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第一章 亡霊、大地に立つ
第九話 大切断 #3
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「ま……まあ、アンタ、魂はそこそこ綺麗だし、そうね。元の身体を取り戻したら、このミーシャちゃんが一回ぐらいデートしてあげてもいいわよ」
――お断りします。
「なんでよッ!?」
ミーシャが思わず声を荒げたその瞬間のことである。
唐突に、轟音が響き渡って、大地が大きく揺らいだ。
「えっ!? えっ!? な、何、何なのよ、もう!」
音のした方へと目を向けると、山頂の方角で盛大に土煙が上がっている。
山肌に、目に見える程の大きなひび割れが走り始め、巨大な何かが蠢いているのが見えた。
稲光に照らされて浮かび上がったのは、紛れもないデスワームの半身。斬り落としたのとは逆の端。
――確かに災害だな。
レイがそう呟くのと同時に、鎌首を持ち上げたまま動きを止めていたデスワームの後ろの半身が、斬り落とされた先端部分をその場に残して、後ろから引っ張られるように、シュルシュルと岸壁の内側へと引っ込んでいく。
六十メートルどころのサイズではない。
ここから山頂付近でのたうちまわっているデスワームの尾までは、どうみても数キロもの距離がある。
でっかいミミズ。
レイの言ったその表現は、決して誤りではない。
ヒメミミズなどの一部の例外を除いて、ミミズを二つに斬ると、先端部分側は生き残って再生し、後ろ半分は散々のたうちまわった末に死に至る。
山頂付近のデスワームの半身は、断末魔の苦しみに身を捩っているだけに過ぎない。
生き残るのは、先端の十メートル。
レイを上に乗せたままのデスワームの先端部分が、突然のたうつように蠕動し始めた。
「レイ!」
ミーシャが名を呼ぶと、レイはじっと彼女を見詰めた。
――逃げろ!
レイの言葉が伝わってくる。
だが、動けない。
怖くて動けない。
怯えきった表情で座り込んだままのミーシャの姿に、レイの表情に初めて焦りの色が浮かんだ。
レイは両手の鉈を振り上げると、まるで穴でも掘るかのように無茶苦茶にデスワームの背を斬りつけ始める。
苦しげに暴れるデスワームの先端十メートル。
黄色の体液が飛び散って、ゴブリンの凶悪な顔が黄色く染まっていく。
だが、デスワームに動きを止める気配はない。
――輪切りにしても死なないなら、ヒラキにするしかあるまい。
今度は、デスワームの背に鉈を突き刺すと、レイはそれを引き摺る様に、暴れるデスワームの上を走り始めた。
レイが走った後、デスワームの背に真っ直ぐに一本の線が描かれ、そこから黄色の体液が噴水のように噴き出していく。
だが、そうしている間にも山頂付近で暴れるデスワームの後ろ半身が山肌に体を打ちつける度に、激しい振動が巻き起こり、山そのものが崩れ落ちようとしていた。
そして、デスワームの後ろ半身がその両端を持ち上げてUの字を描くと、鞭打つように地面を叩く。
その瞬間、山肌が一気に崩れ落ち始めた。
地崩れ。
凄まじい轟音が、耳朶を埋め尽くす。
山肌が荒波のように滑落してくる。
それは、恐ろしい速さで二人の方へと迫ってきた。
絶望に顔を歪めたミーシャが目を向けたその時、デスワームの先端部分が大きく跳ねた。
思わず目を見開いたミーシャの蒼い瞳に、宙空へと跳ね飛ばされるレイの姿が映る。
「レェェェエエイッ!」
彼女の叫びに応えることもなく、レイは二度三度と地面を弾んで、そのまま動かなくなった。
もうお終いだ……。
激しく震える大地。
地精霊達の狂乱する声がする。
荒波の様に地崩れが、ミーシャの方へと迫ってくる。
項垂れる彼女の上へと、大きな影が落ちた。
ミーシャが涙に汚れた顔を上げると、そこには凶悪な牙がびっしりと生えた、巨大な口がイヤらしく粘液をしたたらせながら、彼女を見下ろしている。
その光景を最後に、
彼女の意識は闇の中へと落ちて行った。
――お断りします。
「なんでよッ!?」
ミーシャが思わず声を荒げたその瞬間のことである。
唐突に、轟音が響き渡って、大地が大きく揺らいだ。
「えっ!? えっ!? な、何、何なのよ、もう!」
音のした方へと目を向けると、山頂の方角で盛大に土煙が上がっている。
山肌に、目に見える程の大きなひび割れが走り始め、巨大な何かが蠢いているのが見えた。
稲光に照らされて浮かび上がったのは、紛れもないデスワームの半身。斬り落としたのとは逆の端。
――確かに災害だな。
レイがそう呟くのと同時に、鎌首を持ち上げたまま動きを止めていたデスワームの後ろの半身が、斬り落とされた先端部分をその場に残して、後ろから引っ張られるように、シュルシュルと岸壁の内側へと引っ込んでいく。
六十メートルどころのサイズではない。
ここから山頂付近でのたうちまわっているデスワームの尾までは、どうみても数キロもの距離がある。
でっかいミミズ。
レイの言ったその表現は、決して誤りではない。
ヒメミミズなどの一部の例外を除いて、ミミズを二つに斬ると、先端部分側は生き残って再生し、後ろ半分は散々のたうちまわった末に死に至る。
山頂付近のデスワームの半身は、断末魔の苦しみに身を捩っているだけに過ぎない。
生き残るのは、先端の十メートル。
レイを上に乗せたままのデスワームの先端部分が、突然のたうつように蠕動し始めた。
「レイ!」
ミーシャが名を呼ぶと、レイはじっと彼女を見詰めた。
――逃げろ!
レイの言葉が伝わってくる。
だが、動けない。
怖くて動けない。
怯えきった表情で座り込んだままのミーシャの姿に、レイの表情に初めて焦りの色が浮かんだ。
レイは両手の鉈を振り上げると、まるで穴でも掘るかのように無茶苦茶にデスワームの背を斬りつけ始める。
苦しげに暴れるデスワームの先端十メートル。
黄色の体液が飛び散って、ゴブリンの凶悪な顔が黄色く染まっていく。
だが、デスワームに動きを止める気配はない。
――輪切りにしても死なないなら、ヒラキにするしかあるまい。
今度は、デスワームの背に鉈を突き刺すと、レイはそれを引き摺る様に、暴れるデスワームの上を走り始めた。
レイが走った後、デスワームの背に真っ直ぐに一本の線が描かれ、そこから黄色の体液が噴水のように噴き出していく。
だが、そうしている間にも山頂付近で暴れるデスワームの後ろ半身が山肌に体を打ちつける度に、激しい振動が巻き起こり、山そのものが崩れ落ちようとしていた。
そして、デスワームの後ろ半身がその両端を持ち上げてUの字を描くと、鞭打つように地面を叩く。
その瞬間、山肌が一気に崩れ落ち始めた。
地崩れ。
凄まじい轟音が、耳朶を埋め尽くす。
山肌が荒波のように滑落してくる。
それは、恐ろしい速さで二人の方へと迫ってきた。
絶望に顔を歪めたミーシャが目を向けたその時、デスワームの先端部分が大きく跳ねた。
思わず目を見開いたミーシャの蒼い瞳に、宙空へと跳ね飛ばされるレイの姿が映る。
「レェェェエエイッ!」
彼女の叫びに応えることもなく、レイは二度三度と地面を弾んで、そのまま動かなくなった。
もうお終いだ……。
激しく震える大地。
地精霊達の狂乱する声がする。
荒波の様に地崩れが、ミーシャの方へと迫ってくる。
項垂れる彼女の上へと、大きな影が落ちた。
ミーシャが涙に汚れた顔を上げると、そこには凶悪な牙がびっしりと生えた、巨大な口がイヤらしく粘液をしたたらせながら、彼女を見下ろしている。
その光景を最後に、
彼女の意識は闇の中へと落ちて行った。
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