定年退職後の生活は異世界でした

青山ねこまる

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村づくり 初級編

山田雄介 西へ! 3

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 雄介達が出発してから五時間程経ったか、ラナやエリサは大丈夫だろうかと、私はお昼を食べながら物思いにふけっていた。

 「洋一お父さんどうしたの?大丈夫?」

 ルルが心配そうに私の顔を覗き込む。

 「ん?あぁ・・・大丈夫だよ」

 私は努めて明るく返事をしたが、ルルは下を向いたまま「本当?」と聞いてくる。

 「あぁ!本当だとも!」

 そんなにも不安そうな顔をしていたかと、反省しながら両手を広げて元気をアピールした。

 「う、うん。元気なら良いんだ、元気なら」

 ルルは下に視線を向けたまま「本当に大丈夫なのかな」とブツブツ言っている。

 ん?ルルの視線が下を向いたままなのが気になる。

 私もルルに釣られて下を見てみると、普段の原型を留めていないスラ吉が私の足にぬちゃぁと引っ付いていた。

 「・・・あぁ、コレね、最近寝てる時は何時もこんな感じなんだよ」

 私は足をルルの方へ持ち上げながら説明する。

 「うぇぇ、お父さん気持ち悪いから近付けないで!」

 持ち上げた足からズル、ぬちゃぁと地面に落ちるスラ吉を見て、ルルがうぇとした顔をして子供達の方へ行ってしまった。

 むう。これこそ私が知ってるスライムなんだがなぁ。

 私は、ぬたぁとしているスラ吉を持ち上げて、指の間からデロンと落ちて行くスラ吉を眺めていた。




 その頃、雄介達は魔物除けの結界の中で二組のテント設営を終え、空いた時間で焚き火用の枝などを拾ったり、野イチゴを採取したりとマッタリした時間を過ごしていた。

 「ラルフよう」

 「あぁん」

 「ここって深淵の森の結構深い所だよなぁ」

 「そうだな、ベテランクラスが気合を入れて潜る深さだな」

 「そうだよなぁ・・・」

 マシューとラルフは折り畳みチェアーに腰掛け、ゆったりとコーヒーを啜っており、その横では悠介達がタブレットを使って優希達と連絡していた。

 「魔法の鞄を持ってる俺達は森の奥でも結構余裕を持ってキャンプ出来たけどよ、ここまで快適じゃなかったよな」

 マシューがコーヒーを美味そうに啜っている姿を横目に、タブレットに向かってキャッキャ言っているエルフ達を見てラルフは眉を寄せる。

 「確かに。この椅子とコーヒーはヤベエな、思いっきり寛いちまう」

 「だよなぁ・・・どうする?椅子を使うの止めるか?」

 全く椅子から立ち上がる気配もないマシューが提案する。

 「とか言いながらお前、動く気ねぇだろ」

 「まぁな」

 悪びれる様子も無いマシューにラルフは肩を窄め「周辺に魔物の気配もねぇし、まぁ良いか」と言ってコーヒーカップに口を付けた。




 それから二時間ほどマッタリした時間を過ごしたマシュー達は、日が翳り出した頃合に焚き火に火を着けて、本格的な野営の準備を始めた。

 「ラルフさん、夕飯どうします?」

 雄介がマシューから出してもらった食料バックから、レトルトパックのカレーとご飯を出しながらラルフに問いかけた。

 「そうだなぁ、本来なら調理したりするから早めに始めるんだが、ソレってお湯に着ければ直ぐに出来るんだろ?」

 「えっと、ご飯が十五分ぐらいだから、そうですね三十分もあれば食べられます」

 パックご飯の説明書きを読みながらラルフに説明すると、ラルフは顔を顰めて「便利すぎて予定が組みにくいなぁ」とひとり愚痴る。

 「そんじゃ、日が沈み切ったら飯にして、それから持ち回りで見張りだな」
 
 ラルフの指示に雄介は頷き、人数分のレトルトパックを取り出し始めた。





 「みんなー!ご飯の準備は出来た?それじゃ!いただきます!」

 「「「いただきまーす!」」」

 アンナの何時もの号令で夕飯が始まる。

 今日のメニューは雄介達と同じカレーだ。

 どうも昼間に雄介達との連絡でカレーの話になり、全員カレー脳になったらしい。

 私はカレーを食べながら、隣にいるイーグルに話しかける。

 「なぁ、イーグル君。実は今日、雄介達がエルフの村へ向かって旅に出たんだけど、イーグル君は空の上から雄介達を見つけられるかな?」

 「うん?雄介達なら見かけたぞ?」

 イーグルは器用にスプーンを使ってカレーを食べながら、昼ごろにテントを張っている雄介達を見かけたと教えてくれた。

 「ね!イーグル君、雄介達を見たっていうのはホント!?」

 同じテーブルで食事をしていた優希とミリーがイーグルに問い掛けると「ホントだぞ、私は目が良いから高く飛んでも見えるのだ」と胸を張って答えている。

 おぉ!流石は猛禽類だ。

 私が感心して話を聴いていると、優希がイーグルに向かってお願いを始めた。

 「イーグル君にお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」

 「お願い?なんだ?」

 「えぇ、実はね・・・」

 ほうほうと頷いている私を横目に、優希とミリーはイーグルへ依頼を説明し、イーグルも「そんな簡単な事でご飯が食べれるなら毎日でも良いぞ!」と喜んで引き受けてくれた。

 私も優希達の提案に賛成なので、イーグル君が引き受けてくれて本当に有難いな。

 うんうん。これで雄介達も快適に旅が出来るだろう。
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