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第三章 激闘の中へ
番外編 沖田夏芽の優雅な休日
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「アバーーーーーーーーーッ!」
駆逐艦「陽炎」艦内。わたしー沖田夏芽は、今にも死にそうな悲鳴を上げた。
「ちょっと何?うるさいよ」
隣部屋の山城春奈が入ってくる。
「新刊のデータが飛んだ・・・・」
「また?バックアップは?」
わたしは首を横に振った。
「で、締め切りはいつなの?」
「冬コミに委託するから、印刷所には十二月二十五日までに入稿しなきゃダメなの・・・・・」
「つまり、あと二週間ちょっとで全部を書き上げ、入稿しなきゃいけないわけね」
非常に厳しい現実が突き付けられる。
「ったく・・・。夏芽はいつもこうだよね」
ため息をつく春奈。
「仕方ないな・・・・・」
袖口のホックを外し、腕まくりをする。
「わたしも非番だし、手伝ってあげる。ちょっとした色塗りくらいならできるわよ」
「おぉ、神よ・・・・・!」
わたしは春奈に手を合わせる。
「・・・・春奈が死んだら、春奈を祀った神社を創建してあげるからね」
「不吉なこと言ってないで、さっさと始めるよ!」
春奈がわたしのロッカーをあさり、予備のペンタブを取り出した。
「線画ができたら別レイヤーで色の指示を書いてわたしのペンタブに転送すること!いいね?」
「ラジャー!」
わたしはそう言うと同時に復旧できた分のデータを春奈に送る。
「まずはこれを・・・・っと!」
転送を終えると同時に筆を走らせ始め、下書きからの線画を仕上げていく。
「ねぇ、夏芽・・・・」
春奈が筆を止めぬまま言った。
「あんた、いつもこんなのをコミケで出してるの?」
「そうだけど?」
さっき送ったのは、ちょうど主人公たちが色々(自主規制)しているところ。
「わたしの描いているのは、百合だからね」
「へーっ」
春奈は手早く色塗りを済ませていく。明らかに動きが素人でなはい。
「ねえ、春奈・・・・」
わたしは恐る恐る春奈に声をかける。
「何?」
「・・・もしかして、イラストとかマンガ描いたことある?」
「あるよ。コミケとかコミティアにも出店してたし」
「何描いてたの?」
「コミケには文スト二次創作。コミティアにはオリジナル作品。どっちもミステリーにしてた」
「今は描いてないの?」
わたしが問うと、春奈はため息をついて答える。
「残念ながら、この趣味から足を洗うことは難しいわね。体に染みついた癖というのは、なかなか抜けそうにないよ」
「わたしも」
そういって、二人同時に笑う。
「春奈は締め切りぎりぎりだったことないの?」
「ないない。同人活動は計画性が大事だよ♪」
そう言うと同時に、春奈は鼻歌を歌いながら作業に戻る。どうやらわたしとは住む世界の違う人のようだ。
「うぅ、眠い・・・・・」
そんな時は・・・
プシュッ!
「最終奥義!眠眠打破!」
高らかに叫ぶと同時に、それをグビッとキメる。と、その時・・・・
「機関長!交代です・・・・って、どうしたんですかその顔。今にも死にそうですよ!」
機関士の石井唯がドアを開けて入ってくる。
「気にしないでいいよ。じゃ、行ってくるね」
春奈がサムズアップする。「こっちに任せてくれ」と目で言っていた。
数時間カマのご機嫌取りに時間を費やしたわたしは、疲れ切って自室に帰還した。
「ただいま~」
「お疲れさん」
自室に入ると、春奈がペンタブから顔を上げずに答える。
「こんなもんでいいかな?」
春奈がこちらに向けたペンタブの画面。そこには、完璧に描き上げられた原稿が映っていた。
「ありがとう!春奈!」
わたしは春奈の前にひれ伏し拝む。
「まだまだだよ」
春奈は言葉を継いだ。
「入稿するまでが執筆です!」
駆逐艦「陽炎」艦内。わたしー沖田夏芽は、今にも死にそうな悲鳴を上げた。
「ちょっと何?うるさいよ」
隣部屋の山城春奈が入ってくる。
「新刊のデータが飛んだ・・・・」
「また?バックアップは?」
わたしは首を横に振った。
「で、締め切りはいつなの?」
「冬コミに委託するから、印刷所には十二月二十五日までに入稿しなきゃダメなの・・・・・」
「つまり、あと二週間ちょっとで全部を書き上げ、入稿しなきゃいけないわけね」
非常に厳しい現実が突き付けられる。
「ったく・・・。夏芽はいつもこうだよね」
ため息をつく春奈。
「仕方ないな・・・・・」
袖口のホックを外し、腕まくりをする。
「わたしも非番だし、手伝ってあげる。ちょっとした色塗りくらいならできるわよ」
「おぉ、神よ・・・・・!」
わたしは春奈に手を合わせる。
「・・・・春奈が死んだら、春奈を祀った神社を創建してあげるからね」
「不吉なこと言ってないで、さっさと始めるよ!」
春奈がわたしのロッカーをあさり、予備のペンタブを取り出した。
「線画ができたら別レイヤーで色の指示を書いてわたしのペンタブに転送すること!いいね?」
「ラジャー!」
わたしはそう言うと同時に復旧できた分のデータを春奈に送る。
「まずはこれを・・・・っと!」
転送を終えると同時に筆を走らせ始め、下書きからの線画を仕上げていく。
「ねぇ、夏芽・・・・」
春奈が筆を止めぬまま言った。
「あんた、いつもこんなのをコミケで出してるの?」
「そうだけど?」
さっき送ったのは、ちょうど主人公たちが色々(自主規制)しているところ。
「わたしの描いているのは、百合だからね」
「へーっ」
春奈は手早く色塗りを済ませていく。明らかに動きが素人でなはい。
「ねえ、春奈・・・・」
わたしは恐る恐る春奈に声をかける。
「何?」
「・・・もしかして、イラストとかマンガ描いたことある?」
「あるよ。コミケとかコミティアにも出店してたし」
「何描いてたの?」
「コミケには文スト二次創作。コミティアにはオリジナル作品。どっちもミステリーにしてた」
「今は描いてないの?」
わたしが問うと、春奈はため息をついて答える。
「残念ながら、この趣味から足を洗うことは難しいわね。体に染みついた癖というのは、なかなか抜けそうにないよ」
「わたしも」
そういって、二人同時に笑う。
「春奈は締め切りぎりぎりだったことないの?」
「ないない。同人活動は計画性が大事だよ♪」
そう言うと同時に、春奈は鼻歌を歌いながら作業に戻る。どうやらわたしとは住む世界の違う人のようだ。
「うぅ、眠い・・・・・」
そんな時は・・・
プシュッ!
「最終奥義!眠眠打破!」
高らかに叫ぶと同時に、それをグビッとキメる。と、その時・・・・
「機関長!交代です・・・・って、どうしたんですかその顔。今にも死にそうですよ!」
機関士の石井唯がドアを開けて入ってくる。
「気にしないでいいよ。じゃ、行ってくるね」
春奈がサムズアップする。「こっちに任せてくれ」と目で言っていた。
数時間カマのご機嫌取りに時間を費やしたわたしは、疲れ切って自室に帰還した。
「ただいま~」
「お疲れさん」
自室に入ると、春奈がペンタブから顔を上げずに答える。
「こんなもんでいいかな?」
春奈がこちらに向けたペンタブの画面。そこには、完璧に描き上げられた原稿が映っていた。
「ありがとう!春奈!」
わたしは春奈の前にひれ伏し拝む。
「まだまだだよ」
春奈は言葉を継いだ。
「入稿するまでが執筆です!」
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