アデンの黒狼 初霜艦隊航海録1

七日町 糸

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第二章 激闘の前に

第八話 先輩の助け

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 標的艦「摂津」を用いた砲撃、雷撃訓練をした日の夜・・・・・・・・
「ふぅ~」
 わたしは大きく息をつくと、椅子に腰かけた。
「お疲れ、実」
 永信が近くの自販機で紅茶を買ってきてくれる。
「ありがと」
 ここは呉開陽高校校舎内にあるフリースペース。文字通り「自由な空間フリースペース」。生徒なら自由に使っていい場所だ。
「よっこいしょっと」
 永信がわたしの隣に腰かける。
「今回の射撃訓練の命中率は『陽炎』が三%。『天津風』一%、『島風』、二%。『白露』、三%。『夕立』、五%。『時雨』、六パーセント。旗艦の我が『陽炎』が下の方か・・・・・・」
 淡々と記録を読み上げる永信。
「まあ、艦砲射撃というのは得てして当たらないものだけど、これはひどいわね」
 専門外の皆さんにはわからないかもしれないけど、艦砲射撃というのは命中率が低い。海自さんでも十%を超えれば「いい命中率ですね」と言われるくらいだ。
「それでも、『陽炎』と『天津風』はあれだったから、訓練を重ねないとね・・・・・・・」
 わたしはさらなる技量向上を目標とすると、次の書類を見た。
「今回麾下に入る潜水艦二隻『伊―五八』と『伊―八』ね・・・・・・潜水艦部隊の指揮は初めてだな・・・・・」
 潜水艦はわたしたち水上艦艇とは勝手が違うだろうし、統一して指揮をするのは難しい。
「どーも、こんにちは~。潜水艦と聞こえたから来ちゃったよ~」
「!?」
 突然後ろから聞こえてきた声。振り返ると、学校指定の作業服を身にまとい、戦闘帽をかぶった女子がいた。
「は、遥先輩!」
 わたしと永信は先輩に向かって敬礼する。
「まあまあ、そんな畏まらなくていいよ~」
 遥先輩は右手をひらひらと振りながらわたしたちの向かいに座る。
「どうですか?『潜水空母』での生活は」
 永信が口を開く。
「まあまあといったとこ。飛行機に関しては素人だから、覚えることが多くて大変。あー、たまには魚雷で大物を喰いたいな」
 遥先輩はそう言って笑った。
 長谷部遥先輩。現在潜水空母「伊―四〇〇」艦長の三年生だ。二年と一年のころは潜水艦「伊―二六」の艦長。
「そういえば・・・・・・・・」
 わたしは遥先輩に声をかける。
「今度の遠征で、船団護衛の任務にあたることになったんですけど、潜水艦が麾下に入ることになってその運用を考えてるんです」
「ふ~ん」
「遥先輩はどうしたらいいと思いますか?」
「え~っとね~」
 遥香さんは少し考えると、言った。
「潜水艦はねー、哨戒部隊がいいかも~」
「哨戒ですか?」
「そう~」
 遥香さんは、ふんわり笑いながら続ける。
「今回麾下に入るのは何隻?」
「潜水艦だったら二隻です」
 永信が書類を手渡す。
「ふ~ん、『伊―58』と『伊―8』ね・・・・・・・・」
 遥先輩が書類をパラパラとめくる。
「だったら、どっちか片方を先行させてもう片方を後続させる。これで前後の守りは完璧ね。もう二隻いれば、左右の守りも固められるんだけど・・・・・・・・」
 先輩が言うけど、あいにく今回麾下に入るのはこの二隻だけだ。
「実ちゃん~」
「は、はいっ!」
「実ちゃんたちの担任って、北上先生だったよね~」
「はい、そうですが・・・・・・・・」
 遥先輩、いったい何をする気なんだろう・・・・・・?
「じゃあね~。わたしが言ったこと、忘れないでよ~」
 先輩は、手を振りながら去っていった。












































遥先輩と話した次の日・・・・・・・・
「ウソだろ!?」
 永信が目を見開く。その手元には、新たに送られてきた書類。そこに書いてあったのは・・・・・・・・
「第五駆逐隊に増援として潜水艦『伊―26』、『伊―168』も派遣す」
 永信が読み上げる。
「いったいどんな風の吹き回しよ!?」
 遥先輩と話した後、北上先生に潜水艦の増強を具申して却下されたのに。
「これは、遥先輩がなんかやった可能性が高いよね・・・・・・・」
 永信がこっちを見る。
「それが一番高いわね・・・・・・・」
 わたしももう一度書類に目を通すと、通信員の漆原巧に声をかけた。
「『伊―400』に打電しなさい」
「なんと?」
 巧が返す。
「『いったい何をしたんですか、遥先輩』とね」
「了解」
 巧が電信室に向かって歩いていく。わたしはその後姿を見送ると、艦橋内の艦隊司令席に腰かけた。
 数分後、遥先輩から返事が来た。
 「戦艦『長門』に来られたし。」と。
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