アデンの黒狼 初霜艦隊航海録1

七日町 糸

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第三章 激闘の中へ

第二十二話 Crazy bomber

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 ヒュォォォォ・・・・・!

 風切音を響かせ、ダイブブレーキを開いたSB2Cヘルダイバーが急降下してくる。
「面舵三十度!」
 わたし―戦艦「比叡」艦長の最上雪菜は、上空の仮想敵機を見ながら指示を出した。
「おもかーじ三十度!」
 伝声管から航海長の復唱する声が聞こえ、舵が切られる。

 ぐうっ・・・・・・

 数十秒のタイムラグの後、「比叡」は右に向かって進み始めた。

 ガキッ!

 ヘルダイバーの爆弾槽から投下アームが伸び、模擬爆弾が切り離される。

 ヒュルルルルルル・・・・・・・

 風を切って落ちてくる爆弾。

 バシャン!

「至近弾判定!本艦に異常はなし!」
 副長の国後祐樹が報告する。
「右舷前方に敵機!ほぼ直角に突っ込んできます!」
 見張り員が叫んだ。
「!!」

 グォォォォォォォォォォ!

 一機のヘルダイバーが急降下してくる。
「ダイブブレーキを使わない・・・・・ですって!?」
 他の機体なら必ず開くダイブブレーキを開かず、直角に近い角度で突っ込んでくるヘルダイバー。
「まだ投下しません!」

 グォォォォォォォォォォ!

 マニュアル上の投下高度を過ぎてもなお降下し続ける。
「特攻する気なの・・・・・・・・!?」
 わたしがそう言った時・・・・・・・

 ガキッ!

 爆弾槽から爆弾が切り離される。
「面舵四十度!」
「おもかーじ四十度!」

 ぐうっ・・・・・・

 変針を行うも、艦からの高度十メートルほどの超低空で切り離された爆弾は避けられない。
「命中します!」
「総員衝撃に備え!」

 ガン!

 模擬爆弾が第一砲塔の装甲に当たって鈍い音を立てた。
「あの機体の搭乗員は誰なの!?」
 あんな無謀な跳び方をするなんて尋常じゃない。
「機体番号を照会します・・・・・・機体番号VF-114。空母『イントレピッド』爆撃隊、ウォーレン・クロム大尉です!」
 ウォーレン・クロム?
 ああ・・・・・・。
「あのクレイジーボンバーね。ラ・スペツィアに停泊してる艦の間ではすっかり有名人じゃない」










 戦艦「比叡」を使用した爆撃訓練とほぼ同じ時刻。ラ・スペツィア軍港に停泊中の空母「大鳳」艦内の会議室にて・・・・・・
「それでは、『シャングリラ作戦』―日本名『S号作戦』の最終確認を行います」
 空母「大鳳」艦長兼第六航空戦隊司令の雪風潮が言う。
 彼女の前に並べられた机には、S号作戦に参加する各国艦艇の艦長と艦隊司令が着席し、潮を注視していた。
「本作戦の目的は、先日の空襲を行った大アッシリア機の出撃基地を攻撃して我々の手中に収め、ひいてはこのラ・スペツィアへの空襲を防ぐことにあります」
 潮が指示棒でラ・スペツィアからスエズ運河にかけての地図を指し示した。
「米空軍第二十八戦闘爆撃飛行団のB-29による偵察で、基地の地点は特定できました。シリア国内の極めて沿岸部にあります。現在ここは、大アッシリアの占領地域です」
 各員がうなずく。
「この目標の防御は極めて空母に近いと言えるでしょう。沖合には常に四隻の駆逐艦がレーダーピケット艦として出張ってます」
 潮が艦の形のコマを取り出した。

 カチッ!

 机に広げられた海図の上に四つ並べる。
「これが、普段から出張っている駆逐艦です。我々の航空隊はそのど真ん中を突っ切らなければなりません」
「Oh・・・・・・・・・」
「何と言うことだ。丸見えではないか」
 各艦の艦長たちが絶望的な声を上げた。
「そこで・・・・・・・」
 潮がさらに続ける。
「部隊を二つに分けます」

 ジャラッ

 さらに多くのコマを取り出し、海図の上にぶちまけた。
「まずは主力の空母機動部隊。こちらは日本海軍第一航空艦隊『赤城』、『加賀』、『蒼龍』、『飛龍』、『翔鶴』、『瑞鶴』、『大鳳』、『信濃』。第二護衛空母隊『龍驤』、『瑞鳳』、『祥鳳』、『隼鷹』、『飛鷹』。日本の空母を使えるだけかき集めてきます」
 空母のコマを海図の上に並べていく。
「さらにイギリスから『ヴィクトリアス』、『イラストリアス』。ドイツから『グラーフ・ツェッペリン』。アメリカから『エセックス』、『イントレピッド』、『シャングリラ』、『ミッドウェイ』」
 さらに七隻の空母を配置した。
「これの護衛として、空母に随伴できる速力を持った高速戦艦部隊と水雷戦隊をつけます。戦艦はフランスから『リシュリュー』、『ジャン・バール』、『ダンケルク』、『ストラスブール』。アメリカから『アイオワ』、『ミズーリ』。ドイツから『ビスマルク』、『ティルピッツ』が参加します」
 次は戦艦のコマで空母を囲むように設置する。
「続いて、本隊に先駆けて戦闘海域に突入する水上打撃部隊。こちらは戦艦を中心とした編成を用います」

 パチン!パチン!

 潮が戦艦のコマを並べた。
「まずは日本海軍から高速戦艦『金剛』、『比叡』、『榛名』、『霧島』。ドイツより『シャルンホルスト』、『グゼイナウ』。アメリカから『ウィスコシン』、『ニュージャージー』、『アラバマ』。イギリスから『ヴァンガード』。イタリアから『ヴィットリオ・ヴェネト』、『ローマ』。これを護衛する重巡洋艦『高雄』、『愛宕』、『摩耶』、『妙高』、『那智』、『足柄』、『羽黒』。イギリスより重巡洋艦『ロンドン』、『デヴォンシャー』他水雷戦隊三個艦隊。日本とイタリアからも水雷戦隊を出します」
 潮が水上打撃部隊のコマを動かし始める。
「この水上打撃部隊には、空母機動部隊に先行して戦場に突入。その主砲をもってレーダーピケット艦を葬り去っていただきたい。総司令官は戦艦『金剛』艦長の日向琴音であります」

 すっ・・・・・・・

「どうしましたか?琴音さん」
 琴音が右手を挙げた。
「レーダーピケット艦が相手と言いますが、レーダー相手だと我々は捕捉されてしまいます。相手が逃げるかそれとも我々に奇襲をかけるかはわかりませんが、任務は達成できません。もっと考えてください!我々は兵を一人たりとも失うわけにはい・・・・・・・」
「そこはちゃんと考えてあります」
 琴音の言葉を遮って潮が言う。
「今回、偵察で多大なる成果を上げたB-29部隊。彼らには今回も重要な役を果たしていただきます」
 B-29を模した模型を上空に飛ばした。
「爆撃隊によって上空から電探欺瞞紙チャフをばらまきます。これにより、レーダーは抑えることができます。その隙を見計らって突っ込んでください」
「了解しました。責務は果たします」
 琴音がそう言ってうなずく。
「レーダーピケット艦を片付けたのち、大型空母の艦載機全機をもって突入!急降下爆撃により滑走路と格納庫をピンポイントで破壊してください、直掩戦闘機隊は攻撃隊の援護および機銃掃射を行ってください。民間人への攻撃はなさらぬよう・・・・・・・」
 各艦の飛行長がコクリとうなずいた。
「水上打撃部隊はレーダーピケット艦の撃沈後に敵艦の乗員を救助。その後に地上への砲撃を行ってください。くれぐれも、要塞砲にはご注意を」
「少しよろしいか?」
 重巡洋艦「ロンドン」艦長であるジョン・ライトニング中佐が口を挟む。
「敵艦の乗員など救助しなくてもよいのではないか?そのまま射殺すべk・・・・・」
「黙って下さい」
 潮が素早く遮り、心底軽蔑した様にライトニング中佐を見た。
「捕虜は戦後の交渉において大いに役立てることができます。それに・・・・・」
「それに、何だ?」
「敵味方分け隔てなく救助することは、我々の名声を高めることにつながります」
「そうか。もういい」
 潮の目線に耐えられなくなったのか、ライトニング中佐は自分の意見を引っ込める。
(それに・・・・・・・) 
 潮は心の中でつぶやいた。
(我々には、「武士道精神」がある・・・・・)























 一方そのころ、空母「イントレピッド」にて・・・・・
「クロム大尉!」
 飛行甲板まで出てきた艦長、アマンダ中佐が俺に詰め寄る。
「また無茶な飛行をしたようですね?『比叡』から連絡がありましたよ」
 あの艦長。またお怒りだ。
「まあまあ艦長。落ち着いてください」
「落ち着いてなどいられますか! ヘルダイバー一機が何ドルすると思っているのです!?」
 ヤバい。火に油を注いだみたいだ。
「はいはい。わかりました」
 適当にあしらっておこう。
「真面目に答えてください!飛行禁止になりたいのですか?」
 艦長の怒りはまだ収まらないみたいだ。
「あれ?艦長にクロム大尉。また痴話喧嘩っスか?」
 通りすがりの整備兵が冷やかした。
『はぁ!?』
 二人同時に言って整備兵を睨みつける。
「そんなわけないでしょ!?なんで自分がコイツと!?」
「んなわけあるかぁ!コイツなんか別にどうだっていいんだ!」
「ほほう。顔が赤いですけど」
 整備兵が言った。
『そんなことない(し)!』
 二人同時に叫ぶ。
「はいはい。分かりましたよーっと」
 整備兵は工具箱を担いで格納庫に降りていった。

















 ヴァラララララ・・・・・・・・

 ヒュォォォォォ・・・・・・・・・・

 機外からかすかに聞こえてくるエンジン音と風切音。
「機長。もう少しで目標上空に到達します」
 副操縦士のポール・シュートがわたしに言う。
「高度を上げるわ。レーダーに捕捉されても迎撃が上がってこれないくらいにね」
 わたし―メアリ・ホームズはそう言うと同時に操縦桿を引き、機関士にエンジン出力を上げるよう指示した。

 ヴァァァァァ・・・・・・!

 エンジン音が大きくなり、わたしの愛機であるB-29 機体番号「13-0655」、愛称「Glamarous Hyuga」は高度を上げていく。
《レーダーピケット艦が四。捜索レーダー照射確認》
 偵察員が機器を見つめながら言った。
「了解。射撃管制レーダーは?」
《照射を受けていません。照射していないのか、あるいは最初から捜索レーダーしかないのか・・・・・・・》
 偵察員が首をひねる。
「了解。これより基地上空に進入するわ。機銃手。頼んだわよ」
《言われなくてもわかってますよ》
 インカムから聞こえる機銃手の声。
《こちらベーカーワン。これより目標上空に進入する》
 無線士がピサ基地に連絡を入れた。
「全方向、見張りを厳重にしなさい」
 わたしはそう言うと、高度を下げる。
《偵察を開始します。地上駐機場にはランカスターが四機。前回の空襲で稼働機数の大半を失ったようです。地上には大型タンクローリーが五十。地上の燃料タンクに中身を移し替えています。おそらく航空燃料でしょう》
 確かに、下には多くの燃料タンクが屹立し、その燃料タンクには数日前からタンクローリーが燃料を補給していた。
「できる限り燃料がたまってるところを爆撃した方がいいからね」
 わたしはそう言うと、無線士に報告を送るよう指示する。
「迎撃機は?」
「上がってきません、おそらく戦闘機も先日の空襲ですべてを失ったものと思われます」
 ポールが周りを見ながら言った。
「了解。これから『もう一つの任務』に移るわよ。爆撃用意」
「了解」
 ポールが短く言い、爆撃の用意を始める。
「今回は照準する必要はないわ。お荷物をバラまくだけだもの」
 わたしはそう言うと、爆撃手に爆弾槽の中身を確認するように言った。
「爆撃進路に入ります!」
「了解!爆撃開始!」
《爆撃を開始します!》

 ガタッ!

 爆弾槽の扉が開き、バラバラと白いものが落ちていく。
「よぉし!目一杯バラまきなさい!」
 地上に降り注ぐ大量の伝単。その一枚一枚には、こんな文字が書かれている。
《Improve your practice and return! Noob!(練度を上げて出直してこい!初心者が!)》
「いやー、思いっきり降ってますね」
 ポールが眼下の伝単を見ながら言った。
「ふふふ。いい訓練にもなるわね。なんの訓練だか知らないけど。」
 他のB―29にも、同じように偵察後に伝単を投下するように言われているそうだ。
「さて、爆撃も終わりましたし、帰りますか」
 わたしは愛機の機首を元来た方に向けると、最高速度で戦域を離脱した。


















 一方そのころ、空母「大鳳」会議室にて・・・・・・
「偵察隊からの報告がありました。《敵情緩慢。敵は次の空襲に向けて機体と燃料を集めつつあり、現在燃料は最大限までたくわえられつつあり》とのことです」
 潮がタブレット端末を見ながら言う。
「航空燃料が大量に貯蔵されている現在、テルミット爆弾による攻撃により燃料を炎上させ、基地の能力を完全に奪うことができます。勝機は今です」
 そう言うと同時に、集まっている全員を見た。
「今更だと思いますが、皆さん、覚悟はできてますね?」
 全員がうなずくのを確認して、潮は口を開いた。
「作戦開始は三日後です。皆様が責務を果たすことを期待します」












 その数時間後、戦艦「比叡」最上甲板前方に、最低限の当直を除く全乗員が集められた。
「我らが勇敢なる『比叡』クルーのみんなに発表します!」
 わたし―最上雪菜は艦首付近の台に立ち、クルーたちを見た。
「S号作戦の日程が決定いたしました。十二月三日にラ・スペツィア出撃。三日後の十二月六日、戦場に突入します」
 全員の空気が一気に張り詰めた。
「突入は十二月六日明朝。我々の突入と同時に味方機が電探欺瞞紙を上空から散布するため、電探射撃は行うことができません。砲術科!」
『はい!』
 突然指名された砲術科の面々が急いで返事をした。
「あなた方の照準が頼りです」
「ありがたき幸せです!」
 砲術長の長月美理が返答する。
「これで概要は以上です。これ以上のことは各科長を通じて通達します」

 ザッ!

 わたしが説明し終わると、全員が敬礼した。
「・・・・」
 わたしも答礼し、台から降りる。
「敬礼、直れ!」
 副長の国後祐樹が全員に指示を出した。
「艦歌『錦旗奉じて比叡をうたう』斉唱!」

 ダッダン、ダッダン・・・・・・

 艦乗組の軍楽隊が演奏を開始する。
『♪黒潮の磯打つ極み 長躯せん波濤を超えて 海征かば水漬く屍 山征かば草生す屍 ・・・・』
 前奏が終わると同時に、全員が一斉に歌い始めた。
『・・・・仰ぎ見るマストも高く海原に錦旗奉じて 益良雄ますらおの胸は高鳴る ああ比叡 我らが比叡』
 歌唱は二番に入る。
『♪硝煙の渦巻くところ 皇国こうこくの守りゆるがず 大君のへにこそ死なめ 武人もののふ長閑のどには死なじ・・・・・・』
(長閑には死なじ。ねぇ・・・・・・)
 わたしはそう思いつつも、みんなとともに歌った。
『仰ぎ見るマストも高く 大空に錦旗輝き 益良雄の血潮は踊る ああ比叡 我らが比叡』
 















 ドン!

「何故だ!何故わたしに指揮が任されない!?」
 空母「赤城」艦長の南雲美亜が空になったコーヒーカップを机にたたきつける。
「まあまあ艦長。落ち着いてください」
 わたし―空母「赤城」副長の霧島琳はそう言うと、新しいコーヒーを淹れた。
「なんで!呉の奴が総司令官なわけ!?わたしじゃ不安だって言うの!?」
 なおも息巻く美亜。
「『大鳳』は装甲空母です。飛行甲板になんの防御もない『赤城』よりは生存性が上がるのでしょう」
「だったらわたしが『大鳳』に行ってやるわよ!呉の奴らもわたしの指揮を受けることができて光栄でしょうに」
 またこの艦長は・・・・・・・・すぐに他の艦に移りたがる。
「兵にとって指揮官が変わるというのは一大事です。やり方を誤れば、貴重な人材を腐らせてしまいます」

 ガッ!

 美亜がわたしの襟をつかむ。
「なに!?アンタはわたしが行くことで呉の奴らの士気が下がるとでも思ってんの!?」
「いえ、そう言うわけではありません。艦長が出ていくことにより、『赤城』の士気が下がることを恐れているのです」
 わたしは慌てて美亜をなだめる。
「そう?なら仕方ないわね。ここにいてあげるわよ」
 美亜が落ち着いて椅子に腰を下ろした。
(ほっ、機嫌を直してくれてよかった・・・・・・・)
 この艦長は腕は優秀だけど、短絡的すぎるのが欠点。
(少なくとも、今『赤城』にいてくれないと困るから、よかった)
 わたしは美亜に礼をすると、艦橋に向かった。



















 十二月三日明朝。ラ・スペツィア軍港停泊中の戦艦「比叡」艦上。
「出港用意!」
 わたし―最上雪菜は副長の祐樹に言う。
「出港用意~!」
 復唱の声が伝声管から聞こえ、煙突から立ち上る煙が多くなった。

 ゴォォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・・・・

 ゴウン、ゴウン・・・・・・・・・・・

 港に停泊する他の艦たちも一斉にボイラーの昇圧作業をはじめとする出港準備を始めた。

 ザァァァァァァァァァ!

 軍港の入り口付近を哨戒しているのはイタリア海軍の駆逐艦「リベッチオ」と日本海軍の海防艦「国後」。

 チカッ!チカッ!

 両艦が発光信号を交わしながら進んでいく。
「頑張りなよ~!」
 わたしは防空指揮所から「リベッチオ」と「国後」に帽子を振った。

 ピッ!

 インカムが鳴る。
《艦長。出港準備よろしい》
 耳に着けたイヤホンから祐樹の声が聞こえた。
《通信科より艦長。『金剛』より各艦に伝達。『出港準備はよろしいか?』》
「了解。『出港準備よろし』と送れ」
《承知》
 通信長の声が聞こえ、我が艦のマストに信号機がスルスルと上がる。

 スルスルスル・・・・・・・

 他の艦のマストにも同じ信号旗が揚がり、「金剛」のマストに返答旗が揚がった。
「軍艦旗、国連軍旗をマストに掲げよ!」
 わたしが指示すると、戦闘時の位置であるマストトップに、旭日旗の軍艦旗と国連軍所属であることを示す「UN」のステンシル入りの白旗が翻った。
 他の艦たちも軍艦旗と国連軍旗をマストトップに掲げる。
「錨鎖詰め方!」
「錨鎖詰め方~!」
 海中の錨が巻き上げられ、真水で洗い流される。

 スルスルスル・・・・・・

 旗艦「金剛」のマストに、「出撃」の信号旗が高らかに上がった。
「出港!」
 わたしはインカムに叫ぶ。
「出港~!」

 パパパパー パパパパー パパパパーパパッパパー!

 出港を告げる喇叭が一斉に吹き鳴らされる。

 ボーーーーーーーーーーーー!

 湾内の各艦が汽笛を吹鳴し、先頭の「金剛」と我が「比叡」から動き出した。

 グァァァァァァァァァ・・・・・・・

 ゴォォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・・・・

 続くように「榛名」、「霧島」、「ヴィットリオ・ヴェネト」、「ローマ」も動き出す。

 ガァァァァァァァ・・・・・・・・・・

 ドイツの「シャルンホルスト」、「グゼイナウ」。イギリスの「ヴァンガード」も動きだした。

 グォォォォ・・・・・・・・

 しんがりを務めるのはアメリカの「ウィスコシン」、「ニュージャージー」。
 さらに、重巡と水雷戦隊が我々を囲むように護衛する。
 十二月三日午前一時四十五分。水上打撃部隊改め「第一遊撃艦隊」はラ・スペツィア軍港を出港した。









 ゴォォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・・・・

 主機の音を響かせて出港していく戦艦たち。
「悔しいな。出撃できないのが」
 わたし―三国はつみは出港して征く艦隊を見つめながら言った。
「仕方ありませんよ」
 副長の栗原翼が言う。
「あれじゃあ出撃しても足手まといですから」
 眼下の第一主砲を見た。
 第一主砲は先般の空襲で爆弾の直撃を受け、揚弾筒などが破壊されて使用不能となっていた。
「被弾したのがうちの艦だけってのが悔しいよ」
「そうですね。私が至らぬばかりに、すみません」
「違うよ。わたしの腕が足りなかっただけ」
 栗原が言うのに手を振り、出撃する艦隊を見る。
「なんか、嫌な予感がするよね・・・・・・・・」














 ギリシャ沖の地中海。ちょうど第一遊撃艦隊の通過予定航路。

 ザァァァァァァァァァ!

 一隻の艦が波を蹴立てて疾走していた。
「よしっ。機雷もないし潜水艦らしき反応もなし。上々だね」
 ギリシャ海軍の装甲巡洋艦「イェロギオフ・アヴェロフ」の艦橋上、一人の少女が双眼鏡を目から離してつぶやく。
 彼女こそがこの装甲巡洋艦「イェロギオフ・アヴェロフ」の艦魂であった。
「それじゃ、もうちょっと奥まで行きますか~」
「はいはい」
 アヴェロフが言うと、この艦で唯一の艦魂視認者、艦長のニコラオス・アンドレウ大佐が指示を出す。

 ボッ、ボッ、ボッ、ボッ・・・・・・・・・

 カランカラン・・・・・・・・・・

 レシプロ蒸気機関の音がして、「イェロギオフ・アヴェロフ」は速度を上げた。
「対潜、対空警戒を厳となせ」
 アンドレウ大佐の指示。
「承知」
 見張り員が双眼鏡を覗きながら言う。
「さて。敵さんはどうかな?」
 アヴェロフはそう言うと、自らの双眼鏡を覗いた。














 サァァァァァァァァァァ!

 ベイルート付近を航行する一隻のヨット。
「ん・・・・・?」
 船首に立ってバランスをとっていた少女が顔を上げる。その顔はヨーロッパ人でもアラビア人でもない。モンゴロイドの顔だった。
「さくら?どうかしたの?」
 もう一人の少女が後部の操舵室から上半身を乗り出す。彼女もまた、モンゴロイドである。
「海上に煙。一時の方向。船舶火災かもしれないから確認するよ」
 さくらと呼ばれた少女は操舵手の少女にそう言うと、ナビゲートを開始した。
「面舵十度。風は船首から風速十ノット。うまいこと風を掴んで進んで」
「了解」
 ヨットが右に変針し、さくらは自らの身でヨットの重心を調整する。
「今のところ周りに船舶らしきものはなし。さらに遠く、煙は三本に増えた」
「了解。進路そのままで行くよ」
 ヨットはどんどん煙の方に近づいていく。

 スチャッ

 さくらが双眼鏡を目に当てた。
「煙はおよそ十ノットでうちらの右舷側から左舷側に移動している。あ!煙の主が見えた。灰色の大砲付きの艦。軍艦だよ」
「了解。国籍旗を下げて挨拶するよ」
 操舵手がヨットを所属不明艦に寄せる。
「戦艦が五隻、その周りを囲んでるのは巡洋艦かな?多いね」
 サクラはそう言うと、双眼鏡を下ろした。
「近づいたから国籍旗を下げるよ」
 さくらがそう言って日の丸を半旗にしようとした瞬間だった。

 ババババババババババババ!

 突如放たれる機銃弾!

 ボスッ!ボスッ!

 機銃弾に帆が撃ち抜かれ、何個かの穴が開いた。
「面舵一杯!即座に離脱して!」 
「オーライ!」
 サクラが叫び、ヨットは一気に向きを変えて逃走を始める。
「あれは味方じゃない!テロ組織、大アッシリアだ!」
 さくらは必死に帆を操り少しでもヨットの速度を上げようと努めた。

 ヴァァァァァン!

 駆潜艇か水雷艇らしき小型艇がヨットを追ってくる。
「後ろにつかれた!」
 操舵手の悲痛な声が聞こえた。
「面舵三十度!アレをとって!」
 サクラはそう言うと、操舵手に手を伸ばしながら重心調節を行う。

 スカッ!

 高速航行していた駆潜艇は速度がつきすぎてヨットを追い越してしまった。
「よしっ!」
 さくらが手にしていたものは、対戦車無反動砲パンツァーファウスト
「護身用に持って着といてよかった。漁船に毛が生えた程度のアレなら・・・・・・・・・」

 ガチャッ!

 構え、駆潜艇に狙いを定める。
「後方の安全確認!喰らえ!」

 カチッ! ブシャァァァァァァ!

 パンツァーファウストが発射され、駆潜艇に向かって飛んだ。

 ドガァァン!

「やった!命中!」
 駆潜艇にパンツァーファウストが命中し、駆潜艇が火を噴く。
「よしっ!追加が来ないうちに離脱するよ!」
 サクラが言うと同時にヨットが加速を始めた。














 ギリシャ海軍装甲巡洋艦「イェロギオフ・アヴェロフ」艦橋・・・・・
「艦長、遭難信号を受信しました!」
 艦橋に駆け込んでくる通信士。
「内容は?」
「はい。『メーデー メーデー メーデー こちらJADEヤーデ JADE JADE。メーデーJADE。位置は北緯三十五度、東経三十五度。国籍不明艦隊より攻撃を受けた。直ちに救助されたし。乗船人数は二名。メーデー、JADE。オーバー』」
 通信士が読み上げた。
「艦長!」
 見張り員が叫ぶ。
「右舷四十度、前方にヨットです」
「関係各組織に連絡『我ギリシャ海軍巡洋艦[イェロギオフ・アヴェロフ]。これより遭難船の救助に向かう』と」
 アンドレウ大佐が指示を出した。。
「ヨットはNとCの信号旗を掲げています。救難信号です!」
「はっ・・・・・!」
 艦魂のアヴェロフが顔を上げる。
「両舷微速。ヨットに向かって舵を切れ」
 アンドレウ大佐の指示。
「了解。取り舵十度!」
「とーりかーじ十度!」
 指示を聞いた航海長が伝声管に叫び、伝声管から航海士の復唱の声が返ってくる。

 ぐぅっ・・・・

 アヴェロフが転舵し、ヨットの方に艦を寄せた。

 サァァァァァ・・・・・

 ヨットの方でも舵を切り、「イェロギオフ・アヴェロフ」に横付けする。
「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・・・」
 舷側から降ろされた縄梯子を息を切らせて上ってくるさくら。
「わたしたちは日本船籍のヨット『JADE号』の大場さくらと金子はるか。ベイルート沖合において国籍不明の艦隊を確認。国籍旗を下げて敬礼しようとしたところ機銃掃射を受けた」
 一気にまくしたてる。
「国籍不明の艦隊・・・・・・だと?軍艦旗は!?」
 アンドレウ大佐が問うた。
「軍艦旗は掲げていたものの、どこの国の物でもない。図柄は日の丸を切り裂く剣。例外なくどの艦も掲げていた」
「切り裂かれた日の丸の軍艦旗・・・・・・大アッシリアではないか!貴殿たち、よくぞ生きて帰って来たな」
 普通なら拿捕されているはずなのに。とアンドレウ大佐は言う。
「漁船に毛が生えたような小型艇一隻に追いかけられたものの、護身用に携行していたパンツァーファウストで大破させたうえで振り切った」
 さくらが胸を張った。
「よろしければ、貴殿が見た艦隊の陣容を教えていただきたい」
 アンドレウ大佐の言葉に、さくらが口を開く。
「戦艦が少なくとも四、多くて五隻。巡洋艦と駆逐艦はそれぞれ十隻以上はいた。それと駆潜艇・・・・・・おそらく拿捕した漁船を改装したものだろう。それが五十」
「なんだと・・・・・・!?」
 アンドレウ大佐の顔が引きつった。
「ピレウスとラ・スペツィア、国際連合多国籍海軍総司令部、およびシャングリラ作戦参加艦隊全ての司令部に打電!『攻略目標付近に敵の大艦隊集結す』!」



















「なんだって・・・・・・・・・・」
 戦艦「金剛」艦橋。

 グシャッ

 わたし―日向琴音は震える手で電文の書かれた紙を握りつぶす。
 そこに書かれている文面は『攻略目標付近に敵の大艦隊集結す。戦艦少なくとも五隻、それに付随する艦隊数知れず』だった。
(我々第一遊撃艦隊に入る戦艦は十二隻。数の上では圧倒できるが大アッシリアの戦艦の能力は未知数だ・・・・・・)
 反転するか?そのまま突き進むか?










「ふうん。ベイルート付近に敵の大艦隊ね」
 戦艦「比叡」艦橋。
 わたし―最上雪菜は電文の書かれた紙を通信兵に帰すと、艦橋内に持ち込んだキャンピングチェアに腰かけた。
「琴音はいざとなったときに迷う癖があるのよね・・・・・・・」
 このままじゃ「攻撃を中止して引き返す」とか言い出しかねない。
「そうなったら敵基地攻略も果たせないし敵戦艦を取り逃がすことになる」
 結果として・・・・・・
「作戦は失敗。制空権と制海権は敵の手に渡るでしょうね」
 わたしはさらさらとメモ用紙に文を書き、通信兵に渡す。
「これを『金剛』に送りつけなさい・・・・・・」
「OK」
 通信兵が紙をもって艦橋から出る。
「少し、発破をかけてやるわ・・・・」










「艦長!」
 通信科員が叫ぶ。
「戦艦『比叡』より信号。『我[比叡]。乗員全員の士気旺盛にして戦闘準備整ってあり。如何されるや?』!」
「雪菜ね・・・・」
 わたし―日向琴音は横を航行する「比叡」を見て言った。
「こっちだって士気旺盛よ」
 艦内放送のマイクを手に取る。
「やってやろうじゃない・・・・・・」
 スイッチを入れた。
「総員水上打撃戦用意!弾種を対地、対空用三式から九一式徹甲弾に変更『長門』の敵討ちよ!」
『オォォォォォォォォ!』
 叫んだ瞬間、艦内の至る所から雄叫びが上がる。
「隷下の各艦にも伝達しなさい!」
「はいっ!」
 戦艦「金剛」を旗艦とした第一遊撃艦隊は、着実に目標へと近づいていった。







「よしっ!願ってもない好機だ!」
 戦艦「ヴィットリオ・ヴェネト」艦橋。
 俺―戦艦「ヴィットリオ・ヴェネト」艦長のアンドレア・カヴァリエーレは旗艦「金剛」のマストに上がった信号旗を見てガッツポーズをした。
「艦長!やりましたね!」
 副長のサラ・アルチェーレが俺の肩を叩く。
「ああ。敵戦艦との砲撃戦は戦艦乗りの檜舞台!総員水上打撃戦に備えよ!」
 俺はマイクに向かって叫ぶ。
「いよいよこの三十八センチ砲が火を噴くのですね!」
 サラが感無量と言ったふうに言った。
「いや・・・・・・・」
 俺は首を横に振る。
「・・・・・まだ安心するのは早い。大アッシリアは空母も保有しているのだろう?」
「え、えぇ・・・・・・・」
 サラが困惑したように言った。
「今回、空母を出してこなかったこと。それが、気になるんだ・・・・・・・」














「ふう・・・・・・」
 わたし―最上雪菜は大きく息をつくと、窓の外に見える地中海の海原を見た。
「艦長。ギリシャ海軍からの報告。『航路上に機雷および潜水艦の危険はなし。安心して進撃されたし』」
 副長が報告する。
「ありがとう」
 隣の「金剛」を見た。
「琴音・・・・・」
 彼女は今、どのような気持ちなのだろうか・・・・・・・








(おとなしそうな子だな・・・・・・)
 これが、わたしがあの子―日向琴音に抱いた初めての印象だった。
「それって・・・・・宇垣纒中将の『戦藻録』!読んでる人初めて見た~」
 図書室で調べ物中にいきなり声をかけられ、半ば強引に連絡先を交換したことは今でも覚えている。
「わたしはね。『秋雲』に乗ってるんだよ。砲術長なんだ」
 彼女はそう言って、毎日のように射撃演習のデータを話してくれるのだった。
「あのさぁ・・・・・・・」
 一度だけ訊いたことがある。
「なんで毎回成績をわたしに話してくるわけ?わたしも軽巡『大淀』副長で忙しいんですけど」
 琴音は少し考えると、口を開いた。
「雪菜ってさ、どんなデータ持って来ても冷静に、あっという間に分析してくれるじゃん。だから、わたしには雪菜が必要だなって思ったの」
 ほぇぇ・・・・・・
「だからさ」
 琴音がわたしの手を握る。
「これからも、わたしのサポートよろしくね」
 あれから二年たって、お互いに戦艦の艦長になったけど、いまだに親交は続いてい・・・・・・












「艦長!艦長・・・・・!」
 ハッ!わたしはいったい何を・・・・・・・
「すっごい気持ちよさそうに寝てましたよ。立ったまま」
「そう・・・・・・・・」
 わたしは手の甲で目をこすると、艦橋内の手すりを握った。
「そろそろお休みになられてはいかがですか?ここのところ三日連続徹夜でしたし・・・・・」
 副長の祐樹がわたしに言う。
(そうか・・・・・もう三日も・・・・・)
 作戦の打ち合わせや会議、弾薬搬入の決裁書類の作成・・・・・・・ここ数日は寝てないし、今が何月何日かもついさっき、出港時に知ったばかりだ。
「睡眠不足は判断能力を鈍らせ、戦闘に支障をきたします。この艦は私が預かりますので、さぁ・・・・・・」
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
 わたしは祐樹に艦を任せると、艦長私室に向かった。
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