・・・・・・・・・
陽炎型に二基搭載されている六十一センチ四連装魚雷発射管がサミュエルに向かって旋回を始めた。
《照準完了!》
インカムから聞こえてくる水雷長、三机渚の声。わたしはさらに指示を出した。
「各自、任意のタイミングで魚雷発射!敵駆逐艦を損傷させよ!弾頭、演習用模擬!」
《了解!魚雷発射タイミングは任意、弾頭は演習用模擬!》
即座に帰ってくる渚の声。
《撃―――――――――ッ!》
プシュッ!プシュッ!
渚の声とともに魚雷が撃ち出された。圧搾空気の音が響く。
ドボン!
撃ち出された魚雷は水中に沈むと、一気に敵艦に向かって進み始めた。
「取り舵いっぱい!」
一気に舵を切って離脱。
「次発装填!」
グイィィィ・・・・・
魚雷発射管が元の位置まで回転する。
ガシャコン!
すぐ横に設置されている箱状の装置から魚雷が飛び出し、発射管に装填された。
「『サミュエル・B・ロバーツ』、わが魚雷三本命中!撃沈判定!」
見張り員が叫んだ。
『おっしゃぁ!』
艦橋内の全員がガッツポーズをする。
「敵艦に国際信号でメッセージを送りなさい」
わたしは永信に指示する。
「了解。なんて?」
「『貴官らの健闘に尊敬の意絶えず』とね」
「了解!」
永信が通信科に連絡を取る。その姿を横目に見ながら指示を出した。
「陽炎のダメージ個所を知らせなさい!」
みんなの声が返ってくる。
《機関問題なし!航行可能!》
《航海科、特に問題はない!》
《水雷科、敵艦からの砲撃により爆雷投射装置が損傷。潜水艦に襲われたらひとたまりもない》
《砲術科、第一砲塔に砲弾片が当たるも損害は軽微・・・・・・・》
その情報すべてを頭の中に叩き込む。そして、大きく息を吸い込んだ。そして、吸い込んだ息を全部出すようにして下令した。
「わが艦は戦闘を続行する!目標は敵空母よ!」
その瞬間、わたしの横に陽炎が現れた。
「実さん・・・・・・・・」
「陽炎、大丈夫だった?」
そっとそっちの方に目線を向ける。
「うん、なんとか・・・・・」
艦魂とその本体である艦とは強くリンクされた状態にあって、本体が損傷した場合は艦魂もケガする。本体が戦没したり解体されれば艦魂も消えてしまう。
今回の小破状態なら陽炎も服が破れていたり肌に傷がついているはずだ・・・・・今回は演習だからいたって健康体だけど。
「魚雷の再装填が終わり次第砲戦に移りなさい!空母を絶対に逃がすな!」
グオォォォォォォン!
主機がうなりを上げた。
「いいとこ見せれるように、わたし頑張ります!」
陽炎が目を輝かせて言う。
「もういいとこは見せたと思うけどね」
「それでも、できるだけ戦果を挙げたいじゃないですか!」
ぼそりとつぶやいた永信に陽炎が詰め寄る。
「あ、ああ・・・・・・・」
永信が一歩下がった。
「とにかく前進しましょ!」
陽炎がこぶしを突き上げる。
「待て待て。そんなに焦らない」
永信が制止する。わたしもうなずいた。
「むやみに突撃すれば犬死にする確率も高くなるの。こういう時は、戦局を見極めて・・・・・」
わたしは自分の頭を指さす。
「ちゃんとここで考えないとね」
その間にも「陽炎」には敵艦載機が攻撃をかけ、対空戦闘が行われている。
「両舷一杯に回しなさい!速力をもって敵空母の懐に入り込むわよ!」
「両舷一杯!」
わたしの指示を永信が復唱する。
グオォォォォォ・・・・・・・・・・グァァァァァァァァァァァ!
主機の唸り声を響かせて、「陽炎」は敵空母「イントレピッド」に向かって吶喊を始めた。
「主砲!撃ち方用意!対空機銃、撃ち方始め!」
空母からの艦載機に向かって機銃弾が放たれる。
「敵機、爆弾投下!」
「面舵いっぱい!」
敵からの爆弾と魚雷を乙字運動で回避。対空機銃の弾幕が敵機を包んでいく。
「対空砲はほとんど当たらない・・・・・・・」
わたしはぼそりとつぶやく。
「・・・・でも、相手に動揺を引き起こして命中率を下げることはできる!」
でも、中には対空砲火にも動じずに突っ込んでくるやつもいる。
「敵機魚雷投下コース!避けられません、被弾します!」
「くっ!総員衝撃に備え!」
ドドドドッ!
歯を食いしばったわたしの耳に、エンジン音と機銃の音が聞こえた。
「え?」
顔を上げたわたしの目に、大量のペイント弾でピンク色に染まった敵機が見えた。
「上空に航空機多数!日の丸を描いてます!友軍機です!」
見張り員の声が響く。
「ちょっとどいて」
急いで天井のハッチから頭を出すと、上空を飛びまわっている飛行機が見えた。現用飴色の機体、機体と翼に描かれた日の丸。
「零戦だ!零戦隊よ!」
暗緑色に塗られた九八陸偵、九七艦攻もいる。
先頭を行くのは翼端が角形に成形された三二型。その後ろには二一型が続く。その二機の尾翼には、Z旗のマーキング・・・・・
「神崎隊!?」
陸上の桑折基地および空母「翔鶴」を中心に活動する桑折航空隊。その中でも特に技量が優れた四機のみが描くことを許された尾翼のZ旗。
先遣隊、九八陸偵「U―1―3」搭乗員奥谷みやび
二番機、零戦二一型「V―121」搭乗員山ノ井春音
今はいないけど、わたしと永信の零戦二一型複座改も所属している。
「お兄ちゃん!ありがとう!」
永信が先頭の三二型に向かって叫んだ。そう、この桑折航空隊を束ねる飛行長、戦闘機隊長は永信の兄である神崎保信大尉。
「艦長!零戦隊の指揮官機より無電です」
艦橋に駆け込んでくる電信員。
「なんと?」
「『我此れより貴艦隊を援護す。神崎永信に伝えられたし、今度焼肉おごれ』とのことです!」
「あの兄貴!」
永信が零戦を見る。
「それでも・・・・」
これで上空からの敵は航空隊に任せられるわけだ。
「わが艦は敵空母に魚雷を叩き込むことを最重要目標とし、前進を続行せよ!麾下の艦隊においては、各艦自由に敵への攻撃を許可する!」
「了解!」
永信が返答し、電信科に連絡を入れる。
グォォォォォォォォォォォォォォォ
ドォォォォォォォォォォォォォン!ドォォォォォォォォォォォォォン!
主機はうなりを上げ、主砲は上空の敵機に向けて十二・七センチ弾を放った。
「敵艦視認!」
永信が双眼鏡を覗きながら叫ぶ。わたしも、一隻の空母を視界にとらえていた。
「『イントレピッド』ね・・・・・・・」
敵艦は陽炎の進路を左から右に横切るように航行している。波から見てさしずめ速度は三十ノットだろうか・・・・・・・
「両舷一杯に回しなさい!なんとしてでも追いつくのよ!」
グァァァァァァァァァァ!
「面舵いっぱい!左砲雷戦用意!」
「面舵いっぱぁい!」
敵との距離が二十メートルを切ったところで転舵。同航戦に入る。春奈が復唱しながら舵を切った。
「主砲!撃ち方始め!空母飛行甲板を狙いなさい!」
グォォォォォォォォォォォォォォォ
主砲がうなりを上げる。
ドォォォォォォォォォォォォォン!ドォォォォォォォォォォォォォン!
主砲が火を噴いた。その様子を見て、さらに号令をかける。
「魚雷発射用意!」
グィィィィィィ
「『イントレピッド』、航行速度三十ノット!左舷同航戦!」
永信が双眼鏡を覗いて叫ぶ。
「左魚雷戦!左四十五度!」
グィィィィィィ
魚雷発射管が回転する。
「渚、発射タイミングはそっちに任せるわ!」
《わかった!》
インカムで渚に連絡。
「喰らえ!米空母!」
陽炎が叫んだ。
《撃―――――――――――ッ》
プシュッ!プシュッ!
渚の叫びとともに魚雷が発射される。
ドボン!
水中に没した魚雷は海面近くまで浮上すると、敵艦に向かって前進を始めた。
「艦長!魚雷です!敵駆逐艦魚雷発射!」
空母「イントレピッド」艦内、第一艦橋内に伝令が駆け込んできた。
「艦載機は!?」
わたし―アマンダ・サトウは一瞬で返す。
「全機発艦状態!敵機に翻弄されているようです!」
外を見ると、陸上基地から来襲した零戦隊により、我々の攻撃隊は翻弄され、ほとんどが被弾していた。
「フッ・・・・・・・・・・」
わたしは小さく笑う。
「艦長?どうされましたか?」
副長のアレン・ウィルバートがきいてくる。
わたしは同航戦に入っている駆逐艦「陽炎」を見た。
「アドミラル・ハツシモ。今回はわたしの負けよ。あの頃のひよっこから、ずいぶん成長したわね」
次の瞬間、ずしんとした揺れが来た。
「面舵!」
「おもかーじ!」
わたし―初霜実は、敵艦に向かって魚雷を発射し終えると、即座に離脱した。だって、危険なとこにいつまでもいる必要ないもんね。
「実さん!敵は魚雷が当たったようです」
陽炎が言った。
「よっしゃ!」
艦橋内のみんながガッツポーズする。
《こちら時津風、現在小破状態。航行に問題はなし》
《こちら天津風》
各艦も戦闘を終えて陽炎のもとに集まってくる。その様子を見ると、わたしは各案に指令を出した。
「これより呉に帰投します!陽炎を先頭に単縦で航行してください」
各艦が陽炎の後ろに一列に並ぶ。その様子を確認すると、わたしは呉への帰投を永信に命じた。
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