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第二章 激闘の前に
第十六話 宿毛湾沖波高し
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「出港用意」
「出港用意ー!」
わたしが指示を出すと、後ろに立っている永信が復唱した。
「錨鎖巻き上げー!」
ガラガラガラガラ・・・・・
揚錨機と錨鎖がかみ合う音とともに、海中の主錨が引き上げられた。
艦首の国籍旗も下ろされる。
永信がインカムで各科と連絡を取りあう。そして、こっちを向いた。
「実。各科出港準備完了!」
その声を聞くや否や、わたしは指令を出す。
「出港!」
その命令を聞いた通信科員が持っている艦内放送のマイクをもう一人が構えるラッパの方に向けた。
パパパパー パパパパー パパパパーパパッパパー!
「出港―!」
喇叭が吹き鳴らされるとほぼ同時に通信科員はマイクを口元に持っていき、叫ぶ。
チンチンチン!
エンジンテレグラフの小刻みな音。
ボーーーーーーーーー!
出港を告げる警笛の声。
グォォォォォォ!
五万二千馬力の主機がうなりを上げ、「陽炎」はその艦体を前進させ始めた。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
グァァァァァァァ・・・・・・・・
戦艦「大和」、「武蔵」。空母「信濃」、重巡「高雄」も出港のため動き出した。
「ったく、なんで公試の日に限って台風なのよ!何時だと思ってるのよ!」
「まあまあ実、天は気まぐれだよ」
永信がなだめるように言う。
「それにしても、『大型の台風が近づいてる』って、学校本部の気象班は何してたのよ!急に言われても対応できるわけないじゃない!」
学校本部から「 此マデニ前例ナキ大型台風接近ス」という電文が来たのは今日の正午。
午前中のうちに全力公試は終わらせておいたからいいものの、出港が遅れてしまった。
わたしは無線のスイッチを入れる。
「気象班!今台風はどのへん?」
「現在宿毛湾沖約四百キロメートル!中心部の最低気圧八百八十八hpa。最大風速百八十五ノットで現在こちらに向けて進行中です」
「は!?第二室戸台風と同じ規模じゃないの!」
「はい、同規模です」
わたしが叫ぶと、航海科の気象班が冷静に答える。
(まったく。なんで学校本部も早めに伝えないのよ。このままじゃ台風に突っ込むコースじゃん)
「どうする?実」
永信がわたしに問いかける。
(この大きさでは回避はほぼ不可能。だったら・・・・・・・)
わたしは大きく息を吸い込むと言い放った。
「総員配置!これより本艦は台風のど真ん中に突っ込む!今回は戦闘中だと思うように!」
「総員配置!」
永信がマイクに向かって復唱する。
「愛蘭!凛久!」
わたしは艦橋横に飛び出た見張り台にいる二人に声をかける。
「あんたたちは中に入りなさい!」
見張り台は屋根付きではあるものの胸から上の壁がない。台風の中でそんなとこにいたら高波に攫われる。
二人がうなずいて艦橋内に駆け込んできた。見張り台へのドアをしっかりと閉め、ロックを全てかける。
「天井ハッチ留め金よし!」
永信も天井に設けられたハッチを確認した。周りのガラス窓もすべて閉じ、しっかりとロックする。
その様子を見つつ、わたしはさらにインカムを入れる。
「機関科はボイラー最大出力を維持!」
《了解!》
いつも通りの夏芽。
「内務科と主計科は艦内の荷物をしっかりと固定しておきなさい!固縛が甘いと崩れるわよ!」
《わかってる。何度も言うな!》
いつきはちょっとキレ気味?
《まあまあいつき。そんなこと言わないの。冷静にね》
なだめるように風華が言う。
「砲術科と水雷科も戦闘配置につきなさい!」
《わかってるって》
《オーライオーライ!》
美月と渚からも返事が返ってくる。
「両舷第三戦速!」
わたしは「陽炎」の速度を二十四ノットまで上げるよう指示すると、前方を見た。
「機体をしっかり固縛しろ!燃料もだ!」
俺―平沼敦はそう指示を出すと、ほっと一息をついた。
ここは空母「信濃」飛行甲板下にある格納庫。艦上戦闘機「烈風」、艦上攻撃機「流星」、艦上偵察機「彩雲」が翼を休めている。全機共に主翼の二分の一を上方に折り畳み、頭の上で合掌しているみたいだ。
(・・・・ったく。もう十一月なのになんで台風が来るんだよ)
しかも、「信濃」は竣工したばっかりなのに。
「とにかく念入りに固縛しろ!ただでさえ艦載機は高いのに、烈風と流星はさらに高いんだからな!」
「わかっとるわい!」
ガチャッ!
それぞれの機体にワイヤーがかけられ、床面に固定される。
「まったく・・・・・・発艦する暇もないって・・・・・・」
俺の隣でトンブリが言った。
「少しだけ時間があれば、航空隊は発艦して近隣の飛行場に避難できたんだけどね・・・・・・」
俺はトンブリのほうを見る。
「トンブリ、もしもの話を言っても始まらねぇ。今できるのは機体の被害を最小限に抑えることだ」
「了解」
トンブリが烈風の方に向かった。その時、艦内放送が響く。
《此れより本艦は台風内暴風域に入る!総員衝撃に備え!》
艦長の澪の声だ。その瞬間・・・・・・
ぐおんっ
凄まじい勢いで艦の前部が持ち上がり、床に傾斜がついた。
「ぐぁっ!」
「キャァッ!」
何人かの乗員が跳ね飛ばされ、壁に体を打ち付ける。
ボキッ!ゴリィ
何人からは骨が折れる音が聞こえた。
「負傷者を医務室に移送!軽傷者からだ!」
重傷者は応急処置での現場復帰は不可能。それに対し軽傷者は応急処置のみで復帰できる。
「とにかく戦闘員確保を優先しろ!」
そう叫んだ瞬間、また艦が波に乗り上げた。
ぐわん!
足元が一気に跳ね上げられ、俺の足が床から離れる。
「なにっ!?」
次の瞬間・・・・・・・・
ドン!
俺の体全体にすさまじい痛みが走った。
「平沼飛行長!」
「敦!」
戦闘機隊長の夕雲と俺の相棒のトンブリがこっちを向く。
「馬鹿野郎!俺より機体を優先しろ!」
俺は叫んで起き上がった。
「でも敦、頭を怪我してるじゃん!」
トンブリが言う。
「え・・・・?」
額に手を当てると、生温かい液体が手を濡らした。
「防空鉄兜は!?」
周りを見ると、俺の鉄兜は頭から外れて床に転がっていた。どうやら顎ひもを締め忘れていたらしい。
「かまうな!俺は大丈夫だ!」
立ち上がると同時に首に巻いていたマフラーで頭を縛って止血。その上からさらに鉄兜をかぶろうとした。
「あれ?おかしいな・・・・・」
いつもなら簡単に結べるはずのマフラーがなかなか結べない。
「な、何だ・・・・・・・」
目のまえの景色がゆがんで見える。
「敦!」
トンブリが駆け寄ってくるのが見えた瞬間、俺の視界が真っ暗になった。
「右舷前方より高波!高さ四十メートル!」
凛久が双眼鏡を覗いて叫ぶ。
「面舵十度!両舷最大戦速!」
わたしは指示を出し、艦首を波に向けた。
「面舵十度!」
春奈が復唱しながら舵輪を回す。
「両舷最大戦速!」
チンチンチン!
夏芽が復唱しながらエンジンテレグラフを回し、小刻みなベルの音が響いた。
グォォォォォォ!
主機のうなりを響かせ、「陽炎」は波に乗り上げる。
ぐわん!
波に前部が持ち上げられ、艦体が大きく傾いた。きっと外から見れば艦底に塗られた暗赤色が見えることだろう。
ドォッ!
水柱を上げ、艦の前部は海面につく。艦首の旗竿が思いっきり波をかぶった。
ザバァッ!
艦首を洗った波は高く、艦橋前面のガラス窓にも大量の水がたたきつけられた。
ピッ!
わたしはすぐにインカムを入れ、砲術科に繋ぐ。
「美月!そっちは大丈夫?」
《大丈夫大丈夫!ちゃんと出港前に主砲には栓をしてあるから》
美月がいつものように返す。
「そう、ならいいけど・・・・・・・」
わたしはそう返すと、再び前方に目を向けた。
「左舷前方より高波!高さ三十メートル!」
「取り舵四十度!」
「とりかーじ四十度!」
今度は愛蘭の声が響き、陽炎は高波に乗り上げる。
ピカッ!
窓の向こうで雷光が煌めいた。
ゴロゴロゴロ・・・・・・・
雷鳴も聞こえてくる。
「近いわね・・・・・・・・」
「うん、注意しておく」
次の瞬間・・・・
ドーン!
艦橋後方、わたしたちのすぐ近くで轟音が響いた。
ピッ!
すぐさま全員にインカムをつなぐ。
「なにがあったの!?」
《前部マストに落雷!直撃です!》
「了解!」
わたしはインカムを切ると、艦内放送のマイクを手に取る。
「艦橋より乗員全員へ!ただいま前部マストに落雷が発生!各科損害を知らせ!」
《砲術科!特に問題はなし!》
《水雷科、同じく!》
《機関も同じです!》
《通信科も損害はなし》
前後のマストに取り付けられている避雷針とアースが完全に機能したようだ。
「避雷針がついてて命拾いしたね」
永信が言う。
「木造フリゲートならともかく、鋼鉄製の艦は艦自体がアースになるから助かるわね」
わたしも返した。
「前方より高波!高さ十メートル!」
「両舷最大戦速!乗り越えなさい!」
「両舷最大戦速ー!」
ドオッ!
再び艦首が波に乗り上げて突っ込む。
「両舷第二戦速!」
「両舷第二戦速ー!」
チンチンチン!
波を駆け降りるときは減速。艦に速度がつきすぎないように留意する。
「左舷前方より高波!高さ三十メートル!」
「両舷最大戦速!取り舵二十度!」
そう指示をして前を見た瞬間、愛蘭の声が響く。
「実!右舷前方に遭難船!漁船です!」
「なぜそのことを早く伝えなかった!気象班はいったい何してたんだ!」
わたし―北上未来は鼻息も荒く言い放つと、電子煙管を手に取った。
すぅっ
口をつけて思いっきり吸い込む。
「ぷはっ!」
ゆっくり味うと紫煙を口から吐き出した。
「ちょっと、北上先生・・・・・・」
「やっぱり煙草が一番落ち着くの。少しくらいいいでしょ」
副長の山入端が言うのに返し、再び電子煙管を加える。
(それに、わたしは半分煙草依存だし)
心の中でつぶやくと、艦橋の外を見た。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
ゴォォォォォォォ・・・・・・・
呉港内の艦艇たちは台風接近の報に接し避泊のため緊急出港を始めている。
「まずは『陽炎』以外の残存駆逐艦か・・・・・・」
さらに重巡、軽巡部隊、「信濃」を除いた空母機動部隊。そして最後に「長門」を先頭とした戦艦部隊が出港していく。
各艦の艦尾には十六条旭日旗がはためき、さながら往時の演習のようだ。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
グワァァァァァァ・・・・・・・
教官艦隊旗艦である護衛艦「くらま」、アメリカから訪問中の戦艦「アイオワ」、「ミズーリ」も動き始めた。
「よし、全艦出港したな・・・・・・・」
わたしは双眼鏡を覗いて確認すると、指示を出す。
「出港!」
パパパパー パパパパー パパパパーパパッパパー!
「出港―!」
チンチンチン!
喇叭が吹き鳴らされ、エンジンテレグラフの音が響く。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
主機の駆動音が重々しく響き、重巡洋艦「鳥海」は呉港内呉開陽高校専用桟橋を出港した。
「漁船!?」
わたし―初霜実は愛蘭に言う。
「こんな台風が近づいてるのに操業してるものなのね」
「うん、電信で問い合わせたところ、JFすくも湾漁協所属の『第四共栄丸』とのこと。本艦に救助を要請している」
愛蘭が答えた。
「大きさはさしずめ十トンってとこかな。内火艇より少し大きいくらい。どうする?」
永信が双眼鏡を覗いて言う。
「救助するしかないでしょ!両舷停止!総員舟艇収容準備!」
「両舷停止!」
チンチンチンチンチン!
エンジンテレグラフが鳴り、「陽炎」は漁船に並ぶようにして停止した。
「僕は漁船収容の指令に言ってくる」
永信が外套を身に着けて外に出ていく。
「気をつけなさいよ」
「わかってるって!」
永信たちが前部にある内火艇収容用のクレーンを組み立て始めた。
「オーライ!オーライ!」
鎖の先端、そこに取り付けられたフックが漁船に向かって降りていく。お互い激しい波に揺さぶられながらの作業だ。
「両舷後進微速!」
わたしは適宜速度の指示を出してできるだけ現在位置を動かないように心がける。
「玉掛OK!」
漁船上の漁師さんが叫んだ。
「よし!巻き上げ!」
ガラガラガラガラ・・・・・・
鎖と滑車がかみ合う音とともに、漁船が甲板上に引き上げられる。
ドン!
艦橋前方、内火艇が置いてある隣に下ろされた漁船。船内から漁師さんたちが貴重品と漁果を持って降りてくる。
「大丈夫ですか!?」
「とりあえずこれを!」
乗員たちが漁師さんたちの体にバスタオルをかぶせた。
「よし!そっちは固定したな!」
ガチャッ
漁船にワイヤーがかけられ、甲板に固定された。
わたしはインカムを入れる。
「漁船の固定作業が終わり次第艦内に退避しなさい!」
《了解》
永信が答え、全員が艦内に入った。扉がしっかりと閉鎖される。
「ただいま~」
永信が艦橋に入ってくる。
「全員の艦内退避が完了、扉も完全に閉鎖した」
「了解。両舷第一戦速!」
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
再び「陽炎」が動き出す。
「右舷方向真横より高波!高さ二十メートル!」
「面舵いっぱい!両舷最大戦速!」
「面舵いっぱぁい!」
凛久が叫び、わたしが指示を出し、春奈が舵輪を回す。
ぐうっ
急旋回による遠心力で「陽炎」の艦体が傾き、艦首がだんだんと右に向いていく。
ザバァッ!
艦首が思いっきり波をかぶった。
(ごめんね・・・・・・・)
わたしは心の中でつぶやく。今ここにはいない艦魂に向かって。
(あと少しだけ耐えて・・・・・・・)
陽炎は、どこにいるんだろうか・・・・・・・・
「ハックション!」
わたし―駆逐艦「陽炎」の艦魂、陽炎は大きくくしゃみをすると前を見た。
「くっ、厳しい・・・・・・・」
右手には艦首の旗竿をしっかりとつかみ、まっすぐ前方を見つめる。左手は、頭にかぶった水兵帽を抑えた。
「この帽子だけは・・・・・・・」
何十年も前、わたしが海軍にいたころ。その時にもわたしが「見える」人がいた。名前は前島一等水兵。わたしが沈んだ時には特務中尉まで昇進してたけど。
「前島さんだけがわたしのことをかわいがってくれた。実さんや永信さんと同じくらい・・・・・・」
そして・・・・・・・
「わたしを強くしてくれたのも、前島さんだ!」
竣工したての頃、わたしは高波すら怖がる弱い艦魂だった。
「前島さん、今でもあなたの声は思い出せますよ」
わたしに初めて声をかけた時の声も、荒波におびえるわたしを励ましてくれた声も・・・・・。
ザバァッ!
艦の真横に高波が立ち上がるのが見えた。
「来たわね!」
ぐうっ
実さんの操艦により、艦首が波の方向に向けられる。
「これまで幾多のフネを屠り、海の藻屑にしてきた太平洋の荒波!」
わたしは荒波に向かって叫ぶ。
「わたしはもう、お前など恐れない!」
波が大きく立ち上がり、わたしの視界が真っ青になった。
ザァァァァァ!
「うぐっ」
わたしの体がもろに波をかぶり、息ができない。苦しい!
ザァァァァァ!
「ぷはっ!」
波の上に乗り上げたらしく、息ができるようになった。次の瞬間・・・・
「まったく、無茶なことするものだな!」
いきなり手首をつかまれる。
「ヒャッ!」
その方向を振り向くと・・・・・・・
「前島さん!」
わたしが沈むときに退艦したはずなのに、なんで?
「乗り切ったわね」
「いや、まだまだ気は抜けないよ」
わたしが言うと、永信が難しい顔をしながら返す。
「左舷真横からの高波!高さ四十メートル!」
「取り舵いっぱい!」
「取り舵いっぱぁい!」
艦首が今度は左を向いた。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
主機が大きくうなる。
「そおりゃっ!」
ぐおんっ
再び艦首が波に乗り上げ、旗竿が波をかぶる。
「ん・・・・・?」
わたしは旗竿の周辺に妙な人影を見つけた。それもふたり。
「片方は・・・・・陽炎?もう一人は誰なの?」
どうやら男らしいが、制服が呉開陽高校じゃない。
「むしろあれ、大日本帝国海軍の第三種軍装じゃないか?」
永信にも見えているようで、顔をしかめている。
「夏芽、風華。見える?」
二人には見えないらしく、首を横に振った。
「男の艦魂なんて見たことも聞いたこともないわよ」
「僕だって初耳だ」
わたしが叫ぶと、永信が返す。
「まさか、例の話じゃないわよね・・・・・・」
「ま、まさかね・・・・・・」
わたしが言うと、永信が弱弱しく言う。
「例の話って、まさかのアレ?」
夏芽がおびえたように言った。
「まさか、幽霊なんて迷信でしょ」
風華が鼻で笑う。
「でも、あんな服装のって甲板に出てたっけ?」
呉開陽高校の一〇式戦闘服は少しだけ第三種軍装に似てるけど、基本的には陸自の制服だから見間違えることは少ないはずだ。
「じゃあ、本当に幽霊が出たってこと!?」
夏芽がガタガタ震えながら言う。
「たぶんね、わたしと永信は霊感が強いらしくて・・・・・艦魂とか幽霊が見えちゃうの」
わたしが言うと、永信もうなずいた。
「永信、この台風を切り抜けたら陽炎とアイツを呼び出しなさい」
「え、実がやればいいじゃん!」
「つべこべ言うな!」
この話をしてる間にも、「陽炎」は襲い来る波をかわし続けている。
「わかったよ」
永信が言う。
「わかってくれて助かるわー」
「絶対本心じゃないだろ・・・・・」
「本心だもん」
「は?」
永信がぼそりとつぶやき、それにわたしが応戦した。
「ほらほら、夫婦げんかもその辺にしなよ」
『はぁ!?』
風華が笑い、わたしと永信が一斉に叫ぶ。
「あ、あり得ないでしょ!わたしがこいつと!」
「こ、こんなヤツこっちから願い下げだ!」
お互いに言い放った。
「ふ~ん、声が震えてるけど?」
夏芽がエンジンテレグラフを握りながら言う。
「そんなことないもん!」
わたしは叫ぶと、前方を見つめた。
「右舷前方より高波!」
「面舵三十度!」
「おもかーじ三十度!」
わたし―北上未来の乗る重巡洋艦「鳥海」は、すさまじい波に揺られていた。
「両舷第二戦速!」
「両舷第二戦速―!」
チンチンチン!
エンジンテレグラフが鳴り響く。
ぐおんっ
波に前部が持ち上げられて傾斜がつき、艦内での移動はもはや「走る」と言うより「転がる」に近い。
「ぐあっ!」
突然聞こえたうめき声。
「どうした!?」
「左腕の骨を折ったようですが、まだ大丈夫です」
後ろを見ると、山入端が左腕を抑え、壁にもたれかかっていた。その額には、脂汗が浮いている。
「先程の揺れで壁に打ち付けられ・・・・・・」
「わかった、もう言うな」
苦しそうに報告する山入端を止め、艦橋の出口を指さす。
「医務室で応急処置を受けて来い。軽傷者優先だがな」
「り、了解です・・・・・・」
山入端が腕を抑えながら艦橋を出ていった。
「ふう・・・・」
わたしは電子煙管を加えながら考える。
(これでわたしが怪我をしたら、次は航海長に指揮権が渡るわけだ)
「まあ、そうそう簡単にくたばりはしない」
電子煙管を離し、火皿にリキッドを詰め込む。
「これ以上は駄目だよ。未来」
横からにゅっと手が出てきて、わたしの煙管を奪った。
「那由。やめろ」
「いいじゃんいいじゃん~。『秋雲』のころからの仲なんだし」
わたしの横で重巡「鳥海」主計長の蓬田那由が笑っている。
「その『秋雲』のころにお前に引っ張られてコミケでコスプレさせられたことは忘れてないからな?」
「未来だって、海自のイベントにわたし引っ張ってったでしょ?おあいこだよ」
那由が言った。
「まあ、そうだな。両舷第三戦速!面舵十度!」
わたしは那由に返しながら操艦の指示を出す。
「おもかーじ十度!」
チン!
伝声管から航海長の声が聞こえ、エンジンテレグラフが一回鳴る。
ぐぐぐぐ・・・・・・・
艦首が波の方を向いた。
ドォッ!
一気に突っ込む。
「総員衝撃に備え!」
わたしが叫んだ瞬間・・・・・・
ぐおんっ
艦が荒波に揉まれる。
ガチャッ!
「艦長!」
艦橋の扉が開いて、何人かの人間が駆け込んでくる。わたしたちと違って革製の飛行服と帽子を着こみ、飛行眼鏡とハーネスを着用していた。
「飛行科か。どうした」
わたしが言うと、飛行長の春本が話す。
「甲板とカタパルト上に繋止中の艦載機まで高波が!このままでは使用不能となります!」
(クソがっ!)
わたしは下唇を噛みしめる。
我が「鳥海」には零式水上偵察機二機と零式水上観測機一機が搭載されている。
(ただ・・・・・・・)
搭載されている。といっても、実態は後部甲板の一部に露天繋止されているだけだ。
「で・・・・・・」
わたしは春本に問う。
「どうすればいい?」
「我々飛行科の意見としては、これ以上荒れないうちに発艦し、近隣の航空基地に帰投するのが得策かと・・・・」
春本が答えた。
「ふむ・・・・・・・」
わたしは少し考える。
(この状況で発艦できるのか・・・・・・?)
我が「鳥海」は台風の荒波に揉まれ、大きく揺れている。
「一つ確認する」
わたしは春本を見た。
「お前たちは、この荒波の中でも発艦できるのか?」
『はい!』
飛行科搭乗員総勢八名が一斉に答える。
「我々をナメてもらっちゃ困りますよ。艦長」
「わたしたちだって毎日訓練を積んでるんですから」
「任せてください。艦長はドーンと構えてればいいんですよ」
口々にわたしに言う。
わたしはうなずいて言った。
「わかった。発艦を許可しよう!」
「コンターック!」
ガコン!バタバタバタ・・・・・・・・・・
「三舵動作問題なし!フラップ展開!」
搭乗員の声とエンジン音が響く。
「「カタパルト上に移動しろ!」
俺―重巡洋艦「鳥海」飛行長の春本勇実は零式水上観測機の偵察員席から指示を出す。
グァァァァァァァ
クレーンに吊り上げられ、俺の零観は左舷側のカタパルト上の台車にセットされた。
カシャン
右舷側のカタパルトにも二番機の零式水上偵察機がセットされる。
「由良川、どうだ?」
「発進準備よし!」
操縦員の由良川晴美に声をかけると、彼女の元気な声が返ってくる。
俺は右手を高く上げると、グーにした手の親指を立てた。ちょうどYouTubeの「いいね」ボタンみたいな感じだ。
整備員も同じポーズを返す。
「由良川、あとはお前のタイミングでやれ」
「了解」
由良川はプロペラピッチを調節すると、スロットルを開ける。
「発艦するよ!」
由良川は額に当てた右手をサッと前に振る。
ドォン!
火薬の音がして、機体がすさまじい勢いで前に引かれる。
「ヤバッ!」
由良川が叫んだ。
「どうした・・・・・」
そう言いかけた俺の息が詰まる。前方に、巨大な波が立ち上がっていた。
「突っ込むよ!つかまって!」
由良川が叫ぶ。
ヴァラララララ・・・・・・・・!
由良川はフルスロットルで操縦桿をめいいっぱい引き付け、上昇を始める。
ザバァッ!
「うぐっ!」
零観の風防は開閉式で、思いっきり水が入った。
「ぷはっ!」
やっとのことで眼を開けると、零観はグングンと上昇していた。
「やったよ!勇実」
由良川が右手親指を立てる。
「おう!よくやったな!」
俺も親指を立てた。
ヴァラララララララ・・・・・・・・・・・
零観はどんどん上昇していく。
「とりあえず台風圏内から脱出しよう」
俺はインカムに言うと、後部機銃を確認した。
「両舷最大戦速!あと少しよ!」
わたし―初霜実はインカムに向かって叫ぶ。
「両舷最大戦速!」
チン!
エンジンテレグラフが鳴り、「陽炎」が加速する。
「晴れ間が見えたよ!実!」
「こっちでも視認!」
愛蘭と凛久が双眼鏡を覗きながら叫んだ。
「よっしゃ!」
永信がガッツポーズをする。
「あと少し!みんな頑張って!」
わたしは艦内放送のマイクを手に取って叫んだ。
「右舷より高波!高さ十メートル!」
最後の荒波が「陽炎」に牙を剥く。
「面舵四十度!」
「おもかーじ四十度!」
艦首が荒波と向かい合う。
「よし!突っ込め!」
ドォッ!
艦首が波に乗り上げ、かち割った。
次の瞬間、日の光が「陽炎」に降り注ぐ。
「ふぅ・・・・・・」
わたしは大きく息をついた。
「台風は切り抜けたわね」
艦内放送のマイクを手に取る。
「各科被害状況を知らせ!」
《こちら機関科。特に問題はなし!》
《こちら砲術科。こっちも問題はないよ!》
《こちら主計科、若干夕食の準備が遅れてるかな》
《こちら水雷科・・・・・》
各科の報告が返ってくる。
ブゥゥゥゥゥゥン・・・・・・・・
空からエンジン音が聞こえた。
「零観!?」
永信が空を見上げる。
永信が空を見上げる。
「他の艦の艦載機かな・・・・・」
零観は日の光を受け、オレンジ色に染まる。
「キレイ・・・・・」
夕日に舞うフロート付きの機体。
「零戦もいいけど、零観がやっぱり一番ね」
最近飛行機乗ってなかったしね。
「今度の休みにでも乗る?」
永信が言う。
「じゃあ、お世話になろうかしら」
わたしはほほ笑んで言う。
「あっ、実がデレた」
夏芽がエンジンテレグラフを戻しながら言う。
「なっ!デレてなんk・・・・・」
「でも、実が永信君にそんな顔するのはかなり少なくない?」
風華も航海日誌にペンを走らせながら言った。
「むぐぅ・・・・・・」
確かに、永信に笑顔を見せることはみんなの前ではないけど・・・・・・
「みんなのいないとこでは見せてるもん」
ぼそっとつぶやく。
「え?」
聞こえたのか、永信が首をかしげる。
「なんでもないからね」
永信を睨みつけて言った。
「お、おう・・・・・」
永信がたじろいだように返事をする。
「通信科に連絡。生徒艦隊の他の艦と連絡を取れるか試しなさい」
わたしは指示を出すと、永信を見た。
「な、何・・・・・?」
永信が自分を指さす。
「陽炎とあの男を呼んで来なさい」
「了解」
永信がため息をつくと、艦橋から出た。
「出港用意ー!」
わたしが指示を出すと、後ろに立っている永信が復唱した。
「錨鎖巻き上げー!」
ガラガラガラガラ・・・・・
揚錨機と錨鎖がかみ合う音とともに、海中の主錨が引き上げられた。
艦首の国籍旗も下ろされる。
永信がインカムで各科と連絡を取りあう。そして、こっちを向いた。
「実。各科出港準備完了!」
その声を聞くや否や、わたしは指令を出す。
「出港!」
その命令を聞いた通信科員が持っている艦内放送のマイクをもう一人が構えるラッパの方に向けた。
パパパパー パパパパー パパパパーパパッパパー!
「出港―!」
喇叭が吹き鳴らされるとほぼ同時に通信科員はマイクを口元に持っていき、叫ぶ。
チンチンチン!
エンジンテレグラフの小刻みな音。
ボーーーーーーーーー!
出港を告げる警笛の声。
グォォォォォォ!
五万二千馬力の主機がうなりを上げ、「陽炎」はその艦体を前進させ始めた。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
グァァァァァァァ・・・・・・・・
戦艦「大和」、「武蔵」。空母「信濃」、重巡「高雄」も出港のため動き出した。
「ったく、なんで公試の日に限って台風なのよ!何時だと思ってるのよ!」
「まあまあ実、天は気まぐれだよ」
永信がなだめるように言う。
「それにしても、『大型の台風が近づいてる』って、学校本部の気象班は何してたのよ!急に言われても対応できるわけないじゃない!」
学校本部から「 此マデニ前例ナキ大型台風接近ス」という電文が来たのは今日の正午。
午前中のうちに全力公試は終わらせておいたからいいものの、出港が遅れてしまった。
わたしは無線のスイッチを入れる。
「気象班!今台風はどのへん?」
「現在宿毛湾沖約四百キロメートル!中心部の最低気圧八百八十八hpa。最大風速百八十五ノットで現在こちらに向けて進行中です」
「は!?第二室戸台風と同じ規模じゃないの!」
「はい、同規模です」
わたしが叫ぶと、航海科の気象班が冷静に答える。
(まったく。なんで学校本部も早めに伝えないのよ。このままじゃ台風に突っ込むコースじゃん)
「どうする?実」
永信がわたしに問いかける。
(この大きさでは回避はほぼ不可能。だったら・・・・・・・)
わたしは大きく息を吸い込むと言い放った。
「総員配置!これより本艦は台風のど真ん中に突っ込む!今回は戦闘中だと思うように!」
「総員配置!」
永信がマイクに向かって復唱する。
「愛蘭!凛久!」
わたしは艦橋横に飛び出た見張り台にいる二人に声をかける。
「あんたたちは中に入りなさい!」
見張り台は屋根付きではあるものの胸から上の壁がない。台風の中でそんなとこにいたら高波に攫われる。
二人がうなずいて艦橋内に駆け込んできた。見張り台へのドアをしっかりと閉め、ロックを全てかける。
「天井ハッチ留め金よし!」
永信も天井に設けられたハッチを確認した。周りのガラス窓もすべて閉じ、しっかりとロックする。
その様子を見つつ、わたしはさらにインカムを入れる。
「機関科はボイラー最大出力を維持!」
《了解!》
いつも通りの夏芽。
「内務科と主計科は艦内の荷物をしっかりと固定しておきなさい!固縛が甘いと崩れるわよ!」
《わかってる。何度も言うな!》
いつきはちょっとキレ気味?
《まあまあいつき。そんなこと言わないの。冷静にね》
なだめるように風華が言う。
「砲術科と水雷科も戦闘配置につきなさい!」
《わかってるって》
《オーライオーライ!》
美月と渚からも返事が返ってくる。
「両舷第三戦速!」
わたしは「陽炎」の速度を二十四ノットまで上げるよう指示すると、前方を見た。
「機体をしっかり固縛しろ!燃料もだ!」
俺―平沼敦はそう指示を出すと、ほっと一息をついた。
ここは空母「信濃」飛行甲板下にある格納庫。艦上戦闘機「烈風」、艦上攻撃機「流星」、艦上偵察機「彩雲」が翼を休めている。全機共に主翼の二分の一を上方に折り畳み、頭の上で合掌しているみたいだ。
(・・・・ったく。もう十一月なのになんで台風が来るんだよ)
しかも、「信濃」は竣工したばっかりなのに。
「とにかく念入りに固縛しろ!ただでさえ艦載機は高いのに、烈風と流星はさらに高いんだからな!」
「わかっとるわい!」
ガチャッ!
それぞれの機体にワイヤーがかけられ、床面に固定される。
「まったく・・・・・・発艦する暇もないって・・・・・・」
俺の隣でトンブリが言った。
「少しだけ時間があれば、航空隊は発艦して近隣の飛行場に避難できたんだけどね・・・・・・」
俺はトンブリのほうを見る。
「トンブリ、もしもの話を言っても始まらねぇ。今できるのは機体の被害を最小限に抑えることだ」
「了解」
トンブリが烈風の方に向かった。その時、艦内放送が響く。
《此れより本艦は台風内暴風域に入る!総員衝撃に備え!》
艦長の澪の声だ。その瞬間・・・・・・
ぐおんっ
凄まじい勢いで艦の前部が持ち上がり、床に傾斜がついた。
「ぐぁっ!」
「キャァッ!」
何人かの乗員が跳ね飛ばされ、壁に体を打ち付ける。
ボキッ!ゴリィ
何人からは骨が折れる音が聞こえた。
「負傷者を医務室に移送!軽傷者からだ!」
重傷者は応急処置での現場復帰は不可能。それに対し軽傷者は応急処置のみで復帰できる。
「とにかく戦闘員確保を優先しろ!」
そう叫んだ瞬間、また艦が波に乗り上げた。
ぐわん!
足元が一気に跳ね上げられ、俺の足が床から離れる。
「なにっ!?」
次の瞬間・・・・・・・・
ドン!
俺の体全体にすさまじい痛みが走った。
「平沼飛行長!」
「敦!」
戦闘機隊長の夕雲と俺の相棒のトンブリがこっちを向く。
「馬鹿野郎!俺より機体を優先しろ!」
俺は叫んで起き上がった。
「でも敦、頭を怪我してるじゃん!」
トンブリが言う。
「え・・・・?」
額に手を当てると、生温かい液体が手を濡らした。
「防空鉄兜は!?」
周りを見ると、俺の鉄兜は頭から外れて床に転がっていた。どうやら顎ひもを締め忘れていたらしい。
「かまうな!俺は大丈夫だ!」
立ち上がると同時に首に巻いていたマフラーで頭を縛って止血。その上からさらに鉄兜をかぶろうとした。
「あれ?おかしいな・・・・・」
いつもなら簡単に結べるはずのマフラーがなかなか結べない。
「な、何だ・・・・・・・」
目のまえの景色がゆがんで見える。
「敦!」
トンブリが駆け寄ってくるのが見えた瞬間、俺の視界が真っ暗になった。
「右舷前方より高波!高さ四十メートル!」
凛久が双眼鏡を覗いて叫ぶ。
「面舵十度!両舷最大戦速!」
わたしは指示を出し、艦首を波に向けた。
「面舵十度!」
春奈が復唱しながら舵輪を回す。
「両舷最大戦速!」
チンチンチン!
夏芽が復唱しながらエンジンテレグラフを回し、小刻みなベルの音が響いた。
グォォォォォォ!
主機のうなりを響かせ、「陽炎」は波に乗り上げる。
ぐわん!
波に前部が持ち上げられ、艦体が大きく傾いた。きっと外から見れば艦底に塗られた暗赤色が見えることだろう。
ドォッ!
水柱を上げ、艦の前部は海面につく。艦首の旗竿が思いっきり波をかぶった。
ザバァッ!
艦首を洗った波は高く、艦橋前面のガラス窓にも大量の水がたたきつけられた。
ピッ!
わたしはすぐにインカムを入れ、砲術科に繋ぐ。
「美月!そっちは大丈夫?」
《大丈夫大丈夫!ちゃんと出港前に主砲には栓をしてあるから》
美月がいつものように返す。
「そう、ならいいけど・・・・・・・」
わたしはそう返すと、再び前方に目を向けた。
「左舷前方より高波!高さ三十メートル!」
「取り舵四十度!」
「とりかーじ四十度!」
今度は愛蘭の声が響き、陽炎は高波に乗り上げる。
ピカッ!
窓の向こうで雷光が煌めいた。
ゴロゴロゴロ・・・・・・・
雷鳴も聞こえてくる。
「近いわね・・・・・・・・」
「うん、注意しておく」
次の瞬間・・・・
ドーン!
艦橋後方、わたしたちのすぐ近くで轟音が響いた。
ピッ!
すぐさま全員にインカムをつなぐ。
「なにがあったの!?」
《前部マストに落雷!直撃です!》
「了解!」
わたしはインカムを切ると、艦内放送のマイクを手に取る。
「艦橋より乗員全員へ!ただいま前部マストに落雷が発生!各科損害を知らせ!」
《砲術科!特に問題はなし!》
《水雷科、同じく!》
《機関も同じです!》
《通信科も損害はなし》
前後のマストに取り付けられている避雷針とアースが完全に機能したようだ。
「避雷針がついてて命拾いしたね」
永信が言う。
「木造フリゲートならともかく、鋼鉄製の艦は艦自体がアースになるから助かるわね」
わたしも返した。
「前方より高波!高さ十メートル!」
「両舷最大戦速!乗り越えなさい!」
「両舷最大戦速ー!」
ドオッ!
再び艦首が波に乗り上げて突っ込む。
「両舷第二戦速!」
「両舷第二戦速ー!」
チンチンチン!
波を駆け降りるときは減速。艦に速度がつきすぎないように留意する。
「左舷前方より高波!高さ三十メートル!」
「両舷最大戦速!取り舵二十度!」
そう指示をして前を見た瞬間、愛蘭の声が響く。
「実!右舷前方に遭難船!漁船です!」
「なぜそのことを早く伝えなかった!気象班はいったい何してたんだ!」
わたし―北上未来は鼻息も荒く言い放つと、電子煙管を手に取った。
すぅっ
口をつけて思いっきり吸い込む。
「ぷはっ!」
ゆっくり味うと紫煙を口から吐き出した。
「ちょっと、北上先生・・・・・・」
「やっぱり煙草が一番落ち着くの。少しくらいいいでしょ」
副長の山入端が言うのに返し、再び電子煙管を加える。
(それに、わたしは半分煙草依存だし)
心の中でつぶやくと、艦橋の外を見た。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
ゴォォォォォォォ・・・・・・・
呉港内の艦艇たちは台風接近の報に接し避泊のため緊急出港を始めている。
「まずは『陽炎』以外の残存駆逐艦か・・・・・・」
さらに重巡、軽巡部隊、「信濃」を除いた空母機動部隊。そして最後に「長門」を先頭とした戦艦部隊が出港していく。
各艦の艦尾には十六条旭日旗がはためき、さながら往時の演習のようだ。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
グワァァァァァァ・・・・・・・
教官艦隊旗艦である護衛艦「くらま」、アメリカから訪問中の戦艦「アイオワ」、「ミズーリ」も動き始めた。
「よし、全艦出港したな・・・・・・・」
わたしは双眼鏡を覗いて確認すると、指示を出す。
「出港!」
パパパパー パパパパー パパパパーパパッパパー!
「出港―!」
チンチンチン!
喇叭が吹き鳴らされ、エンジンテレグラフの音が響く。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
主機の駆動音が重々しく響き、重巡洋艦「鳥海」は呉港内呉開陽高校専用桟橋を出港した。
「漁船!?」
わたし―初霜実は愛蘭に言う。
「こんな台風が近づいてるのに操業してるものなのね」
「うん、電信で問い合わせたところ、JFすくも湾漁協所属の『第四共栄丸』とのこと。本艦に救助を要請している」
愛蘭が答えた。
「大きさはさしずめ十トンってとこかな。内火艇より少し大きいくらい。どうする?」
永信が双眼鏡を覗いて言う。
「救助するしかないでしょ!両舷停止!総員舟艇収容準備!」
「両舷停止!」
チンチンチンチンチン!
エンジンテレグラフが鳴り、「陽炎」は漁船に並ぶようにして停止した。
「僕は漁船収容の指令に言ってくる」
永信が外套を身に着けて外に出ていく。
「気をつけなさいよ」
「わかってるって!」
永信たちが前部にある内火艇収容用のクレーンを組み立て始めた。
「オーライ!オーライ!」
鎖の先端、そこに取り付けられたフックが漁船に向かって降りていく。お互い激しい波に揺さぶられながらの作業だ。
「両舷後進微速!」
わたしは適宜速度の指示を出してできるだけ現在位置を動かないように心がける。
「玉掛OK!」
漁船上の漁師さんが叫んだ。
「よし!巻き上げ!」
ガラガラガラガラ・・・・・・
鎖と滑車がかみ合う音とともに、漁船が甲板上に引き上げられる。
ドン!
艦橋前方、内火艇が置いてある隣に下ろされた漁船。船内から漁師さんたちが貴重品と漁果を持って降りてくる。
「大丈夫ですか!?」
「とりあえずこれを!」
乗員たちが漁師さんたちの体にバスタオルをかぶせた。
「よし!そっちは固定したな!」
ガチャッ
漁船にワイヤーがかけられ、甲板に固定された。
わたしはインカムを入れる。
「漁船の固定作業が終わり次第艦内に退避しなさい!」
《了解》
永信が答え、全員が艦内に入った。扉がしっかりと閉鎖される。
「ただいま~」
永信が艦橋に入ってくる。
「全員の艦内退避が完了、扉も完全に閉鎖した」
「了解。両舷第一戦速!」
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
再び「陽炎」が動き出す。
「右舷方向真横より高波!高さ二十メートル!」
「面舵いっぱい!両舷最大戦速!」
「面舵いっぱぁい!」
凛久が叫び、わたしが指示を出し、春奈が舵輪を回す。
ぐうっ
急旋回による遠心力で「陽炎」の艦体が傾き、艦首がだんだんと右に向いていく。
ザバァッ!
艦首が思いっきり波をかぶった。
(ごめんね・・・・・・・)
わたしは心の中でつぶやく。今ここにはいない艦魂に向かって。
(あと少しだけ耐えて・・・・・・・)
陽炎は、どこにいるんだろうか・・・・・・・・
「ハックション!」
わたし―駆逐艦「陽炎」の艦魂、陽炎は大きくくしゃみをすると前を見た。
「くっ、厳しい・・・・・・・」
右手には艦首の旗竿をしっかりとつかみ、まっすぐ前方を見つめる。左手は、頭にかぶった水兵帽を抑えた。
「この帽子だけは・・・・・・・」
何十年も前、わたしが海軍にいたころ。その時にもわたしが「見える」人がいた。名前は前島一等水兵。わたしが沈んだ時には特務中尉まで昇進してたけど。
「前島さんだけがわたしのことをかわいがってくれた。実さんや永信さんと同じくらい・・・・・・」
そして・・・・・・・
「わたしを強くしてくれたのも、前島さんだ!」
竣工したての頃、わたしは高波すら怖がる弱い艦魂だった。
「前島さん、今でもあなたの声は思い出せますよ」
わたしに初めて声をかけた時の声も、荒波におびえるわたしを励ましてくれた声も・・・・・。
ザバァッ!
艦の真横に高波が立ち上がるのが見えた。
「来たわね!」
ぐうっ
実さんの操艦により、艦首が波の方向に向けられる。
「これまで幾多のフネを屠り、海の藻屑にしてきた太平洋の荒波!」
わたしは荒波に向かって叫ぶ。
「わたしはもう、お前など恐れない!」
波が大きく立ち上がり、わたしの視界が真っ青になった。
ザァァァァァ!
「うぐっ」
わたしの体がもろに波をかぶり、息ができない。苦しい!
ザァァァァァ!
「ぷはっ!」
波の上に乗り上げたらしく、息ができるようになった。次の瞬間・・・・
「まったく、無茶なことするものだな!」
いきなり手首をつかまれる。
「ヒャッ!」
その方向を振り向くと・・・・・・・
「前島さん!」
わたしが沈むときに退艦したはずなのに、なんで?
「乗り切ったわね」
「いや、まだまだ気は抜けないよ」
わたしが言うと、永信が難しい顔をしながら返す。
「左舷真横からの高波!高さ四十メートル!」
「取り舵いっぱい!」
「取り舵いっぱぁい!」
艦首が今度は左を向いた。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
主機が大きくうなる。
「そおりゃっ!」
ぐおんっ
再び艦首が波に乗り上げ、旗竿が波をかぶる。
「ん・・・・・?」
わたしは旗竿の周辺に妙な人影を見つけた。それもふたり。
「片方は・・・・・陽炎?もう一人は誰なの?」
どうやら男らしいが、制服が呉開陽高校じゃない。
「むしろあれ、大日本帝国海軍の第三種軍装じゃないか?」
永信にも見えているようで、顔をしかめている。
「夏芽、風華。見える?」
二人には見えないらしく、首を横に振った。
「男の艦魂なんて見たことも聞いたこともないわよ」
「僕だって初耳だ」
わたしが叫ぶと、永信が返す。
「まさか、例の話じゃないわよね・・・・・・」
「ま、まさかね・・・・・・」
わたしが言うと、永信が弱弱しく言う。
「例の話って、まさかのアレ?」
夏芽がおびえたように言った。
「まさか、幽霊なんて迷信でしょ」
風華が鼻で笑う。
「でも、あんな服装のって甲板に出てたっけ?」
呉開陽高校の一〇式戦闘服は少しだけ第三種軍装に似てるけど、基本的には陸自の制服だから見間違えることは少ないはずだ。
「じゃあ、本当に幽霊が出たってこと!?」
夏芽がガタガタ震えながら言う。
「たぶんね、わたしと永信は霊感が強いらしくて・・・・・艦魂とか幽霊が見えちゃうの」
わたしが言うと、永信もうなずいた。
「永信、この台風を切り抜けたら陽炎とアイツを呼び出しなさい」
「え、実がやればいいじゃん!」
「つべこべ言うな!」
この話をしてる間にも、「陽炎」は襲い来る波をかわし続けている。
「わかったよ」
永信が言う。
「わかってくれて助かるわー」
「絶対本心じゃないだろ・・・・・」
「本心だもん」
「は?」
永信がぼそりとつぶやき、それにわたしが応戦した。
「ほらほら、夫婦げんかもその辺にしなよ」
『はぁ!?』
風華が笑い、わたしと永信が一斉に叫ぶ。
「あ、あり得ないでしょ!わたしがこいつと!」
「こ、こんなヤツこっちから願い下げだ!」
お互いに言い放った。
「ふ~ん、声が震えてるけど?」
夏芽がエンジンテレグラフを握りながら言う。
「そんなことないもん!」
わたしは叫ぶと、前方を見つめた。
「右舷前方より高波!」
「面舵三十度!」
「おもかーじ三十度!」
わたし―北上未来の乗る重巡洋艦「鳥海」は、すさまじい波に揺られていた。
「両舷第二戦速!」
「両舷第二戦速―!」
チンチンチン!
エンジンテレグラフが鳴り響く。
ぐおんっ
波に前部が持ち上げられて傾斜がつき、艦内での移動はもはや「走る」と言うより「転がる」に近い。
「ぐあっ!」
突然聞こえたうめき声。
「どうした!?」
「左腕の骨を折ったようですが、まだ大丈夫です」
後ろを見ると、山入端が左腕を抑え、壁にもたれかかっていた。その額には、脂汗が浮いている。
「先程の揺れで壁に打ち付けられ・・・・・・」
「わかった、もう言うな」
苦しそうに報告する山入端を止め、艦橋の出口を指さす。
「医務室で応急処置を受けて来い。軽傷者優先だがな」
「り、了解です・・・・・・」
山入端が腕を抑えながら艦橋を出ていった。
「ふう・・・・」
わたしは電子煙管を加えながら考える。
(これでわたしが怪我をしたら、次は航海長に指揮権が渡るわけだ)
「まあ、そうそう簡単にくたばりはしない」
電子煙管を離し、火皿にリキッドを詰め込む。
「これ以上は駄目だよ。未来」
横からにゅっと手が出てきて、わたしの煙管を奪った。
「那由。やめろ」
「いいじゃんいいじゃん~。『秋雲』のころからの仲なんだし」
わたしの横で重巡「鳥海」主計長の蓬田那由が笑っている。
「その『秋雲』のころにお前に引っ張られてコミケでコスプレさせられたことは忘れてないからな?」
「未来だって、海自のイベントにわたし引っ張ってったでしょ?おあいこだよ」
那由が言った。
「まあ、そうだな。両舷第三戦速!面舵十度!」
わたしは那由に返しながら操艦の指示を出す。
「おもかーじ十度!」
チン!
伝声管から航海長の声が聞こえ、エンジンテレグラフが一回鳴る。
ぐぐぐぐ・・・・・・・
艦首が波の方を向いた。
ドォッ!
一気に突っ込む。
「総員衝撃に備え!」
わたしが叫んだ瞬間・・・・・・
ぐおんっ
艦が荒波に揉まれる。
ガチャッ!
「艦長!」
艦橋の扉が開いて、何人かの人間が駆け込んでくる。わたしたちと違って革製の飛行服と帽子を着こみ、飛行眼鏡とハーネスを着用していた。
「飛行科か。どうした」
わたしが言うと、飛行長の春本が話す。
「甲板とカタパルト上に繋止中の艦載機まで高波が!このままでは使用不能となります!」
(クソがっ!)
わたしは下唇を噛みしめる。
我が「鳥海」には零式水上偵察機二機と零式水上観測機一機が搭載されている。
(ただ・・・・・・・)
搭載されている。といっても、実態は後部甲板の一部に露天繋止されているだけだ。
「で・・・・・・」
わたしは春本に問う。
「どうすればいい?」
「我々飛行科の意見としては、これ以上荒れないうちに発艦し、近隣の航空基地に帰投するのが得策かと・・・・」
春本が答えた。
「ふむ・・・・・・・」
わたしは少し考える。
(この状況で発艦できるのか・・・・・・?)
我が「鳥海」は台風の荒波に揉まれ、大きく揺れている。
「一つ確認する」
わたしは春本を見た。
「お前たちは、この荒波の中でも発艦できるのか?」
『はい!』
飛行科搭乗員総勢八名が一斉に答える。
「我々をナメてもらっちゃ困りますよ。艦長」
「わたしたちだって毎日訓練を積んでるんですから」
「任せてください。艦長はドーンと構えてればいいんですよ」
口々にわたしに言う。
わたしはうなずいて言った。
「わかった。発艦を許可しよう!」
「コンターック!」
ガコン!バタバタバタ・・・・・・・・・・
「三舵動作問題なし!フラップ展開!」
搭乗員の声とエンジン音が響く。
「「カタパルト上に移動しろ!」
俺―重巡洋艦「鳥海」飛行長の春本勇実は零式水上観測機の偵察員席から指示を出す。
グァァァァァァァ
クレーンに吊り上げられ、俺の零観は左舷側のカタパルト上の台車にセットされた。
カシャン
右舷側のカタパルトにも二番機の零式水上偵察機がセットされる。
「由良川、どうだ?」
「発進準備よし!」
操縦員の由良川晴美に声をかけると、彼女の元気な声が返ってくる。
俺は右手を高く上げると、グーにした手の親指を立てた。ちょうどYouTubeの「いいね」ボタンみたいな感じだ。
整備員も同じポーズを返す。
「由良川、あとはお前のタイミングでやれ」
「了解」
由良川はプロペラピッチを調節すると、スロットルを開ける。
「発艦するよ!」
由良川は額に当てた右手をサッと前に振る。
ドォン!
火薬の音がして、機体がすさまじい勢いで前に引かれる。
「ヤバッ!」
由良川が叫んだ。
「どうした・・・・・」
そう言いかけた俺の息が詰まる。前方に、巨大な波が立ち上がっていた。
「突っ込むよ!つかまって!」
由良川が叫ぶ。
ヴァラララララ・・・・・・・・!
由良川はフルスロットルで操縦桿をめいいっぱい引き付け、上昇を始める。
ザバァッ!
「うぐっ!」
零観の風防は開閉式で、思いっきり水が入った。
「ぷはっ!」
やっとのことで眼を開けると、零観はグングンと上昇していた。
「やったよ!勇実」
由良川が右手親指を立てる。
「おう!よくやったな!」
俺も親指を立てた。
ヴァラララララララ・・・・・・・・・・・
零観はどんどん上昇していく。
「とりあえず台風圏内から脱出しよう」
俺はインカムに言うと、後部機銃を確認した。
「両舷最大戦速!あと少しよ!」
わたし―初霜実はインカムに向かって叫ぶ。
「両舷最大戦速!」
チン!
エンジンテレグラフが鳴り、「陽炎」が加速する。
「晴れ間が見えたよ!実!」
「こっちでも視認!」
愛蘭と凛久が双眼鏡を覗きながら叫んだ。
「よっしゃ!」
永信がガッツポーズをする。
「あと少し!みんな頑張って!」
わたしは艦内放送のマイクを手に取って叫んだ。
「右舷より高波!高さ十メートル!」
最後の荒波が「陽炎」に牙を剥く。
「面舵四十度!」
「おもかーじ四十度!」
艦首が荒波と向かい合う。
「よし!突っ込め!」
ドォッ!
艦首が波に乗り上げ、かち割った。
次の瞬間、日の光が「陽炎」に降り注ぐ。
「ふぅ・・・・・・」
わたしは大きく息をついた。
「台風は切り抜けたわね」
艦内放送のマイクを手に取る。
「各科被害状況を知らせ!」
《こちら機関科。特に問題はなし!》
《こちら砲術科。こっちも問題はないよ!》
《こちら主計科、若干夕食の準備が遅れてるかな》
《こちら水雷科・・・・・》
各科の報告が返ってくる。
ブゥゥゥゥゥゥン・・・・・・・・
空からエンジン音が聞こえた。
「零観!?」
永信が空を見上げる。
永信が空を見上げる。
「他の艦の艦載機かな・・・・・」
零観は日の光を受け、オレンジ色に染まる。
「キレイ・・・・・」
夕日に舞うフロート付きの機体。
「零戦もいいけど、零観がやっぱり一番ね」
最近飛行機乗ってなかったしね。
「今度の休みにでも乗る?」
永信が言う。
「じゃあ、お世話になろうかしら」
わたしはほほ笑んで言う。
「あっ、実がデレた」
夏芽がエンジンテレグラフを戻しながら言う。
「なっ!デレてなんk・・・・・」
「でも、実が永信君にそんな顔するのはかなり少なくない?」
風華も航海日誌にペンを走らせながら言った。
「むぐぅ・・・・・・」
確かに、永信に笑顔を見せることはみんなの前ではないけど・・・・・・
「みんなのいないとこでは見せてるもん」
ぼそっとつぶやく。
「え?」
聞こえたのか、永信が首をかしげる。
「なんでもないからね」
永信を睨みつけて言った。
「お、おう・・・・・」
永信がたじろいだように返事をする。
「通信科に連絡。生徒艦隊の他の艦と連絡を取れるか試しなさい」
わたしは指示を出すと、永信を見た。
「な、何・・・・・?」
永信が自分を指さす。
「陽炎とあの男を呼んで来なさい」
「了解」
永信がため息をつくと、艦橋から出た。
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