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112 ドッペル
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ドッペル族。肉体を骨格に至るまで自在に変化させることが出来る種族で、魔族の中でも特に数が少ないとされる種族。でもそれに反してその名はとっても有名。
ドッペルにあった者は死ぬ。
まだこの大陸に魔族が大勢いた時代、人と魔族は幾度となく刃を交えた。
数々の特殊能力と純粋な身体能力の高さから魔族の王として恐れられる吸血鬼。その吸血鬼に純粋な身体能力で迫る獣人。幻惑魔法と性魔法で異性を虜にするサキュバス。恐るべき力を持った種族は数あれど、その中でも当時の冒険者や王族を最も震え上がらせたのがドッペル族だという話。
「え? ガチで?」
授業にも登場した種族である少女(?)を指差し、アリリアナが惚けた顔をイリーナさんに向ける。
「失礼ですわね。私、つまらない嘘など付きませんわ」
イリーナさんは腰に手を当てると、心外だとばかりにため息をついた。
……やっぱり本物なんだ。
この間あったエルフのカイエルさんに続いて二人目の魔族。
い、色々話を聞いてみたいかも。普段の食生活とか。睡眠時間とか。質問してみても良いかな? でもいきなりそんなこと聞くのはちょっと失礼な気もするし……。
悩んでいると、アリリアナがドルドさん(少女)の頰を指でツンツンした。
「つまりドルドさんはこの姿が本来のものな感じなわけ?」
「本来とは何処を起点とした質問なのか。母の腹にいる胎児と生まれでた赤子は同一のものなのか? 遡ることで得れるものが果たして本来と呼ばれるべきものなのか。それはあるいは未完と呼ぶべきものではないのか」
「なるほど……私もミカンは好きな感じよ」
「いや、そのミカンじゃないよね。それとドッペル族は本来の姿というものを持たなくて、幼年期は両親どちらかの姿を真似て、ある程度成長すると気ままに周囲のものを真似始めるらしいよ」
「流石ドロシーさんですわね。その通りですわ。ただドルドは親を持たないはぐれドッペルで、少々変わった相手に育てられましたの。ですので基本的な人間形態である親の姿がそもそもありませんのよ」
ドッペル族というだけでもかなり珍しいのに、変わった相手に育てられたって……。どうしよう。正直すごく気になる。でも複雑な家庭の事情を軽々しく聞くのもどうかと思うし。
見ればアリリアナまでもが難しい顔をしていた。
「ドッペル族、ね。一つ聞いてもいい感じ?」
「もちろんですわ。どうぞ」
ドルドさんの代わりにイリーナさんが返事をするけど、その口調が少しだけ挑発的だ。もしかしたら私たちが魔族に対してどんな反応するのか見てるのかも。特にドッペル族は恐怖の対象だから。
そんなイリーナさんの様子を知ってか知らずか、アリリアナはキリッとした顔でドルドさんの小さな手を取った。そしてーー
「その姿の時はドルドさんじゃなくてドルドちゃんって呼んでいい?」
「ええっ!?」
聞きたいことってそれ? 真面目な顔して聞くことじゃないよね? ほら、イリーナさんも呆れて……あれ? 笑ってる?
「名前など所詮記号に過ぎない。だがしかし、それに意味があると思うならば好きに呼ぶといいだろう」
「アハハ。普段からそれくらい短く纏めてくれると助かる感じ。あっ、手繋ごう。手」
アリリアナが手を伸ばすと、ドルドさんは意外にもすんなりそれを掴んだ。
「どう、ドロシー。羨ましいでしょ」
人形のように可愛いらしい少女と手を繋いで、アリリアナはすっかりご満悦だ。
その笑顔があまりにも眩しくて、どうしてそんな風に人と距離を詰められるんだろうって不思議に思う。少なくとも私には絶対に無理だ。
ああ、本当にーー
「うん。羨ましいよ」
そしてこんな時、思い知らされちゃう。私はきっとアリリアナにとって特別じゃないんだろうなって。
一緒に生活してすごく仲良くなれたし、アリリアナのお陰で毎日がすごく楽しい。
私の親友。
メルルさんともセンカさんとも友達だけど親友と呼べるのは多分アリリアナだけ。でもアリリアナにとってはきっとそうじゃない。私は沢山いる友達の中の一人。別にそれが悪いわけじゃない。ただ、ちょっとだけーー
「ちょっとドロシー、何か急に暗くない? ドルドちゃん、悪いけどそこのお姉さんとも手を繋いであげてくれる?」
「ええっ!? ちょっとアリリアナ、ドルドさん、本当に子供じゃないんだよ?」
「大人と子供の境は何処にあるのか。いや、そもそもそのようなものが本当にあるのか。誰も彼も己の稚拙さからは逃れられぬ」
そう言ってドルドさんがこちらに手を伸ばす。
……本当、アリリアナには敵わないな。
「えっとそれじゃあ、し、失礼します」
私は小さな少女の手をそっと握った。
「あらあら。仲睦まじい光景ですわね」
そう言って微笑むイリーナさん。アリリアナをどこか眩しそうに見つめるその顔は、まるで私を真似たドッペルのようだと思った。
ドッペルにあった者は死ぬ。
まだこの大陸に魔族が大勢いた時代、人と魔族は幾度となく刃を交えた。
数々の特殊能力と純粋な身体能力の高さから魔族の王として恐れられる吸血鬼。その吸血鬼に純粋な身体能力で迫る獣人。幻惑魔法と性魔法で異性を虜にするサキュバス。恐るべき力を持った種族は数あれど、その中でも当時の冒険者や王族を最も震え上がらせたのがドッペル族だという話。
「え? ガチで?」
授業にも登場した種族である少女(?)を指差し、アリリアナが惚けた顔をイリーナさんに向ける。
「失礼ですわね。私、つまらない嘘など付きませんわ」
イリーナさんは腰に手を当てると、心外だとばかりにため息をついた。
……やっぱり本物なんだ。
この間あったエルフのカイエルさんに続いて二人目の魔族。
い、色々話を聞いてみたいかも。普段の食生活とか。睡眠時間とか。質問してみても良いかな? でもいきなりそんなこと聞くのはちょっと失礼な気もするし……。
悩んでいると、アリリアナがドルドさん(少女)の頰を指でツンツンした。
「つまりドルドさんはこの姿が本来のものな感じなわけ?」
「本来とは何処を起点とした質問なのか。母の腹にいる胎児と生まれでた赤子は同一のものなのか? 遡ることで得れるものが果たして本来と呼ばれるべきものなのか。それはあるいは未完と呼ぶべきものではないのか」
「なるほど……私もミカンは好きな感じよ」
「いや、そのミカンじゃないよね。それとドッペル族は本来の姿というものを持たなくて、幼年期は両親どちらかの姿を真似て、ある程度成長すると気ままに周囲のものを真似始めるらしいよ」
「流石ドロシーさんですわね。その通りですわ。ただドルドは親を持たないはぐれドッペルで、少々変わった相手に育てられましたの。ですので基本的な人間形態である親の姿がそもそもありませんのよ」
ドッペル族というだけでもかなり珍しいのに、変わった相手に育てられたって……。どうしよう。正直すごく気になる。でも複雑な家庭の事情を軽々しく聞くのもどうかと思うし。
見ればアリリアナまでもが難しい顔をしていた。
「ドッペル族、ね。一つ聞いてもいい感じ?」
「もちろんですわ。どうぞ」
ドルドさんの代わりにイリーナさんが返事をするけど、その口調が少しだけ挑発的だ。もしかしたら私たちが魔族に対してどんな反応するのか見てるのかも。特にドッペル族は恐怖の対象だから。
そんなイリーナさんの様子を知ってか知らずか、アリリアナはキリッとした顔でドルドさんの小さな手を取った。そしてーー
「その姿の時はドルドさんじゃなくてドルドちゃんって呼んでいい?」
「ええっ!?」
聞きたいことってそれ? 真面目な顔して聞くことじゃないよね? ほら、イリーナさんも呆れて……あれ? 笑ってる?
「名前など所詮記号に過ぎない。だがしかし、それに意味があると思うならば好きに呼ぶといいだろう」
「アハハ。普段からそれくらい短く纏めてくれると助かる感じ。あっ、手繋ごう。手」
アリリアナが手を伸ばすと、ドルドさんは意外にもすんなりそれを掴んだ。
「どう、ドロシー。羨ましいでしょ」
人形のように可愛いらしい少女と手を繋いで、アリリアナはすっかりご満悦だ。
その笑顔があまりにも眩しくて、どうしてそんな風に人と距離を詰められるんだろうって不思議に思う。少なくとも私には絶対に無理だ。
ああ、本当にーー
「うん。羨ましいよ」
そしてこんな時、思い知らされちゃう。私はきっとアリリアナにとって特別じゃないんだろうなって。
一緒に生活してすごく仲良くなれたし、アリリアナのお陰で毎日がすごく楽しい。
私の親友。
メルルさんともセンカさんとも友達だけど親友と呼べるのは多分アリリアナだけ。でもアリリアナにとってはきっとそうじゃない。私は沢山いる友達の中の一人。別にそれが悪いわけじゃない。ただ、ちょっとだけーー
「ちょっとドロシー、何か急に暗くない? ドルドちゃん、悪いけどそこのお姉さんとも手を繋いであげてくれる?」
「ええっ!? ちょっとアリリアナ、ドルドさん、本当に子供じゃないんだよ?」
「大人と子供の境は何処にあるのか。いや、そもそもそのようなものが本当にあるのか。誰も彼も己の稚拙さからは逃れられぬ」
そう言ってドルドさんがこちらに手を伸ばす。
……本当、アリリアナには敵わないな。
「えっとそれじゃあ、し、失礼します」
私は小さな少女の手をそっと握った。
「あらあら。仲睦まじい光景ですわね」
そう言って微笑むイリーナさん。アリリアナをどこか眩しそうに見つめるその顔は、まるで私を真似たドッペルのようだと思った。
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