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決着 変態メタルゾンビメイドちょんぱさん
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「あ……が……」
見るも無残な女装メイドの青年が引きずられる。
引きずっているのは牡丹で……なぜ彼女かというと。
「ねえ、あんたって本当に人間? 姉貴寄りの何かっぽいんだけど」
ちょうど三階から二階への階段下隣にある部屋が女子更衣室の真下だったらしく、女子更衣室の床をぶち抜いて牡丹参戦。あっけにとられる変態メタルゾンビメイドちょんぱさん……長いので以後ちょんぱさんをタコ殴りにしたのだ。
しかも数回殴って効き目が薄い事を理解した彼女は鎧通しの要領で中身に攻撃を通していく。
「洞爺さんの方が非常識よ、壁を切り裂いて道を作るもの」
「牡丹、儂は必要じゃったからでお主の様にノリで生きとらんわい」
「それにしてもどんどん訳が分からない格好になってない? さっきのスプラッタじゃないから助かるけどさぁ」
「俺の出番はあまりなかったな……」
捕まえたら全員集合、その方針だったので今は四階にいるエキドナの所へ向かっていた。
上りの階段の際、ごつごつとちょんぱさんの頭がぶつかるが些細な問題である。
「お? 皆お疲れ様。首尾よく捕まえたようでおねーさんは安心だよ」
狩場の中心で何かを並べていたエキドナが振り返り、キズナたちを出迎えた。
「姉貴、調べ物は済んだのか?」
「もちろん、こいつの復活メカニズムも含めてまるっと丸裸だぜぃ!」
イェイ! とサムズアップするエキドナはそのままぼろく……ちょんぱさんを牡丹から受け取る。
相当ひどく痛めつけられたのか、うう……と呻くだけのちょんぱさん。
「こ奴どうなっとるんじゃ? 牡丹が殴り始めてから急に弱りおった」
それまで散々洞爺とキズナが刀で斬り付けたのにぴんぴんしていたのだが、明らかに様子がおかしかった。
「そりゃあ接続が切れたからね。ねえちょんぱ君。君の本体これだね?」
ぽんぽんとエキドナが右手に持った真っ黒な石をお手玉する。
「ぐ、お……返せ。まがい、もの」
「嫌だよ。こんなおっかないの良く使おうと思ったね」
「く、そ……」
「まさか外部演算可能な量子コンピューター。それも僕ですら解析しきれない原理不明の駆動形式……しかも分割すると同期して原子配列も自由に組み換えが可能……まるでウイルス兵器だ」
今はエキドナが全力でジャミングを仕掛けて動機を邪魔している。それだけでも十分な効果があった。
「洞爺、牡丹、夜音、クワイエット……今から言う事は僕の個人的な信条だから気にしないでおくれ」
そして、それを行う事で一つエキドナは決定的な事実を突き止める。
「機械の身を持つ僕は役に立ちたかったんだよ。人を殺したくない、誰かのためにその身を盾にすることに誇りを持っている。だから、こんな壊す事しかできない出来損ないのゴミは大嫌いなのさ……なんで人身売買なんて目立つ真似をしたのか理解できたよ。君、買った人を材料にしたね?」
洞爺とクワイエットがその意味に気づく。
ともすれば……。
「まさか、儂らが斬ったことで……」
「ああ、そうだよ洞爺……転移じゃなくて相転移してたんだよ。攻撃されてぼろぼろになるたびに新品の身体に入れ替えてたんだ」
「外道な……」
「何人分か知らないけど人体ってのは生体パーツとして使うなら相応の処理する設備が必要……だったんだけど。この黒い石で簡単にできちゃうだろうね。大したもんだよまったく……僕としては君をここで抹消するのに異論はないんだけどさぁ」
本音を言えば一刻も早くこの訳の分からないコンピューターをエキドナは処分したい。
しかし、その前に確認することがあった。
「君の本体はどこにある?」
左手に掴んだちょんぱを軽々と自分の目線高さまで持ち上げるエキドナ。
「聞いているんだろう? この分身越しにさ……臆病者」
「うひっ……ばれちゃったかぁ。賢いね君……エキドナちゃんだっけ? 大体君の言うとおりかなぁ、一つ付け加えるなら。そこのおじいさんに首を斬られて回復が大変でねぇ……多めに渡したその黒い石、角って言うんだけどさ使い勝手の言い道具を作ってみたんだけどこれがもう燃費が悪くて悪くて。今回は君らの勝ちで良いよ、ストックの玩具もこれで使い切っちゃったからさぁぁ!!」
「この野郎……」
ぎりり、と口の端を釣り上げてキズナが怒りを露わにする。
「落ち着いてキズナ、これは単なる端末だよ……散々斬り付けて撃ったでしょ?」
「ずいぶん景気よくやってくれたねぇ。ちょうど晩御飯を食べていた所だから大変だったよ」
「……神経まで同期してたのかい? 理解に苦しむよその悪趣味」
「暇だもん僕、せめて臨場感だけは味わいたいだろぉ?」
「狂っちゃったんだね……可哀そうに……」
まあいいや、とエキドナは無造作にちょんぱの頭を握りつぶした。これ以上話していたくなかったし、情報が得られると思えなかったからだ。途端にちょんぱの身体は形を失い黒い塵となって風に吹かれた。
「何にせよこれで状況終了だよ。お疲れ様皆」
ふう、といつもの緩んだ表情に戻してエキドナがつぶやく。
測りかねる所は数多いがちょんぱ事件はいったんここでお開きだ。
しかし、狂気というのは際限が無い。
『本当、お疲れ様ぁ! じゃねぇ?』
それはエキドナの右手に握られた黒い角から響いた底抜けに明るい、それでいて相手をからかう純粋な悪意だった。
その日、ベルトニア共和国の議員会館は消えた。
見るも無残な女装メイドの青年が引きずられる。
引きずっているのは牡丹で……なぜ彼女かというと。
「ねえ、あんたって本当に人間? 姉貴寄りの何かっぽいんだけど」
ちょうど三階から二階への階段下隣にある部屋が女子更衣室の真下だったらしく、女子更衣室の床をぶち抜いて牡丹参戦。あっけにとられる変態メタルゾンビメイドちょんぱさん……長いので以後ちょんぱさんをタコ殴りにしたのだ。
しかも数回殴って効き目が薄い事を理解した彼女は鎧通しの要領で中身に攻撃を通していく。
「洞爺さんの方が非常識よ、壁を切り裂いて道を作るもの」
「牡丹、儂は必要じゃったからでお主の様にノリで生きとらんわい」
「それにしてもどんどん訳が分からない格好になってない? さっきのスプラッタじゃないから助かるけどさぁ」
「俺の出番はあまりなかったな……」
捕まえたら全員集合、その方針だったので今は四階にいるエキドナの所へ向かっていた。
上りの階段の際、ごつごつとちょんぱさんの頭がぶつかるが些細な問題である。
「お? 皆お疲れ様。首尾よく捕まえたようでおねーさんは安心だよ」
狩場の中心で何かを並べていたエキドナが振り返り、キズナたちを出迎えた。
「姉貴、調べ物は済んだのか?」
「もちろん、こいつの復活メカニズムも含めてまるっと丸裸だぜぃ!」
イェイ! とサムズアップするエキドナはそのままぼろく……ちょんぱさんを牡丹から受け取る。
相当ひどく痛めつけられたのか、うう……と呻くだけのちょんぱさん。
「こ奴どうなっとるんじゃ? 牡丹が殴り始めてから急に弱りおった」
それまで散々洞爺とキズナが刀で斬り付けたのにぴんぴんしていたのだが、明らかに様子がおかしかった。
「そりゃあ接続が切れたからね。ねえちょんぱ君。君の本体これだね?」
ぽんぽんとエキドナが右手に持った真っ黒な石をお手玉する。
「ぐ、お……返せ。まがい、もの」
「嫌だよ。こんなおっかないの良く使おうと思ったね」
「く、そ……」
「まさか外部演算可能な量子コンピューター。それも僕ですら解析しきれない原理不明の駆動形式……しかも分割すると同期して原子配列も自由に組み換えが可能……まるでウイルス兵器だ」
今はエキドナが全力でジャミングを仕掛けて動機を邪魔している。それだけでも十分な効果があった。
「洞爺、牡丹、夜音、クワイエット……今から言う事は僕の個人的な信条だから気にしないでおくれ」
そして、それを行う事で一つエキドナは決定的な事実を突き止める。
「機械の身を持つ僕は役に立ちたかったんだよ。人を殺したくない、誰かのためにその身を盾にすることに誇りを持っている。だから、こんな壊す事しかできない出来損ないのゴミは大嫌いなのさ……なんで人身売買なんて目立つ真似をしたのか理解できたよ。君、買った人を材料にしたね?」
洞爺とクワイエットがその意味に気づく。
ともすれば……。
「まさか、儂らが斬ったことで……」
「ああ、そうだよ洞爺……転移じゃなくて相転移してたんだよ。攻撃されてぼろぼろになるたびに新品の身体に入れ替えてたんだ」
「外道な……」
「何人分か知らないけど人体ってのは生体パーツとして使うなら相応の処理する設備が必要……だったんだけど。この黒い石で簡単にできちゃうだろうね。大したもんだよまったく……僕としては君をここで抹消するのに異論はないんだけどさぁ」
本音を言えば一刻も早くこの訳の分からないコンピューターをエキドナは処分したい。
しかし、その前に確認することがあった。
「君の本体はどこにある?」
左手に掴んだちょんぱを軽々と自分の目線高さまで持ち上げるエキドナ。
「聞いているんだろう? この分身越しにさ……臆病者」
「うひっ……ばれちゃったかぁ。賢いね君……エキドナちゃんだっけ? 大体君の言うとおりかなぁ、一つ付け加えるなら。そこのおじいさんに首を斬られて回復が大変でねぇ……多めに渡したその黒い石、角って言うんだけどさ使い勝手の言い道具を作ってみたんだけどこれがもう燃費が悪くて悪くて。今回は君らの勝ちで良いよ、ストックの玩具もこれで使い切っちゃったからさぁぁ!!」
「この野郎……」
ぎりり、と口の端を釣り上げてキズナが怒りを露わにする。
「落ち着いてキズナ、これは単なる端末だよ……散々斬り付けて撃ったでしょ?」
「ずいぶん景気よくやってくれたねぇ。ちょうど晩御飯を食べていた所だから大変だったよ」
「……神経まで同期してたのかい? 理解に苦しむよその悪趣味」
「暇だもん僕、せめて臨場感だけは味わいたいだろぉ?」
「狂っちゃったんだね……可哀そうに……」
まあいいや、とエキドナは無造作にちょんぱの頭を握りつぶした。これ以上話していたくなかったし、情報が得られると思えなかったからだ。途端にちょんぱの身体は形を失い黒い塵となって風に吹かれた。
「何にせよこれで状況終了だよ。お疲れ様皆」
ふう、といつもの緩んだ表情に戻してエキドナがつぶやく。
測りかねる所は数多いがちょんぱ事件はいったんここでお開きだ。
しかし、狂気というのは際限が無い。
『本当、お疲れ様ぁ! じゃねぇ?』
それはエキドナの右手に握られた黒い角から響いた底抜けに明るい、それでいて相手をからかう純粋な悪意だった。
その日、ベルトニア共和国の議員会館は消えた。
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