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第三章 激闘の中へ
第十八話 出撃前
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ヴァラララララ・・・・・・・・!
腹に響く空冷星型エンジンの音。
バババババババババ!
耳元で風がうなる。
「今日はどこまで行くの?」
わたしはスポーツ用複葉機「WACO F YMF-F5C」の前席でインカムに話しかけた。
「う~ん。高松まで行ってうどん食べようと思ったんだけど・・・・・」
後席で操縦するお姉ちゃんが言う。
「は?うどん食べるためだけに高松まで行くの!?」
「そうだよ~」
お姉ちゃんはそう言うと機体を傾け、左に旋回する。
「ちょっと!そんなことのためにWACO出すの?」
「エンジンは定期的に動かさないと固まるし、今回はわたしがWACOと飛びたいだけだからね」
機体を水平に戻して、お姉ちゃんが言った。
この複葉機「WACO」はわたしのお姉ちゃんが所有している機体。わたしのお母さんが学生時代にレストアしたもののようで、ちゃんと日本での機体登録もとってある。
お母さんが空自に入ってからは倉庫でほったらかしにされてたけど、お姉ちゃんが再レストアしたみたい。
「ところでさ」
わたしはお姉ちゃんに話しかける。
「なんでこの機体を気に入ってるの?うちにはもっと速くて強い零戦二二型とかもあるじゃん」
「う~ん」
お姉ちゃんは少し考えると、言った。
「わたしの名前って和子でしょ?『和子』って『わこ』っても読めるじゃん。だからこの機体にしたのかな」
お姉ちゃんはそう言うと、機体を傾ける。
「ちょっと歯を食いしばってて」
次の瞬間・・・・・
ガタン!
後席とリンクしたわたしの前の操縦桿が左に傾く。
ぐるん!
補助翼が作動し、天地がひっくり返った。
「!!!」
「まだまだ行くよ~」
お姉ちゃんの声。
ガン!
今度は操縦桿が手前の方に倒される。
ヴァラララララ・・・・・・・・!
スロットルも開けられ、今度は機体が上昇し始めた。
「ちょっと!いい加減高松に向かいなさいよ!こんな瀬戸内海で飛び回ってないで」
「はーい」
わたしが言うと。お姉ちゃんは素直に機体を水平飛行に戻して高松方向に機首を向ける。
「あ、それとね・・・・・・・」
「何よ」
「あの零戦、実にあげる」
「・・・・・・」
一時的にわたしの思考が停止する。
「は?」
どういうこと?
「言った通り。あの零戦二二型を実の物にするってこと。実がいいんだったらすぐにでも機体の所有者を初霜和子から初霜実に変えたいんだけどね」
「でもわたし、零戦の免許は持ってない」
「永信君に操縦してもらえばいいじゃん。あの機体複座型だし。彼氏とデートにはお似合・・・・・」
「は?正気?」
お姉ちゃんが言い終わるより早く言う。できることならその口をふさいでやりたい。
「あの永信が彼氏なんて。悪い冗談はやめてよ」
「え?付き合ってないの?」
「ないない」
「そっか。お似合いの二人だと思うんだけどな・・・・・・・」
わたしが言うと、お姉ちゃんは少し残念そうに言った。
「初霜家はわたしが継ぐから、実は安心して青春を謳歌してもいいんだよ?」
「謳歌する青春なんてないわよ」
わたしは笑って言う。前を見ると、高松の空港が見えていた。
「Takamatsu tower, N102HS, VFR, 10nm Northwest of you. 1500ft. request landing instruction for full stop.(高松空港管制塔へー、こちらN102HS、有視界飛行です。現在位置は空港北西十海里で、高度は千五百フィートです。着陸のための指示をお願いします)」
お姉ちゃんが空港の管制塔にコンタクトを取る。
あっ!「N102HS」って言うのはWACOの機体番号ね。
《N102HS, Takamatsu tower. runway 01, wind 070 at 12, QNH 2998. Join downwind, report downwind.(N102HSへ、こちら高松空港管制塔です。使用滑走路は一番、風は七十度から十二ノット、高度規正値は二十九・九八インチです。ダウンウィンドに入り報告して下さい)》
管制官の落ち着いた声が聞こえてくる。
「Runway 01, QNH 2998, report downwind. N102HS.(滑走路一番、高度規正値29.98インチ、ダウンウィンドで報告します)」
お姉ちゃんはそう言うと。さらに空港に機体を接近させた。
《N102HS, runway 01 cleard to land wind 080 at 7.(N102HSへ、第一滑走路への着陸支障ありません。風は八十度から七ノットです)》
着陸許可が出た。
「よいしょっと・・・・・・・・」
スロットルを絞って着陸に入る。
ヴァラララララララ・・・・・・・・・・・カシャッ
見事に海軍式三点着陸を決めた。
《N102HS, turn right available taxiway.(N102HS、利用可能な誘導路で右折して下さい)》
管制官の指示に従って滑走路を離脱。誘導路を通り格納庫の並ぶ駐機場まで向かう。
バタタタタタタタ・・・・・・・・・
エンジン音とともに駐機場まで滑走し、指定された位置に機体を停止させる。
バタタタタタタタ・・・・・・・・・ガコン!
MCを「最薄」から「切」に引っ張ると、燃料供給を断ち切られたエンジンが停止した。
「よし!行こうか!」
お姉ちゃんが飛行帽と飛行眼鏡を外す。
「はーい」
わたしも飛行帽と眼鏡を外すと、主翼を伝って地面に降りた。
「市街地に出るシャトルバスって、何時ごろだっけ?」
「調べておきなさいよ・・・・・・・」
空港前のバスロータリーに向かい、高松市街地方面のシャトルバスの時刻を確認する。
「次は十二時だね・・・・」
お姉ちゃんが時刻表を見て言う
「あと三十分ね」
わたしたちはバスロータリーのベンチに座ると、それぞれの暇つぶし用具を取り出した。お姉ちゃんはスマホ、わたしは寄港先各地の日本艦艇用予備部品の在庫表。
「これまた極秘っぽそうなものを・・・・・・・・」
覗き込もうとするお姉ちゃんをひょいっとかわし、言う。
「極秘じゃないけど?」
「じゃあなんで見せてくれないのさ~」
「見せれるもんじゃないの。いろいろと分かっちゃうし」
「そう言うのを秘密とか機密って言うんじゃないの?」
「そこまでの物じゃないんだけどな・・・・・・」
「だったら見せなさい」
「やだ」
わたしはそう言うと、お姉ちゃんから離れたベンチに腰かけた。
「実のケチ!いけず!ツンデレ!」
「頼むから子供じみた行動はやめて、お姉ちゃん。後ツンデレ言うな」
(これで本当に初霜家の後継者なのか・・・・・・)
本当にこの姉は行動が子供みたいで困る。
「はいはい、わかったわかった」
わたしは適当にかわすと、再び部品在庫表に目を向けた。
「ラ・スペツィアとポーツマス、ニューヨーク、真珠湾の工廠には全ての予備部品があるみたいね・・・・・・サンディエゴとボストンには艦本式ボイラーと機関一式、主砲砲身のみの在庫ね・・・・・・・」
とりあえず当面の間本拠地とするラ・スペツィア軍港には白露型、陽炎型、島風型の修繕ができる設備はあるみたい。
「なんとかなりそう・・・・・・問題は中東での護衛任務中の故障ね・・・・・・・」
今回はラ・スペツィア軍港を根拠地とし、中東方面の油田などから大西洋、パナマ運河を抜けて各国に原油を運ぶタンカーや各国から中東方面に物資を運ぶ貨物船の護衛が任務だ。
「それと、たまに客船・・・・・・こんなご時世に危険を冒してまで世界一周なんてバッカじゃないの・・・・・・?」
当該海域を航行する船舶一覧にある「イギリス船籍 客船クイーン・エリザベス」の文字。
「実、バス来たよ~」
「はーい」
お姉ちゃんのほうに向かうと、ちょうどシャトルバスがロータリーに入ってくるところだった。
プシュー
空気の抜ける音とともに開いた扉。
「行こう!早く讃岐うどん食べようよ!」
「あんだけの空戦機動とった後によくうどん食べる気になれるわね」
お姉ちゃんがバスの中から手を振るのを見ながら乗り込む。
「あんなのまだまだだって。本気の時はもっと激しい機動してるよ」
「そうなの?」
「うん、永信君とやったときはそんな感じだったね・・・・・」
お姉ちゃんがしみじみと言う。
「お姉ちゃんが本気を出すほどの相手?あの永信が?」
正直言ってウソだとしか思えない。
確かに永信は強い。でもそれは「わたしたちと同年代にしては」の話で、正直年上と戦って勝てるかどうかは不明だ。おまけに愛機は零戦二一型で、お姉ちゃんの二二型には機体性能で劣る。
「あの子は強いよ。わたしに後ろを取らせなかった。むしろこっちが後ろを取られそうになったな・・・・・・」
そんなに・・・・・・・
「正面からのヘッドオンで何とか有効射、最終的に双方相討ちの判定だったよ」
「そうだったんだ・・・・」
「確か、お互いに弾を打ち尽くしたんじゃなかったっけかな・・・・・・・」
「ヒエッ・・・・・・!」
そこまで激しく戦ってたなんてね。
「意外だった?」
お姉ちゃんが笑う。
「あの子って、案外闘志あるのよね」
「ふ~ん」
わたしはそう言うと、窓の外を見た。
「間もなく、終点の高松駅前です」
運転士さんの声。
キィー
バスが減速してロータリーに進入する。
プシュアー
「高松駅前でございます」
チャリン!チャリン! ガーーーー
運賃箱に整理券と運賃を放り込むと、地面に降り立った。
「ふぅ。やっと着いた」
「じゃあ、うどん食べに行こうか」
お姉ちゃんが歩きだす。
「ちょっ!どこに行くか決まってるの?」
「大丈夫。市内のうどん屋さんはすでにリサーチ済みだよ」
お姉ちゃんそう言うと、道の先を指さした。
「はーい」
わたしはその背中を追いかけ、さらに先を目指す。
「ちょっと、お姉ちゃん歩くの早すぎ・・・・・・」
「艦乗りならついて来れるでしょ?」
「その艦乗りがドン引きするほどの訓練をしてるのが航空隊だって聞くけど?」
あの「人殺し多聞丸」だって空母「蒼龍」、「飛龍」からなる二航戦の司令官の時だし・・・・・・
「ふふふ」
お姉ちゃんは少し笑うと、歩調を速めた。
「だから待ちなさい!」
わたしも早足になると、人の間をすり抜けてお姉ちゃんを追う。
「はい!ここだよ~」
お姉ちゃんが足を止めた。
「ここ?」
「そうだよ」
お姉ちゃんはそう言うと、お店の中に入っていく。
「うどん二玉」
手慣れた様子で注文すると、お盆と二枚手に取る。
「はいよ」
お店のおばちゃんがうどんの入ったお椀を差し出してきた。
『ありがとうございます』
二人でほぼ同時に言い、お椀を受け取る。
「ねぇねぇ、実はトッピング何にする?」
「う~ん、安めのもので行こうかな・・・・・・・」
「もっと高めのにしなよ。今日は私のおごり」
お姉ちゃんが財布を取り出す。
「マジ?」
「マジ」
(よっしゃ!)
わたしはトングを手に取ると、トレーに盛られた天麩羅をとった。
「次は・・・・・・・」
次々に取っていく。
「ちょ、ちょっと待って・・・・・・このままじゃわたしの財布が轟沈しちゃう・・・・・・・・・」
慌てるお姉ちゃんを尻目に、美味しそうなものを片っ端から取った。
「財布が無事に轟沈しました~」
何個も皿に乗せられた天麩羅を見たお姉ちゃんの目が死ぬ。
「お姉ちゃんのおごりだって言うからね~」
わたしはそう言うと、レジにお盆を持っていった。
「二人一緒でお会計お願いします」
お姉ちゃんが財布を取り出す。
「はぁ・・・・・・・・」
ため息をつきながらお札を取り出した。
「じゃあ、一万円でお釣りを」
財布からお札を取り出す。
「おっ!福沢諭吉の万札じゃん。珍しいね」
「今はほとんどが渋沢栄一だからね」
わたしが言うと、お姉ちゃんは少し笑った。
「さ、食べよう」
カウンターに設けられたサーバーから麺つゆを注ぎ、席に持っていく。机の向かい側には、お姉ちゃんが座った。
「それじゃ、食べようか」
「そうね」
『いただきます!』
二人で一斉に手を合わせる。そして、うどんを食べ始めた。
「じゃあ、これで失礼するよ」
生徒艦隊司令長官のはつみ先輩が立ち上がり、制帽をかぶる。
「そうですか。では、ご武運を」
僕―神崎永信はそう言うと、立ち上がって敬礼した。
「最後に実ちゃんにも会いたかったけどね・・・・・・」
はつみ先輩がそう言って遠い目をする。
「今日は休日ですからね。当直員以外の乗員には休暇が与えられてるんですよ」
「そうだったね・・・・・・」
先輩はそう言うと、制帽を深く被りなおす。飾緒と肩章を取り出し、身に着けた。
「それじゃ、ラ・スペツィアで待ってるよ」
「はい。僕らも追いかけますので」
はつみ先輩が艦長室を出ていく。
トトトトトト・・・・・・
僕が艦橋に向かうと、内火艇が「長門」の方に向かって行くのが見えた。
ガラガラガラ・・・・・・・・
はつみ先輩が到着したらしく、「長門」の主錨、副錨が引き上げられる。
ガラガラガラ・・・・・・・・
後方に並んでいる僚艦の「金剛」、「比叡」。横に同じように縦陣で停泊している「陸奥」、「榛名」、「霧島」。さらには直掩の第一、第二水雷戦隊各艦の主錨も引き上げられた。
出港を告げる信号旗が旗艦「長門」のメインマストに掲げられる。
「信号機を掲げよ!信号旗は『UW』」
僕が指示を出すと、「陽炎」のメインマストに「貴艦のご安航を祈る」を意味する「UW」の信号旗が掲げられた。
旗艦「長門」以下数十隻のマストにも「UW1」の返答旗が掲げられる。
ボーーーーーー!
各艦の汽笛が一斉に鳴り響いた。
「帽振れ~!」
見送る側と見送られる側。それぞれの乗員が帽子を手に持って振る。海軍式の別れの挨拶だ。
グァァァァァァァァ!
主機の音も高らかに、六隻の戦艦とその直掩の重巡三隻、軽巡四隻、駆逐艦三十隻が呉港を出港していく。
ぽわぁ
僕の隣に金色の光が現れ、その中から陽炎が出てきた。
「みんな、ご武運を・・・・・・」
妹たちに向けて敬礼する。
「きっと大丈夫だよ」
僕が言うと、陽炎は寂しげに笑う。
「でも、心配になっちゃうんですよね。生き残ったのは雪風だけですから」
「大丈夫大丈夫。このために訓練を重ねてきたんでしょ?」
「それはそうですけど・・・・・・・・」
陽炎はどこか浮かない顔で、艦隊の後姿を見つめた。
ヴァラララララ・・・・・・・・!
複葉機「WACO」のコクピット内。エンジンの轟音が響く。
「実、見て」
お姉ちゃんがインカムごしに言った。
「戦艦たちが出港するよ」
下を見ると、戦艦六隻と重巡三隻、軽巡四隻、駆逐艦三十隻が瀬戸内海を進むのが見えた。
くいっ、くいっ・・・・・
お姉ちゃんは翼を二回振り、艦隊に挨拶する。
ヴァラララララ・・・・・・・・
エルロンとラダーを使って艦隊上空を離れた。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
瀬戸大橋をくぐって太平洋に向かう艦隊。
「皆さん、ご武運を・・・・・・」
わたしは去り行く後姿に敬礼した。
「じゃ、行くよ・・・・・・」
お姉ちゃんは呉開陽高校の方に機首を向ける。
ヴァァァァァン
スロットルを開いたらしく、WACOが加速する。
耳元で風が轟々とうなった。
「ねえ・・・・・・・」
お姉ちゃんが言う。
「もうそろそろ、実も出撃だよね」
「そうね」
わたしはそう返すと、眼下の景色を見る。
(この景色も、これで最後かもしれないしね・・・・・・・)
今のうちに目に焼き付けておこう。
「実・・・・・・・」
お姉ちゃんが言う。いつもと違い、少し低い声のトーンだ。
「・・・・死ぬつもり?」
「え?どういうこと?」
「言ったまんまの意味だよ。実、死を覚悟してる」
「え?悪い冗談はやめてよ」
「冗談じゃないよ。顔を見ればわかる」
「まあ、乗員たちが生き残れるなら命を差し出しても構わないって思ってるよ」
「そう・・・・・」
お姉ちゃんはそう言うと、黙り込んだ。
「・・・・・・」
しばらくお互いに静かになる。
しばらくして・・・・・
「あ、開陽高校が見えてきた」
お姉ちゃんが言い、機体を降下させた。無線機を手に取る。
「Kure Kaiyou tower, N102HS・・・・」
管制塔と交信を始める。
ヴァラララララ・・・・・・・・バタタタタタタタ・・・・・・・
WACOのエンジン音が小さくなり、滑走路が近づいてきた。
ガシャン!
「弾倉取り付け」
ジャギッ!
「弾薬装填」
カチッ
「安全装置解除。撃てっ!」
バン!ババババババ!
沖田銃砲店の地下射撃場にわたしの声と銃声が響く。
「よしっ!確認確認・・・・・・」
わたし―沖田夏芽はそう言うと、手に持った百式機関短銃の安全装置をかけた。
キュルキュルキュル・・・・・・
手元のハンドルで紙製の的を引き寄せ、穴の開いた個所を確認する。
「いいよいいよ・・・・・・真ん中に一発、その周りに五発」
機関銃の弾倉を外し、中身の弾丸を抜く。
チャリンチャリン・・・・・・・
実包を専用のロッカーに収め、足元に散乱した薬莢を拾い集めた。
「また射撃?相変わらず好きだねぇ」
後ろからの声。
「春奈じゃん。その恰好からすると釣りでもしてきたの?」
うちに下宿してる山城春奈。同じ「陽炎」クルーだ。今日はいつもの制服ではなく、山歩き向けの服装にケースに入れた釣竿とクーラーボックスを提げている。
「うん、ちょっと桟橋にね」
春奈はそう言うと、クーラーボックスを床において中身をガサガサとあさり始める。
「ほら、アジだよ~」
魚を手に持ってこっちに見せる。
「早いとこ下処理してきな」
「はーい」
わたしが言うと、春奈はアジをクーラーボックスに戻してそれを担いで出ていった。
「よしっ、これで全部の工程が終了」
銃をケースにしまい、「陽炎」に持っていく銃一式の中に入れる。
グ~
腹の虫が鳴いた。
「ご飯食べよ」
わたしは銃を肩にかけると、射撃場を出た。
呉開陽高等学校航空機保存課格納庫。ずらっと並ぶのは現用飴色と呼ばれる明灰白色に塗られた零戦、銀色の地肌に緑色で迷彩模様を描いた隼や飛燕・・・・・・・
(大戦機ファンからしたら、夢のような場所でしょうね)
わたし―初霜実は居並ぶ大戦機たちを見回すと、WACOのコックピットから出た。
「ふう、ついたね」
お姉ちゃんもコックピットから這い出る。
「・・・・・」
わたしはWACOの主翼から滑り降りると、格納庫の出口に向かって歩き出した。
「じゃあ、わたしは艦に戻るから・・・・・・」
出口でそう言って格納庫から出ようとした時・・・・・
「実!・・・・・・」
お姉ちゃんが叫ぶ。
「・・・・・・死んじゃだめだよ!」
わたしはその声に背を向けると、「陽炎」に向かって歩き出した。
無言で自らの艦に戻っていく妹。
わたし―初霜和子はその後姿を見送ると、WACOの主翼に腰かけた。
「わかってたよ・・・・・・・・」
実が死を覚悟してるって。
「でも、姉には『死ぬつもりはない』って言ってほしかったな・・・・・・」
そう言うと、WACOのコックピットに体を滑り込ませる。
「はぁ・・・・・・・」
ため息をついた。
(これも、あまり実に目をかけてやれなかったことの報いだね)
自分のせいだ。
「遺書も見つけたし」
専用の文箱に入れられた実と永信君の遺書。
「万が一の場合だって思いたいけどね・・・・・・・」
わたしはそう言うと、WACOの主翼をなでた。
カン、カン・・・・・・・
「ただいま・・・・・・・」
初霜艦長が舷梯を上ってくる。
「おかえりなさい」
舷門当直に立っていたわたし―金愛蘭は敬礼して艦長を迎えた。
「愛蘭、当直お疲れ」
「そんなことないよ」
初霜艦長が申し訳なさそうな顔をし、わたしはヒラヒラと手を振ってそれを否定する。
「ただいまー」
「沖田夏芽、ただいま帰還!」
航海長と機関長がそれぞれ釣り道具と銃を持って乗艦する。
「おかえりなさい!」
わたしは敬礼して言う。
「ただいま。風華はどこいるかわかる?」
春奈砲術長がクーラーボックスを見せて訊く。
「主計長なら今は烹炊所だと思うよ。問い合わせる?」
わたしはインカムのスイッチに手をかけた。
「いいよいいよ。自分で探しに行くから」
そう言うと、航海長はそのまま艦内に入っていった。
「わたしもそろそろ配置につくわ~」
艦長も艦内に入っていく。
「わたしも銃を置いてくるね」
夏芽も艦内に入った。
「ふう」
わたしはため息をつくと、腰に手を当てた。
「う~・・・・・」
体を思いっきりそらす。背中がポキポキと鳴った。
「お疲れさま、愛蘭」
「乙羽。どうしたの?」
「この前頼まれてたスマホ、修理終わったから届けに来たよ」
乙羽がコバルトブルーのスマホを差し出しながら言う。
電源ボタンを押すと画面が明るくなり、ホーム画面が表示された。インストールされてるアプリも問題ない。
「ありがとう。さすが乙羽、あっという間に直してくれるね」
「そんなでもないよ」
わたしがほめると、乙羽は恥ずかしそうに頭の後ろを掻いた。
「ねえ・・・・・・・」
乙羽が陸の方を見る。真赤な夕日が呉の街を染め上げ、中国山地に沈んでいくところだった。
「きれいだよね。ここから見る夕日」
そう言う乙羽の姿も夕日を浴び、オレンジ色に染まっていた。
「ここから見る夕日が、わたしは一番好き。だってさ、自分達の艦から夕陽が見れるんだよ」
乙羽がそう言ってほほ笑む。
「うん、わたしもここから見る夕日が世界で一番好き」
「だよね!艦乗りの特権って感じ?」
乙羽は目を輝かせてそう言った。
「そうだね」
わたしは返すと、遠くの山並みを見つめる。
「愛蘭はいつまで当直?」
「あと少し。そしたら凛久と交代するよ」
「ふ~ん」
そう言ってわたしの方を向く乙羽。
「ところでさ・・・・・・・・・」
「なに?」
わたしは首をかしげる。
「なんか、視線感じない・・・・?」
(見ちゃった見ちゃった!見ちゃったよぉぉぉぉ!)
わたし―沖田夏芽は、心の中で叫ぶと急いでその場を離れた。
(愛蘭と乙羽、二人で夕日を眺める・・・・・これは百合の匂いだぁぁぁ!)
さっそく今夜にでも二人の百合百合なマンガを描いちゃおう!
小走りに自分の持ち場に移動するわたし。
「百合漫画は一旦置いといて、今は機関整備だね・・・・・・」
機関室に入り、入り口に備えられている鉄兜をかぶる。
ゴォォォォォォォ!
三基ある主罐のうち、第一主罐にのみ火が入り、他の二基は火を落とした状態で検査中だった。
「お疲れさま!機関長」
第一主罐担当の結衣が敬礼して言う。
「そっちこそお疲れ、調子はどう?」
「上々です。整備してくれたJMUの人たちに感謝しないといけませんね」
結衣がバルブを調整しながら言う。
「第二と第三はどう?」
「現在検査中です。故障やトラブルの有無が分かり次第報告します」
結衣が敬礼して言った。
「ありがとう。主機の方も見てくるよ」
わたしはそう言うと、ボイラー室を出た。
駆逐艦「陽炎」の士官室・・・・・・・
「それでは、遠征前最後となる艦長会議を始めたいと思います」
わたし―初霜実は目の前の机に座る十二人の人間を見ると、言った。
「まずは、呉出港後の横須賀、横浜への航路の確認です」
全員がテーブルの上に置いたノートパソコンを開き、キーボードに手を置く。
航海長の春奈が海図を机の上に広げた。
「まずは呉港出港後陣形を水上艦は単縦、潜水艦は駆逐艦を中心とした輪形陣に整えます」
色分けされた駆逐艦と潜水艦のコマを移動させ、単縦陣を組んだ駆逐艦を潜水艦が輪形陣で囲むようにした。
「ここまでで意見はありませんか?」
「はい」
一人の女子が手を上げた。第二潜水隊司令兼「伊―58」艦長の喜多川由良先輩だ。
「まずここは潜水艦も単縦を組んだ方がよいと思います。駆逐艦が単縦で先行し、その後ろを我が第二潜水隊も単縦で追走する陣形でどうでしょうか?」
「理由は何ですか?」
わたしが訊くと、由良先輩は口を開く。
「第一に、今回の航路には瀬戸内海が含まれています。瀬戸内海は船舶の航行量が多いうえに、途中には鳴門の渦潮などもあり難儀する航路です。ここで輪形陣や単横陣を取れば、我々以外の船舶の航行を阻害する可能性があります」
「ふむ・・・・・・・」
同じ部屋の中にいる艦長たちがうなずく。
「では、駆逐、潜水ともに単縦で行きましょうか」
わたしはそう言うと、コマを潜水艦、駆逐艦ともに単縦になるようにした。
「横須賀に入港後、『天津風』、『白露』が横浜に向かい、油槽船『暁光丸』を迎えて横須賀に帰港してください」
わたしが「白露」、「天津風」と書かれたコマを艦隊から離すと、光葉と一葉がうなずいた。
「この時、二隻の指揮は『白露』艦長の紅一葉さんに取っていただきます。よろしいですね?」
「はい。全力をもってこの任務を遂行します」
一葉が言う。
「承知いたしました。無事に『暁光丸』を横須賀までお連れします」
光葉もうなずいた。
わたしはうなずくと、第三種軍装を見にまとった女性を見る。
「航空隊の方はどうでしょうか?」
「はい、ただいま一式陸上攻撃機五個中隊四十五機と零式艦上戦闘機九個中隊八十一機が中東方面に空輸中であり、ただいま米国の航空博物館において最終調整を行っております。山本隊も追って向かうつもりです」
桑折航空隊陸攻隊隊長の山本千絵さんが言った。
「承知しました。航空戦力は問題なさそうですね」
わたしはそう言うと、手元のタブレットにデータを打ち込む。
「その他にありますか?」
「では・・・・・」
一葉が手を挙げる。
「横浜から横須賀への航路はどの航路がよろしいでしょうか?」
「中ノ瀬航路を利用してください。我々はまず浦賀水道を航行し、横須賀に入港します。その後すぐに二隻は横須賀を出港、中ノ瀬航路で横浜に向かってください」
「承知いたしました」
一葉が頭を下げる。
「他にはありませんか?ないのであればこれにて艦長会議を終了したいと思います」
わたしが問いかけると、全員が『何もない』と言ったふうにうなずいた。
「それでは、これにて艦長会議を終了いたします。皆様方、今回はご足労ありがとうございました」
わたしが敬礼すると、皆さんも敬礼を返す。
「失礼いたしました」
「これにて失礼いたします」
それぞれが扉の前で一礼して退出した。
「ふぅ・・・・」
わたしはため息を一つつくと、退室して扉を閉めた。
腹に響く空冷星型エンジンの音。
バババババババババ!
耳元で風がうなる。
「今日はどこまで行くの?」
わたしはスポーツ用複葉機「WACO F YMF-F5C」の前席でインカムに話しかけた。
「う~ん。高松まで行ってうどん食べようと思ったんだけど・・・・・」
後席で操縦するお姉ちゃんが言う。
「は?うどん食べるためだけに高松まで行くの!?」
「そうだよ~」
お姉ちゃんはそう言うと機体を傾け、左に旋回する。
「ちょっと!そんなことのためにWACO出すの?」
「エンジンは定期的に動かさないと固まるし、今回はわたしがWACOと飛びたいだけだからね」
機体を水平に戻して、お姉ちゃんが言った。
この複葉機「WACO」はわたしのお姉ちゃんが所有している機体。わたしのお母さんが学生時代にレストアしたもののようで、ちゃんと日本での機体登録もとってある。
お母さんが空自に入ってからは倉庫でほったらかしにされてたけど、お姉ちゃんが再レストアしたみたい。
「ところでさ」
わたしはお姉ちゃんに話しかける。
「なんでこの機体を気に入ってるの?うちにはもっと速くて強い零戦二二型とかもあるじゃん」
「う~ん」
お姉ちゃんは少し考えると、言った。
「わたしの名前って和子でしょ?『和子』って『わこ』っても読めるじゃん。だからこの機体にしたのかな」
お姉ちゃんはそう言うと、機体を傾ける。
「ちょっと歯を食いしばってて」
次の瞬間・・・・・
ガタン!
後席とリンクしたわたしの前の操縦桿が左に傾く。
ぐるん!
補助翼が作動し、天地がひっくり返った。
「!!!」
「まだまだ行くよ~」
お姉ちゃんの声。
ガン!
今度は操縦桿が手前の方に倒される。
ヴァラララララ・・・・・・・・!
スロットルも開けられ、今度は機体が上昇し始めた。
「ちょっと!いい加減高松に向かいなさいよ!こんな瀬戸内海で飛び回ってないで」
「はーい」
わたしが言うと。お姉ちゃんは素直に機体を水平飛行に戻して高松方向に機首を向ける。
「あ、それとね・・・・・・・」
「何よ」
「あの零戦、実にあげる」
「・・・・・・」
一時的にわたしの思考が停止する。
「は?」
どういうこと?
「言った通り。あの零戦二二型を実の物にするってこと。実がいいんだったらすぐにでも機体の所有者を初霜和子から初霜実に変えたいんだけどね」
「でもわたし、零戦の免許は持ってない」
「永信君に操縦してもらえばいいじゃん。あの機体複座型だし。彼氏とデートにはお似合・・・・・」
「は?正気?」
お姉ちゃんが言い終わるより早く言う。できることならその口をふさいでやりたい。
「あの永信が彼氏なんて。悪い冗談はやめてよ」
「え?付き合ってないの?」
「ないない」
「そっか。お似合いの二人だと思うんだけどな・・・・・・・」
わたしが言うと、お姉ちゃんは少し残念そうに言った。
「初霜家はわたしが継ぐから、実は安心して青春を謳歌してもいいんだよ?」
「謳歌する青春なんてないわよ」
わたしは笑って言う。前を見ると、高松の空港が見えていた。
「Takamatsu tower, N102HS, VFR, 10nm Northwest of you. 1500ft. request landing instruction for full stop.(高松空港管制塔へー、こちらN102HS、有視界飛行です。現在位置は空港北西十海里で、高度は千五百フィートです。着陸のための指示をお願いします)」
お姉ちゃんが空港の管制塔にコンタクトを取る。
あっ!「N102HS」って言うのはWACOの機体番号ね。
《N102HS, Takamatsu tower. runway 01, wind 070 at 12, QNH 2998. Join downwind, report downwind.(N102HSへ、こちら高松空港管制塔です。使用滑走路は一番、風は七十度から十二ノット、高度規正値は二十九・九八インチです。ダウンウィンドに入り報告して下さい)》
管制官の落ち着いた声が聞こえてくる。
「Runway 01, QNH 2998, report downwind. N102HS.(滑走路一番、高度規正値29.98インチ、ダウンウィンドで報告します)」
お姉ちゃんはそう言うと。さらに空港に機体を接近させた。
《N102HS, runway 01 cleard to land wind 080 at 7.(N102HSへ、第一滑走路への着陸支障ありません。風は八十度から七ノットです)》
着陸許可が出た。
「よいしょっと・・・・・・・・」
スロットルを絞って着陸に入る。
ヴァラララララララ・・・・・・・・・・・カシャッ
見事に海軍式三点着陸を決めた。
《N102HS, turn right available taxiway.(N102HS、利用可能な誘導路で右折して下さい)》
管制官の指示に従って滑走路を離脱。誘導路を通り格納庫の並ぶ駐機場まで向かう。
バタタタタタタタ・・・・・・・・・
エンジン音とともに駐機場まで滑走し、指定された位置に機体を停止させる。
バタタタタタタタ・・・・・・・・・ガコン!
MCを「最薄」から「切」に引っ張ると、燃料供給を断ち切られたエンジンが停止した。
「よし!行こうか!」
お姉ちゃんが飛行帽と飛行眼鏡を外す。
「はーい」
わたしも飛行帽と眼鏡を外すと、主翼を伝って地面に降りた。
「市街地に出るシャトルバスって、何時ごろだっけ?」
「調べておきなさいよ・・・・・・・」
空港前のバスロータリーに向かい、高松市街地方面のシャトルバスの時刻を確認する。
「次は十二時だね・・・・」
お姉ちゃんが時刻表を見て言う
「あと三十分ね」
わたしたちはバスロータリーのベンチに座ると、それぞれの暇つぶし用具を取り出した。お姉ちゃんはスマホ、わたしは寄港先各地の日本艦艇用予備部品の在庫表。
「これまた極秘っぽそうなものを・・・・・・・・」
覗き込もうとするお姉ちゃんをひょいっとかわし、言う。
「極秘じゃないけど?」
「じゃあなんで見せてくれないのさ~」
「見せれるもんじゃないの。いろいろと分かっちゃうし」
「そう言うのを秘密とか機密って言うんじゃないの?」
「そこまでの物じゃないんだけどな・・・・・・」
「だったら見せなさい」
「やだ」
わたしはそう言うと、お姉ちゃんから離れたベンチに腰かけた。
「実のケチ!いけず!ツンデレ!」
「頼むから子供じみた行動はやめて、お姉ちゃん。後ツンデレ言うな」
(これで本当に初霜家の後継者なのか・・・・・・)
本当にこの姉は行動が子供みたいで困る。
「はいはい、わかったわかった」
わたしは適当にかわすと、再び部品在庫表に目を向けた。
「ラ・スペツィアとポーツマス、ニューヨーク、真珠湾の工廠には全ての予備部品があるみたいね・・・・・・サンディエゴとボストンには艦本式ボイラーと機関一式、主砲砲身のみの在庫ね・・・・・・・」
とりあえず当面の間本拠地とするラ・スペツィア軍港には白露型、陽炎型、島風型の修繕ができる設備はあるみたい。
「なんとかなりそう・・・・・・問題は中東での護衛任務中の故障ね・・・・・・・」
今回はラ・スペツィア軍港を根拠地とし、中東方面の油田などから大西洋、パナマ運河を抜けて各国に原油を運ぶタンカーや各国から中東方面に物資を運ぶ貨物船の護衛が任務だ。
「それと、たまに客船・・・・・・こんなご時世に危険を冒してまで世界一周なんてバッカじゃないの・・・・・・?」
当該海域を航行する船舶一覧にある「イギリス船籍 客船クイーン・エリザベス」の文字。
「実、バス来たよ~」
「はーい」
お姉ちゃんのほうに向かうと、ちょうどシャトルバスがロータリーに入ってくるところだった。
プシュー
空気の抜ける音とともに開いた扉。
「行こう!早く讃岐うどん食べようよ!」
「あんだけの空戦機動とった後によくうどん食べる気になれるわね」
お姉ちゃんがバスの中から手を振るのを見ながら乗り込む。
「あんなのまだまだだって。本気の時はもっと激しい機動してるよ」
「そうなの?」
「うん、永信君とやったときはそんな感じだったね・・・・・」
お姉ちゃんがしみじみと言う。
「お姉ちゃんが本気を出すほどの相手?あの永信が?」
正直言ってウソだとしか思えない。
確かに永信は強い。でもそれは「わたしたちと同年代にしては」の話で、正直年上と戦って勝てるかどうかは不明だ。おまけに愛機は零戦二一型で、お姉ちゃんの二二型には機体性能で劣る。
「あの子は強いよ。わたしに後ろを取らせなかった。むしろこっちが後ろを取られそうになったな・・・・・・」
そんなに・・・・・・・
「正面からのヘッドオンで何とか有効射、最終的に双方相討ちの判定だったよ」
「そうだったんだ・・・・」
「確か、お互いに弾を打ち尽くしたんじゃなかったっけかな・・・・・・・」
「ヒエッ・・・・・・!」
そこまで激しく戦ってたなんてね。
「意外だった?」
お姉ちゃんが笑う。
「あの子って、案外闘志あるのよね」
「ふ~ん」
わたしはそう言うと、窓の外を見た。
「間もなく、終点の高松駅前です」
運転士さんの声。
キィー
バスが減速してロータリーに進入する。
プシュアー
「高松駅前でございます」
チャリン!チャリン! ガーーーー
運賃箱に整理券と運賃を放り込むと、地面に降り立った。
「ふぅ。やっと着いた」
「じゃあ、うどん食べに行こうか」
お姉ちゃんが歩きだす。
「ちょっ!どこに行くか決まってるの?」
「大丈夫。市内のうどん屋さんはすでにリサーチ済みだよ」
お姉ちゃんそう言うと、道の先を指さした。
「はーい」
わたしはその背中を追いかけ、さらに先を目指す。
「ちょっと、お姉ちゃん歩くの早すぎ・・・・・・」
「艦乗りならついて来れるでしょ?」
「その艦乗りがドン引きするほどの訓練をしてるのが航空隊だって聞くけど?」
あの「人殺し多聞丸」だって空母「蒼龍」、「飛龍」からなる二航戦の司令官の時だし・・・・・・
「ふふふ」
お姉ちゃんは少し笑うと、歩調を速めた。
「だから待ちなさい!」
わたしも早足になると、人の間をすり抜けてお姉ちゃんを追う。
「はい!ここだよ~」
お姉ちゃんが足を止めた。
「ここ?」
「そうだよ」
お姉ちゃんはそう言うと、お店の中に入っていく。
「うどん二玉」
手慣れた様子で注文すると、お盆と二枚手に取る。
「はいよ」
お店のおばちゃんがうどんの入ったお椀を差し出してきた。
『ありがとうございます』
二人でほぼ同時に言い、お椀を受け取る。
「ねぇねぇ、実はトッピング何にする?」
「う~ん、安めのもので行こうかな・・・・・・・」
「もっと高めのにしなよ。今日は私のおごり」
お姉ちゃんが財布を取り出す。
「マジ?」
「マジ」
(よっしゃ!)
わたしはトングを手に取ると、トレーに盛られた天麩羅をとった。
「次は・・・・・・・」
次々に取っていく。
「ちょ、ちょっと待って・・・・・・このままじゃわたしの財布が轟沈しちゃう・・・・・・・・・」
慌てるお姉ちゃんを尻目に、美味しそうなものを片っ端から取った。
「財布が無事に轟沈しました~」
何個も皿に乗せられた天麩羅を見たお姉ちゃんの目が死ぬ。
「お姉ちゃんのおごりだって言うからね~」
わたしはそう言うと、レジにお盆を持っていった。
「二人一緒でお会計お願いします」
お姉ちゃんが財布を取り出す。
「はぁ・・・・・・・・」
ため息をつきながらお札を取り出した。
「じゃあ、一万円でお釣りを」
財布からお札を取り出す。
「おっ!福沢諭吉の万札じゃん。珍しいね」
「今はほとんどが渋沢栄一だからね」
わたしが言うと、お姉ちゃんは少し笑った。
「さ、食べよう」
カウンターに設けられたサーバーから麺つゆを注ぎ、席に持っていく。机の向かい側には、お姉ちゃんが座った。
「それじゃ、食べようか」
「そうね」
『いただきます!』
二人で一斉に手を合わせる。そして、うどんを食べ始めた。
「じゃあ、これで失礼するよ」
生徒艦隊司令長官のはつみ先輩が立ち上がり、制帽をかぶる。
「そうですか。では、ご武運を」
僕―神崎永信はそう言うと、立ち上がって敬礼した。
「最後に実ちゃんにも会いたかったけどね・・・・・・」
はつみ先輩がそう言って遠い目をする。
「今日は休日ですからね。当直員以外の乗員には休暇が与えられてるんですよ」
「そうだったね・・・・・・」
先輩はそう言うと、制帽を深く被りなおす。飾緒と肩章を取り出し、身に着けた。
「それじゃ、ラ・スペツィアで待ってるよ」
「はい。僕らも追いかけますので」
はつみ先輩が艦長室を出ていく。
トトトトトト・・・・・・
僕が艦橋に向かうと、内火艇が「長門」の方に向かって行くのが見えた。
ガラガラガラ・・・・・・・・
はつみ先輩が到着したらしく、「長門」の主錨、副錨が引き上げられる。
ガラガラガラ・・・・・・・・
後方に並んでいる僚艦の「金剛」、「比叡」。横に同じように縦陣で停泊している「陸奥」、「榛名」、「霧島」。さらには直掩の第一、第二水雷戦隊各艦の主錨も引き上げられた。
出港を告げる信号旗が旗艦「長門」のメインマストに掲げられる。
「信号機を掲げよ!信号旗は『UW』」
僕が指示を出すと、「陽炎」のメインマストに「貴艦のご安航を祈る」を意味する「UW」の信号旗が掲げられた。
旗艦「長門」以下数十隻のマストにも「UW1」の返答旗が掲げられる。
ボーーーーーー!
各艦の汽笛が一斉に鳴り響いた。
「帽振れ~!」
見送る側と見送られる側。それぞれの乗員が帽子を手に持って振る。海軍式の別れの挨拶だ。
グァァァァァァァァ!
主機の音も高らかに、六隻の戦艦とその直掩の重巡三隻、軽巡四隻、駆逐艦三十隻が呉港を出港していく。
ぽわぁ
僕の隣に金色の光が現れ、その中から陽炎が出てきた。
「みんな、ご武運を・・・・・・」
妹たちに向けて敬礼する。
「きっと大丈夫だよ」
僕が言うと、陽炎は寂しげに笑う。
「でも、心配になっちゃうんですよね。生き残ったのは雪風だけですから」
「大丈夫大丈夫。このために訓練を重ねてきたんでしょ?」
「それはそうですけど・・・・・・・・」
陽炎はどこか浮かない顔で、艦隊の後姿を見つめた。
ヴァラララララ・・・・・・・・!
複葉機「WACO」のコクピット内。エンジンの轟音が響く。
「実、見て」
お姉ちゃんがインカムごしに言った。
「戦艦たちが出港するよ」
下を見ると、戦艦六隻と重巡三隻、軽巡四隻、駆逐艦三十隻が瀬戸内海を進むのが見えた。
くいっ、くいっ・・・・・
お姉ちゃんは翼を二回振り、艦隊に挨拶する。
ヴァラララララ・・・・・・・・
エルロンとラダーを使って艦隊上空を離れた。
グォォォォォォォォォォ・・・・・・・
瀬戸大橋をくぐって太平洋に向かう艦隊。
「皆さん、ご武運を・・・・・・」
わたしは去り行く後姿に敬礼した。
「じゃ、行くよ・・・・・・」
お姉ちゃんは呉開陽高校の方に機首を向ける。
ヴァァァァァン
スロットルを開いたらしく、WACOが加速する。
耳元で風が轟々とうなった。
「ねえ・・・・・・・」
お姉ちゃんが言う。
「もうそろそろ、実も出撃だよね」
「そうね」
わたしはそう返すと、眼下の景色を見る。
(この景色も、これで最後かもしれないしね・・・・・・・)
今のうちに目に焼き付けておこう。
「実・・・・・・・」
お姉ちゃんが言う。いつもと違い、少し低い声のトーンだ。
「・・・・死ぬつもり?」
「え?どういうこと?」
「言ったまんまの意味だよ。実、死を覚悟してる」
「え?悪い冗談はやめてよ」
「冗談じゃないよ。顔を見ればわかる」
「まあ、乗員たちが生き残れるなら命を差し出しても構わないって思ってるよ」
「そう・・・・・」
お姉ちゃんはそう言うと、黙り込んだ。
「・・・・・・」
しばらくお互いに静かになる。
しばらくして・・・・・
「あ、開陽高校が見えてきた」
お姉ちゃんが言い、機体を降下させた。無線機を手に取る。
「Kure Kaiyou tower, N102HS・・・・」
管制塔と交信を始める。
ヴァラララララ・・・・・・・・バタタタタタタタ・・・・・・・
WACOのエンジン音が小さくなり、滑走路が近づいてきた。
ガシャン!
「弾倉取り付け」
ジャギッ!
「弾薬装填」
カチッ
「安全装置解除。撃てっ!」
バン!ババババババ!
沖田銃砲店の地下射撃場にわたしの声と銃声が響く。
「よしっ!確認確認・・・・・・」
わたし―沖田夏芽はそう言うと、手に持った百式機関短銃の安全装置をかけた。
キュルキュルキュル・・・・・・
手元のハンドルで紙製の的を引き寄せ、穴の開いた個所を確認する。
「いいよいいよ・・・・・・真ん中に一発、その周りに五発」
機関銃の弾倉を外し、中身の弾丸を抜く。
チャリンチャリン・・・・・・・
実包を専用のロッカーに収め、足元に散乱した薬莢を拾い集めた。
「また射撃?相変わらず好きだねぇ」
後ろからの声。
「春奈じゃん。その恰好からすると釣りでもしてきたの?」
うちに下宿してる山城春奈。同じ「陽炎」クルーだ。今日はいつもの制服ではなく、山歩き向けの服装にケースに入れた釣竿とクーラーボックスを提げている。
「うん、ちょっと桟橋にね」
春奈はそう言うと、クーラーボックスを床において中身をガサガサとあさり始める。
「ほら、アジだよ~」
魚を手に持ってこっちに見せる。
「早いとこ下処理してきな」
「はーい」
わたしが言うと、春奈はアジをクーラーボックスに戻してそれを担いで出ていった。
「よしっ、これで全部の工程が終了」
銃をケースにしまい、「陽炎」に持っていく銃一式の中に入れる。
グ~
腹の虫が鳴いた。
「ご飯食べよ」
わたしは銃を肩にかけると、射撃場を出た。
呉開陽高等学校航空機保存課格納庫。ずらっと並ぶのは現用飴色と呼ばれる明灰白色に塗られた零戦、銀色の地肌に緑色で迷彩模様を描いた隼や飛燕・・・・・・・
(大戦機ファンからしたら、夢のような場所でしょうね)
わたし―初霜実は居並ぶ大戦機たちを見回すと、WACOのコックピットから出た。
「ふう、ついたね」
お姉ちゃんもコックピットから這い出る。
「・・・・・」
わたしはWACOの主翼から滑り降りると、格納庫の出口に向かって歩き出した。
「じゃあ、わたしは艦に戻るから・・・・・・」
出口でそう言って格納庫から出ようとした時・・・・・
「実!・・・・・・」
お姉ちゃんが叫ぶ。
「・・・・・・死んじゃだめだよ!」
わたしはその声に背を向けると、「陽炎」に向かって歩き出した。
無言で自らの艦に戻っていく妹。
わたし―初霜和子はその後姿を見送ると、WACOの主翼に腰かけた。
「わかってたよ・・・・・・・・」
実が死を覚悟してるって。
「でも、姉には『死ぬつもりはない』って言ってほしかったな・・・・・・」
そう言うと、WACOのコックピットに体を滑り込ませる。
「はぁ・・・・・・・」
ため息をついた。
(これも、あまり実に目をかけてやれなかったことの報いだね)
自分のせいだ。
「遺書も見つけたし」
専用の文箱に入れられた実と永信君の遺書。
「万が一の場合だって思いたいけどね・・・・・・・」
わたしはそう言うと、WACOの主翼をなでた。
カン、カン・・・・・・・
「ただいま・・・・・・・」
初霜艦長が舷梯を上ってくる。
「おかえりなさい」
舷門当直に立っていたわたし―金愛蘭は敬礼して艦長を迎えた。
「愛蘭、当直お疲れ」
「そんなことないよ」
初霜艦長が申し訳なさそうな顔をし、わたしはヒラヒラと手を振ってそれを否定する。
「ただいまー」
「沖田夏芽、ただいま帰還!」
航海長と機関長がそれぞれ釣り道具と銃を持って乗艦する。
「おかえりなさい!」
わたしは敬礼して言う。
「ただいま。風華はどこいるかわかる?」
春奈砲術長がクーラーボックスを見せて訊く。
「主計長なら今は烹炊所だと思うよ。問い合わせる?」
わたしはインカムのスイッチに手をかけた。
「いいよいいよ。自分で探しに行くから」
そう言うと、航海長はそのまま艦内に入っていった。
「わたしもそろそろ配置につくわ~」
艦長も艦内に入っていく。
「わたしも銃を置いてくるね」
夏芽も艦内に入った。
「ふう」
わたしはため息をつくと、腰に手を当てた。
「う~・・・・・」
体を思いっきりそらす。背中がポキポキと鳴った。
「お疲れさま、愛蘭」
「乙羽。どうしたの?」
「この前頼まれてたスマホ、修理終わったから届けに来たよ」
乙羽がコバルトブルーのスマホを差し出しながら言う。
電源ボタンを押すと画面が明るくなり、ホーム画面が表示された。インストールされてるアプリも問題ない。
「ありがとう。さすが乙羽、あっという間に直してくれるね」
「そんなでもないよ」
わたしがほめると、乙羽は恥ずかしそうに頭の後ろを掻いた。
「ねえ・・・・・・・」
乙羽が陸の方を見る。真赤な夕日が呉の街を染め上げ、中国山地に沈んでいくところだった。
「きれいだよね。ここから見る夕日」
そう言う乙羽の姿も夕日を浴び、オレンジ色に染まっていた。
「ここから見る夕日が、わたしは一番好き。だってさ、自分達の艦から夕陽が見れるんだよ」
乙羽がそう言ってほほ笑む。
「うん、わたしもここから見る夕日が世界で一番好き」
「だよね!艦乗りの特権って感じ?」
乙羽は目を輝かせてそう言った。
「そうだね」
わたしは返すと、遠くの山並みを見つめる。
「愛蘭はいつまで当直?」
「あと少し。そしたら凛久と交代するよ」
「ふ~ん」
そう言ってわたしの方を向く乙羽。
「ところでさ・・・・・・・・・」
「なに?」
わたしは首をかしげる。
「なんか、視線感じない・・・・?」
(見ちゃった見ちゃった!見ちゃったよぉぉぉぉ!)
わたし―沖田夏芽は、心の中で叫ぶと急いでその場を離れた。
(愛蘭と乙羽、二人で夕日を眺める・・・・・これは百合の匂いだぁぁぁ!)
さっそく今夜にでも二人の百合百合なマンガを描いちゃおう!
小走りに自分の持ち場に移動するわたし。
「百合漫画は一旦置いといて、今は機関整備だね・・・・・・」
機関室に入り、入り口に備えられている鉄兜をかぶる。
ゴォォォォォォォ!
三基ある主罐のうち、第一主罐にのみ火が入り、他の二基は火を落とした状態で検査中だった。
「お疲れさま!機関長」
第一主罐担当の結衣が敬礼して言う。
「そっちこそお疲れ、調子はどう?」
「上々です。整備してくれたJMUの人たちに感謝しないといけませんね」
結衣がバルブを調整しながら言う。
「第二と第三はどう?」
「現在検査中です。故障やトラブルの有無が分かり次第報告します」
結衣が敬礼して言った。
「ありがとう。主機の方も見てくるよ」
わたしはそう言うと、ボイラー室を出た。
駆逐艦「陽炎」の士官室・・・・・・・
「それでは、遠征前最後となる艦長会議を始めたいと思います」
わたし―初霜実は目の前の机に座る十二人の人間を見ると、言った。
「まずは、呉出港後の横須賀、横浜への航路の確認です」
全員がテーブルの上に置いたノートパソコンを開き、キーボードに手を置く。
航海長の春奈が海図を机の上に広げた。
「まずは呉港出港後陣形を水上艦は単縦、潜水艦は駆逐艦を中心とした輪形陣に整えます」
色分けされた駆逐艦と潜水艦のコマを移動させ、単縦陣を組んだ駆逐艦を潜水艦が輪形陣で囲むようにした。
「ここまでで意見はありませんか?」
「はい」
一人の女子が手を上げた。第二潜水隊司令兼「伊―58」艦長の喜多川由良先輩だ。
「まずここは潜水艦も単縦を組んだ方がよいと思います。駆逐艦が単縦で先行し、その後ろを我が第二潜水隊も単縦で追走する陣形でどうでしょうか?」
「理由は何ですか?」
わたしが訊くと、由良先輩は口を開く。
「第一に、今回の航路には瀬戸内海が含まれています。瀬戸内海は船舶の航行量が多いうえに、途中には鳴門の渦潮などもあり難儀する航路です。ここで輪形陣や単横陣を取れば、我々以外の船舶の航行を阻害する可能性があります」
「ふむ・・・・・・・」
同じ部屋の中にいる艦長たちがうなずく。
「では、駆逐、潜水ともに単縦で行きましょうか」
わたしはそう言うと、コマを潜水艦、駆逐艦ともに単縦になるようにした。
「横須賀に入港後、『天津風』、『白露』が横浜に向かい、油槽船『暁光丸』を迎えて横須賀に帰港してください」
わたしが「白露」、「天津風」と書かれたコマを艦隊から離すと、光葉と一葉がうなずいた。
「この時、二隻の指揮は『白露』艦長の紅一葉さんに取っていただきます。よろしいですね?」
「はい。全力をもってこの任務を遂行します」
一葉が言う。
「承知いたしました。無事に『暁光丸』を横須賀までお連れします」
光葉もうなずいた。
わたしはうなずくと、第三種軍装を見にまとった女性を見る。
「航空隊の方はどうでしょうか?」
「はい、ただいま一式陸上攻撃機五個中隊四十五機と零式艦上戦闘機九個中隊八十一機が中東方面に空輸中であり、ただいま米国の航空博物館において最終調整を行っております。山本隊も追って向かうつもりです」
桑折航空隊陸攻隊隊長の山本千絵さんが言った。
「承知しました。航空戦力は問題なさそうですね」
わたしはそう言うと、手元のタブレットにデータを打ち込む。
「その他にありますか?」
「では・・・・・」
一葉が手を挙げる。
「横浜から横須賀への航路はどの航路がよろしいでしょうか?」
「中ノ瀬航路を利用してください。我々はまず浦賀水道を航行し、横須賀に入港します。その後すぐに二隻は横須賀を出港、中ノ瀬航路で横浜に向かってください」
「承知いたしました」
一葉が頭を下げる。
「他にはありませんか?ないのであればこれにて艦長会議を終了したいと思います」
わたしが問いかけると、全員が『何もない』と言ったふうにうなずいた。
「それでは、これにて艦長会議を終了いたします。皆様方、今回はご足労ありがとうございました」
わたしが敬礼すると、皆さんも敬礼を返す。
「失礼いたしました」
「これにて失礼いたします」
それぞれが扉の前で一礼して退出した。
「ふぅ・・・・」
わたしはため息を一つつくと、退室して扉を閉めた。
0
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