異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒

文字の大きさ
12 / 171
幕開け

第12話

しおりを挟む

「ハイロさんって実は、きぐるみだったりして……」

 起き抜けに亮介が発した科白せりふに、枕もとで丸くなっていたキールが、「ブハッ」と吹いた。

「きぐるみって、あれだろ。なかに人間ひとが入って動くやつ」 

「そう。よく知ってるね」

 キールは物知りで、会話がスムーズに進行する。

「にしても、なんでいきなり、ハイロのダンナが人間だと思ったんだ? 大熊の生まれはこの森だし、半獣属でまちがいないぞ」

「……そっか。やっぱり、みんなのほうが現実なんだ」
 
 亮介が「ふわぁ」と欠伸あくびをもらすと、キールは「寝ボケてるのか?」と呆れ、会話を終了した。

 
 昨晩、おかしな夢を見た亮介は、高校生活に未練があるのかもしれない。

(……僕も、鳥みたいに空を飛べたらいいなって、ときどき思ったりするけれど、半獣属のみんなも、人間にあこがれたりするのかなぁ?)

 ニッシュの掛け布団をたたみ、ベッドからおりた亮介は、編みカゴの学ランへ目をめた。夢だとわかっていても、弁当の件は気になった。

(食べずに捨てただなんて、つくったひとが知ったら傷つくよね……。僕は、なんてひどいことを……)

 おいしく食べてこそ、料理をした甲斐かいがある。みんなに止められたが、せめてひと口でも食べておけばよかったと後悔した亮介は、しばらくぼんやりした。それから、近くにミュオンとキールがいないすきに着がえをすませた。


(パンツがほしい……)

 
 股のあいだがスースーする亮介は、貴重なニッシュの樹皮を伝統下着ふんどしとして使うべきか、真剣に悩んだ。ふと、となりの部屋から甘いにおいがしてくる。

「キール、なにしてるの?」

 テーブルに大きな葉っぱをひろげ、いくつかの果物を木の棒でつぶして混ぜるキールは、「おいらの特製だ。こうすると、うまくなるンだぜ」という。しかし、赤いものがぐちゃぐちゃしているだけで、とてもおいしそうには見えない。

(スムージーっぽいけど、色がイマイチで、食欲わかないなぁ……)

 構造物による移動制限を受けないミュオンは、音もなく、スゥッと壁をとおりぬけてきた。庭先で日光浴をしていたようだ。キールが混ぜるどろどろの赤い液体を見るなり、顔をしかめた。

『……今から朝ご飯ですか?』

「うん。おはよう、ミュオンさん」

『おはようございます』

 食事をとる必要のないミュオンさえ、キールの鼻歌にため息を吐く。亮介が苦笑すると、キールは「見てろよ」といって、ガラス瓶のコルク栓を抜いた。

「これを使うぜ!」

 赤く液状化した果物に、ドロッとしたはちみつを加えると、果汁の色素が変化した。赤から淡い水色になり、部分的にピンクやムラサキにもなる。カラフルなゼリーのような見た目に、亮介は「わっ、きれい」と、思わず声がでた。

(理科の実験みたいだ!)

「よし、完成。いい感じにできたぜ」

 コップに半分わけてもらった亮介は、早速「いただきます」といって、ひと口飲む。冷えていれば、さらにおいしく感じるミックスジュースだが、それぞれの風味がさわやかで、はちみつ効果でラズベリーの酸味がまろやかになっている。

 亮介はゴクゴクと一気に飲み、「おかわり!」と、勢いで言いそうになった。かぎりある食糧を、ほしいままに消費するわけにはいかない。


「あっ、もうじきハイロさんがくる時間だ」

 
 ガラス窓をすり抜けて差しこむ朝陽は、まぶしくて、あたたかい。亮介は庭にでて、ハイロの到着を待った。

 いつもそばにいるミュオンやキールと異なり、ハイロの私生活は謎に包まれている。丸太小屋の持ち主(以前の住人)や、ハイロ自身の日常ついて、亮介は質問したいことがたくさんあった。


★つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

処理中です...