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第一章 亡霊、大地に立つ
第八話 VSデスワーム #3
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「うぇええええん、もういやだぁあああ……」
――落ち着け。
「いやぁああだあああ、もうお家にかえるううう!」
顔の各パーツから分泌される液体で、顔面をグズグズにしながらジタバタするミーシャ。
それを呆れ顔で眺めて、レイは諭すような口調で言った。
――聞いてくれ。次に攻撃を躱したら、そこで手を離すから、キミは岩陰にでも隠れて、ジッとしているんだ。
「え、な、なに、いや、私、見捨てられちゃうの!?」
――そうじゃない。あいつは恐らく音で獲物の位置を探り当てている。私が大きな音を立てて、アイツを引き付ける。
「ひ、引き付けてどうするの?」
――仕留める。
一瞬ぽかんと口を開けた後、ミーシャはどこか怒った様な口調で捲し立てる。
「ムリ! ムリよそんなの! 死んじゃう!」
――このままでは、どのみち二人そろって、アイツの餌になる。
「だからって、アンタそんな無茶く……」
――来るぞ!
レイはミーシャの言葉を遮ると、大地を蹴って飛ぶ。
途端に中空から落下する様に襲い掛かってきたデスワームが、二人が直前までいた辺りの岩肌を穿って、石礫が飛び散る。
「えっ! えっ! えっ! きゃあああああ!」
着地と同時に、レイはミーシャを脇へと放り投げると、
――化け物! こっちだ!
両手に鉈を構えて、激しく打ち鳴らした。
カン! カン! カン!
雨音を切り裂いて、硬質な金属音が響き渡る。
レイの推測通り、デスワームの反応は劇的だった。
勢いよく鎌首を擡げると、デスワームは真っ直ぐにレイを追い始める。
凶悪な牙を持つ咢を一杯に開いて、デスワームの先端が背後から迫ってくる。
だが、レイにしてみれば、その動きは単調過ぎた。
レイは宙空から、しなりながら落ちてくるデスワームの先端を、最小限のステップで躱すと、
「ぎゃああああああああ!」
獣そのものの奇声を上げて、風切り音を立てながら通り過ぎていく肉色の筒、その襞の間に鉈を叩きつける。
深々と食い込む刃。
柄を握ったまま引き摺られたレイはタタタと掛けるも、四歩目を踏む前に、足が地面から離れた。
螺旋を描く様に上昇していくデスワーム。
恐らくレイに喰いつこうとしているのだろうが、彼のしがみついている場所は、先端から近すぎて、口が届かないのだ。
言うなれば、自分の尾を追いかけてグルグル回る犬のようなもの。
凄まじい遠心力の中で、レイはもう一本の鉈を叩きつけ、デスワームの身体をよじ登る。
背面まで登り切ると、フウと大きく息を吐き出した。
既に数十メートル上空。
ぐるぐると回る景色。
顔を打つ雨は更に激しく、駆け抜ける風は冷たい。
雲間を走る稲光が、螺旋状に上昇するデスワームの禍禍しい影を地面に描き出し、この化け物の動きに合わせて山が震えた。
下の方へと目を向けると、金色の点が見えた。
金髪。岩陰に隠れて目尻が裂けそうな程に目を見開き、両手で口元を押さえたまま尻餅をつくミーシャの姿。
――腰が抜けてるみたいだな。
レイは胸の内でそう独りごちて、苦笑した。
そして、
――さて、斬り落とすとするか。
どうすれば倒せるかなど、考えるまでもない。
身体を手に入れて以降、散々ゴブリンどもの頭をカチ割り、首を刎ねてきたのだ。
相手が大きいか小さいかだけの違いでしかない。
とはいえ、見れば見る程にデスワームに首など見当たらない。
――まあ、適当に真っ二つにしてやれば、流石に死ぬだろう。
最後は驚くほど大雑把なことを考えて独り頷くと、レイは突き刺さったままの鉈の柄を握り直し、深く腰を落とす。
気を送り込みながら力を込めて、鉈を更に深く押し込むと、デスワームの身体が嘶く様に大きく跳ねた。
――いくぞ。
――落ち着け。
「いやぁああだあああ、もうお家にかえるううう!」
顔の各パーツから分泌される液体で、顔面をグズグズにしながらジタバタするミーシャ。
それを呆れ顔で眺めて、レイは諭すような口調で言った。
――聞いてくれ。次に攻撃を躱したら、そこで手を離すから、キミは岩陰にでも隠れて、ジッとしているんだ。
「え、な、なに、いや、私、見捨てられちゃうの!?」
――そうじゃない。あいつは恐らく音で獲物の位置を探り当てている。私が大きな音を立てて、アイツを引き付ける。
「ひ、引き付けてどうするの?」
――仕留める。
一瞬ぽかんと口を開けた後、ミーシャはどこか怒った様な口調で捲し立てる。
「ムリ! ムリよそんなの! 死んじゃう!」
――このままでは、どのみち二人そろって、アイツの餌になる。
「だからって、アンタそんな無茶く……」
――来るぞ!
レイはミーシャの言葉を遮ると、大地を蹴って飛ぶ。
途端に中空から落下する様に襲い掛かってきたデスワームが、二人が直前までいた辺りの岩肌を穿って、石礫が飛び散る。
「えっ! えっ! えっ! きゃあああああ!」
着地と同時に、レイはミーシャを脇へと放り投げると、
――化け物! こっちだ!
両手に鉈を構えて、激しく打ち鳴らした。
カン! カン! カン!
雨音を切り裂いて、硬質な金属音が響き渡る。
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勢いよく鎌首を擡げると、デスワームは真っ直ぐにレイを追い始める。
凶悪な牙を持つ咢を一杯に開いて、デスワームの先端が背後から迫ってくる。
だが、レイにしてみれば、その動きは単調過ぎた。
レイは宙空から、しなりながら落ちてくるデスワームの先端を、最小限のステップで躱すと、
「ぎゃああああああああ!」
獣そのものの奇声を上げて、風切り音を立てながら通り過ぎていく肉色の筒、その襞の間に鉈を叩きつける。
深々と食い込む刃。
柄を握ったまま引き摺られたレイはタタタと掛けるも、四歩目を踏む前に、足が地面から離れた。
螺旋を描く様に上昇していくデスワーム。
恐らくレイに喰いつこうとしているのだろうが、彼のしがみついている場所は、先端から近すぎて、口が届かないのだ。
言うなれば、自分の尾を追いかけてグルグル回る犬のようなもの。
凄まじい遠心力の中で、レイはもう一本の鉈を叩きつけ、デスワームの身体をよじ登る。
背面まで登り切ると、フウと大きく息を吐き出した。
既に数十メートル上空。
ぐるぐると回る景色。
顔を打つ雨は更に激しく、駆け抜ける風は冷たい。
雲間を走る稲光が、螺旋状に上昇するデスワームの禍禍しい影を地面に描き出し、この化け物の動きに合わせて山が震えた。
下の方へと目を向けると、金色の点が見えた。
金髪。岩陰に隠れて目尻が裂けそうな程に目を見開き、両手で口元を押さえたまま尻餅をつくミーシャの姿。
――腰が抜けてるみたいだな。
レイは胸の内でそう独りごちて、苦笑した。
そして、
――さて、斬り落とすとするか。
どうすれば倒せるかなど、考えるまでもない。
身体を手に入れて以降、散々ゴブリンどもの頭をカチ割り、首を刎ねてきたのだ。
相手が大きいか小さいかだけの違いでしかない。
とはいえ、見れば見る程にデスワームに首など見当たらない。
――まあ、適当に真っ二つにしてやれば、流石に死ぬだろう。
最後は驚くほど大雑把なことを考えて独り頷くと、レイは突き刺さったままの鉈の柄を握り直し、深く腰を落とす。
気を送り込みながら力を込めて、鉈を更に深く押し込むと、デスワームの身体が嘶く様に大きく跳ねた。
――いくぞ。
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