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第3章
初デートはあの場所で
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川村先生との待ち合わせは俺達が初めて出会ったあの公園だった。
俺は待ち合わせ時間より早く着くように家を出た。
川村先生とデートという、にわかには信じがたい事実。
明日、天変地異が起こるのではないかと思わせるほどのイレギュラー。
早く会いたい。
そう思うたびに俺の歩くスピードは速くなった。
待ち合わせ場所には一時間前に着いた。
しかしそこにいたのは
「もう~遅いですよ~先輩!」
佐伯環奈だった。
「なぜそなたがおるのじゃ?」
「先輩…なんかしゃべり方変なってますよ?」
「はぁ~」
「なんなんですか!?そのため息は!」
「それよりも先生はまだ来てないの?」
「あっ、そういえばまだ来てないですね。というか待ち合わせ時間の一時間前なんで来てないほうが普通かと。」
「それもそうだな。」
後一時間待つのに立っているのは疲れると思い、近くのベンチに腰掛けようとすると環奈が俺の袖を引っ張り上目遣いで
「先輩……私になにか言うことないですか?」
少しだけ蒸気させた頬のせいで妙に色っぽい。
「んー。特にはないかな!」
ドキリとしてしまった心を押し殺すように爽やかにそう言うと
「なんでそんな元気よく言うんですか!もういいです!」
頬を膨らませ怒ってしまった。
「冗談だよ、冗談。」
「先輩!」
環奈は期待したような目で俺を見つめる。
「服とっても似合ってて可愛いよ!」
昨日のニュースでデートの時は服を誉めるのが良いと言っていた。
ちなみに髪型などを誉めるのはNGらしい。
「それだけですか?」
まだ、少し怒っているようだ。
「えーと、あっ!靴とか可愛い!」
「後は?」
詰んだ。
こうなったらやけくそだ。
「もうね、髪型も似合っててすっごい可愛いし。いっつも可愛いんだけど今日はものすっごい可愛い。モデルさんかと思ったわービックリしたー。後ね………」
「……もう……わかりましたって……」
俺の言葉を、遮って顔を赤らめながらうつむく。
「先輩、そんな風に思っててくれたんですね。」
「ああ、うん。」
どうやら環奈は機嫌を直してくれたらしい。
そんなやり取りをしていると
ぐぬぬぬぬぬ
どこからか唸り声が聞こえてきたので
聞こえてきたほうに目をやると
「もう!登君と環奈さん仲良すぎ!」
そこには、もつ五月で桜は散りはじめいるはずなのに桜が満開に咲き誇っている錯覚に陥ってしまうほどの美しい女性が立っていた。
「………」
俺が言葉を発せずにいると
「やっぱりそうなんだ……」
口をとがらせ、いじけたようにそう言った。
「綺麗だ。」
「えっ?」
俺の主語のない言葉に川村先生は疑問を投げ掛ける。
「川村先生、とても綺麗です!」
今度は主語をつけ、情緒を込めて言った。
心からの言葉。
川村先生に届きますようにと願いを込めて。
「あ、ありがとう。登君。」
顔を赤くして体をもじもじさせる川村先生。
そんな川村先生を朝日が照らし
俺に笑顔を向けてくれた。
その笑顔は後ろの桜と相まって、俺をひどく惹きつけさせるのだった。
つづく
俺は待ち合わせ時間より早く着くように家を出た。
川村先生とデートという、にわかには信じがたい事実。
明日、天変地異が起こるのではないかと思わせるほどのイレギュラー。
早く会いたい。
そう思うたびに俺の歩くスピードは速くなった。
待ち合わせ場所には一時間前に着いた。
しかしそこにいたのは
「もう~遅いですよ~先輩!」
佐伯環奈だった。
「なぜそなたがおるのじゃ?」
「先輩…なんかしゃべり方変なってますよ?」
「はぁ~」
「なんなんですか!?そのため息は!」
「それよりも先生はまだ来てないの?」
「あっ、そういえばまだ来てないですね。というか待ち合わせ時間の一時間前なんで来てないほうが普通かと。」
「それもそうだな。」
後一時間待つのに立っているのは疲れると思い、近くのベンチに腰掛けようとすると環奈が俺の袖を引っ張り上目遣いで
「先輩……私になにか言うことないですか?」
少しだけ蒸気させた頬のせいで妙に色っぽい。
「んー。特にはないかな!」
ドキリとしてしまった心を押し殺すように爽やかにそう言うと
「なんでそんな元気よく言うんですか!もういいです!」
頬を膨らませ怒ってしまった。
「冗談だよ、冗談。」
「先輩!」
環奈は期待したような目で俺を見つめる。
「服とっても似合ってて可愛いよ!」
昨日のニュースでデートの時は服を誉めるのが良いと言っていた。
ちなみに髪型などを誉めるのはNGらしい。
「それだけですか?」
まだ、少し怒っているようだ。
「えーと、あっ!靴とか可愛い!」
「後は?」
詰んだ。
こうなったらやけくそだ。
「もうね、髪型も似合っててすっごい可愛いし。いっつも可愛いんだけど今日はものすっごい可愛い。モデルさんかと思ったわービックリしたー。後ね………」
「……もう……わかりましたって……」
俺の言葉を、遮って顔を赤らめながらうつむく。
「先輩、そんな風に思っててくれたんですね。」
「ああ、うん。」
どうやら環奈は機嫌を直してくれたらしい。
そんなやり取りをしていると
ぐぬぬぬぬぬ
どこからか唸り声が聞こえてきたので
聞こえてきたほうに目をやると
「もう!登君と環奈さん仲良すぎ!」
そこには、もつ五月で桜は散りはじめいるはずなのに桜が満開に咲き誇っている錯覚に陥ってしまうほどの美しい女性が立っていた。
「………」
俺が言葉を発せずにいると
「やっぱりそうなんだ……」
口をとがらせ、いじけたようにそう言った。
「綺麗だ。」
「えっ?」
俺の主語のない言葉に川村先生は疑問を投げ掛ける。
「川村先生、とても綺麗です!」
今度は主語をつけ、情緒を込めて言った。
心からの言葉。
川村先生に届きますようにと願いを込めて。
「あ、ありがとう。登君。」
顔を赤くして体をもじもじさせる川村先生。
そんな川村先生を朝日が照らし
俺に笑顔を向けてくれた。
その笑顔は後ろの桜と相まって、俺をひどく惹きつけさせるのだった。
つづく
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