恋愛経験ゼロの恋愛マスター

あさ

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第1章

相談

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 「私………先輩が好きなんです!!」
 瞳を潤わせて顔を上気させ懸命に告白する可愛い後輩。
 華奢な体に、綺麗で長いストレートな髪、凛とした顔に見えるのは切れ長な目のせいだろうか───────
 













 今日もまた一人、少女がこの恋愛相談所にやって来た。
 今日の悩める少女は俺の一学年下、つまり高校一年生の清水 小鳥(しみず ことり)ちゃんです!
 「私、成瀬先輩が好きなんです!!」
 成瀬先輩とは三年生の先輩でサッカー部のキャプテンをしている。イケメンで人当たりも良く、先生からの評判も良い。
 と、まあここまで聞いてわかる通りこの成瀬先輩かなりモテやがります。
 今回結構難しいそうだな……
 「あの、清水さん、いつから成瀬先輩の事好きになったの?」
 まずは当たり障りのないことから聞いていく。
 多分一目惚れです!と答えるだろう。
 「入学式で一目惚れしました!」
 ね。知ってた。
 「じゃあさ、成瀬先輩の誕生日って知ってる?」
 「えっ、えーと……」
 彼女の表情が曇ったのを確認して
 「知らないだね?」
 「はい……」
 「じゃあ、まずはそこからだね。頑張れ!」
 「はい!ありがとうございます!また来てもいいですか?」
 「いつでもおいで。」
 じゃあまた来ますと頭を下げて恋愛相談所を出ていく清水さん。
 ちょっと時間が経ってからまたドアがノックされる音が聞こえる。
 「どうぞ。」
 俺がそう言うと、ゆっくりと扉が開き
 「私……………先輩が好きなんです!!」
 顔を赤らめ上目遣いで告白するのは……
 「あの、からかうのやめてもらえますか。川村先生。」
 川村先生は俺らのクラスの担任で古典を教えている。
 まだ二十代前半でとても綺麗な人である。
 男女問わず人気があり、特に恋人のいない男子には心の支えとなっていることだろう。
 「やめられないわねーーだって登君の反応可愛いんだもの。」
 「ちょっ、だからそういうのホント止めてくださいって」
 「もしかして照れちゃった?」
 そう言いながら徐々に俺に近づいてくる川村先生。
 川村先生が近づくたびに、柑橘系の匂いが鼻腔をくすぐり思わず
 「なんなんですか!ほんと!」
 と大きな声を出してしまった。
 先生はちょっとたじろぎ、立ち止まって
 「もう~冗談だよ~ホント登君は可愛いな~」
 そう言いながら俺の頭をくしゃくしゃとなで回す。
 全然反省してないなこの人。
 「でさ。登君。」
 急に真面目なトーンになる。
 「はい?」
 「毎日、こういう相談受けるの大変じゃない?」
 「そうですね。精神的苦痛で倒れそうです。」
 「そうだよね、私のせいでごめんね。」
 珍しくしおらしくなる。
 確かにこの恋愛相談所開設は川村先生が一枚噛んでるのだが……
 「別に先生のせいってわけじゃ……自分で決めたことですし……」 
 しゃべった後何となく決まりが悪くなり、立ち上がり窓から首を出して野球部の練習してる方向に目をやる。
 「ありがとう。登君…………やっぱり好きだな」
 後半、野球部員達による掛け声でよく聞こえず
 「何て言いました?」
 「ううん。何でも。」
 質問には答えず、少し悲しげに微笑む彼女はとても儚げでいつもより魅力的に感じた。
 「そろそろ暗くなるし帰ろっか!」
 「はい。」
 明日も相談を受けなきゃいけないと思うとうんざりするし先生との絡みもうんざりだがどこか悪い気がしないのは日の落ちる寸前の夕日のせいなのか、はたまた先生の悲しいげな微笑みのせいなのかはわからない。
 

 ただ一つ言えることは─────────────




                   つづく 



















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