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第一章 亡霊、大地に立つ

第六話 一点突破 #1

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 雷鳴が轟いた。

 まるで、それが合図であったかの様に、ゴブリン達は一斉に動き始める。

 窓の外、降り続く雨音と、うねる様に後を引くゴロゴロという雷の残響。

 そこに、すり足でにじり寄るゴブリン達の足音が混じる。

 次第に近づいてくる足音。

 ジリジリと狭まっていく包囲網。

 言い様も無い圧迫感が周囲に充満して、表情を強張こわばらせたミーシャが、ごくりと喉を鳴らした。

 さして時間は残されていない。

 何か切っ掛けがあれば……それこそ物音の一つも立てれば、それを契機に、ゴブリン達は一気に小屋の中へと踏み込んでくることだろう。

 無論、数が多いと言ってもゴブリンはゴブリン。

 レイには、このまま迎え撃っても、相手を全滅させる自信はある。

 だがそれも、自分一人ならば、という前提があってのこと。

 これだけ数が多いと、ミーシャを守り切るには手が足りない。

 窓の外を眺めていたレイは、床に座りこんだままのミーシャを振り返って言った。

 ――脱出する。

「折角、服も乾いたのにぃ……」

 ミーシャが唇を尖らせるも、事ここに至っては、わがままを聞いてやれる余裕はない。

 このまま彼女を小屋に残して、レイだけが討って出れば、どうにか出来ないかとも考えたが、さすがに全方位から一斉に襲い掛かってくる敵を、一匹も漏らさずに倒すというのは無理がある。

 ――一点突破で包囲網を破る。私の背中にくっついて離れないようにしてくれ。

 レイはナタを両手に構えると、ミーシャの返事も待たずに、そのまま扉の方へと歩み寄る。

「ちょ、ちょっと待ってよぉ! もう!」

 ミーシャは慌てて背嚢リュックにぐちゃぐちゃとローブを突っ込むと、締まらない留め金と格闘し、慌ててそれを背負った。

 ――覚悟はいいか?

 背後を振り返るレイに、ミーシャは小さく肩をすくめて見せた。

「ダメだって言っても、無駄なんでしょ?」

 レイは小さく鼻を鳴らすと、正面の扉を見据える。

 ――いくぞ!
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