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中編その1
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「……」
「あらあら、本当に頭の中にはおめでたい妄想しか詰まっていないのね♪」
身を守るために常に身に着けている撮影魔道具から映し出したアレウス・ユピタル伯爵令息が私へ婚約破棄宣言をした一部始終の記録映像を観て、お父様は眉間に深い皺を刻んで無言。他方、お母様は笑顔で手に持った扇で口元を隠して優雅に笑っています。しかし、その目は笑っていません。とても怖いです。
「ミネルバ……」
「はい」
「あのば…アレウス・ユピタル伯爵令息に未練はあるか? 貴族法に乗っ取った必要な手続きを完全に無視して婚約破棄を語っているから、こちらが認めなければこのうつけの主張は覆せるぞ」
お父様は私の意思を確認する様にそう問いかけられました。
「いいえ、幼馴染ではありましたが、それだけの関係でした。いえ、当家の爵位が下だからといって、見下されていましたし、婚約者だからと、いつも彼の失態の後始末を私は押し付けられておりましたので、関係を清算できるのならば喜んでお願いします。私はあの2人を許すつもりはありません」
私は迷わず、これまで耐えていた本心を吐露しました。
「そうか……分かった。まだ公表はされていないが、今回のアレウス・ユピタル伯爵令息の失態によりユピタル伯爵家が爵位を返上することはより確実となる」
「そうなのですか?」
私は驚きましたが、お母様はご存知だったご様子で、笑みを浮かべたままでした。
「そうね。本当はミネルバとアレウスの婚約がなければ、2人が子供だったあのときにユピタル家は陛下に爵位を返上して、平民になっていなければならなかったものね」
お母さまがのほほんとそう仰いました。
「今回、アレウス・ユピタルがやらかした『貴族法を無視した』相手方を貶める悪意のある婚約破棄は斜陽となっている貴族家にとっては致命的だ。証拠映像もあるから、ユピタル家とこのヴィーナといった娘の家の有責は免れられない。法定慰謝料はもとより、衆目の集まるあの場所でミネルバを辱めた報いも含めて、きっちり慰謝料を請求して二度と馬鹿なことができない様、徹底的に毟り取ってくれる……クックック……」
お父様は事情を知らない人が見たら、悪徳貴族として通報されかねない、泣く子が更に大泣きする壮絶な笑みを浮かべて笑い出しました。
私達の住む王国は血統を軽んじないものの、実力主義を標榜する国柄で、王家を除いた貴族は3代に渡ってその爵位に見合った功績を残せなければ爵位を返上することになっている。
そのため、この国では祖父が功績を挙げて爵位を得て、貴族になったものの、孫の代まで爵位を維持するだけの功績を残せずに爵位(主に男爵位が多い)を返上して平民に戻る者が少なくない。
その一方で、きちんと功績を重ねて爵位を上げている家も少なくありません。余談ですが、我がメティス家は祖父様が立ち上げた商会の実績で男爵、子爵の位をいただき、お父様が外交官としての働きを認められ、子爵家から伯爵家になることが確定しています。
「あなた、ディシス様達、ユピタル伯爵夫妻が令息を連れて謝罪に来られたら、どうしますの?」
物憂げにお母様がお父様にそう問いかけられました。ディシス様はアレウス様のお父上。お父様の幼馴染でもあるユピタル伯爵家の現当主であらせられる方です。
「そのときは奴等にミネルバを会わせるつもりはない。ミネルバが会ってしまうと『謝罪をして許された』と妄言を流して少しでも自分達の醜聞を抑えようとするだろう」
あの子にしてあの親あり。確かに私もアレウス様のご両親とは何度もお会いしていますから、私が会っただけで許したことを捏造することをあのご両親だったら平気でやりかねません。
「甘やかし過ぎて貴族の子息としての教育を失敗したばかりか、これまでミネルバだけでなく、当家に迷惑をかけてきた報いだ! 奴等が来たら、応対は私達でするから、ミネルバは“傷心を癒すために”部屋で休んでいなさい。明日、正式な婚約破棄の手続きをしミネルバは私と共にに登城しなければならないから、今日はもう休みなさい」
お父様はそう仰って、私を気遣ってくださいました。
「さあ、お風呂の用意もさせているから、ミネルバはゆっくりして、今日の疲れをとりなさいな」
「畏まりました。ありがとうございます、お父様、お母様」
私を気遣ってくださった両親に感謝の言葉を口にして、私は談話室を後にしました。
「あらあら、本当に頭の中にはおめでたい妄想しか詰まっていないのね♪」
身を守るために常に身に着けている撮影魔道具から映し出したアレウス・ユピタル伯爵令息が私へ婚約破棄宣言をした一部始終の記録映像を観て、お父様は眉間に深い皺を刻んで無言。他方、お母様は笑顔で手に持った扇で口元を隠して優雅に笑っています。しかし、その目は笑っていません。とても怖いです。
「ミネルバ……」
「はい」
「あのば…アレウス・ユピタル伯爵令息に未練はあるか? 貴族法に乗っ取った必要な手続きを完全に無視して婚約破棄を語っているから、こちらが認めなければこのうつけの主張は覆せるぞ」
お父様は私の意思を確認する様にそう問いかけられました。
「いいえ、幼馴染ではありましたが、それだけの関係でした。いえ、当家の爵位が下だからといって、見下されていましたし、婚約者だからと、いつも彼の失態の後始末を私は押し付けられておりましたので、関係を清算できるのならば喜んでお願いします。私はあの2人を許すつもりはありません」
私は迷わず、これまで耐えていた本心を吐露しました。
「そうか……分かった。まだ公表はされていないが、今回のアレウス・ユピタル伯爵令息の失態によりユピタル伯爵家が爵位を返上することはより確実となる」
「そうなのですか?」
私は驚きましたが、お母様はご存知だったご様子で、笑みを浮かべたままでした。
「そうね。本当はミネルバとアレウスの婚約がなければ、2人が子供だったあのときにユピタル家は陛下に爵位を返上して、平民になっていなければならなかったものね」
お母さまがのほほんとそう仰いました。
「今回、アレウス・ユピタルがやらかした『貴族法を無視した』相手方を貶める悪意のある婚約破棄は斜陽となっている貴族家にとっては致命的だ。証拠映像もあるから、ユピタル家とこのヴィーナといった娘の家の有責は免れられない。法定慰謝料はもとより、衆目の集まるあの場所でミネルバを辱めた報いも含めて、きっちり慰謝料を請求して二度と馬鹿なことができない様、徹底的に毟り取ってくれる……クックック……」
お父様は事情を知らない人が見たら、悪徳貴族として通報されかねない、泣く子が更に大泣きする壮絶な笑みを浮かべて笑い出しました。
私達の住む王国は血統を軽んじないものの、実力主義を標榜する国柄で、王家を除いた貴族は3代に渡ってその爵位に見合った功績を残せなければ爵位を返上することになっている。
そのため、この国では祖父が功績を挙げて爵位を得て、貴族になったものの、孫の代まで爵位を維持するだけの功績を残せずに爵位(主に男爵位が多い)を返上して平民に戻る者が少なくない。
その一方で、きちんと功績を重ねて爵位を上げている家も少なくありません。余談ですが、我がメティス家は祖父様が立ち上げた商会の実績で男爵、子爵の位をいただき、お父様が外交官としての働きを認められ、子爵家から伯爵家になることが確定しています。
「あなた、ディシス様達、ユピタル伯爵夫妻が令息を連れて謝罪に来られたら、どうしますの?」
物憂げにお母様がお父様にそう問いかけられました。ディシス様はアレウス様のお父上。お父様の幼馴染でもあるユピタル伯爵家の現当主であらせられる方です。
「そのときは奴等にミネルバを会わせるつもりはない。ミネルバが会ってしまうと『謝罪をして許された』と妄言を流して少しでも自分達の醜聞を抑えようとするだろう」
あの子にしてあの親あり。確かに私もアレウス様のご両親とは何度もお会いしていますから、私が会っただけで許したことを捏造することをあのご両親だったら平気でやりかねません。
「甘やかし過ぎて貴族の子息としての教育を失敗したばかりか、これまでミネルバだけでなく、当家に迷惑をかけてきた報いだ! 奴等が来たら、応対は私達でするから、ミネルバは“傷心を癒すために”部屋で休んでいなさい。明日、正式な婚約破棄の手続きをしミネルバは私と共にに登城しなければならないから、今日はもう休みなさい」
お父様はそう仰って、私を気遣ってくださいました。
「さあ、お風呂の用意もさせているから、ミネルバはゆっくりして、今日の疲れをとりなさいな」
「畏まりました。ありがとうございます、お父様、お母様」
私を気遣ってくださった両親に感謝の言葉を口にして、私は談話室を後にしました。
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