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スーツの下の化けの皮/二幕
第76話
しおりを挟む悦がる姫季の表情は、ひどく乱れていたが、幸田は腰を密着させたまま、「泣かないでくれ」と、つぶやいた。
「うっ、ぅえっ、ごめ……幸田さ……ん……、勝手に流れてきちゃうから、き、気にしないで……」
「そうもいかないだろう。涙の理由を教えてくれないか」
「……ち、ちょっ待って、うあっ、ごめん!!」
「ん? おっと……!」
二度目の射精をした姫季は、「うあぁっ」といって唇をふるわせた。幸田は、せっかくの状況を有効活用し、やや強めに腰を振った。姫季の体液が下半身にまとわりつき、潤滑剤の役割を果たすため、ヌチュッ、パチュンッと卑猥な音を立てる。
「んっ、すご……いっ、幸田さん、気持ちいい……っ」
「それはよかった」
「ひっ、ぁんっ!」
姫季は涙と汗を手のひらで拭うと、幸田の首筋に抱きついた。肉体の内側に感じる熱い温もりに恍惚の表情を浮かべ、愛し合う時間が長く続けばいいのにと思った。やがて、深部の空洞に幸田の欲望がたどり着くと、姫季は血液が逆流したかのような錯覚に捉われた。
「腹底がモヤモヤする……。これでやっと、幸田さんを手に入れた気分……」
「そんなに俺の精子が欲しかったのか?」
「はっきり訊かないでよ……。エロい幸田さんも好きだけど……」
「どっちがエロいんだかな」
体内領域の圧迫から解放された姫季は、枕で顔を隠した。その仕草が可愛く目に映る幸田は、汗ばんだ肌へ指で触れ、胸の突起にキスをした。
「……んっ、もう次?」
「次とは?」
「まさか1回で終わり?」
「連続絶頂をしてほしいのか」
数ヵ月前、ネットで下調べした専門用語が口をつく。幸田は姫季の鎖骨を指で撫でると「やってみるかい?」と、わざとらしく笑みを浮かべた。その途端、姫季の膝がガクガクふるえだす。
「冗談だよ。いったん休もう」
ベッドサイドのソファへ移動した幸田は、バスローブを着ると、飲みかけの缶ビールを空にした。専用の冷蔵庫からスポーツドリンクを購入して取りだすと、横向きになって幸田の動きを見つめていた姫季に差しだして云う。
「今のうちに水分補給をしておくといい。少し落ちついたら再開しよう」
積極性が増してゆくのは、姫季だけではないようだ。
✰つづく
■用語⑦/連続絶頂……性的快感が最高潮に高まった状態が連続して起きていること。「絶頂」とは、性的快感が極まる瞬間の意味。
✰ ✰ ✰ ✰ ✰ ✰ ✰
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