悪役令嬢になった私は運命に抗う

花咲千之汰

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クッキーのお皿を片手に戻って来た自室。

そこには何故か分からないもののこちらを見て固まるレイモンドと、そんなレイモンドに壁ドンなるものをされながらこちらを見て固まるアルバート王子がいた。

明らかに何処ぞのBLゲームのスチルで見たことあるような絵ですね、分かります。

私はこちらを見て「いや、あの、その…」やら「オリヴィア、勘違いしないでくれ…!」と叫ぶ両者を見ながら一度自室の扉を閉めると、私の周りをクルクルと飛び回りながら口々に『わぁ~お』やら『やばぁい~』やら言って笑う精霊達を見ながら頬に手を添えて苦笑を浮かべる。

同時に、勢いよくバンッという音を立てて開いた目の前の扉。

私は自身の目の前で前のめりになりながらも何やらこちらへ説明を始めたアルバート王子の言葉に耳を傾ける事にした。

「オリヴィア、勘違いしないでくれ!僕は普通に君が部屋に戻って来るのを大人しく本を読んで待ってたんだ。そしたらいきなりレイモンドが部屋に入って来て『一体本日はどのようなご要件で我が屋敷に来られたのでしょうか?もしや姉のあの件を嗅ぎ付けた訳では無いですよね?』と訳の分からない事を言って僕を壁際に追い詰めて来たんだ!!」

ガクガクと私の両肩を掴みながら必至にそう訴えてくるアルバート王子。

その背後でも「勘違いしないでくださいよ。僕は男色ではないですからね」と念を押すレイモンド。

けれどなんだかんだで見栄えの良かった先程の二人の壁ドンという名のやり取り。

私は内心で『イケメンは何をしてもイケメンだ』と思いながらも口では「安心して下さい。ただ少し困惑しただけです」と告げて目の前のアルバート王子肩をポンッと叩くとそのまま自室の部屋の中央にある机の上にクッキーを置く。

そうすれば精霊達がお皿の上にあるクッキーを一枚食べ始めたではないか。

私はアルバート王子とレイモンドの視界に段々と齧られていくクッキーが入らないようにしながら、二人に「一度何か話し合いがあるならば外へ行ってはどうか」と提案を一つ。

二人は一度顔を見合わせたかと思うとアルバート王子の「いいだろう」の言葉を聞いて部屋を出て行った。

そして、一人部屋に残された私といえば自席に座りながらボーッとクッキーを齧りながら精霊達と軽いお遊びをしながら二人が戻ってくるまで暇潰しを始めたのだった。
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