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第二章 激闘の前に
第六話 派遣任務の発表
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開陽祭から一か月後・・・・・・・・・・
「それでは、点呼を始める」
呉開陽高校一年艦隊司令、北上先生がその厳しそうな目を手元の書類に向けた。
「駆逐艦『陽炎』艦長、初霜実!」
「はい!」
わたしは返事をすると、海軍式の敬礼をした。
「同じく副長、神崎永信!」
「はい!」
永信も同じく敬礼する。
「駆逐艦『天津風』艦長、永井光葉!」
「はい!」
一年艦隊のすべての艦長、副長が集められたことになる。
「さて、皆さんに集まってもらったのには訳があります」
北上先生がわたしたちを見た。
「本年度の遠洋航海、研修任務が決定いたしました」
ざわっ
みんながどよめく。
(年間で最も大きなイベント、研修任務ね・・・・・・・・)
わたしたちは、毎年冬季に実地研修も兼ねて遠洋航海に出される。そのほとんどが、海賊活動の活発な地域での船団護衛、または対海賊作戦への参加だ。
まだ一年で駆逐艦と軽巡にしか乗ることを許されないわたしたちは船団護衛や主力艦の護衛。重巡、小型空母に乗れる二年と戦艦、大型空母に乗れる三年は対海賊作戦の主力として参加する。
「今回、皆さんに課せられる任務は、第一駆逐隊が戦艦、重巡の第一艦隊の護衛です。第二駆逐隊は・・・・・・・・」
北上先生が各駆逐隊に課せられる任務を読み上げていく。わたしと永信は、わが「陽炎」が旗艦を務める第五駆逐隊の任務が読み上げられるのを今か今かと待った。
「・・・・・第五駆逐隊」
「はい!」
わたしは返事を返す。
「地中海および中東方面における船団護衛任務」
北上先生が読み上げた瞬間、わたしは心の中で叫んだ。
(えぇぇぇぇぇぇぇ!?ウソでしょ!)
地中海から中東にかけてって、一番の激戦地じゃん!主に通商破壊の・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・」
隣に立つ永信も青ざめた顔をしている。
「それでは、今回の任務通告は以上!作戦開始は今年の十二月一日だ。それまで、各艦訓練に励んでくれ!」
『はい!!』
全員で一斉に返した。
「それでは、別れ!」
北上先生の合図で、艦長、副長会議は終了した。
「あーもう信じらんない――!」
校舎を出るや否や、わたしは思いっきり叫んだ。
「実、一応学校の中だから控えめに・・・・・・・・」
そう言いかけた永信の襟首をつかんで揺さぶる。永信はわたしのなすがまま。
「じゃああんたはどうなのよ!?」
中東なんて激戦地、しかも通商破壊が盛んな地域。そこで船団護衛なんて敵の本拠地に殴り込みをかけるようなものだ。
「みんなが・・・・・・みんなの誰か一人でも戦死したら、わたしはみんなの家族にどう顔向けしたらいいのよ!?」
「落ち着きなよ、実。そもそも一人も戦死させないのが大前提じゃないか」
「え・・・・・・・・?」
永信から手を放す。
「いい、実。艦と艦隊をつかさどる僕たちの役目は、艦隊に属するみんなの命、そして、後方の人たちの命を守ることだ・・・・・・」
永信は手を伸ばすと、わたしの頭に置いた。
「戦死者ゼロが大前提、それでいて戦果を挙げることが僕たちの役目でしょ」
わたしの頭をやさしくなでる。
「とりあえず、みんなに任務を報告しに行こう」
「うん」
わたしはうなずくと、永信と一緒に陽炎に向かった。
《乗員全員に連絡します。各科必要最低限の人員を残し、全員前甲板に集合してください》
駆逐艦『陽炎』艦内。スピーカーから、実ちゃんの声が聞こえてくる。
「ん・・・・・・・」
わたし―山城春奈は航海科の任務である操舵装置の点検の手を止めると、その放送に耳を傾けた。
「急げ!」
「いくよ!」
みんなが駆け足でラッタルを登っていく。わたしもその中に混ざると、前甲板に向かった。
駆逐艦「陽炎」最上前甲板。続々と人が集まってくる。
わたし―初霜実は、その様子を見ると、口を開いた。
「わが駆逐艦『陽炎』の所属する第五駆逐隊は、地中海および中東方面における船団護衛作戦に参加することになりました」
ざわっ
みんながどよめく。
「地中海から中東って・・・・・・・・・」
「激戦地じゃないか・・・・・・」
わたしは、みんなの顔を見回す。
「今回の作戦は、激戦地での船団護衛というとても難しい任務です。しかし、これは我々第五駆逐隊の技量が認められているということでもあります」
わたしは、もう一度作戦計画書に目を通す。
「今回は、我々第五駆逐隊の駆逐艦『陽炎』、『天津風』、『島風』、『白露』、『夕立』、『時雨』の六隻に合わせて、潜水艦『伊―五八』、『伊―八』も我々の麾下に入ります。さらに、援護部隊として桑折空の陸攻、零戦隊も協力して活動する予定です」
皆の顔が少し明るくなったような気がした。
「作戦開始名十二月一日です。それまで、我々は演習に励みます。各員一層努力してください」
そういうと、わたしは解散の合図を出した。
「それでは、点呼を始める」
呉開陽高校一年艦隊司令、北上先生がその厳しそうな目を手元の書類に向けた。
「駆逐艦『陽炎』艦長、初霜実!」
「はい!」
わたしは返事をすると、海軍式の敬礼をした。
「同じく副長、神崎永信!」
「はい!」
永信も同じく敬礼する。
「駆逐艦『天津風』艦長、永井光葉!」
「はい!」
一年艦隊のすべての艦長、副長が集められたことになる。
「さて、皆さんに集まってもらったのには訳があります」
北上先生がわたしたちを見た。
「本年度の遠洋航海、研修任務が決定いたしました」
ざわっ
みんながどよめく。
(年間で最も大きなイベント、研修任務ね・・・・・・・・)
わたしたちは、毎年冬季に実地研修も兼ねて遠洋航海に出される。そのほとんどが、海賊活動の活発な地域での船団護衛、または対海賊作戦への参加だ。
まだ一年で駆逐艦と軽巡にしか乗ることを許されないわたしたちは船団護衛や主力艦の護衛。重巡、小型空母に乗れる二年と戦艦、大型空母に乗れる三年は対海賊作戦の主力として参加する。
「今回、皆さんに課せられる任務は、第一駆逐隊が戦艦、重巡の第一艦隊の護衛です。第二駆逐隊は・・・・・・・・」
北上先生が各駆逐隊に課せられる任務を読み上げていく。わたしと永信は、わが「陽炎」が旗艦を務める第五駆逐隊の任務が読み上げられるのを今か今かと待った。
「・・・・・第五駆逐隊」
「はい!」
わたしは返事を返す。
「地中海および中東方面における船団護衛任務」
北上先生が読み上げた瞬間、わたしは心の中で叫んだ。
(えぇぇぇぇぇぇぇ!?ウソでしょ!)
地中海から中東にかけてって、一番の激戦地じゃん!主に通商破壊の・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・」
隣に立つ永信も青ざめた顔をしている。
「それでは、今回の任務通告は以上!作戦開始は今年の十二月一日だ。それまで、各艦訓練に励んでくれ!」
『はい!!』
全員で一斉に返した。
「それでは、別れ!」
北上先生の合図で、艦長、副長会議は終了した。
「あーもう信じらんない――!」
校舎を出るや否や、わたしは思いっきり叫んだ。
「実、一応学校の中だから控えめに・・・・・・・・」
そう言いかけた永信の襟首をつかんで揺さぶる。永信はわたしのなすがまま。
「じゃああんたはどうなのよ!?」
中東なんて激戦地、しかも通商破壊が盛んな地域。そこで船団護衛なんて敵の本拠地に殴り込みをかけるようなものだ。
「みんなが・・・・・・みんなの誰か一人でも戦死したら、わたしはみんなの家族にどう顔向けしたらいいのよ!?」
「落ち着きなよ、実。そもそも一人も戦死させないのが大前提じゃないか」
「え・・・・・・・・?」
永信から手を放す。
「いい、実。艦と艦隊をつかさどる僕たちの役目は、艦隊に属するみんなの命、そして、後方の人たちの命を守ることだ・・・・・・」
永信は手を伸ばすと、わたしの頭に置いた。
「戦死者ゼロが大前提、それでいて戦果を挙げることが僕たちの役目でしょ」
わたしの頭をやさしくなでる。
「とりあえず、みんなに任務を報告しに行こう」
「うん」
わたしはうなずくと、永信と一緒に陽炎に向かった。
《乗員全員に連絡します。各科必要最低限の人員を残し、全員前甲板に集合してください》
駆逐艦『陽炎』艦内。スピーカーから、実ちゃんの声が聞こえてくる。
「ん・・・・・・・」
わたし―山城春奈は航海科の任務である操舵装置の点検の手を止めると、その放送に耳を傾けた。
「急げ!」
「いくよ!」
みんなが駆け足でラッタルを登っていく。わたしもその中に混ざると、前甲板に向かった。
駆逐艦「陽炎」最上前甲板。続々と人が集まってくる。
わたし―初霜実は、その様子を見ると、口を開いた。
「わが駆逐艦『陽炎』の所属する第五駆逐隊は、地中海および中東方面における船団護衛作戦に参加することになりました」
ざわっ
みんながどよめく。
「地中海から中東って・・・・・・・・・」
「激戦地じゃないか・・・・・・」
わたしは、みんなの顔を見回す。
「今回の作戦は、激戦地での船団護衛というとても難しい任務です。しかし、これは我々第五駆逐隊の技量が認められているということでもあります」
わたしは、もう一度作戦計画書に目を通す。
「今回は、我々第五駆逐隊の駆逐艦『陽炎』、『天津風』、『島風』、『白露』、『夕立』、『時雨』の六隻に合わせて、潜水艦『伊―五八』、『伊―八』も我々の麾下に入ります。さらに、援護部隊として桑折空の陸攻、零戦隊も協力して活動する予定です」
皆の顔が少し明るくなったような気がした。
「作戦開始名十二月一日です。それまで、我々は演習に励みます。各員一層努力してください」
そういうと、わたしは解散の合図を出した。
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